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138 隊士の健闘を祈る
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俊也は久しぶりにカントの街へ降りた。ルラに転移魔法で送ってもらって。
「お久しぶりです」
俊也は魔法陣がある隠し部屋から出て、店のオーナー夫婦に挨拶。
ここラブミーテンダーは、酒場と娼館を兼ねている。従業員はすべて娼婦と男娼だ。
ただし、みんな客を選ぶ権利を持っている。したがって、二階の愛の部屋に通される客は、カントの街で一種のステイタスを持つことになる。
その点、江戸時代の高級遊郭に似ている。
「あら、俊也君、一月ぶりぐらい?」
アンリの母親であるイヴが笑顔で迎えた。
「そんなになりますかね?
ドリンクの売れ行き、どうですか?」
俊也が今日降りてきた目的は、妊婦嫁が調合した健康食品の市場調査だった。
この店では、健康ドリンクと強壮ドリンクの販売を委託している。
「店の子とお客には好評なんだけど、結構高いから。まずまずってとこ?」
イヴの歯切れは悪い。やっぱりね。
あれはぜいたく品に属する。都市部ならかなりの需要があるだろうが、カントの生活水準では、多く望めない。
だが、俊也の本命は、日本での販売だった。
薬事法や食品衛生法の縛りがないこちらで、いわばモニタリング(早い話が人体実験)するため、販売している。
叔父に依頼した実験は順調だし、俊也は大いに有望視している。
「傷薬や風邪薬は、売れていると聞くが」
アンリの父親、アダムが気の毒そうな顔で言う。
顔なじみの、何でも屋に置いてもらっている薬の販売は順調だった。
この街では、唯一の病院に、薬師も兼ねたへっぽこ治癒魔導師が、二人いるだけだ。
いくらへっぽこでも、医療従事者としては、貴重な存在だ。
俊也は彼らの生活を脅かさないよう、ずいぶん気を使っている。
アンリ以外の嫁に、治癒魔法を禁じているのは、その意味もある。
「アンリの顔は、新撰組の忘年会以来見てないけど、元気にしてる?」
イヴが母親の顔で聞く。
「元気ですよ。この店に顔を見せたら、ずいぶん時間とられちゃいますから。
隊士の訓練は、けっこうまめにやってるみたいですが」
「そうなのよね。顔見知りの人に頼まれたら、断りにくくって」
イヴは申し訳なさそうに言う。アンリの治癒魔法を頼り、この店の夫婦に泣きつく人が多いからだ。
両親に頼まれたら、アンリも断りにくい。
「俊也さん、飲んでく? ばっちりサービスするよ」
店のおねえさんたちが寄ってきた。
「バカね。俊也君は、お姫様達のお相手で手一杯」
イヴが苦笑して防波堤になってくれる。
もっとも、おねえさんたちは本気で誘っているわけではない。いわば挨拶のようなものだ。
「えっと、これ、お土産です。みなさんで召し上がってください」
俊也は、おねえさんたちの狙いも心得ている。ここへ来たとき、俊也はお土産を必ず持ってくる。
「わ~お! トーキョーバナ×だ!」
古株のおねえさんは、日本語が読めないくせに、商品名を知っていた。
「これ、日本酒です。ご家族で」
俊也は桐の箱に入った日本酒を舅、姑に渡す。
「わ~お、ダッサ×だ!」
イヴも日本語が読めないくせに、高級日本酒の名前を知っていた。日本人でも日本酒党以外「獺」という字が読める人、少ないだろうけど。
ちなみに、「獺祭」とは、カワウソが捕獲した魚を広げること。転じて詩文を作る時、参考書をいっぱい広げることをいう。
いや~、勉強になるでしょ?
俊也はドリンク愛飲者の意見を聞き終えた。
効果は抜群とのこと。
とくに男娼の二人のおにいさんは絶賛。強壮ドリンクを飲んだら、無理気味でもパオーンだという。
俊也は、そんなもの飲まなくてもパオーンなので、モニターとして、全然参考にならなかった。
健康ドリンクの方は、おねえさん方に好評。
睡眠不足や、少々飲み過ぎても、体がしゃっきりするらしい。
上々の結果を得て、俊也は新撰組頓所に寄った。
「こんにち…わ~!」
俊也はドアをあけてびっくり。隊士の上に、おねえさんが乗っていた。
「わ~! 局長!」
隊士はびっくりして跳ね起きた。気の毒におねえさんは大股を広げてひっくり返った。
「ごゆっくり。さよなら」
俊也はドアを閉めようとする。
「待って下さい!
副長には絶対内緒で!」
「そりゃ、内緒にするけどさ、場所が悪くない?」
俊也はドアを閉めて中に入る。
おねえさんは、仮眠用ベッドの毛布を体に巻いた。
「申し訳ございません!
ここ、暖かいですから」
なるほどね。光熱費の節約か。
頓所の壁は、断熱ボードを張り、窓も二重サッシを入れている。
暖炉も、薪代は俊也の懐から出ているから、惜しみなく使える。
「士道不心得ってやつ?
ブルーにばれたら、切腹ものだよ。
あ、あなた、俺、すぐ出ていきますから。
毛布を巻いたままでいいですよ」
慌てて下着を身につけようとする、おねえさんをちらっと見て、俊也は言った。
なかなか雄大な、お尻の持ち主だ。
「はい……。どうもすみません。私が誘ったんです」
おねえさんは、パンツをはいただけで、再び毛布を体に巻いた。
ちらっと見えたおっぱいも雄大だ。しゅんと落ち込んだ顔も、ごく庶民的でいらっしゃる。
まあ、人は良さそうだ。
「新人を募集してると聞いたから、どうかな、と思って。まあいいよ。帰るから。
これ、二人で飲んで」
俊也はウイスキーをテーブルに置き、頓所を去った。
隊士の健闘を祈る!
