105 / 230
105 スーパードクター俊也 1
しおりを挟む
俊也とローラン、ユーノは、野本秘書から指定された病院に到着。その病院の一室に案内された。
病室内には、ベッドに横たわる一人の少女に、熟年の美しい女性が付き添っていた。
「見てましたよ。ずいぶん派手に暴れてましたね。
あれってあなたですよね?
まあ、なにかまだ秘密があるようですから、これ以上は申しません。
野本の家内、弥生です」
なかなか鋭い女性だ。ひょっとしたら、魔力を持っているのかもしれない。そして顔も体も相当以上の美熟女。
というわけで、俊也は人妻をつい見ちゃいました。
いいんじゃないでしょうか、お体の方も。多少崩れた印象も、若さにはない妖艶さと見て取れる。
ふと、気になることがあったが、今急ぐ問題でもない。
秘書の妻であるその女性の向こうには、中学生ぐらいだろうか、病床の少女が、ぼんやり天井に視線を向けていた。
この病室の前まで、俊也たちを案内した野本が、医師を連れてその病室に入ってきた。
「えっと、フミちゃん、俊也です」
俊也に少女は視線を向けた。
「あんた、マジで治癒魔法なんて使えるの?」
少女の口調は投げやりだった。
俊也は、なぜだかその少女の心理がはっきり見えた。
仕方ないだろうと思う。野本秘書の話によれば、先天的な心臓疾患があり、心臓移植の順番待ちだという。
「ま~ね~。そうか、希望を持ったら、その希望がくじけるの、怖いよね?
それで希望を持たないように、しているわけだ?」
少女は俊也をにらみつけ、窓の方へ向いた。
「ホントに……治してくれるの?」
少女は視線を外したまま、つぶやくようにそう言った。
俊也には、その少女を見て、治せそうだという直感はあった。
だが、大きな問題があることは、今のやりとりでより明確になった。
つまり、絶望を恐れ、治るという希望を、自ら封印している。
治癒魔法の原理は、自然治癒力に尽きると、これまでの経験から、俊也は確信している。
治癒魔法は、その治癒能力を、極限まで高める働きをする。
だから、生体エネルギーが尽きたときには、もう誰にも治療することはできない。普通は。
ローランは、あちらの国で、最高峰の治癒魔導師である。
だが、彼女は、死者を蘇らせることはできない。
なぜなら、彼女はそう学び、彼女の経験も、それが正しいことを示しているから。
俊也は治癒魔法に限らず、完全にど素人だ。だから、断言はできないものの、治せそうな気がする、という直感を否定しきれない。
事実、琴音のケロイドを治した。あの治療は正確に言えば治療ではない。
もっとオカルト的な次元に属するものだ。
幽霊を信じない者には、幽霊を見せなければ幽霊は見えない。
幽霊を信じる者には、幽霊がいなくても幽霊は見える。
はなはだ非科学的であるが、たとえば、「プラシボー効果(薬を飲めば治ると信じる患者に、薬だと言って飲ませれば、多少の効果が出る場合がある。薬を過剰に求める患者に実際処方される場合がある)」は、科学者も認めている。
つまり、人間の「治るはずだ」「治りたい」という意識は、非常に大きい。
また、逆も真である。「治るはずがない」「もうどうでもいい」という患者は、治る可能性が極端に下がるだろう。
「わからない。まず見せてもらえる? こんな変な男に、見られたくないだろうけど」
俊也は、まず信用させることが必要だと感じていた。特に俊也の「施術」は特殊で、この少女には、大きな抵抗があるはずだ。
少女はコクンとうなずいた。俊也は大きな可能性を感じた。
彼女は、母親とテレビで見た「魔法使い」としての自分に、可能性を信じたいという気になっている。
