【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

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93 ブルーはフラグを背負って生きている

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|※猫又の原稿では第三部に突入します。ここまでは作品の手直しをしていたのですが、以降原稿のままです。よって投稿間隔は少しあくかもしれません。

◇ ◇ ◇


俊也一行は、シルバーストーンから、カントを目指す。

遠征の目的は十分果たせた。お荷物は六人も背負ってしまったが。
お荷物たちに二台の中古馬車と、カントまで大丈夫だろうか、という感じの馬を買い与えた。

潰れたら潰れたときのこと。あれしかいなかったのだから仕方ない。


シルーバーストーン、名前は立派だが、カントの方が、まだ治安は行き届いている。
なんでも、カントでは御老公一行が、ずっと居座っているらしい。湖の山から時々下りてくる「青さん」と呼ばれる怪物が、街のチョイワルどもをシメ、リーダーとなってしまった。

チョイワルどもは、その「青さん」、自称土方歳三副長の命で、仕方なく自警団を組織している。『SA新撰組』だそうだ。

俊也はブルーから、例のそろいの羽織と鉢巻をねだられていたが、もちろんそんな無駄遣いはしない。

気の毒なのは壬生狼(みぶろう・新撰組のこと)のメンバーたち。副長の興味は仮面ラ×ダーに移ってしまった。

土方さんの、かぶれやすく飽きやすい性格は、何とかならないものだろうか。

言い忘れていたが、治安の悪いシルバーストーンでも、俊也たちの馬車に誰も近寄らなかった。ダークウルフの群れ惨殺の噂は、相当の速さで街中に広まっていたらしい。

「トシ、あの新撰組どうするつもり?」
 俊也は同じ馬車に乗るブルーに振ってみた。

「なんだったけ? そうだ、近藤局長、やっと自覚を持っていただけましたか。
我々は勤王志士を名乗る輩(やから)を、京の街から排除しなければなりません」
 やっぱり乗ってきましたか。

「京の街はいいが、カントの街はどうするつもりだ? 
放っておいたら、せっかくの新撰組が、空中分解してしまうぞ。
俺は珍しくアリだと思ったんだが(ブルーのやることにしては)」
 俊也は長旅に退屈していることもある。だが、あの自警団組織は、そこそこ堅気の衆に、認められつつあった。

チョイワル連中も、感謝されたら、やはり嬉しいらしい。その気になって、ワルを働かなくなった。

「そうですね、地球防衛軍と名を変えて……」

「エイリアンと闘わなくていいから!」

「じゃあ…………」

「もうないんかい!」

「ハハハ、局長、時代はお笑いですぞ! 目指せM1!」

「もういい。士道不心得で副長クビ! アンリに任せる」

「そんな~……まじめにやりますぅ~……」
 俊也は涙目になったブルーを、横目で見る。

やっぱりかわいいじゃね~か、コンチキショウー! 

俊也はこの展開、なんかくせになりそうだった。

「局長、そろそろ志士どもに動きが出ても……」

「その展開はタブーだから!」
 あっ、出ちゃったよう~。あれは問答無用の追剥だ。 

ブルーがあんなふうに言い出せば、かならず一波乱ある。
ひょっとしたら、ブルーが招き寄せているかもしれない。動けば殺人事件にぶち当たる名探偵のように。

「土方歳三でも本郷タケシでもいい。ユー、やっちゃいな!」 

「ラジャー!」
 ブルーは喜々として馬車から飛び降りた。

おいおい! 俺は馬車の操縦できないんだってば! 

俊也はブルーが残した手綱を、慌てて握った。どうやって止めるの~……。

馬車を引く馬は、さすがの名馬二頭だった。御者がダメだと感じ、勝手に止まってくれた。
究極のサポカーだ……。俊也は冷や汗をぬぐった。


 ブルーは、ようやく手加減を覚えかけたようだ。追剥二人は、腕がありえない方向に曲っているだけで無事だった。
ブルーにしては上出来だ。絶対ほめないけど。

「お女中、けがはなかったか?」
 どうやら気分は土方歳三の方だ。ブルーは被害者の女性に歩み寄った。

ブルーは、このようなセリフを期待している。

「どなたか存じませぬが、危ういところありがとうございました。ポッ……」

「ごめんなさい! 命だけは……」
 かわいそうなブルー……。すっかりブルーになっていた。もともとブルーだけど。

俊也は馬車から降りる。サイドブレーキがついているか知らない。

「びっくりしただろうけど、こいつ、いいやつだから」
 お女中は、助けてもらったことにも気づかず、背を向けて丸まり、頭を抱え震えているだけだった。

それほどブルーの動きは早かった。長剣をお女中に向けた追剥ヤローの腕を、ブルーは、手刀でボキ、ボキっと折ってしまったから。
おびえるだけで、何が起こったか分かってないのだ。

俊也の言葉に、お女中は、おそるおそる振り返った。

「助けて、くれたの?」
 ブルーは涙目でコクンとうなずく。

「ありがとう~!」
 お女中は立ち上がり、ブルーに抱きついた。

ブルーは報われた。

「俊也さん、どうしますか? この二人、どう見ても盗賊でしょ?」
 後の馬車に乗っていたローランが聞く。

「お前たち、盗賊?」
 苦痛でうめいている盗賊たちに、俊也は声をかける。
答えられない。

「答えないと治してやらないよ。この女の子、治癒魔法の大名人」

「ちょっと脅しただけだよ!」
「ジョークで金出せって言っただけだよ!」
 盗賊二人は、言い訳にならない言い訳をする。

「ローラン、そのまま骨、くっつけちゃえ」
 カチンときた俊也は、冷たく言い残し、被害者に歩み寄った。

あのまま骨がくっついたらどうなるのだろう? そんな考えが頭をよぎったが、心優しいローランがそんなことするわけない。

「このままくっついたら、邪魔になるだけだと思うけど。
いっそ肘から切っちゃう?」
 
俊也は慌てて引き返した。 
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