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29 王の触れ
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翌日王の名前で触れが出された。要約すれば次のようになる。
1 前日の天変地異は、魔王に匹敵するある方の魔法が発動したものである
2 その方には、王自ら十人の巫女を捧げた。巫女の献身により、その方は、必要以上の魔法は使わない
3 その方への詮索は一切禁じる。その方の不興を買ったら、一瞬で王都は滅ぼされる
4 その方は巫女の献身によって、王国の守護を約束した。王国に異変があれば、風のごとく舞い戻り、王国を救うであろう
5 その方は、巫女と共に辺境の地へ身を隠す。よっていたずらにおびえることは不要
6 万一その方や巫女と出会っても、決して口外してはならぬ。秘密を漏らした者は、問答無用で死刑になると心得よ
ルラの父親の名で起草した俊也の文章だ。おびえ切った王は無条件で捺印した。
例の触れが発布された直後、某貴族が乗った馬車は暴走した。その貴族の首に吹き矢の痕跡があった事実は、秘密裏に抹消された。
俊也は、とある民家の前に立った。時刻は夜の八時。
こちらの世界での夜は早い。魔石照明を使える世帯はごくわずか。
ここは一般庶民が住む街だから、あと一二時間もすれば人通りは途絶えるそうだ。
「で、どうしてもやるんですか?」
フラワーが、不機嫌そうな声で言う。
「だって……」
「だって?」
「美女が大けがで苦しんでる。
見過ごすことなんてできない?」
ブルーがにんまりと笑って言う。
「多分『美女』が、『見過ごせない』ポイントでしょうけど」
イザベルが、余計な口をはさむ。
俊也のお供は、フラワー、それに体育会系コンビだった。
「フラワー、頼む」
俊也は苦笑して依頼。
「了解。スリープ!」
フラワーは、民家全体に睡眠魔法を放った。
一軒全体の住人に、外から睡眠魔法をかける。ルラが言うには、フラワーにしかできない離れ業だそうだ。
誰にでもできたら問題多すぎ!
「おじゃましま~す」
俊也は問題の民家のドアを開けてはいる。
ごく平均的な庶民世帯なので、内からかんぬきを開けたら、普通に訪問できた。
もっとも、侵入方法は普通でなかったけど。
ブルーが屋根に飛び上がり、カギがかかってない二階の窓から侵入。かんぬきを開けてもらった。
要するに、盗賊の手順と、いささかも変わらない。
「さすがフラワーさんだ。みんなぐっすり眠ってるみたい」
イザベルが、素直に感想を述べる。
「全然自慢にもならないけど。
いたずらで使うには、エグすぎるでしょ?」
フラワーは、肩をすくめて言う。実際彼女が得意とする魔法は、使いどころに困ってしまうものが多いのだ。
魅了魔法の超有意義な活用法は見いだせたけど。
「さ、始めようか」
俊也は入り口の左隣にある部屋のドアを開けた。
イスに腰かけた年配の女性が、ベッドにもたれ眠りこけている。
イザベルは、そ~っと、女性の体を抱き上げる。全然目覚めそうにない。
「断っておくけど、あくまで治療だからね?」
俊也は誰にともなくそう言った。疑問形になってしまったのは、やましさがぬぐい切れないから?
「わかってますから、早くやってください」
フラワーが、眉を顰めつつ言う。
「フラワー、清浄魔法使えると言ったよね?
普通のやつでいいから」
「わかりました。どこをどれだけなめても、大丈夫にしますから。
クリーン!」
フラワーが、皮肉たっぷりに言って、ベッドに横たわる女性に、清浄魔法をかけた。ただし、猫又のように、避妊効果までは望めない。
避妊が必要な状況に、させるつもりもないけど!
俊也は、おごそかな顔を取り繕い、布団をはいだ。
その女性は、パンイチの半裸体に体中包帯だらけ。痛々しい。
イザベルにナイフを借り、俊也は包帯をすべて切り捨てる。
おいたわしや、娘さんの柔肌。
「とりあえず、大きな傷を治してもらえる?」
俊也はフラワーを、きらきらお目々で見つめる。
「わかりました。抵抗なくなめられる程度でいいですね?
治癒魔法は、そこそこですから。
ヒール!」
フラワーは、大きな傷の真上に手をかざした。
手のひらから青白い光がもれる。
徐々に傷口がふさがり、ピンク色に盛り上がった。
フラワーは、同じ作業を数度繰り返す。
「ふ~……。治癒魔法、疲れるんです。
少し休ませてください」
フラワーは、空いていたイスに腰かけた。
では打撲から……。俊也は娘さんの足を持ち上げ、すねのあたりを丁寧になめ始めた。
「俊也さん、よかったですね!
腰骨のあたりにも打ち傷がありますよ」
ブルーが女性のパンツを下ろしてくれた。
サンキュー! ブルー。
「そ、そう……」
俊也はチラっと大切な部分を見て、作業に没頭する、ふりをした。ボーボーだった。あれはルマンダより淫靡……。
これぐらいの役得がなくっちゃ!
ね?
