寡黙な剣道部の幼馴染

Gemini

文字の大きさ
2 / 18
帰郷

第二話

しおりを挟む
「え?」

 まさかの問いに、僕は男の顔をマジマジと見た。やはり懐かしい気がしていたのは思い過ごしではなかったらしい。しかし、なかなかに思い出せない。おばちゃんはさっき『あの子』と言っていた。同じ剣友会だったに違いないんだ。

 このまま思い出せないのは失礼だ。なんとしても思い出さなくては。僕のここでの思い出なんて三年しかない。記憶の引き出しを手当り次第に開けていると、ふと急にこの眼差しに、ある面影がダブる。そうして次第に、夏の学生服を着た真面目な横顔と重なった。

「もしかして、……有馬?」




 自分の名前が出てホッとしたような表情を浮かべ、先程までとは明らかに違う親しみのある笑顔をくれた。

 ──あぁ、その顔は、有馬だ。

 有馬は正座をし直して膝をこちらに向ける。

「改めてお久しぶりです。佐々木 有馬です」

 そう言って頭を下げた。

 きゅっと、胸の奥が締め付けられる。

 有馬は僕より六歳下で、初めて会った当時十歳だった有馬は既に小学生の頃から優勝するほどの腕前で、道場一の剣士だと言われていた。

「そんな改まらないでよ、久しぶりでびっくりした。最初分からなくてごめんね」
「いえ」
「僕のことよく気がついたね」
「はい、すぐに分かりました」

 思いがけない返答に、少し困惑した。

「すぐ? 僕、あんま変わってないのかな」
「そんなことないです。俺が、あん時ガキでしたから……分からなくて当然です」
「そう? 有馬は成長期だもんね。今は? えっと……僕がニ十六だから有馬は……二十歳ハタチ?」
「はい、合ってます。二十歳です」

 ぎこちなくはにかむ有馬だが、その表情は明らかに大人びていて、月日を感じさせた。

「最後に会ったのは……中学生か」

 夏服の制服を着た有馬が蘇る。

「はい、十四でした」
「分からないわけだ、もうすっかり大人だね、かっこいい」
「そんなことは、ないです」

 硬い表情ながら少し耳が赤くなるのが昔と変わらない。

「そっか、もう六年経つんだね」
「……」

 ついそう呟くと、有馬も少し表情を固くしてそれを隠すように前を向き直した。






 有馬には将馬という兄がいた。その兄と同い年だった僕は将馬のほうと仲が良かった。言ってしまえば有馬との関係は、僕から見れば『将馬の弟』で、有馬から見れば『兄貴の友達』だっただろう。

 高校一年で剣友会に入った時に兄弟と出会ったのだが、僕と将馬が大学生になってこの地を離れるまで、三人は幼馴染みのように一緒にいた。将馬は纏わり付く弟の有馬を疎ましく思うこともあったが、ひとりっ子の僕にはそれさえ羨ましくて、兄を慕ってくっついてくる有馬をかわいいと思っていた。六歳下の無口な弟 有馬。

 しかし、将馬が二十歳になったある日、バイクの事故で突然この世を去った。いきなりの悲劇に誰もが順応出来ず、やがて疎遠になっていった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

弱小魔術師はシンデレラになれるのか

桜羽根ねね
BL
王宮専属魔術師になるのが夢な、平民のリーベル。そんな彼は友人に巻き込まれて王宮の厨房で給仕をさせられる羽目になった。頻繁に行われている第一王子ディラザードのハーレム婚活パーティーで、毎日のように大忙し。そんな彼には、夜にだけ出会う秘密の友人が出来て──。 シンデレラと美女と野獣をモチーフに、こねこねしたなんちゃってファンタジーです。

【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜

星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; ) ――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ―― “隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け” 音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。 イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――

