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201 残念王の超残念な死
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館に思いがけない訃報が届いた。それはイスタルト王急死の知らせ。
表向きは「急病」ということになっている。本当は実にバカバカしい死因だった。
イスタルト王の魔力は、決して低くなかった。
だが、彼は魔法の訓練が大嫌いだった。だから魔力がたまりすぎたら、適当に発散させていただけだった。
先日、隣国のアルスから大使が訪れた。アルス一の美少女と謳われる王女を伴って。
もちろん、アルス王のもくろみは、王女をイスタルト王の側室にさせることだ。
それというのも、アルス王国は、後述する脅威にさらされていたから。
イスタルト王のご機嫌をとり、なんとかアルス王国の後ろ盾となってもらいたい。
イスタルト王は、エリーナ王女の美貌にデレンデレン。
「魔法王国の王たる余の、魔法をごろうじろ(ご覧下さい)」
てな感じで、調子に乗ってしまった。
結果、魔法の公式を間違えるという、致命のミスを犯した。
「アイスランス」のつもりが、「アイ、死、ランス」
魔法のどでかい槍に貫かれ、王は即死。手の施しようがなかったという。
「なんか、イスタルト人として情けないよね?」
ルラがエレンに振る。
「絶対公にできない。公式を間違えて自爆したなんて。
どう間違えたらそんなことになるの?
魔法は基本、使用者を害せないはずなんだけど」
エレンは悲しそうな目で応える。
もちろん、王の死を悲しんでいるわけではない。ルラの言うとおり。同じイスタルト貴族として、情けないこと限りなし。しかも王様だよ!
「禁呪の公式を描いてしまった?
ちょっと研究してみたい気もする」
フラワーはクールに言う。
「あの色ボケ王が死んでも、どうってことないけど、問題は誰が王位を継ぐか。
お父様、ピーンチ!」
ルラがジョーク混じりに言う。
王の遺言は、なかったらしい。その場合、次期王は、王位継承権第一位の者となる。
王に子はない。つまり、順当なら王の腹違いの弟、ルラの父親リラーナ公爵が、次期王となる。
そうなれば、なんの問題もない。本人の意思を除けば。
「仕方ないんじゃないの?
あなたのお父様が、継承権を放棄したら大問題よ」
エレンが気の毒そうに言う。リラーナ公爵は、行動ががんじがらめになる王の地位を嫌っていた。
彼はガンガン実務をこなしたい人間だ。大国イスタルトの王ともなれば、「よきにはからえ」と、鷹揚に構えなければならない。
つまり、今までのように、国を動かせなくなってしまう。国のトップでありながら、実質は単なるシンボル。
そんな立場が、イスタルト王なのだ。
それは王の独断専行を防ぐ、イスタルト独自のシステムだ。そのシステムを作ったのは、何を隠そう彼と二人の友人だ。
はっきり言えば、自ら墓穴を掘ったわけ。
「リラーナ公爵には、涙を飲んでもらうとして、もっと問題なのは、カムハン帝国の勢いだよね。
あの国はヤバいよ」
フラワーが眉をひそめて言う。
カムハン帝国は、ここ数年周辺の中小国を次々と併合し、勢力を拡大している軍事独裁国家だ。
前述のアルス王国がさらされている「脅威」とは、カムハン帝国侵略の脅威だった。
イスタルト三首脳は、国葬の準備で超多忙だった。
ルラーナ公爵は、もうあきらめている。自分が王位を継ぐしかない。
公爵位は長男に継承させ、領地の運営は次男に任せる。その心づもりだ。
すでに次男は魔導戦士を退役し、領地へ帰っている。
三首脳は多忙の合間を縫って、アルス王国大使ミケア侯爵と、エリーナ・アルセア王女と面会していた。
「エリーナ王女には、大変申し訳なく思っています。ですが、あのことはくれぐれも内密で」
公爵が、まず謝罪と口止めをする。
「もちろん口外などいたしません。
ですが、わたくしはどうすればよいのでしょうか?
このまま国に帰るわけにいきません。
王の喪が明けて、リラーナ様が戴冠なさったら……」
「いやいや、私などもう年寄ですから。
それに、カムハンとまともにぶつかることは避けたい。
カムハンが侵攻して来たら別ですが。
もちろん友好国のアルスを、影で支援することは惜しみません」
「そう…ですか」
エリーナは肩を落とした。
「私の娘のことは、ご存知ですかな?」
公爵は、わけあり笑顔で言う。
「ルラ様ですね?