「お久しぶりです」
俊也は魔法陣がある隠し部屋から出て、店のオーナー夫婦に挨拶。
ここラブミーテンダーは、酒場と娼館を兼ねている。従業員はすべて娼婦と男娼だ。
ただし、みんな客を選ぶ権利を持っている。したがって、二階の愛の部屋に通される客は、カントの街で一種のステイタスを持つことになる。
その点、江戸時代の高級遊郭に似ている。
「あら、俊也君、一月ぶりぐらい?」
アンリの母親であるイヴが笑顔で迎えた。
「そんなになりますかね?
ドリンクの売れ行き、どうですか?」
俊也が今日降りてきた目的は、妊婦嫁が調合した健康食品の市場調査だった。
この店では、健康ドリンクと強壮ドリンクの販売を委託している。
「店の子とお客には好評なんだけど、結構高いから。まずまずってとこ?」
イヴの歯切れは悪い。やっぱりね。
あれはぜいたく品に属する。都市部ならかなりの需要があるだろうが、カントの生活水準では、多く望めない。
だが、俊也の本命は、日本での販売だった。
薬事法や食品衛生法の縛りがないこちらで、いわばモニタリング(早い話が人体実験)するため、販売している。
叔父に依頼した実験は順調だし、俊也は大いに有望視している。
「傷薬や風邪薬は、売れていると聞くが」
アンリの父親、アダムが気の毒そうな顔で言う。
顔なじみの、何でも屋に置いてもらっている薬の販売は順調だった。
この街では、唯一の病院に、薬師も兼ねたへっぽこ治癒魔導師が、二人いるだけだ。
いくらへっぽこでも、医療従事者としては、貴重な存在だ。
俊也は彼らの生活を脅かさないよう、ずいぶん気を使っている。
アンリ以外の嫁に、治癒魔法を禁じているのは、その意味もある。
「アンリの顔は、新撰組の忘年会以来見てないけど、元気にしてる?」
イヴが母親の顔で聞く。
「元気ですよ。この店に顔を見せたら、ずいぶん時間とられちゃいますから。
隊士の訓練は、けっこうまめにやってるみたいですが」
「そうなのよね。顔見知りの人に頼まれたら、断りにくくって」
イヴは申し訳なさそうに言う。アンリの治癒魔法を頼り、この店の夫婦に泣きつく人が多いからだ。
両親に頼まれたら、アンリも断りにくい。
「俊也さん、飲んでく? ばっちりサービスするよ」
店のおねえさんたちが寄ってきた。
「バカね。俊也君は、お姫様達のお相手で手一杯」
イヴが苦笑して防波堤になってくれる。
もっとも、おねえさんたちは本気で誘っているわけではない。いわば挨拶のようなものだ。
「えっと、これ、お土産です。みなさんで召し上がってください」
俊也は、おねえさんたちの狙いも心得ている。ここへ来たとき、俊也はお土産を必ず持ってくる。
「わ~お! トーキョーバナ×だ!」
古株のおねえさんは、日本語が読めないくせに、商品名を知っていた。
「これ、日本酒です。ご家族で」
俊也は桐の箱に入った日本酒を舅、姑に渡す。
「わ~お、ダッサ×だ!」
イヴも日本語が読めないくせに、高級日本酒の名前を知っていた。日本人でも日本酒党以外「獺」という字が読める人、少ないだろうけど。
ちなみに、「獺祭」とは、カワウソが捕獲した魚を広げること。転じて詩文を作る時、参考書をいっぱい広げることをいう。
いや~、勉強になるでしょ?
俊也はドリンク愛飲者の意見を聞き終えた。
効果は抜群とのこと。
とくに男娼の二人のおにいさんは絶賛。強壮ドリンクを飲んだら、無理気味でもパオーンだという。
俊也は、そんなもの飲まなくてもパオーンなので、モニターとして、全然参考にならなかった。
健康ドリンクの方は、おねえさん方に好評。
睡眠不足や、少々飲み過ぎても、体がしゃっきりするらしい。
上々の結果を得て、俊也は新撰組頓所に寄った。
「こんにち…わ~!」
俊也はドアをあけてびっくり。隊士の上に、おねえさんが乗っていた。
「わ~! 局長!」
隊士はびっくりして跳ね起きた。気の毒におねえさんは大股を広げてひっくり返った。
「ごゆっくり。さよなら」
俊也はドアを閉めようとする。
「待って下さい!
副長には絶対内緒で!」
「そりゃ、内緒にするけどさ、場所が悪くない?」
俊也はドアを閉めて中に入る。
おねえさんは、仮眠用ベッドの毛布を体に巻いた。
「申し訳ございません!
ここ、暖かいですから」
なるほどね。光熱費の節約か。
頓所の壁は、断熱ボードを張り、窓も二重サッシを入れている。
暖炉も、薪代は俊也の懐から出ているから、惜しみなく使える。
「士道不心得ってやつ?
ブルーにばれたら、切腹ものだよ。
あ、あなた、俺、すぐ出ていきますから。
毛布を巻いたままでいいですよ」
慌てて下着を身につけようとする、おねえさんをちらっと見て、俊也は言った。
なかなか雄大な、お尻の持ち主だ。
「はい……。どうもすみません。私が誘ったんです」
おねえさんは、パンツをはいただけで、再び毛布を体に巻いた。
ちらっと見えたおっぱいも雄大だ。しゅんと落ち込んだ顔も、ごく庶民的でいらっしゃる。
まあ、人は良さそうだ。
「新人を募集してると聞いたから、どうかな、と思って。まあいいよ。帰るから。
これ、二人で飲んで」
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