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141 ミスト王宮
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ミスト王国、ロン・マルガリーア王執務室。
ロン王は、精力的に執務をこなしていた。彼の見た目は五十歳ほど。実年齢は百を超えている。
ミストは先代のナトゥーラ王が、建国した国家だ。そのミストの内政を充実させ、国力を高めたのは、現ロン王の手腕に依るところが大きい。
執務室のドアがノックされた。
「入れ」
ロンは書類に目を落としたまま応える。
「失礼します」
フィード伯爵が入室。
彼は王の特命により、対外工作の責任者となっている。
何を隠そう、ライラをカントに派遣したのは彼だ。
ロン王は、伯爵に視線を向けた。
「用件は二つです。ナーム国境付近、タング村近辺に、魔法を使う、ひのえ熊が出没するという報告がありました。
相当の被害が出ている模様です」
ロン王の表情は険しくなった。
「とうとう出たか。
早急に討伐にあたれ。一番恐ろしいのは風評だ」
「はっ、対魔強行班を派遣します。
次にカントからの報告です。
密偵は俊也の内懐に、かなり深く入れたようです。
例の情報の信頼度は、相当高くなったとのことです」
フィード伯爵の報告を聞き、ロン王は思考に沈んだ。
「ということは、まだ性交には及んでいないということだな?」
「性交には慎重なようです。
ただ、直前までの行為には成功したそうです。
その結果、驚くほどの美肌効果があった、とのことですが……。
どう判断すべきか」
フィード伯爵は、困惑の表情を浮かべる。
「いいから具体的に話せ」
王は促す。
「はい……。全身ペッティングされたそうです。
俊也の唾液は、強い魔力光を放っていた、とのことです。
それほど魔力が高くない密偵でも、はっきりわかるほど」
「ふ~む……。もう間違いないだろう。
ときに、どうして俊也は、ペッティングする気になった?」
「餌をまいたそうです。ナームの邪道魔法に関して。
ミストから派遣されたことは、話してないそうですが、もう分かっているでしょう。
密偵に引き上げるよう伝えましょうか?」
「構わぬ。
せっかくそこまで接近したのだ。
ひもとしてつけておけ。
アンとアンリ、といったかな?
成長のほどは相変わらずか?」
「館の魔導師たちは、アンリ以外ほとんど魔法を見せないので、はっきりしたことは、計りかねるとのことです。
ただ、アンリの治癒魔法は、上級魔導師の域に届いているそうです」
「たしか、言っていたな? アンリの武術に勝てるミスト兵はいないだろうと」
ロン王は、虚空を見つめて言う。
「密偵の主観ですが、たしかに。
一介の民兵だったアンリが、たった一年余りで……。
恐るべき力ですね?」
「やはり貴族の娘をくどくべきか……。
魔力があり、美人で気立てが良い。
そんな娘なら余も側室にほしい。
……どうした?
笑ってもよいぞ」
ロン王は伯爵に笑いかけた。
「もしかして、ジョークだったのですか?」
伯爵は驚いて聞く。
「本音だ。俊也を落とす、よい手立てを思いついたら報告しろ」
ロン王は、気まずそうに答えた。
「はい……。
餓えているわけではありませんから。
難しいと思いますが考えます。
娘の人選の方、よろしくお願いいたします。
それと……」
「報告は、二つと言わなかったか?」
王は不審に思って聞く。この有能な伯爵は、非効率を憎む。
「以前から気になっている、密偵からの報告があるのですが、思い切って申し上げます。
一番新しいミネットという少女、金髪碧眼であること、すでに報告いたしました。
どう見ても、貴族の濃い血が流れているとも」
「たしかに聞いておる。それがどうした?」
「金髪碧眼はイスタルト三大貴族に多い特徴です。
まことに申し上げにくいですが、ミネットはミーナ王妃の面影が、なんとなく感じられる、とのことです」
王の表情は、一瞬固まった。
「お主の胸の中だけで、留めておけ」
王はこわばった声で命じた。
「もちろんです。
余計なことを申し上げました」
伯爵は胸のつかえが下りたような、心配ごとが増したような、複雑な心境で退出した。
「金髪碧眼…か。それでは、ごまかしようがないな」
