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93 ブルーはフラグを背負って生きている
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|※猫又の原稿では第三部に突入します。ここまでは作品の手直しをしていたのですが、以降原稿のままです。よって投稿間隔は少しあくかもしれません。
◇ ◇ ◇
俊也一行は、シルバーストーンから、カントを目指す。
遠征の目的は十分果たせた。お荷物は六人も背負ってしまったが。
お荷物たちに二台の中古馬車と、カントまで大丈夫だろうか、という感じの馬を買い与えた。
潰れたら潰れたときのこと。あれしかいなかったのだから仕方ない。
シルーバーストーン、名前は立派だが、カントの方が、まだ治安は行き届いている。
なんでも、カントでは御老公一行が、ずっと居座っているらしい。湖の山から時々下りてくる「青さん」と呼ばれる怪物が、街のチョイワルどもをシメ、リーダーとなってしまった。
チョイワルどもは、その「青さん」、自称土方歳三副長の命で、仕方なく自警団を組織している。『SA新撰組』だそうだ。
俊也はブルーから、例のそろいの羽織と鉢巻をねだられていたが、もちろんそんな無駄遣いはしない。
気の毒なのは壬生狼(みぶろう・新撰組のこと)のメンバーたち。副長の興味は仮面ラ×ダーに移ってしまった。
土方さんの、かぶれやすく飽きやすい性格は、何とかならないものだろうか。
言い忘れていたが、治安の悪いシルバーストーンでも、俊也たちの馬車に誰も近寄らなかった。ダークウルフの群れ惨殺の噂は、相当の速さで街中に広まっていたらしい。
「トシ、あの新撰組どうするつもり?」
俊也は同じ馬車に乗るブルーに振ってみた。
「なんだったけ? そうだ、近藤局長、やっと自覚を持っていただけましたか。
我々は勤王志士を名乗る輩(やから)を、京の街から排除しなければなりません」
やっぱり乗ってきましたか。
「京の街はいいが、カントの街はどうするつもりだ?
放っておいたら、せっかくの新撰組が、空中分解してしまうぞ。
俺は珍しくアリだと思ったんだが(ブルーのやることにしては)」
俊也は長旅に退屈していることもある。だが、あの自警団組織は、そこそこ堅気の衆に、認められつつあった。
チョイワル連中も、感謝されたら、やはり嬉しいらしい。その気になって、ワルを働かなくなった。
「そうですね、地球防衛軍と名を変えて……」
「エイリアンと闘わなくていいから!」
「じゃあ…………」
「もうないんかい!」
「ハハハ、局長、時代はお笑いですぞ! 目指せM1!」
「もういい。士道不心得で副長クビ! アンリに任せる」
「そんな~……まじめにやりますぅ~……」
俊也は涙目になったブルーを、横目で見る。
やっぱりかわいいじゃね~か、コンチキショウー!
俊也はこの展開、なんかくせになりそうだった。
「局長、そろそろ志士どもに動きが出ても……」
「その展開はタブーだから!」
あっ、出ちゃったよう~。あれは問答無用の追剥だ。
ブルーがあんなふうに言い出せば、かならず一波乱ある。
ひょっとしたら、ブルーが招き寄せているかもしれない。動けば殺人事件にぶち当たる名探偵のように。
「土方歳三でも本郷タケシでもいい。ユー、やっちゃいな!」
「ラジャー!」
ブルーは喜々として馬車から飛び降りた。
おいおい! 俺は馬車の操縦できないんだってば!
俊也はブルーが残した手綱を、慌てて握った。どうやって止めるの~……。
馬車を引く馬は、さすがの名馬二頭だった。御者がダメだと感じ、勝手に止まってくれた。
究極のサポカーだ……。俊也は冷や汗をぬぐった。
ブルーは、ようやく手加減を覚えかけたようだ。追剥二人は、腕がありえない方向に曲っているだけで無事だった。
ブルーにしては上出来だ。絶対ほめないけど。
「お女中、けがはなかったか?」
どうやら気分は土方歳三の方だ。ブルーは被害者の女性に歩み寄った。
ブルーは、このようなセリフを期待している。
「どなたか存じませぬが、危ういところありがとうございました。ポッ……」
「ごめんなさい! 命だけは……」
かわいそうなブルー……。すっかりブルーになっていた。もともとブルーだけど。
俊也は馬車から降りる。サイドブレーキがついているか知らない。
「びっくりしただろうけど、こいつ、いいやつだから」
お女中は、助けてもらったことにも気づかず、背を向けて丸まり、頭を抱え震えているだけだった。
それほどブルーの動きは早かった。長剣をお女中に向けた追剥ヤローの腕を、ブルーは、手刀でボキ、ボキっと折ってしまったから。
おびえるだけで、何が起こったか分かってないのだ。
俊也の言葉に、お女中は、おそるおそる振り返った。
「助けて、くれたの?」
ブルーは涙目でコクンとうなずく。
「ありがとう~!」
お女中は立ち上がり、ブルーに抱きついた。
ブルーは報われた。
「俊也さん、どうしますか? この二人、どう見ても盗賊でしょ?」
後の馬車に乗っていたローランが聞く。
「お前たち、盗賊?」
苦痛でうめいている盗賊たちに、俊也は声をかける。
答えられない。
「答えないと治してやらないよ。この女の子、治癒魔法の大名人」
「ちょっと脅しただけだよ!」
「ジョークで金出せって言っただけだよ!」
盗賊二人は、言い訳にならない言い訳をする。
「ローラン、そのまま骨、くっつけちゃえ」
カチンときた俊也は、冷たく言い残し、被害者に歩み寄った。
あのまま骨がくっついたらどうなるのだろう? そんな考えが頭をよぎったが、心優しいローランがそんなことするわけない。