しろへび先生は熱い肌がお好き

煮卵
BL
急に冷え込んだ秋の夜、白蛇の頭を持つ医師・綿貫は、冷たい体温のせいで倒れてしまう。 そんな彼を、あたたかい手で必死に抱きしめて温めてくれたのは、人間の看護師・根岸だった。 それ以来、綿貫は彼の「熱い肌」を忘れられなくて……? 様々な獣人種族が暮らす現代社会で、冷たい体温を持つ医師と、ふつうのヒトの看護師が、少しずつ「同じ温度」を探していく冬のラブストーリー。 ほっこり甘め、ハッピーエンド。

【完結】我が侭公爵は自分を知る事にした。

琉海
BL
 不仲な兄の代理で出席した他国のパーティーで愁玲(しゅうれ)はその国の王子であるヴァルガと出会う。弟をバカにされて怒るヴァルガを愁玲は嘲笑う。「兄が弟の事を好きなんて、そんなこと絶対にあり得ないんだよ」そう言う姿に何かを感じたヴァルガは愁玲を自分の番にすると宣言し共に暮らし始めた。自分の国から離れ一人になった愁玲は自分が何も知らない事に生まれて初めて気がついた。そんな愁玲にヴァルガは知識を与え、時には褒めてくれてそんな姿に次第と惹かれていく。  しかしヴァルガが優しくする相手は愁玲だけじゃない事に気づいてしまった。その日から二人の関係は崩れていく。急に変わった愁玲の態度に焦れたヴァルガはとうとう怒りを顕にし愁玲はそんなヴァルガに恐怖した。そんな時、愁玲にかけられていた魔法が発動し実家に戻る事となる。そこで不仲の兄、それから愁玲が無知であるように育てた母と対峙する。  迎えに来たヴァルガに連れられ再び戻った愁玲は前と同じように穏やかな時間を過ごし始める。様々な経験を経た愁玲は『知らない事をもっと知りたい』そう願い、旅に出ることを決意する。一人でもちゃんと立てることを証明したかった。そしていつかヴァルガから離れられるように―――。  異変に気づいたヴァルガが愁玲を止める。「お前は俺の番だ」そう言うヴァルガに愁玲は問う。「番って、なに?」そんな愁玲に深いため息をついたヴァルガはあやすように愁玲の頭を撫でた。

君の1番にならせて‼︎

小麦
BL
【ツンデレ一途微執着年下攻め×無意識翻弄鈍感年上受けの幼馴染BL】  高2の夏希には学校に憧れであり推しの男子がいる。その男子の恋路を応援したものの、推しが幼馴染と付き合い始めたのを見て夏希はショックを受ける。  そんな夏希は、推しの彼女の弟であるもう1人の幼馴染・晴に話を聞いてもらうことにする。1つ歳下でツンデレ気味な晴が不機嫌ながらに夏希に告げた言葉は──?

陽キャと陰キャの恋の育て方

金色葵
BL
クラスの人気者と朝日陽太とお付き合いを開始した、地味男子白石結月。 溺愛が加速する陽太と、だんだん素直に陽太に甘えられるようになっていく結月の、甘キュンラブストーリー。 文化祭編。

優等生αは不良Ωに恋をする

雪兎
BL
学年トップの優等生α・如月理央は、真面目で冷静、誰からも一目置かれる完璧な存在。 そんな彼が、ある日ふとしたきっかけで出会ったのは、喧嘩っ早くて素行不良、クラスでも浮いた存在のΩ・真柴隼人だった。 「うっせーよ。俺に構うな」 冷たくあしらわれても、理央の心はなぜか揺れ続ける。 自分とは正反対の不良Ω——その目の奥に潜む孤独と痛みに、気づいてしまったから。 番なんて信じない。誰かに縛られるつもりもない。 それでも、君が苦しんでいるなら、助けたいと思った。 王道オメガバース×すれ違い×甘酸っぱさ全開! 優等生αと不良Ωが織りなす、じれじれピュアな恋物語。

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

処理中です...