【R18】猫は異世界で昼寝した

nekomata-nyan

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212 決めた!

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 イスタルトの王都、イスタリアでは、国葬が滞りなく終わり、一か月の喪が明けた。

国王の喪が一か月? 短いと感じるかもしれないが、王位が長く空位のままであるのは、具合が悪い。

そして、王弟が戴冠するのはあさって。

幹部嫁三人は、館を代表し、戴冠式に出席するため、王宮に跳んでいた。
もちろんそれぞれの子を伴っている。現在は宮殿内、王の執務室で、政府三幹部と面会中。

「相変わらず婿殿の手口はえげつない。
カムハンの皇帝に同情する」
 次期王は、まだ首の据わらない孫を抱きながら軽口をたたく。

うみたん、超かわゆいんですけど! 
目じりは下がりっぱなし。

「スマートと言っていただけますか? 
夫は常に最小限の人的被害で、最大限の効率を考えています」
 ルラは異議を唱える。

「お祝いの磁器、引っ込めますよ。
カムハン屈指の名品のはず」
 エレンは反撃。カムハンは、陶磁器の産出で他国に追随を許さない。
もちろん「お祝いの磁器」とは、カムハンから黙って頂いたものだ。

「そういえば、出産祝い、いただいていなかったような。
さすがシブチン揃いの……」
 フラワーは、政府三幹部をチクリ。

「まさか、今回の夫の働き、ただで済まそうというおつもりでは?」
 ルラは、次期王を結構厳しい目でにらむ。

「まあ、考えておこう」
 次期王はとぼける。

「まさかですけど、ミスト王の報酬以下、などということはありませんよね? 
賠償金の五分の一だったのですが」
 エレンはさらに斬り込む。

「わしは出産祝いに、カントとエルフィンを、領地として提供しよう。
鉱山は譲れないが。
フラワー、それで妥協してくれないか?」
 シャネル侯爵は、超渋ちんぶりを発揮。

「ならばわしは爵位を……」
 次期王は、さらに渋い。

「領地も爵位もいりません! 
現金を要求します!」
 侯爵と次期王の提案を、断固はねつけたエレンだった。

 母は強し。全くの真理だ。


 日本では桜の季節。

ボーイフレンドの来夢君と、お花見デートしていた菜摘は、軽くため息をついた。

つまんね~……。

それというのも、親友の朝陽がゆうべも興津根様に憑依してもらった。

今回は一晩つきあっていただいたそうだが、副作用は全然なかったらしい。
朝陽ちゃんは、もともと頭が超いいし、勘も超鋭い。

他人の心理なんて、憑依以前にも、ある程度読めていたに違いない。

つまり、副作用なしで魔力だけがいっそうアップしたということだ。

うらやましい……。私は積算三時間程度? それでも成績はぐんと伸びたけど、魔力はなさけないほどらしい。先日の海水浴で計ってもらった。
菜摘はユーノを指名した。結果は残念だったが、あのクールな美形と超接近! ユーノさんの吐息、甘かったような……。
魔力が上がったら、マジで味が感じられるらしい。

俊也さんにエッチしてもらったら、朝陽ちゃんを超える魔力がつくはず。
多少怖くもあるが、やはり老化が遅くなることは魅力的だ。

先日のカナちゃんと琴ちゃんコンビ。二人はまさしく輝いていた。

そういえば、阿部先生は、この三月いっぱいで先生を辞めた。あっちでカテキョをするとも聞いた。

来夢がおずおずと手を伸ばしてきた。

手をつなぎたいようだ。手をつなぐぐらいなら……。

菜摘は抵抗しなかった。

汗ばんでる……。
緊張してる? 
もっと進みたい? 
キスなんて考えてる? 
あわよくばエッチ? 

興津根様効果か、菜摘はなんとなく心理が見えた。まあ、それが男の子なんだろうけど。

薄っぺら~……。

この年齢は、女子の方がはるかに大人だ。菜摘には独りよがりの、男の性欲が露骨に感じられた。

きっと私でなくてもいいんだ? 
菜摘は、なんとなくしらけ気分。

は~……。つまんね~~~!

「なっちゃん、あそこのベンチが空いてる。
ちょっと休もうか?」
 来夢はちょっぴり震える声で提案した。

「あのさ~、私たち、別れようか?」
「えっ……。どうして?」

「キス狙ってるんでしょ? 
キスぐらい、いいんだけど、当然エッチも狙ってるよね? 
男の子だから、仕方ないと思うよ。
だけど、ライム君とのキスやエッチを想像しても、ときめかないの。
多分私、そんなに好きじゃないのよ。ライム君のことが。
もう高三になることだし、いい機会だと思う。
さよなら」
 菜摘は手を振りほどいた。

「おい、待てよ!」
 来夢は菜摘の肩をわしづかみした。

「乱暴ね。痛い目にあいたい?」
 菜摘は冷たい声で言う。

「ザケンじゃねーぞ!」
 来夢は狼の片鱗をのぞかせた。

「ふざけてんのは、あんたでしょ?」
 バチッ! 

菜摘は指輪を、来夢の手の甲に押し当てた。その指輪は、海水浴から館に帰って俊也から受け取った防犯グッズ。

出力は最小に抑えているが、来夢は飛び上がって甲を抑え、うずくまった。

「気絶する程度には、威力上げられるの。
人によっては、気絶だけですまないかも。
追いかけてこない方が、身のためよ」
 菜摘はそう言い残し、小走りで駅を目指した。

決めた! 俊也さんに抱いてもらう。

菜摘のこわばった表情は、晴れ晴れとした。

一度なら問題ないよね! 

菜摘は俊也の蟻地獄、あるいは蟻天国に一歩近づいた。
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