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15 ルラのプレゼント
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「お兄ちゃん、なんだか体引き締まってない?
筋肉質っていうか。顔も精悍になった気がする」
兄の着替えをずっと観察した朝陽はつぶやく。
「お前、見てたな?」
服を着終えた俊也は、妹の頭をかきまわす。
「妹として義務っていうやつがあるでしょ?
魔法で転移したんだもん。
それと、勉強オタク臭が消えたというか。
なんだか堂々として見える」
こいつ、案外鋭いな、と俊也は思う。それは俊也自身が痛切に感じていたことだ。
彼は超名門の中高一貫高校に通っている。その学校は悲しいことに男子校だった。
したがって、小学校卒業以来、同年代の女子とは、ほとんど没交渉だった。「男子校生あるある」として、女性に関しては自意識過剰となり、どう接していいのかわからなくなっていた。
ところが、向こうの世界に転移したとたん、ルラと平気で話せた…どころではないのだが。
「ナイトがどうして姿を消したかわかるか?」
「そういえば……。
わかった! 猫質として向こうの世界にいったのね!」
そんな発想もあったのか。俊也は苦笑する。
「違う。原子って理科で習っただろ? 原子より細かい粒子があること知ってる?」
「知らない」
「まあ、あるんだ。俺とナイトは、同時に転移した。
それは多分素粒子…原子より小さい形に変わったと思う。
向こうの世界に着いたとき、俺とナイトはミックスされた。
さっきお前とナイトは、鼻をくっつけただろ?
ああやれば、人間に還るんだ」
「なるほど~、よくわかんないけど納得」
朝陽はウムウムとうなずく。よくわからなければ納得するなと、俊也は思ったが、まあ、これが朝陽だ。怖がらないだけでもよしとしよう。
俊也はふと魔法陣を見る。何か光る物が。
『ルラから朝陽殿へのプレゼントだ』。頭の中に声が響いた。
「ルラがお前に何かプレゼントしてくれた。猫又ナイトに変身するから、驚くな」
そう言って、俊也は招き猫ポーズ。
「ニャンニャン!」
瞬間、俊也は猫又ナイトに変身。
「もうちょっと何とかならない?
恥ずかしすぎるよ。その変身スタイル」
朝陽は厳しく批判。
「俺も恥ずかしい」
猫又ナイトはそう言って、魔法シールドに入った。ほ~、猫型のクリスタルペンダントだ。見覚えがある。
ルラの最終防御壁だった。全然防御にはなっていなかったけど。
『私が一番大切にしているペンダントよ。プリンが死んだ後、お父様がプレゼントしてくれたの。
いつも身に付けていたから、私の魔力がこもってる。
物理的なアクシデントに、一度だけ身代りになってくれるから、大切に身につけるよう言っておいて』
魔法陣からルラの声が聞こえた。
『すまぬ。そんな大切なものを』
『いいのよ。私の義理の妹だもの。お帰り、お待ちしています』
ルラからの念話は切れた。ナイトはペンダントを手に引っ掛け、シールドを出た。
「朝陽殿、ルラからのプレゼントだ。誕生日おめでとう」
朝陽はネックレスを受け取る。
「ありがとう! 私の誕生日、ルラさんに話してたのね!
ところで、ルラさんて誰?」
誕生日プレゼントじゃないんだけど。まあ、いいか。
「ルラは俊也殿の嫁だ。朝陽殿は俊也殿の大切な妹。当然話したさ」
猫又ナイトは言い繕う。
「嫁って、お兄ちゃん、大人の階段のぼったの?」
「まあ、そうだな」
「許せない! 私に断わりもなく」
朝陽は腕組みし、頬を膨らます。
「まあ、そう言うな。話せないが事情があるんだ。俊也のスケベさは認めるが」
「私より美人?」
「すまぬが、少しばかり。
おっと、そうだ。プリン、こっちへ来い」
猫又ナイトは話題をそらすため、プリンを呼ぶ。
「は~い!」
プリンはとことこっと、駆け寄る。
「これはルラの所有するダイヤだ。カナの父親に鑑定してもらおうと思っておる。
こちらで色々買い物をしたいから」
猫又ナイトは指輪を取り出した。隣家の伊東家とは、家族ぐるみで親しく付き合っている。
カナは俊也の二コ下で高一。昨年俊也は彼女の家庭教師として、一年間受験勉強の指導をした。
俊也の数少ない、気楽に話せる女友だちだ。
「すげ~……。その石、本物?」
敵対視する兄嫁のプレゼントを、あっさり身につけた朝陽は言う。あの指輪、実際ビビるほどの大きさだ。
「俊也によれば、本物に間違いない。
あちらの世界に、人造ダイヤを作る技術はないそうだ。
カットは荒いが、相当の値がつくだろうということだ」
「なるほど。カナちゃん、呼ぼうか?