王はぼそりとつぶやく。
出産のため里帰りしたミーナ王妃が「流産」したことと、それに合わせたように姿を消した、魔法戦士のことを思い出していた。
その魔法戦士は、ミーナ王妃の兄だった。
ロン王は、精力的に執務をこなしていた。彼の見た目は五十歳ほど。実年齢は百を超えている。
ミストは先代のナトゥーラ王が、建国した国家だ。そのミストの内政を充実させ、国力を高めたのは、現ロン王の手腕に依るところが大きい。
執務室のドアがノックされた。
「入れ」
ロンは書類に目を落としたまま応える。
「失礼します」
フィード伯爵が入室。
彼は王の特命により、対外工作の責任者となっている。
何を隠そう、ライラをカントに派遣したのは彼だ。
ロン王は、伯爵に視線を向けた。
「用件は二つです。ナーム国境付近、タング村近辺に、魔法を使う、ひのえ熊が出没するという報告がありました。
相当の被害が出ている模様です」
ロン王の表情は険しくなった。
「とうとう出たか。
早急に討伐にあたれ。一番恐ろしいのは風評だ」
「はっ、対魔強行班を派遣します。
次にカントからの報告です。
密偵は俊也の内懐に、かなり深く入れたようです。
例の情報の信頼度は、相当高くなったとのことです」
フィード伯爵の報告を聞き、ロン王は思考に沈んだ。
「ということは、まだ性交には及んでいないということだな?」
「性交には慎重なようです。
ただ、直前までの行為には成功したそうです。
その結果、驚くほどの美肌効果があった、とのことですが……。
どう判断すべきか」
フィード伯爵は、困惑の表情を浮かべる。
「いいから具体的に話せ」
王は促す。
「はい……。全身ペッティングされたそうです。
俊也の唾液は、強い魔力光を放っていた、とのことです。
それほど魔力が高くない密偵でも、はっきりわかるほど」
「ふ~む……。もう間違いないだろう。
ときに、どうして俊也は、ペッティングする気になった?」
「餌をまいたそうです。ナームの邪道魔法に関して。
ミストから派遣されたことは、話してないそうですが、もう分かっているでしょう。
密偵に引き上げるよう伝えましょうか?」
「構わぬ。
せっかくそこまで接近したのだ。
ひもとしてつけておけ。
アンとアンリ、といったかな?
成長のほどは相変わらずか?」
「館の魔導師たちは、アンリ以外ほとんど魔法を見せないので、はっきりしたことは、計りかねるとのことです。
ただ、アンリの治癒魔法は、上級魔導師の域に届いているそうです」
「たしか、言っていたな? アンリの武術に勝てるミスト兵はいないだろうと」
ロン王は、虚空を見つめて言う。
「密偵の主観ですが、たしかに。
一介の民兵だったアンリが、たった一年余りで……。
恐るべき力ですね?」
「やはり貴族の娘をくどくべきか……。
魔力があり、美人で気立てが良い。
そんな娘なら余も側室にほしい。
……どうした?
笑ってもよいぞ」
ロン王は伯爵に笑いかけた。
「もしかして、ジョークだったのですか?」
伯爵は驚いて聞く。
「本音だ。俊也を落とす、よい手立てを思いついたら報告しろ」
ロン王は、気まずそうに答えた。
「はい……。
餓えているわけではありませんから。
難しいと思いますが考えます。
娘の人選の方、よろしくお願いいたします。
それと……」
「報告は、二つと言わなかったか?」
王は不審に思って聞く。この有能な伯爵は、非効率を憎む。
「以前から気になっている、密偵からの報告があるのですが、思い切って申し上げます。
一番新しいミネットという少女、金髪碧眼であること、すでに報告いたしました。
どう見ても、貴族の濃い血が流れているとも」
「たしかに聞いておる。それがどうした?」
「金髪碧眼はイスタルト三大貴族に多い特徴です。
まことに申し上げにくいですが、ミネットはミーナ王妃の面影が、なんとなく感じられる、とのことです」
王の表情は、一瞬固まった。
「お主の胸の中だけで、留めておけ」
王はこわばった声で命じた。
「もちろんです。
余計なことを申し上げました」
伯爵は胸のつかえが下りたような、心配ごとが増したような、複雑な心境で退出した。
「金髪碧眼…か。それでは、ごまかしようがないな」
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