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60 俊也のジレンマ
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俊也は現地妻の元へ通っていた。日本では、いまだに「外出自粛」は続いている。
したがって、現地妻とのただれた一日を送るしか手はない。
もちろん、新婚の二人はむしろ歓迎。二人は素っ裸で寄り添いながら、ぼんやりテレビを見ていた。
例の「治癒の秘石」は、思った通りの効果を発揮しているようだ。政府に石を渡した二日後、カナの父親に一億振り込まれた。
ただ、死者は相変わらず出ている。石は一個しかないから、間に合わなかったのだ。
あの石はコロ〇ウイルス限定で機能する。ウイルスの特徴的な形状を、猫又ナイトが強く記憶に残るほどにらみつけ、「体内のとげとげウイルスをやっつけろ!」と、驚異的に長い呪文を唱え、石に転写した。
俊也はこう想像している。あれはコロ〇ウイルスの抗体を、冗談みたいに増やす効果がある。
したがって、体力が尽きかけた患者には、効果が間に合わなかったと考えられる。
その死者も、抗体は確実に増えていたはずだから、政府も黙って買い取ったのだ。
自然と老人の重症患者は、後回しにされる。いわゆる「命のトリアージュ」というやつだ。
俊也の胸は痛んだ。石をもっと多く提供できれば、確実にもっと多くの命が救える。
だが、多く生産すれば、確実に大パニックが引き起こる。アメリカやヨーロッパなどでは、多数の死者が出ている。
政府としては、一個しかないから、現在魔石の秘密を守り切れている。
その存在の秘密が国境を越えてしまったら、日本政府は、超厳しい立場に追い込まれる。「魔法の力」だとは、間違っても明かせないから。
力の実証は可能であっても、分析されたら石が使いものにならなくなることは、伝えている。
虎の子の石を他国にゆだねるわけにいかないし、その余裕もない。
俊也はこう考えている。他者の運命を変えられる力はあっても、身の丈にあった者の、運命しか変えてはならない。
あの石に関する責任を、すべて国に押し付けたのは、俊也の誠意に他ならなかった。
政府は国民全体に責任を負う。最大限に多くの患者を救うのは、国家しかありえない。
一人の一般人が、しかも、さまざまな制約を抱える一般人が、負える責任は限られている。
俊也は、身内の者まで影響が及ぶような、責任を負うつもりはない。
「こら~! また考えてるでしょ!」
カナはわざと厳しくしかりつけた。俊也の悲しさを知っているから。
あんなニュースを見たら、どんなにじれったい思いをしているか。
だが、ニュースやバラエティーで、話題になりかけている。なぜ日本人には感染者が少ないのか。
そして、致死率が欧米と比較して、なぜ驚くほど少ないのか。
カナにはわかっていた。あのマスクや秘石のおかげだ。今後死亡者は、さらに減るだろう。
秘密で配布される、濃厚接触者へのマスクも、きっと役立っているに違いない。
「ごめん」
「わかってるから。少し赤くなってるけど、乳首吸っていいよ」
カナは女神とでも形容すべき笑顔を与えた。
カナは嫁たちほどの美人では、決してない。それでもカナの笑顔は、癒しの女神に見えた。
だけど、あの乳首はもう吸えない。これ以上吸ったらヤバいことになる。キスも唇が荒れてるし。
俊也はわけがわからない。ルラの骨折を癒し、心臓の動きを再開した治癒能力は、ただれ状態の今、一切発揮されてない。
多分、「単なる男」に帰っているのだと思う。慣れ親しんだ嫁たちには、びっくりするほど美肌効果が発揮されるのだが。
ただれる時間は、もういいだろう。俊也は潔く「ここまで」と宣言した。
実はカナも、いっぱいいっぱいだった。密着状態は、ゆうべから延々と続いていたから。
また「その気」になってしまわないよう、二人は衣服を身につけた。
やっと眠れる。一番ほっとしたのは、俊也の中のナイトだった。
二人はカナの母親が買ってくれたセミダブルのベッドで熟睡した。
俊也が日本から帰ったとき、別荘には緊張した空気が感じられた。