帰り道に会って、一緒に帰った」
「そうしてくれ。俺のことも話してよい。カナなら信用できる」
「カナちゃんなら、認められるんだけどな。
そのルラさん、転移できないの?」
朝陽は眉をひそめて聞く。
「できないことはないが、いろいろ忙しい。そのうち会わせる」
猫又ナイトはお茶を濁した。『このブラ・シスコンが』と頭の中の俊也を責めながら。『ウッセー!』と俊也は抗議した。
筋肉質っていうか。顔も精悍になった気がする」
兄の着替えをずっと観察した朝陽はつぶやく。
「お前、見てたな?」
服を着終えた俊也は、妹の頭をかきまわす。
「妹として義務っていうやつがあるでしょ?
魔法で転移したんだもん。
それと、勉強オタク臭が消えたというか。
なんだか堂々として見える」
こいつ、案外鋭いな、と俊也は思う。それは俊也自身が痛切に感じていたことだ。
彼は超名門の中高一貫高校に通っている。その学校は悲しいことに男子校だった。
したがって、小学校卒業以来、同年代の女子とは、ほとんど没交渉だった。「男子校生あるある」として、女性に関しては自意識過剰となり、どう接していいのかわからなくなっていた。
ところが、向こうの世界に転移したとたん、ルラと平気で話せた…どころではないのだが。
「ナイトがどうして姿を消したかわかるか?」
「そういえば……。
わかった! 猫質として向こうの世界にいったのね!」
そんな発想もあったのか。俊也は苦笑する。
「違う。原子って理科で習っただろ? 原子より細かい粒子があること知ってる?」
「知らない」
「まあ、あるんだ。俺とナイトは、同時に転移した。
それは多分素粒子…原子より小さい形に変わったと思う。
向こうの世界に着いたとき、俺とナイトはミックスされた。
さっきお前とナイトは、鼻をくっつけただろ?
ああやれば、人間に還るんだ」
「なるほど~、よくわかんないけど納得」
朝陽はウムウムとうなずく。よくわからなければ納得するなと、俊也は思ったが、まあ、これが朝陽だ。怖がらないだけでもよしとしよう。
俊也はふと魔法陣を見る。何か光る物が。
『ルラから朝陽殿へのプレゼントだ』。頭の中に声が響いた。
「ルラがお前に何かプレゼントしてくれた。猫又ナイトに変身するから、驚くな」
そう言って、俊也は招き猫ポーズ。
「ニャンニャン!」
瞬間、俊也は猫又ナイトに変身。
「もうちょっと何とかならない?
恥ずかしすぎるよ。その変身スタイル」
朝陽は厳しく批判。
「俺も恥ずかしい」
猫又ナイトはそう言って、魔法シールドに入った。ほ~、猫型のクリスタルペンダントだ。見覚えがある。
ルラの最終防御壁だった。全然防御にはなっていなかったけど。
『私が一番大切にしているペンダントよ。プリンが死んだ後、お父様がプレゼントしてくれたの。
いつも身に付けていたから、私の魔力がこもってる。
物理的なアクシデントに、一度だけ身代りになってくれるから、大切に身につけるよう言っておいて』
魔法陣からルラの声が聞こえた。
『すまぬ。そんな大切なものを』
『いいのよ。私の義理の妹だもの。お帰り、お待ちしています』
ルラからの念話は切れた。ナイトはペンダントを手に引っ掛け、シールドを出た。
「朝陽殿、ルラからのプレゼントだ。誕生日おめでとう」
朝陽はネックレスを受け取る。
「ありがとう! 私の誕生日、ルラさんに話してたのね!
ところで、ルラさんて誰?」
誕生日プレゼントじゃないんだけど。まあ、いいか。
「ルラは俊也殿の嫁だ。朝陽殿は俊也殿の大切な妹。当然話したさ」
猫又ナイトは言い繕う。
「嫁って、お兄ちゃん、大人の階段のぼったの?」
「まあ、そうだな」
「許せない! 私に断わりもなく」
朝陽は腕組みし、頬を膨らます。
「まあ、そう言うな。話せないが事情があるんだ。俊也のスケベさは認めるが」
「私より美人?」
「すまぬが、少しばかり。
おっと、そうだ。プリン、こっちへ来い」
猫又ナイトは話題をそらすため、プリンを呼ぶ。
「は~い!」
プリンはとことこっと、駆け寄る。
「これはルラの所有するダイヤだ。カナの父親に鑑定してもらおうと思っておる。
こちらで色々買い物をしたいから」
猫又ナイトは指輪を取り出した。隣家の伊東家とは、家族ぐるみで親しく付き合っている。
カナは俊也の二コ下で高一。昨年俊也は彼女の家庭教師として、一年間受験勉強の指導をした。
俊也の数少ない、気楽に話せる女友だちだ。
「すげ~……。その石、本物?」
敵対視する兄嫁のプレゼントを、あっさり身につけた朝陽は言う。あの指輪、実際ビビるほどの大きさだ。
「俊也によれば、本物に間違いない。
あちらの世界に、人造ダイヤを作る技術はないそうだ。
カットは荒いが、相当の値がつくだろうということだ」
「なるほど。カナちゃん、呼ぼうか?
帰り道に会って、一緒に帰った」
「そうしてくれ。俺のことも話してよい。カナなら信用できる」
「カナちゃんなら、認められるんだけどな。
そのルラさん、転移できないの?」
朝陽は眉をひそめて聞く。
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