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105 スーパードクター俊也 1
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俊也とローラン、ユーノは、野本秘書から指定された病院に到着。その病院の一室に案内された。
病室内には、ベッドに横たわる一人の少女に、熟年の美しい女性が付き添っていた。
「見てましたよ。ずいぶん派手に暴れてましたね。
あれってあなたですよね?
まあ、なにかまだ秘密があるようですから、これ以上は申しません。
野本の家内、弥生です」
なかなか鋭い女性だ。ひょっとしたら、魔力を持っているのかもしれない。そして顔も体も相当以上の美熟女。
というわけで、俊也は人妻をつい見ちゃいました。
いいんじゃないでしょうか、お体の方も。多少崩れた印象も、若さにはない妖艶さと見て取れる。
ふと、気になることがあったが、今急ぐ問題でもない。
秘書の妻であるその女性の向こうには、中学生ぐらいだろうか、病床の少女が、ぼんやり天井に視線を向けていた。
この病室の前まで、俊也たちを案内した野本が、医師を連れてその病室に入ってきた。
「えっと、フミちゃん、俊也です」
俊也に少女は視線を向けた。
「あんた、マジで治癒魔法なんて使えるの?」
少女の口調は投げやりだった。
俊也は、なぜだかその少女の心理がはっきり見えた。
仕方ないだろうと思う。野本秘書の話によれば、先天的な心臓疾患があり、心臓移植の順番待ちだという。
「ま~ね~。そうか、希望を持ったら、その希望がくじけるの、怖いよね?
それで希望を持たないように、しているわけだ?」
少女は俊也をにらみつけ、窓の方へ向いた。
「ホントに……治してくれるの?」
少女は視線を外したまま、つぶやくようにそう言った。
俊也には、その少女を見て、治せそうだという直感はあった。
だが、大きな問題があることは、今のやりとりでより明確になった。
つまり、絶望を恐れ、治るという希望を、自ら封印している。
治癒魔法の原理は、自然治癒力に尽きると、これまでの経験から、俊也は確信している。
治癒魔法は、その治癒能力を、極限まで高める働きをする。
だから、生体エネルギーが尽きたときには、もう誰にも治療することはできない。普通は。
ローランは、あちらの国で、最高峰の治癒魔導師である。
だが、彼女は、死者を蘇らせることはできない。
なぜなら、彼女はそう学び、彼女の経験も、それが正しいことを示しているから。
俊也は治癒魔法に限らず、完全にど素人だ。だから、断言はできないものの、治せそうな気がする、という直感を否定しきれない。
事実、琴音のケロイドを治した。あの治療は正確に言えば治療ではない。
もっとオカルト的な次元に属するものだ。
幽霊を信じない者には、幽霊を見せなければ幽霊は見えない。
幽霊を信じる者には、幽霊がいなくても幽霊は見える。
はなはだ非科学的であるが、たとえば、「プラシボー効果(薬を飲めば治ると信じる患者に、薬だと言って飲ませれば、多少の効果が出る場合がある。薬を過剰に求める患者に実際処方される場合がある)」は、科学者も認めている。
つまり、人間の「治るはずだ」「治りたい」という意識は、非常に大きい。
また、逆も真である。「治るはずがない」「もうどうでもいい」という患者は、治る可能性が極端に下がるだろう。
「わからない。まず見せてもらえる? こんな変な男に、見られたくないだろうけど」
俊也は、まず信用させることが必要だと感じていた。特に俊也の「施術」は特殊で、この少女には、大きな抵抗があるはずだ。
少女はコクンとうなずいた。俊也は大きな可能性を感じた。
彼女は、母親とテレビで見た「魔法使い」としての自分に、可能性を信じたいという気になっている。
「野本さん、それに奥さん、治癒魔法に関しては、ローランの方が俺よりずっと上です。
ですが、俺の方が治療に向いている症状もあります。
本当に任せるんですね? 俺たちに」
俊也は、野本夫婦に語りかける。特に父親に。
「このド変態が! 娘に何をする!」と、ぶち殺されそうだ。
「僕は席を外した方が…」
その主治医山口は、野本の高校時代からの友人だった。心臓外科の優秀な医師だ。
彼は上司から、『オペは無理。医師は勝ち目のない賭けを、絶対してはいけない』と、強く言われている。
彼自身、『勝ち目のない賭け』に勝つ自信は全くなかった。
「いや、いて下さい。治療するにしても、あなたを困らせるやり方はしません。
フミちゃん、上だけでいいから脱いでもらえる?」
俊也は少女にそう言った。悪いが、この医師を利用することにした。自分が「神秘の力」を持つ存在だと、少女に印象づけるために。
少女はためらいながらも病衣をはだけた。俊也は少女の左胸をぼんやり見た。
徐々に目が細められ、すぐ大きく見開かれた。
「ドクター、間違っていたら指摘してください。フミちゃん、指で少し触るけどごめんね」
俊也はそう前置きし、少女の左胸の一部を押さえた。
「ドクター、ここに疾患がありますね? 弁の開き方が変です。弁膜症?」
ドクターは、びっくりして野本を見る。
「俺は何も話してないよ。娘の心臓を看てもらえないかと頼んだだけだ」
野本は驚かなかった。それぐらい見えなければ、娘を任せられない。
「え~っと、この下が、他の心筋より薄くなってますね?
うん、なるほどね~……。肺動脈と……、あ~、右心房と左心房の間も……。ですね?」
医師はあきれた。この人にかかったら、CTやMRI、心エコーはいらない。
「その通りです」
医師は、そう答えるしかなかった。
「多分治せると思います。ただ俺の治療法は特別なんです。
ドクターは、このままいて下さい。ただし、野本さん、俺は自分が父親なら見ていられない方法を、娘さんに行います。
外で待っていただくことを、強くお勧めします」
俊也は、首相秘書の目を見つめて言った。
「すべてお任せします。ただし、その方法は私に教えないでください」
野本はなんとなく感じていた。性的な呪術に似た方法を選ぶのだろう。
絶対見たくない。
だが、絶対娘を救ってほしい。
彼は病室を出ていった。
病室内には、ベッドに横たわる一人の少女に、熟年の美しい女性が付き添っていた。
「見てましたよ。ずいぶん派手に暴れてましたね。
あれってあなたですよね?
まあ、なにかまだ秘密があるようですから、これ以上は申しません。
野本の家内、弥生です」
なかなか鋭い女性だ。ひょっとしたら、魔力を持っているのかもしれない。そして顔も体も相当以上の美熟女。
というわけで、俊也は人妻をつい見ちゃいました。
いいんじゃないでしょうか、お体の方も。多少崩れた印象も、若さにはない妖艶さと見て取れる。
ふと、気になることがあったが、今急ぐ問題でもない。
秘書の妻であるその女性の向こうには、中学生ぐらいだろうか、病床の少女が、ぼんやり天井に視線を向けていた。
この病室の前まで、俊也たちを案内した野本が、医師を連れてその病室に入ってきた。
「えっと、フミちゃん、俊也です」
俊也に少女は視線を向けた。
「あんた、マジで治癒魔法なんて使えるの?」
少女の口調は投げやりだった。
俊也は、なぜだかその少女の心理がはっきり見えた。
仕方ないだろうと思う。野本秘書の話によれば、先天的な心臓疾患があり、心臓移植の順番待ちだという。
「ま~ね~。そうか、希望を持ったら、その希望がくじけるの、怖いよね?
それで希望を持たないように、しているわけだ?」
少女は俊也をにらみつけ、窓の方へ向いた。
「ホントに……治してくれるの?」
少女は視線を外したまま、つぶやくようにそう言った。
俊也には、その少女を見て、治せそうだという直感はあった。
だが、大きな問題があることは、今のやりとりでより明確になった。
つまり、絶望を恐れ、治るという希望を、自ら封印している。
治癒魔法の原理は、自然治癒力に尽きると、これまでの経験から、俊也は確信している。
治癒魔法は、その治癒能力を、極限まで高める働きをする。
だから、生体エネルギーが尽きたときには、もう誰にも治療することはできない。普通は。
ローランは、あちらの国で、最高峰の治癒魔導師である。
だが、彼女は、死者を蘇らせることはできない。
なぜなら、彼女はそう学び、彼女の経験も、それが正しいことを示しているから。
俊也は治癒魔法に限らず、完全にど素人だ。だから、断言はできないものの、治せそうな気がする、という直感を否定しきれない。
事実、琴音のケロイドを治した。あの治療は正確に言えば治療ではない。
もっとオカルト的な次元に属するものだ。
幽霊を信じない者には、幽霊を見せなければ幽霊は見えない。
幽霊を信じる者には、幽霊がいなくても幽霊は見える。
はなはだ非科学的であるが、たとえば、「プラシボー効果(薬を飲めば治ると信じる患者に、薬だと言って飲ませれば、多少の効果が出る場合がある。薬を過剰に求める患者に実際処方される場合がある)」は、科学者も認めている。
つまり、人間の「治るはずだ」「治りたい」という意識は、非常に大きい。
また、逆も真である。「治るはずがない」「もうどうでもいい」という患者は、治る可能性が極端に下がるだろう。
「わからない。まず見せてもらえる? こんな変な男に、見られたくないだろうけど」
俊也は、まず信用させることが必要だと感じていた。特に俊也の「施術」は特殊で、この少女には、大きな抵抗があるはずだ。
少女はコクンとうなずいた。俊也は大きな可能性を感じた。
彼女は、母親とテレビで見た「魔法使い」としての自分に、可能性を信じたいという気になっている。
「野本さん、それに奥さん、治癒魔法に関しては、ローランの方が俺よりずっと上です。
ですが、俺の方が治療に向いている症状もあります。
本当に任せるんですね? 俺たちに」
俊也は、野本夫婦に語りかける。特に父親に。
「このド変態が! 娘に何をする!」と、ぶち殺されそうだ。
「僕は席を外した方が…」
その主治医山口は、野本の高校時代からの友人だった。心臓外科の優秀な医師だ。
彼は上司から、『オペは無理。医師は勝ち目のない賭けを、絶対してはいけない』と、強く言われている。
彼自身、『勝ち目のない賭け』に勝つ自信は全くなかった。
「いや、いて下さい。治療するにしても、あなたを困らせるやり方はしません。
フミちゃん、上だけでいいから脱いでもらえる?」
俊也は少女にそう言った。悪いが、この医師を利用することにした。自分が「神秘の力」を持つ存在だと、少女に印象づけるために。
少女はためらいながらも病衣をはだけた。俊也は少女の左胸をぼんやり見た。
徐々に目が細められ、すぐ大きく見開かれた。
「ドクター、間違っていたら指摘してください。フミちゃん、指で少し触るけどごめんね」
俊也はそう前置きし、少女の左胸の一部を押さえた。
「ドクター、ここに疾患がありますね? 弁の開き方が変です。弁膜症?」
ドクターは、びっくりして野本を見る。
「俺は何も話してないよ。娘の心臓を看てもらえないかと頼んだだけだ」
野本は驚かなかった。それぐらい見えなければ、娘を任せられない。
「え~っと、この下が、他の心筋より薄くなってますね?
うん、なるほどね~……。肺動脈と……、あ~、右心房と左心房の間も……。ですね?」
医師はあきれた。この人にかかったら、CTやMRI、心エコーはいらない。
「その通りです」
医師は、そう答えるしかなかった。
「多分治せると思います。ただ俺の治療法は特別なんです。
ドクターは、このままいて下さい。ただし、野本さん、俺は自分が父親なら見ていられない方法を、娘さんに行います。
外で待っていただくことを、強くお勧めします」
俊也は、首相秘書の目を見つめて言った。
「すべてお任せします。ただし、その方法は私に教えないでください」
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絶対見たくない。
だが、絶対娘を救ってほしい。
彼は病室を出ていった。
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