【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

文字の大きさ
48 / 230

48 アンの秘密大公開

しおりを挟む
 二日後の早朝、レンタルした二台の馬車に乗って、一行は別荘を目指した。

転移魔法を使えば話は早いのだが、新人二人に最高機密を話すのは、時期尚早と俊也は判断した。

湖の館へ帰るのは、大した手間でもないし。


途中、アン(ブリリアンは愛称での統一を願った)のアジトで、少ない荷物を拾い、蛇行する細い道をのんびり登っている。

俊也は、というか猫又ナイトは、もちろんルラと連絡をとった。

「ご老女じゃなかったの?」
と、皮肉られたが、そんなことでひるむルラではなかった。

「二人とも俊也のお気に入りで、料理上手だ」
という猫又ナイトの言葉で、あっさり認めた。

ルラをはじめ、すべての嫁は、自分たちの都合で、俊也に無理をさせているという自覚を持っている。

つまり、俊也が気に入ったなら、仕方ない、という方針を固めている。

もう一つ、ルラは漏らした。

「帰ったら、ビッグサプライズが待ってるよ」

 はて、なんでしょう?


俊也は御者席の隣で、手綱をとりながらのんびり風景を楽しむイザベルの顔を見た。

俊也は思う。イザベルとブルーの変化に比べ、ルラの言うサプライズ、どっちが衝撃度でかいだろう?
二人は明らかにプチ整形している。

イサベルは彼女のコンプレックスの一つ、とがったあごの先をいじり、さらに頬をリフトアップしている。

ブルーは、やや出っ張った頬骨を矯正している。

確かに一段ときれいになった。

だけど、俊也は前の顔の方が好きだった。もちろん、そんな気配は、おくびにも出さなかった。
猫又ナイト大先生の忠言は、真理だと思ったから。うまく化かされてやるのが男というもの。

本人が喜んでいるのだから、男は絶対クレームをつけてはならない。


「俊也様、どうして私が狙われる理由、聞かないんですか?」
 後ろで買い物の荷物と一緒に座っている、アンが声をかけてきた。
アンは猫から、素っ裸に変身した俊也を目撃。予想通りの事態だが、いわゆる朝立ちのジュニアにひるんだ。

だがしかし、これは女の見せどころ、と、アンは俊也に抱き付いた。

彼女的には必死だった。初めて出会った、真に頼れそうな男。絶対放してはならない。

俊也はチュー&乳もみもみで、アンの熱意に応えた。

俊也は頑張ってそれ以上の行為を自制した。
猫又ナイト2をいきなり見せるのは、まずいと思ったから。

アンとしては色々な恩を、自分の体で報いたかった。だが、俊也は「お互いもっとなじむまで、やせがまんする」と言ってくれた。
湖の館へ帰ってからじっくりと。そう言って、アンと、自分のパイオニアスピリットをなだめた。

アンはちょっぴり寂しかったが、自分を大切に思ってくれている、と解釈してその言葉に従った。


アンは四十歳をいくらか過ぎていると思う。歳を数えるのがバカバカしいので、正確にはわからない。

彼女は寂しさのあまり、人肌が恋しくて眠れない夜もあった。

だが、男に身を任せるのがひたすら怖かった。処女の感傷ではない。自分の異能力が知られるのが怖くて。

彼女はやろうと思えば、いくらでも稼げる。金におぼれ、男が変質するのが怖かったのだ。

自分の両親がそうだった。彼女は母親の遺伝を正確に受け継いだ。特に学ばなくても、金になる鉱物や金属のありかがわかるのだ。

両親はその能力が原因で別れた。

母親とアンは、人里離れた場所で、ひっそりと生きてきた。母親は正当な魔法も学んでいたようだ。どんな魔物も、敵ではなかった。

だが、油断があった。毒蛇にかまれ、苦しみながら死んでいった。
彼女は、攻撃魔法は上級者だが、体力がついてから学ぶヒールや破毒の魔法は知らなかった。

アンが歳を数えるのをやめたのは、母親を失い、一人ぼっちになってからだ。

また、母親は、魔法を一切娘に教えなかった。理由はよくわからない。漠然と想像しているのは、庶民が強力な魔法を使えば目立ちすぎること。
母親も、人目があるときに、攻撃魔法は決して使わなかった。

それが自分にとって良いことか、アンはいまだにわからない。
先日のようなピンチになったとき、攻撃魔法が使えたら、あんな男たち、簡単に排除できたはず。

ただ、その後は、ひどく面倒なことになっただろう。庶民の女が、大勢の男を魔法で倒すことなど、ありえないからだ。

整形術は成長後必要に迫られ、独学で体得した。そして彼女が今選んでいる顔は、母親の顔そのものだった。
自分の本来の顔は忘れても、母親の顔は忘れられなかった。


話を馬車に戻そう。俊也はアンの問いに、しばらく考え込んでいた。

「こんな呼び方してるかどうか分かんないけど、ダウジングできるの?
つまり、太い針金を二本直角に曲げて、両手で軽く握る。
ひたすら狙いの石や鉱脈を思い描きながら。
鉱脈やでかい鉱石に当たったら、針金が反応する。
強い魔力を借りたら、精度は急激に上がると思う。
君が枕もとに置いていたサークレット、親の形見? それをつけると精度はさらにあがる。そうだろ?」