「野本さん、それに奥さん、治癒魔法に関しては、ローランの方が俺よりずっと上です。
ですが、俺の方が治療に向いている症状もあります。
本当に任せるんですね? 俺たちに」
俊也は、野本夫婦に語りかける。特に父親に。
「このド変態が! 娘に何をする!」と、ぶち殺されそうだ。
「僕は席を外した方が…」
その主治医山口は、野本の高校時代からの友人だった。心臓外科の優秀な医師だ。
彼は上司から、『オペは無理。医師は勝ち目のない賭けを、絶対してはいけない』と、強く言われている。
彼自身、『勝ち目のない賭け』に勝つ自信は全くなかった。
「いや、いて下さい。治療するにしても、あなたを困らせるやり方はしません。
フミちゃん、上だけでいいから脱いでもらえる?」
俊也は少女にそう言った。悪いが、この医師を利用することにした。自分が「神秘の力」を持つ存在だと、少女に印象づけるために。
少女はためらいながらも病衣をはだけた。俊也は少女の左胸をぼんやり見た。
徐々に目が細められ、すぐ大きく見開かれた。
「ドクター、間違っていたら指摘してください。フミちゃん、指で少し触るけどごめんね」
俊也はそう前置きし、少女の左胸の一部を押さえた。
「ドクター、ここに疾患がありますね? 弁の開き方が変です。弁膜症?」
ドクターは、びっくりして野本を見る。
「俺は何も話してないよ。娘の心臓を看てもらえないかと頼んだだけだ」
野本は驚かなかった。それぐらい見えなければ、娘を任せられない。
「え~っと、この下が、他の心筋より薄くなってますね?
うん、なるほどね~……。肺動脈と……、あ~、右心房と左心房の間も……。ですね?」
医師はあきれた。この人にかかったら、CTやMRI、心エコーはいらない。
「その通りです」
医師は、そう答えるしかなかった。
「多分治せると思います。ただ俺の治療法は特別なんです。
ドクターは、このままいて下さい。ただし、野本さん、俺は自分が父親なら見ていられない方法を、娘さんに行います。
外で待っていただくことを、強くお勧めします」
俊也は、首相秘書の目を見つめて言った。
「すべてお任せします。ただし、その方法は私に教えないでください」
野本はなんとなく感じていた。性的な呪術に似た方法を選ぶのだろう。
絶対見たくない。
だが、絶対娘を救ってほしい。
彼は病室を出ていった。
病室内には、ベッドに横たわる一人の少女に、熟年の美しい女性が付き添っていた。
「見てましたよ。ずいぶん派手に暴れてましたね。
あれってあなたですよね?
まあ、なにかまだ秘密があるようですから、これ以上は申しません。
野本の家内、弥生です」
なかなか鋭い女性だ。ひょっとしたら、魔力を持っているのかもしれない。そして顔も体も相当以上の美熟女。
というわけで、俊也は人妻をつい見ちゃいました。
いいんじゃないでしょうか、お体の方も。多少崩れた印象も、若さにはない妖艶さと見て取れる。
ふと、気になることがあったが、今急ぐ問題でもない。
秘書の妻であるその女性の向こうには、中学生ぐらいだろうか、病床の少女が、ぼんやり天井に視線を向けていた。
この病室の前まで、俊也たちを案内した野本が、医師を連れてその病室に入ってきた。
「えっと、フミちゃん、俊也です」
俊也に少女は視線を向けた。
「あんた、マジで治癒魔法なんて使えるの?」
少女の口調は投げやりだった。
俊也は、なぜだかその少女の心理がはっきり見えた。
仕方ないだろうと思う。野本秘書の話によれば、先天的な心臓疾患があり、心臓移植の順番待ちだという。
「ま~ね~。そうか、希望を持ったら、その希望がくじけるの、怖いよね?