「俊也の意見聞かせて。実は……」
ルラは、危険が迫っている事情を俊也に語った。
したがって、現地妻とのただれた一日を送るしか手はない。
もちろん、新婚の二人はむしろ歓迎。二人は素っ裸で寄り添いながら、ぼんやりテレビを見ていた。
例の「治癒の秘石」は、思った通りの効果を発揮しているようだ。政府に石を渡した二日後、カナの父親に一億振り込まれた。
ただ、死者は相変わらず出ている。石は一個しかないから、間に合わなかったのだ。
あの石はコロ〇ウイルス限定で機能する。ウイルスの特徴的な形状を、猫又ナイトが強く記憶に残るほどにらみつけ、「体内のとげとげウイルスをやっつけろ!」と、驚異的に長い呪文を唱え、石に転写した。
俊也はこう想像している。あれはコロ〇ウイルスの抗体を、冗談みたいに増やす効果がある。
したがって、体力が尽きかけた患者には、効果が間に合わなかったと考えられる。
その死者も、抗体は確実に増えていたはずだから、政府も黙って買い取ったのだ。
自然と老人の重症患者は、後回しにされる。いわゆる「命のトリアージュ」というやつだ。
俊也の胸は痛んだ。石をもっと多く提供できれば、確実にもっと多くの命が救える。
だが、多く生産すれば、確実に大パニックが引き起こる。アメリカやヨーロッパなどでは、多数の死者が出ている。
政府としては、一個しかないから、現在魔石の秘密を守り切れている。
その存在の秘密が国境を越えてしまったら、日本政府は、超厳しい立場に追い込まれる。「魔法の力」だとは、間違っても明かせないから。
力の実証は可能であっても、分析されたら石が使いものにならなくなることは、伝えている。
虎の子の石を他国にゆだねるわけにいかないし、その余裕もない。
俊也はこう考えている。他者の運命を変えられる力はあっても、身の丈にあった者の、運命しか変えてはならない。
あの石に関する責任を、すべて国に押し付けたのは、俊也の誠意に他ならなかった。
政府は国民全体に責任を負う。最大限に多くの患者を救うのは、国家しかありえない。
一人の一般人が、しかも、さまざまな制約を抱える一般人が、負える責任は限られている。
俊也は、身内の者まで影響が及ぶような、責任を負うつもりはない。
「こら~! また考えてるでしょ!」
カナはわざと厳しくしかりつけた。俊也の悲しさを知っているから。
あんなニュースを見たら、どんなにじれったい思いをしているか。
だが、ニュースやバラエティーで、話題になりかけている。なぜ日本人には感染者が少ないのか。
そして、致死率が欧米と比較して、なぜ驚くほど少ないのか。
カナにはわかっていた。あのマスクや秘石のおかげだ。今後死亡者は、さらに減るだろう。
秘密で配布される、濃厚接触者へのマスクも、きっと役立っているに違いない。
「ごめん」
「わかってるから。少し赤くなってるけど、乳首吸っていいよ」
カナは女神とでも形容すべき笑顔を与えた。
カナは嫁たちほどの美人では、決してない。それでもカナの笑顔は、癒しの女神に見えた。
だけど、あの乳首はもう吸えない。これ以上吸ったらヤバいことになる。キスも唇が荒れてるし。
俊也はわけがわからない。ルラの骨折を癒し、心臓の動きを再開した治癒能力は、ただれ状態の今、一切発揮されてない。
多分、「単なる男」に帰っているのだと思う。慣れ親しんだ嫁たちには、びっくりするほど美肌効果が発揮されるのだが。
ただれる時間は、もういいだろう。俊也は潔く「ここまで」と宣言した。
実はカナも、いっぱいいっぱいだった。密着状態は、ゆうべから延々と続いていたから。
また「その気」になってしまわないよう、二人は衣服を身につけた。
やっと眠れる。一番ほっとしたのは、俊也の中のナイトだった。
二人はカナの母親が買ってくれたセミダブルのベッドで熟睡した。
俊也が日本から帰ったとき、別荘には緊張した空気が感じられた。
「俊也の意見聞かせて。実は……」
ルラは、危険が迫っている事情を俊也に語った。
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