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129 SA新撰組燃ゆ 1

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 SA新撰組、土方ブルー歳三副長率いる隊士は、冬季オリンピックの、ノルディック長距離種目の要領で、隣町エルウィンを目指す。

背中には、みんな自動小銃を背負っている。服装やスキー板は、日本製でそろえている。

カントの街を巡回する必要性から、ブルーは俊也に無理を言った。
普段の訓練の成果か、隊士の滑り方も様になっている。

「ブルーさん、ちょっと休憩をとりましょうか? 
みんなオーバーペースになってると思います」
 沖田アンリ総司が、ブルーに助言する。

訓練なら「甘い!」と叱りつけるところだが、ブルーは助言に従うことにした。
戦闘前に、隊士を疲れさせるのは得策ではない。それに、隊士がヒロイズムに酔い、張り切り過ぎているのも事実だ。

「三十分休憩!」
ブルーは隊士にそう告げる。隊士はゴーグルを外し、水分補給する。

誰も板を外し、雪に座る者はいない。仲間と雑談しながら、細かく体を動かしている。
体を冷やさないための用心だ。

「ブルーさん、みんな成長しましたね? 
最初に紹介されたときは、大丈夫かよ、と思ったんですが」
 アンリが六人の部下を見渡しながら言う。

以前はみんな、荒んでおびえた目をしていた。

「まだまだ」
ブルーは苦笑を浮かべてそう言う。ノリだけで結成した新撰組。
よくこのチンピラたちが、ついてきたものだと、内心は思っているが。

今ではカントに駐留する兵士より、信頼されている。


「え~っと、お前、彼女ができたんだって?」
 
ブルーは隊士Aに話しかける。

「はい! 恥ずかしながらできました!」
 
隊士Aは、表情を崩して応える。

「ちゃんと満足させてる?」
 ブルーは真顔で聞く。

「自分にはよくわかりません! 
しかしながら、鋭意奮励努力いたしております!」
 隊士は緊張の面持ちで応えた。猥談のたぐいでも、油断できない。

「結構。みんな、よく聞け。 
エルウィンの娘たちが、今頃どうなっているか想像がつくだろ? 
女に餓えた盗賊たちは、己の欲望を女に吐き出している。
若妻であろうが、生娘であろうが、幼女であろうが、おそらくお構いなしだ。
自分の妻や恋人、娘や姉妹が、目の前で犯されている。
その気持ちになってみろ。
守りたくても守れないその無念さ、想像してみるがいい。
なぜ守れないのか。
力がないからだ。
お前たちは日頃の鍛錬と、局長の尽力で、強い力を持っている。
お前たちはどうする?」

「弱い者を守る!」
「弱い者の無念を晴らす!」
 ブルーの檄に、隊士たちは力強く応えた。

「そうだ! 
それが力を持つ者の責任だ。
後一時間も滑れば、エルウィンの街が見えるだろう。
全員『誠』の力を示せ!」
 
ブルーは、胸のエンブレムに右手を当てて言う。
「おー!」
と隊士たちも、エンブレムに右手を当てて応える。

そのエンブレムは、新撰組の旗を模したものだった。


 SA新撰組は、街はずれの小屋に前線基地を設営。

どこでもまほうじんで、館のメンバーは転移してきた。

妊婦四人以外、全員がそろう。

「作戦をもう一度確認します。
まずブルーさんとアンリさんが斥候。
捕虜を一名確保。
敵の位置と正確な人数を尋問します。
その後、幽霊部隊を使って、敵をおびき出します。
新撰組の火力と、攻撃魔法で敵戦力をそぐ。
打ち漏らした敵を、新撰組が各箇撃破。
屋内では火器の使用禁止。
スタン剣を使用すること。
何か質問ありますか?」
 
作戦参謀、ユーノが全員を見渡す。

「質問はないようだな。
これより作戦開始まで会話禁止。
アンリ、行こうか?」
 
ブルーはアンリを促す。アンリはうなずく。

二人は小屋から出て行った。
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