「このままくっついたら、邪魔になるだけだと思うけど。
いっそ肘から切っちゃう?」
俊也は慌てて引き返した。
◇ ◇ ◇
俊也一行は、シルバーストーンから、カントを目指す。
遠征の目的は十分果たせた。お荷物は六人も背負ってしまったが。
お荷物たちに二台の中古馬車と、カントまで大丈夫だろうか、という感じの馬を買い与えた。
潰れたら潰れたときのこと。あれしかいなかったのだから仕方ない。
シルーバーストーン、名前は立派だが、カントの方が、まだ治安は行き届いている。
なんでも、カントでは御老公一行が、ずっと居座っているらしい。湖の山から時々下りてくる「青さん」と呼ばれる怪物が、街のチョイワルどもをシメ、リーダーとなってしまった。
チョイワルどもは、その「青さん」、自称土方歳三副長の命で、仕方なく自警団を組織している。『SA新撰組』だそうだ。
俊也はブルーから、例のそろいの羽織と鉢巻をねだられていたが、もちろんそんな無駄遣いはしない。
気の毒なのは壬生狼(みぶろう・新撰組のこと)のメンバーたち。副長の興味は仮面ラ×ダーに移ってしまった。
土方さんの、かぶれやすく飽きやすい性格は、何とかならないものだろうか。
言い忘れていたが、治安の悪いシルバーストーンでも、俊也たちの馬車に誰も近寄らなかった。ダークウルフの群れ惨殺の噂は、相当の速さで街中に広まっていたらしい。
「トシ、あの新撰組どうするつもり?」
俊也は同じ馬車に乗るブルーに振ってみた。
「なんだったけ? そうだ、近藤局長、やっと自覚を持っていただけましたか。
我々は勤王志士を名乗る輩(やから)を、京の街から排除しなければなりません」
やっぱり乗ってきましたか。
「京の街はいいが、カントの街はどうするつもりだ?
放っておいたら、せっかくの新撰組が、空中分解してしまうぞ。
俺は珍しくアリだと思ったんだが(ブルーのやることにしては)」
俊也は長旅に退屈していることもある。だが、あの自警団組織は、そこそこ堅気の衆に、認められつつあった。
チョイワル連中も、感謝されたら、やはり嬉しいらしい。その気になって、ワルを働かなくなった。
「そうですね、地球防衛軍と名を変えて……」
「エイリアンと闘わなくていいから!」
「じゃあ…………」
「もうないんかい!」
「ハハハ、局長、時代はお笑いですぞ! 目指せM1!」
「もういい。士道不心得で副長クビ! アンリに任せる」
「そんな~……まじめにやりますぅ~……」
俊也は涙目になったブルーを、横目で見る。
やっぱりかわいいじゃね~か、コンチキショウー!
俊也はこの展開、なんかくせになりそうだった。
「局長、そろそろ志士どもに動きが出ても……」
「その展開はタブーだから!」
あっ、出ちゃったよう~。あれは問答無用の追剥だ。
ブルーがあんなふうに言い出せば、かならず一波乱ある。
ひょっとしたら、ブルーが招き寄せているかもしれない。動けば殺人事件にぶち当たる名探偵のように。
「土方歳三でも本郷タケシでもいい。ユー、やっちゃいな!」
「ラジャー!」
ブルーは喜々として馬車から飛び降りた。
おいおい! 俺は馬車の操縦できないんだってば!
俊也はブルーが残した手綱を、慌てて握った。どうやって止めるの~……。
馬車を引く馬は、さすがの名馬二頭だった。御者がダメだと感じ、勝手に止まってくれた。
究極のサポカーだ……。俊也は冷や汗をぬぐった。
ブルーは、ようやく手加減を覚えかけたようだ。追剥二人は、腕がありえない方向に曲っているだけで無事だった。
ブルーにしては上出来だ。絶対ほめないけど。
「お女中、けがはなかったか?」
どうやら気分は土方歳三の方だ。ブルーは被害者の女性に歩み寄った。
ブルーは、このようなセリフを期待している。
「どなたか存じませぬが、危ういところありがとうございました。ポッ……」
「ごめんなさい! 命だけは……」
かわいそうなブルー……。すっかりブルーになっていた。もともとブルーだけど。
俊也は馬車から降りる。サイドブレーキがついているか知らない。
「びっくりしただろうけど、こいつ、いいやつだから」
お女中は、助けてもらったことにも気づかず、背を向けて丸まり、頭を抱え震えているだけだった。
それほどブルーの動きは早かった。長剣をお女中に向けた追剥ヤローの腕を、ブルーは、手刀でボキ、ボキっと折ってしまったから。
おびえるだけで、何が起こったか分かってないのだ。
俊也の言葉に、お女中は、おそるおそる振り返った。
「助けて、くれたの?」
ブルーは涙目でコクンとうなずく。
「ありがとう~!」
お女中は立ち上がり、ブルーに抱きついた。
ブルーは報われた。
「俊也さん、どうしますか? この二人、どう見ても盗賊でしょ?」
後の馬車に乗っていたローランが聞く。
「お前たち、盗賊?」
苦痛でうめいている盗賊たちに、俊也は声をかける。
答えられない。
「答えないと治してやらないよ。この女の子、治癒魔法の大名人」
「ちょっと脅しただけだよ!」
「ジョークで金出せって言っただけだよ!」
盗賊二人は、言い訳にならない言い訳をする。
「ローラン、そのまま骨、くっつけちゃえ」
カチンときた俊也は、冷たく言い残し、被害者に歩み寄った。
あのまま骨がくっついたらどうなるのだろう? そんな考えが頭をよぎったが、心優しいローランがそんなことするわけない。
「このままくっついたら、邪魔になるだけだと思うけど。
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俊也は慌てて引き返した。
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