なんでも恐ろしいほどの力を持つ、魔導師の方に嫁がれているとか」
俊也と湖の館の噂は、アルスまで流れていた。
「私とシャネル侯爵の息女も嫁いでいます」
エレンの父親ダイニー侯爵が、苦笑をかみ殺して付け加える。
さすが次期王。全く抜け目がないというか、ずるいというか……。
「こんなオヤジより、頼りになりますよ。
我が娘の婿殿は」
フラワーの父親、シャネル侯爵は次期王に視線を向け、澄まして言う。
「娘の話では、情を交わした女性に、とことん弱いとか。
彼の妻は二十人を超えていますが、亡くなられた我が王も同様でした。
彼は若く、本当に恐ろしいほどの力を持っております。
それに、彼を束縛できる者は誰一人いません。
頼ってみてはいかがですかな?」
公爵は本音をぶつける。
「極秘ですが、ナームの魔導師部隊を、彼は一人で片づけました」
ダイニーは公爵をアシスト。
「彼の妻は皆、掛け値なく一騎当千。
その気になれば、カムハンなど数時間で滅ぼせます」
シャネルはダメ押し。
三首脳は、「アルスの国難、俊也に丸投げしちゃおう作戦」を着々と進めた。
表向きは「急病」ということになっている。本当は実にバカバカしい死因だった。
イスタルト王の魔力は、決して低くなかった。
だが、彼は魔法の訓練が大嫌いだった。だから魔力がたまりすぎたら、適当に発散させていただけだった。
先日、隣国のアルスから大使が訪れた。アルス一の美少女と謳われる王女を伴って。
もちろん、アルス王のもくろみは、王女をイスタルト王の側室にさせることだ。
それというのも、アルス王国は、後述する脅威にさらされていたから。
イスタルト王のご機嫌をとり、なんとかアルス王国の後ろ盾となってもらいたい。
イスタルト王は、エリーナ王女の美貌にデレンデレン。
「魔法王国の王たる余の、魔法をごろうじろ(ご覧下さい)」
てな感じで、調子に乗ってしまった。
結果、魔法の公式を間違えるという、致命のミスを犯した。
「アイスランス」のつもりが、「アイ、死、ランス」
魔法のどでかい槍に貫かれ、王は即死。手の施しようがなかったという。
「なんか、イスタルト人として情けないよね?」
ルラがエレンに振る。
「絶対公にできない。公式を間違えて自爆したなんて。
どう間違えたらそんなことになるの?
魔法は基本、使用者を害せないはずなんだけど」
エレンは悲しそうな目で応える。
もちろん、王の死を悲しんでいるわけではない。ルラの言うとおり。同じイスタルト貴族として、情けないこと限りなし。しかも王様だよ!
「禁呪の公式を描いてしまった?
ちょっと研究してみたい気もする」
フラワーはクールに言う。
「あの色ボケ王が死んでも、どうってことないけど、問題は誰が王位を継ぐか。
お父様、ピーンチ!」
ルラがジョーク混じりに言う。
王の遺言は、なかったらしい。その場合、次期王は、王位継承権第一位の者となる。
王に子はない。つまり、順当なら王の腹違いの弟、ルラの父親リラーナ公爵が、次期王となる。
そうなれば、なんの問題もない。本人の意思を除けば。
「仕方ないんじゃないの?
あなたのお父様が、継承権を放棄したら大問題よ」
エレンが気の毒そうに言う。リラーナ公爵は、行動ががんじがらめになる王の地位を嫌っていた。
彼はガンガン実務をこなしたい人間だ。大国イスタルトの王ともなれば、「よきにはからえ」と、鷹揚に構えなければならない。
つまり、今までのように、国を動かせなくなってしまう。国のトップでありながら、実質は単なるシンボル。
そんな立場が、イスタルト王なのだ。
それは王の独断専行を防ぐ、イスタルト独自のシステムだ。そのシステムを作ったのは、何を隠そう彼と二人の友人だ。
はっきり言えば、自ら墓穴を掘ったわけ。
「リラーナ公爵には、涙を飲んでもらうとして、もっと問題なのは、カムハン帝国の勢いだよね。
あの国はヤバいよ」
フラワーが眉をひそめて言う。
カムハン帝国は、ここ数年周辺の中小国を次々と併合し、勢力を拡大している軍事独裁国家だ。
前述のアルス王国がさらされている「脅威」とは、カムハン帝国侵略の脅威だった。
イスタルト三首脳は、国葬の準備で超多忙だった。
ルラーナ公爵は、もうあきらめている。自分が王位を継ぐしかない。
公爵位は長男に継承させ、領地の運営は次男に任せる。その心づもりだ。
すでに次男は魔導戦士を退役し、領地へ帰っている。
三首脳は多忙の合間を縫って、アルス王国大使ミケア侯爵と、エリーナ・アルセア王女と面会していた。
「エリーナ王女には、大変申し訳なく思っています。ですが、あのことはくれぐれも内密で」
公爵が、まず謝罪と口止めをする。
「もちろん口外などいたしません。
ですが、わたくしはどうすればよいのでしょうか?
このまま国に帰るわけにいきません。
王の喪が明けて、リラーナ様が戴冠なさったら……」
「いやいや、私などもう年寄ですから。
それに、カムハンとまともにぶつかることは避けたい。
カムハンが侵攻して来たら別ですが。
もちろん友好国のアルスを、影で支援することは惜しみません」
「そう…ですか」
エリーナは肩を落とした。
「私の娘のことは、ご存知ですかな?」
公爵は、わけあり笑顔で言う。
「ルラ様ですね?
なんでも恐ろしいほどの力を持つ、魔導師の方に嫁がれているとか」
俊也と湖の館の噂は、アルスまで流れていた。
「私とシャネル侯爵の息女も嫁いでいます」
エレンの父親ダイニー侯爵が、苦笑をかみ殺して付け加える。
さすが次期王。全く抜け目がないというか、ずるいというか……。
「こんなオヤジより、頼りになりますよ。
我が娘の婿殿は」
フラワーの父親、シャネル侯爵は次期王に視線を向け、澄まして言う。
「娘の話では、情を交わした女性に、とことん弱いとか。
彼の妻は二十人を超えていますが、亡くなられた我が王も同様でした。
彼は若く、本当に恐ろしいほどの力を持っております。
それに、彼を束縛できる者は誰一人いません。
頼ってみてはいかがですかな?」
公爵は本音をぶつける。
「極秘ですが、ナームの魔導師部隊を、彼は一人で片づけました」
ダイニーは公爵をアシスト。
「彼の妻は皆、掛け値なく一騎当千。
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