【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

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201 残念王の超残念な死

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 館に思いがけない訃報が届いた。それはイスタルト王急死の知らせ。
表向きは「急病」ということになっている。本当は実にバカバカしい死因だった。

イスタルト王の魔力は、決して低くなかった。

だが、彼は魔法の訓練が大嫌いだった。だから魔力がたまりすぎたら、適当に発散させていただけだった。

先日、隣国のアルスから大使が訪れた。アルス一の美少女と謳われる王女を伴って。

もちろん、アルス王のもくろみは、王女をイスタルト王の側室にさせることだ。

それというのも、アルス王国は、後述する脅威にさらされていたから。

イスタルト王のご機嫌をとり、なんとかアルス王国の後ろ盾となってもらいたい。

イスタルト王は、エリーナ王女の美貌にデレンデレン。

「魔法王国の王たる余の、魔法をごろうじろ(ご覧下さい)」
てな感じで、調子に乗ってしまった。

結果、魔法の公式を間違えるという、致命のミスを犯した。

「アイスランス」のつもりが、「アイ、死、ランス」

魔法のどでかい槍に貫かれ、王は即死。手の施しようがなかったという。


「なんか、イスタルト人として情けないよね?」
 ルラがエレンに振る。

「絶対公にできない。公式を間違えて自爆したなんて。
どう間違えたらそんなことになるの? 
魔法は基本、使用者を害せないはずなんだけど」
 エレンは悲しそうな目で応える。

もちろん、王の死を悲しんでいるわけではない。ルラの言うとおり。同じイスタルト貴族として、情けないこと限りなし。しかも王様だよ!

「禁呪の公式を描いてしまった? 
ちょっと研究してみたい気もする」
 フラワーはクールに言う。

「あの色ボケ王が死んでも、どうってことないけど、問題は誰が王位を継ぐか。
お父様、ピーンチ!」
 ルラがジョーク混じりに言う。

王の遺言は、なかったらしい。その場合、次期王は、王位継承権第一位の者となる。
王に子はない。つまり、順当なら王の腹違いの弟、ルラの父親リラーナ公爵が、次期王となる。

そうなれば、なんの問題もない。本人の意思を除けば。

「仕方ないんじゃないの? 
あなたのお父様が、継承権を放棄したら大問題よ」
 エレンが気の毒そうに言う。リラーナ公爵は、行動ががんじがらめになる王の地位を嫌っていた。
彼はガンガン実務をこなしたい人間だ。大国イスタルトの王ともなれば、「よきにはからえ」と、鷹揚に構えなければならない。
つまり、今までのように、国を動かせなくなってしまう。国のトップでありながら、実質は単なるシンボル。
そんな立場が、イスタルト王なのだ。

それは王の独断専行を防ぐ、イスタルト独自のシステムだ。そのシステムを作ったのは、何を隠そう彼と二人の友人だ。

はっきり言えば、自ら墓穴を掘ったわけ。


「リラーナ公爵には、涙を飲んでもらうとして、もっと問題なのは、カムハン帝国の勢いだよね。
あの国はヤバいよ」
 フラワーが眉をひそめて言う。

カムハン帝国は、ここ数年周辺の中小国を次々と併合し、勢力を拡大している軍事独裁国家だ。

前述のアルス王国がさらされている「脅威」とは、カムハン帝国侵略の脅威だった。


 イスタルト三首脳は、国葬の準備で超多忙だった。

ルラーナ公爵は、もうあきらめている。自分が王位を継ぐしかない。

公爵位は長男に継承させ、領地の運営は次男に任せる。その心づもりだ。

すでに次男は魔導戦士を退役し、領地へ帰っている。


三首脳は多忙の合間を縫って、アルス王国大使ミケア侯爵と、エリーナ・アルセア王女と面会していた。

「エリーナ王女には、大変申し訳なく思っています。ですが、あのことはくれぐれも内密で」
 公爵が、まず謝罪と口止めをする。

「もちろん口外などいたしません。
ですが、わたくしはどうすればよいのでしょうか?
このまま国に帰るわけにいきません。
王の喪が明けて、リラーナ様が戴冠なさったら……」

「いやいや、私などもう年寄ですから。
それに、カムハンとまともにぶつかることは避けたい。
カムハンが侵攻して来たら別ですが。
もちろん友好国のアルスを、影で支援することは惜しみません」

「そう…ですか」
 エリーナは肩を落とした。

「私の娘のことは、ご存知ですかな?」
 公爵は、わけあり笑顔で言う。

「ルラ様ですね? 
なんでも恐ろしいほどの力を持つ、魔導師の方に嫁がれているとか」
 俊也と湖の館の噂は、アルスまで流れていた。

「私とシャネル侯爵の息女も嫁いでいます」
 エレンの父親ダイニー侯爵が、苦笑をかみ殺して付け加える。
さすが次期王。全く抜け目がないというか、ずるいというか……。

「こんなオヤジより、頼りになりますよ。
我が娘の婿殿は」
 フラワーの父親、シャネル侯爵は次期王に視線を向け、澄まして言う。

「娘の話では、情を交わした女性に、とことん弱いとか。
彼の妻は二十人を超えていますが、亡くなられた我が王も同様でした。
彼は若く、本当に恐ろしいほどの力を持っております。
それに、彼を束縛できる者は誰一人いません。
頼ってみてはいかがですかな?」
 公爵は本音をぶつける。

「極秘ですが、ナームの魔導師部隊を、彼は一人で片づけました」
 ダイニーは公爵をアシスト。

「彼の妻は皆、掛け値なく一騎当千。
その気になれば、カムハンなど数時間で滅ぼせます」
 シャネルはダメ押し。

 三首脳は、「アルスの国難、俊也に丸投げしちゃおう作戦」を着々と進めた。
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