 アンはこれまでの人生で一番驚いた。母親が娘だけに見せ、そして自分が、生きるためにやってきたことを、正確に言い当てられた。

「その力が狙われたんだろ? 
君は長く同じ街ではいなかった。
だけど、カントの街には、ラブミーテンダーがあった。
あの店の隠し部屋だけは、安眠できる。
アンリの両親が守ってくれるから。
あの二人、限りなく優しいね。何か深い事情があったと思う。
魔法戦士夫婦が、レストラン兼居酒屋を開くまでには。
二階を娼館にしたのは、すべての人を救うのは不可能だから。
それで、助けるのが可能な人には逃げ場を用意してあげた。
全部俺の想像だから、忘れていいよ。
なにも聞かない。
ただ、鉱石や魔石採取のアルバイトは、かまわないから。
手数料貰うけど、加工と販売ルートは任せて。
売上の十パーセント。手数料それでどう? 
こっちも助かる。大量に持って帰られたら、さばくのに困るけど」

 アンは、どんな反応を示したらいいのか、わからなかった。
ただ一つだけわかったことがある。やっぱり思った通りの人だ。この人に一生ついていけばいいのだ。

「この箱の中身、みんな差し上げます。お好きなように使ってください」
 アンは彼女の最大の荷物を持ち上げた。不安定な荷台で、ぎりぎり持ち上げられるほど、その箱は重かった。

目立ち過ぎるのを恐れ、彼女が蓄えるしかなかった希少に属する魔石や宝石の原石だ。

宝石はし好品だが、魔石は実用品だ。属性にあった魔石を利用し、いろいろなエネルギー源に使える。
したがって、物によっては、同じ大きさで上質の宝石の十倍もの値が付けられる。

もっとも、魔石を実用品として使えるのは、上流貴族に限られている。

「魔石か宝石? いいよ。君の財産だ。
雷属性の魔石があったら嬉しいんだけど。
言い値で買い取るよ。
超珍しいそうだから、まだ見つけたことがないんだ」

「見つけたことがない? 
つまり、魔石を探せるんですか?」

「俺がさっき言った方法は実行してる。
魔法円の代行ができる、サークレットがないから、相当効率が悪いけど、暇つぶしにね。
廃坑のダンジョンでは、わりと多いみたいだね? 
効率は最高にいい」

 アンは改めて思う。この人、何者なんだろう? サークレットの秘密も知っているし、自分と母親以外知らないはずの、あの方法もすでに知っていた。

「重いだろ? 下ろしたら?」
 俊也が後ろのアンをちらっと見て、声をかけてきた。

アンは両腕がプルプル震えていることに気づいた。

ドスンと下ろす。

「雷の魔石は二個持ってます。希少価値はありますが、実用に不向きでしょ?」
 アンは俊也の背中に向けてそう言った。

「いや、ソーラーパネル、十台設置したんだけど、冬場が不安でね。
雪はかぶるし、曇天も多い。
ちっちゃいの買って発電装置は作ったんだけど、なかなか出回らなくて」
 アンは俊也が言っていることが、さっぱりわからなかった。
だが、売るのに困っていた雷属性の魔石が、俊也の役に立ちそうで嬉しくなった。

「かなりでかい方だと思いますよ。役立てて下さい」
 アンは弾んだ声で言った。

「いくら?」

「俊也さんの体で払ってください。それ以外は受け付けません」

「俊也さんのお情け頂いたら、超いいことがあるよ。びっくりすることもある。
それまでみんなが黙っていられたらの話だけど」
 イザベルは前を向いたままでそう言った。

俊也は思う。アンなら嫁の中でも相当上位の魔導師になれるだろう。よくわからないが、漠然とそう思った。

猫又ナイト式魔法陣も早くコツをつかめるはずだ。ほとんど自力で、独特の魔法を体得している。

あれ? 俺、嫁にする前提で考えてなかった? どうしたものだろう? アンはすっかりその気のようだし。
多分愛人路線?

リラたち嫁の顔を思い浮かべ、途方に暮れる俊也だった。
 


 一行は別荘に着いた。アンが用意したサプライズと、リラたちが用意したサプライズは、双方を同程度に驚かせた。

リラの用意したサプライズは多分ご想像通り。悪質ウイルス禍の影響だと言っておく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生?したら男女逆転世界

美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。 ※カクヨム様にも掲載しております

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

処理中です...