結果、クーデター未遂事件の死者一名。馬車に巻き込まれ重傷を負った市民一名、軽傷者三名。
重傷を負った負傷者は何者かに眠らされ、目覚めたときには傷が完全に回復していた。
その重傷者は幸いなことに、近所でも評判の美人だった。
軽傷者三名は不幸なことに、ムサイおっさんだった。もちろん、何の処置も施されなかったが、金貨が一枚枕もとに置かれていた。
翌朝、多分魔王級の超魔導師一行は、五台の馬車に分乗し、王都の門から出ていった。
1 前日の天変地異は、魔王に匹敵するある方の魔法が発動したものである
2 その方には、王自ら十人の巫女を捧げた。巫女の献身により、その方は、必要以上の魔法は使わない
3 その方への詮索は一切禁じる。その方の不興を買ったら、一瞬で王都は滅ぼされる
4 その方は巫女の献身によって、王国の守護を約束した。王国に異変があれば、風のごとく舞い戻り、王国を救うであろう
5 その方は、巫女と共に辺境の地へ身を隠す。よっていたずらにおびえることは不要
6 万一その方や巫女と出会っても、決して口外してはならぬ。秘密を漏らした者は、問答無用で死刑になると心得よ
ルラの父親の名で起草した俊也の文章だ。おびえ切った王は無条件で捺印した。
例の触れが発布された直後、某貴族が乗った馬車は暴走した。その貴族の首に吹き矢の痕跡があった事実は、秘密裏に抹消された。
俊也は、とある民家の前に立った。時刻は夜の八時。
こちらの世界での夜は早い。魔石照明を使える世帯はごくわずか。
ここは一般庶民が住む街だから、あと一二時間もすれば人通りは途絶えるそうだ。
「で、どうしてもやるんですか?」
フラワーが、不機嫌そうな声で言う。
「だって……」
「だって?」
「美女が大けがで苦しんでる。
見過ごすことなんてできない?」
ブルーがにんまりと笑って言う。
「多分『美女』が、『見過ごせない』ポイントでしょうけど」
イザベルが、余計な口をはさむ。
俊也のお供は、フラワー、それに体育会系コンビだった。
「フラワー、頼む」
俊也は苦笑して依頼。
「了解。スリープ!」
フラワーは、民家全体に睡眠魔法を放った。
一軒全体の住人に、外から睡眠魔法をかける。ルラが言うには、フラワーにしかできない離れ業だそうだ。
誰にでもできたら問題多すぎ!
「おじゃましま~す」
俊也は問題の民家のドアを開けてはいる。
ごく平均的な庶民世帯なので、内からかんぬきを開けたら、普通に訪問できた。
もっとも、侵入方法は普通でなかったけど。
ブルーが屋根に飛び上がり、カギがかかってない二階の窓から侵入。かんぬきを開けてもらった。
要するに、盗賊の手順と、いささかも変わらない。
「さすがフラワーさんだ。みんなぐっすり眠ってるみたい」
イザベルが、素直に感想を述べる。
「全然自慢にもならないけど。
いたずらで使うには、エグすぎるでしょ?」
フラワーは、肩をすくめて言う。実際彼女が得意とする魔法は、使いどころに困ってしまうものが多いのだ。
魅了魔法の超有意義な活用法は見いだせたけど。
「さ、始めようか」
俊也は入り口の左隣にある部屋のドアを開けた。
イスに腰かけた年配の女性が、ベッドにもたれ眠りこけている。
イザベルは、そ~っと、女性の体を抱き上げる。全然目覚めそうにない。
「断っておくけど、あくまで治療だからね?」
俊也は誰にともなくそう言った。疑問形になってしまったのは、やましさがぬぐい切れないから?
「わかってますから、早くやってください」
フラワーが、眉を顰めつつ言う。
「フラワー、清浄魔法使えると言ったよね?
普通のやつでいいから」
「わかりました。どこをどれだけなめても、大丈夫にしますから。
クリーン!」
フラワーが、皮肉たっぷりに言って、ベッドに横たわる女性に、清浄魔法をかけた。ただし、猫又のように、避妊効果までは望めない。
避妊が必要な状況に、させるつもりもないけど!
俊也は、おごそかな顔を取り繕い、布団をはいだ。
その女性は、パンイチの半裸体に体中包帯だらけ。痛々しい。
イザベルにナイフを借り、俊也は包帯をすべて切り捨てる。
おいたわしや、娘さんの柔肌。
「とりあえず、大きな傷を治してもらえる?」
俊也はフラワーを、きらきらお目々で見つめる。
「わかりました。抵抗なくなめられる程度でいいですね?
治癒魔法は、そこそこですから。
ヒール!」
フラワーは、大きな傷の真上に手をかざした。
手のひらから青白い光がもれる。
徐々に傷口がふさがり、ピンク色に盛り上がった。
フラワーは、同じ作業を数度繰り返す。
「ふ~……。治癒魔法、疲れるんです。
少し休ませてください」
フラワーは、空いていたイスに腰かけた。
では打撲から……。俊也は娘さんの足を持ち上げ、すねのあたりを丁寧になめ始めた。
「俊也さん、よかったですね!
腰骨のあたりにも打ち傷がありますよ」
ブルーが女性のパンツを下ろしてくれた。
サンキュー! ブルー。
「そ、そう……」
俊也はチラっと大切な部分を見て、作業に没頭する、ふりをした。ボーボーだった。あれはルマンダより淫靡……。
これぐらいの役得がなくっちゃ!
ね?
結果、クーデター未遂事件の死者一名。馬車に巻き込まれ重傷を負った市民一名、軽傷者三名。
重傷を負った負傷者は何者かに眠らされ、目覚めたときには傷が完全に回復していた。
その重傷者は幸いなことに、近所でも評判の美人だった。
軽傷者三名は不幸なことに、ムサイおっさんだった。もちろん、何の処置も施されなかったが、金貨が一枚枕もとに置かれていた。
翌朝、多分魔王級の超魔導師一行は、五台の馬車に分乗し、王都の門から出ていった。
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