それで希望を持たないように、しているわけだ?」
少女は俊也をにらみつけ、窓の方へ向いた。
「ホントに……治してくれるの?」
少女は視線を外したまま、つぶやくようにそう言った。
俊也には、その少女を見て、治せそうだという直感はあった。
だが、大きな問題があることは、今のやりとりでより明確になった。
つまり、絶望を恐れ、治るという希望を、自ら封印している。
治癒魔法の原理は、自然治癒力に尽きると、これまでの経験から、俊也は確信している。
治癒魔法は、その治癒能力を、極限まで高める働きをする。
だから、生体エネルギーが尽きたときには、もう誰にも治療することはできない。普通は。
ローランは、あちらの国で、最高峰の治癒魔導師である。
だが、彼女は、死者を蘇らせることはできない。
なぜなら、彼女はそう学び、彼女の経験も、それが正しいことを示しているから。
俊也は治癒魔法に限らず、完全にど素人だ。だから、断言はできないものの、治せそうな気がする、という直感を否定しきれない。
事実、琴音のケロイドを治した。あの治療は正確に言えば治療ではない。
もっとオカルト的な次元に属するものだ。
幽霊を信じない者には、幽霊を見せなければ幽霊は見えない。
幽霊を信じる者には、幽霊がいなくても幽霊は見える。
はなはだ非科学的であるが、たとえば、「プラシボー効果(薬を飲めば治ると信じる患者に、薬だと言って飲ませれば、多少の効果が出る場合がある。薬を過剰に求める患者に実際処方される場合がある)」は、科学者も認めている。
つまり、人間の「治るはずだ」「治りたい」という意識は、非常に大きい。
また、逆も真である。「治るはずがない」「もうどうでもいい」という患者は、治る可能性が極端に下がるだろう。
「わからない。まず見せてもらえる? こんな変な男に、見られたくないだろうけど」
俊也は、まず信用させることが必要だと感じていた。特に俊也の「施術」は特殊で、この少女には、大きな抵抗があるはずだ。
少女はコクンとうなずいた。俊也は大きな可能性を感じた。
彼女は、母親とテレビで見た「魔法使い」としての自分に、可能性を信じたいという気になっている。
「野本さん、それに奥さん、治癒魔法に関しては、ローランの方が俺よりずっと上です。
ですが、俺の方が治療に向いている症状もあります。
本当に任せるんですね? 俺たちに」
俊也は、野本夫婦に語りかける。特に父親に。
「このド変態が! 娘に何をする!」と、ぶち殺されそうだ。
「僕は席を外した方が…」
その主治医山口は、野本の高校時代からの友人だった。心臓外科の優秀な医師だ。
彼は上司から、『オペは無理。医師は勝ち目のない賭けを、絶対してはいけない』と、強く言われている。
彼自身、『勝ち目のない賭け』に勝つ自信は全くなかった。
「いや、いて下さい。治療するにしても、あなたを困らせるやり方はしません。
フミちゃん、上だけでいいから脱いでもらえる?」
俊也は少女にそう言った。悪いが、この医師を利用することにした。自分が「神秘の力」を持つ存在だと、少女に印象づけるために。
少女はためらいながらも病衣をはだけた。俊也は少女の左胸をぼんやり見た。
徐々に目が細められ、すぐ大きく見開かれた。
「ドクター、間違っていたら指摘してください。フミちゃん、指で少し触るけどごめんね」
俊也はそう前置きし、少女の左胸の一部を押さえた。
「ドクター、ここに疾患がありますね? 弁の開き方が変です。弁膜症?」
ドクターは、びっくりして野本を見る。
「俺は何も話してないよ。娘の心臓を看てもらえないかと頼んだだけだ」
野本は驚かなかった。それぐらい見えなければ、娘を任せられない。
「え~っと、この下が、他の心筋より薄くなってますね?
うん、なるほどね~……。肺動脈と……、あ~、右心房と左心房の間も……。ですね?」
医師はあきれた。この人にかかったら、CTやMRI、心エコーはいらない。
「その通りです」
医師は、そう答えるしかなかった。
「多分治せると思います。ただ俺の治療法は特別なんです。
ドクターは、このままいて下さい。ただし、野本さん、俺は自分が父親なら見ていられない方法を、娘さんに行います。
外で待っていただくことを、強くお勧めします」
俊也は、首相秘書の目を見つめて言った。
「すべてお任せします。ただし、その方法は私に教えないでください」
野本はなんとなく感じていた。性的な呪術に似た方法を選ぶのだろう。
絶対見たくない。
だが、絶対娘を救ってほしい。
彼は病室を出ていった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
異世界亜人熟女ハーレム製作者
†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です
【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる