【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

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119 カモンベイビー アメリカ

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俊也は物騒なブツを求めてアメリカへ。アメリカへは、超がんばってビジネスクラスを選択。
 一国の王たるもの、エコノミーなんて使えません!
 ファーストクラスは彼の性格上、絶対選ばない。国王たるものだけど。

お供はアン・アンコンビ。超気まじめ人間のアンリと、世の辛酸をなめてきたアン。
同日にスカウトした二人だが、なかなかのデコボココンビだ。

二人で部屋へ閉じ込めていたら、一日中一言も会話がない、などということもあり得る。

かといって、仲が悪いわけではない。アンリは、どんな話題を選んでいいかわからないだけだし、アンは黙っている方が好きなだけだ。

「アン、フラワーから、おもしろい魔法教わったんだって?」
 俊也は話題を振ってみた。

「ボディーガードとして、俊也さんのお役に立ちたいですから。
こっちでは攻撃魔法、滅多なことでは使えないし」 
 アンは少し笑顔を浮かべて応えた。

彼女の魅力を一言で言えば、妖しさだ。近寄りがたい雰囲気と、それでも強烈に異性を引き付ける何かがある。

特に、滅多に表情を変えない彼女が微笑んだとき。
たとえは失礼かもしれないが、クモの巣に絡まれてしまった昆虫、とでも形容すべき、抗いがたい雰囲気を持っている。

「へ~、私も習いたい。どんな魔法?」
 俊也の左隣に座ったアンリが聞く。

「精神魔法の一種。一番軽いのが静止。
詠唱だけで対象の行動を、数秒間止められる」

「詠唱だけで? 魔法陣なしでも?」
 アンリは身を乗り出す。

当然だろう。数秒間でも相手が無防備になれば、アンリの実力なら、どんな相手でも叩きのめすことができる。

「アンリには向かない気がするけど、着いたら試してみる?」
「うん! 試してみる!」
 アンリは目を輝かせて言った。

一本も取ったことがないブルーさんに、一太刀入れられるかも!

「たとえば、日本人にも通じるの?」
 俊也も興味を持った。

「言葉がわかる人には。だから、…フリーズ!」
 俊也の体がぴたっと止まった。数秒後自然解除。

「という感じ。アメリカで『動くな』は、フリーズと言うんでしょ? 
カナに教わった」

「すごい! で、一番軽いのはそれで、次には?」
 アンリは促す。

「次は『拘束』ね。解除するまで動きを止められるけど、相手としっかり目を合わせる必要があるの。
次は『緊縛』。
これは相手の体に、触れる必要があるんだけど、いい感じに苦痛を与えられ……。
俊也さん! 大丈夫? 
解除!」
 
アンは俊也に体を寄せているとき、いつものことなので忘れていた。俊也と手をしっかり握り合っていることを。

そして、ついその気になって「緊縛」と詠唱したことも。「解除」で体の硬直が解けた俊也の目に、わずかながら喜悦の色が、浮かんでいるような、いないような。


 SA新撰組一番隊隊長、沖田総司(アンリのことだよ)は、市中見廻りに出かけた。

隊員はいない。つまり、一人だけの見廻りとなる。しかも、ここは彼女が生まれ育ったカントの街ではない。
アメリカのワシントンという都市らしい。

なぜ彼女が、見知らぬ土地で見廻りに出たのか。それにはいくつかの理由がある。

一つには、彼女が体得したばかりの「フリーズ」魔法を試したいということ。

宿(ホテルのことだよ)での実験は成功だった。

彼女が気合いを入れて「フリーズ!」と叫んだら、近藤局長も彼の嫁アンも、一分間ほど動けなかった。

ところが、「拘束」や「緊縛」は、全然かからなかった。

どうも沖田が発動した「フリーズ」と、アンがかける魔法は、別種の魔法のようだ。

前者は土方副長直伝の「気合」つまり、剣技や体術の実戦で相対するときの、心の持ち方に似ている。

たとえば、土方副長が「やんのか、オラー!」とすごめば、たいていの敵は、すくみあがって動けなくなる。

善良なアンリには、まだまだとうてい及ばない境地だ。

そして、もう一つの理由は、あの二人が変な遊びを始めてしまったからだ。「緊縛」の魔法を使って。

気まじめなアンリは、あの手の趣味に染まることが怖かった。


「出ないな。やっぱりブルーさんの領域には到底及ばない。
ブルーさんと歩いていたら、犯罪の方が寄ってくるけど」
 アンリが探しているのは、犯罪現場だ。

というのも、堅気の衆に「フリーズ」の魔法?をかけるわけにいかない。

犯罪の現場に出くわしたら、遠慮なく犯人にかけられる。アメリカは犯罪が多いと聞くけど。

もう帰ろう……。アンリは来た道を引き返し、宿へ向かった。
 
アンリは宿へ入る前、ふと立ち止まった。やたら体格のいい男に歩み寄る。

アンリは用意のカードを、その男に示した。

『お勤めご苦労様です。本日はもう出かける予定はありません。
お帰りいただいても差し支えないと思います(※英語)』
 
男はギクリとする。アンリは微笑んで、次のカードを示す。

『お願いしたいことがあります。
明日午前十時、このホテルのロビーにて、しかるべき役職の方との面会を希望します。
今回の訪米の目的もお話します。
シュンヤーダ王国国王(※英語)』
 
アンリは、そのカードを男に押し付け、ホテルに入った。

アンリが外出したもう一つの目的は、尾行者にそのメッセージを託すことだった。
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