スキル『箱庭』を手にした男ののんびり救世冒険譚〜ハズレスキル? とんでもないアタリスキルでした〜

夜夢

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第28話 賑わう町

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 黒い鴉の一件で一悶着あったが、以降は特に危ない事もなく時が流れていった。

「いや、凄い人だね」
「優勝したら家が貰えるから当然なのっ」

 町は釣り大会に賭ける人々で連日賑わいをみせていた。ある者はポイントの研究、またある者は釣具の調整と大会に並々ならぬ意気込みで臨んでいた。

「お兄さんは参加しないの? 優勝したらお家貰えるのに」
「あはは、僕は冒険者だからね。一つの町に長くいないから」

 なお連日当たり前のようにリリアが観光についてきていた。宿屋は相変わらず閑古鳥が鳴いている。

「あんなに料理美味しいのになんでお客さん入らないんだろ」
「多分まだ黒い鴉の件が尾を引いてるなの」
「ほんっと迷惑だよね! あ、お兄さん私あれ食べたい!」
「どれ?」
「あの実が入ってる甘い飴!」
「あ、僕も食べたいな」
「私もなのっ!」

 大会二日前にもなると町に様々な屋台が並び始めた。町は一気にお祭ムードに突入し、笑顔が溢れ出していた。

「ん~っ、美味しいっ! これ食べると大会が始まるんだなって毎年思うよ~」
「町に住んでる人達からすれば恒例行事みたいだね」
「レイ! あっちで腸詰め肉売ってる!」
「はいはい。あまり食べ過ぎるなよ? 晩御飯食べられなくなるよ?」
「晩御飯は別腹なのっ!」

 相変わらずリリーは食いしん坊だった。そんな中で大会受付のテントからベルが鳴り響いた。

「以上で大会参加者を締め切りします! 大会は二日後の正午から鐘が四回鳴るまでです! なお、不正が発覚した際は今後一切の参加を受け付けません! 参加者の皆様、フェアに楽しみましょう!」
「「「「「おぉぉぉ~っ!!」」」」」

 参加者の募集が終わりいよいよ大会が始まる。

「今年こそ優勝して家を貰うぞ!」
「こちとらガキの頃から釣りで生きてきてんだ! その辺の奴らにゃ負けねぇぜ!」
「ふっ、弱い奴ほどよく吠えるな。まあ、明日は私の優勝と決まっている。精々盛り上げてくれたまえ」
「なんだあいつ気持ち悪いな」

 参加者はやる気十分だ。

「まだ二日前なのにやる気出し過ぎじゃないか?」
「村に家を持つのとは違うなの。アクアヒルは王都に次ぐ人気の町なの。土地代はそれなりにするなの」
「ん? 土地代?」

 レイはリリーの言葉に引っ掛かりを覚えた。

「なあ、これ……家を貰えるんだよな?」
「うんなの」
「土地付きで?」
「ん?」

 レイは町の人に話し掛けた。

「あの、優勝したら家貰えるんですよね?」
「ん? ああ、そうだよ」
「それって土地も貰えるんですか? いや、もしかしたら他にも条件があるんじゃ……」
「おっといけねぇ。買い出しの最中だったわ。じ、じゃあなっ」
「あ……逃げた」

 逃げた町の人の態度でさらに疑惑が高まる。

「なんか怪しげなんだよなぁ。でも一応毎年続いてるイベントみたいだし……。気の所為なのかな?」
「レ~イ~! そろそろ宿に帰るなのっ」
「あ、うん。今行くよっ」

 レイは気にする事を止めた。

「僕は参加者じゃないし気にしてもしょうがないか」

 そして二日後の夕方、この懸案が大会終了と共に判明した。

「は、話が違うじゃないか!」
「いえいえ。確かに家は用意してありますよ?」
「確かに家はある! だがなんなんだこの女は!?」
「あっは~ん」

 優勝した人物は例の気持ち悪い喋り方をしていた顔の整った男だった。

「おや、もしや貴方……取得条件をしっかりと確認しておりませんな?」
「な、なに?」

 男は慌てて参加契約書に目を通す。

「特に何も書かれていないが……」
「あぁ、取得条件は裏面です」
「裏面? ……んなぁっ!?」

 男は内容を確認し驚愕。その後絶句した。

「家の取得条件として、持ち主と婚姻を結んでいただきます。その後一年以内に子を成せば正式に貴方様の物に。婚姻できない、もしくは子が成されなかった場合は権利を剥奪いたします」
「さ、詐欺だ! 私は結婚などする気はないっ!」
「しっかり確認しなかった貴方が悪いのでしょう? さて、どうしますかな?」

 男は契約書を破り壇上から降りた。

「二度と参加するかっ! 帰る!」
「お疲れ様でした。では準優勝の方を繰り上げで……おや、貴方は」

 優勝者が辞退した事で準優勝だった男に権利が移行した。

「ハニィィィィィッ!」
「あぁぁぁん、ダァリィィィィン!」
「「「ヒュー!」」」

 壇上で小太りの男が女と抱き合った。

「絶対優勝するって言ってたのにぃ~! 私奪われちゃうとこだったのよ~?」
「ごめんよハニー! まさかほんのちょっとの差で負けるとは思わなかったんだ」
「許さないわよ~。死ぬまで離さないで刑に処しちゃうんだから~」
「ははは、ハニー。それは刑じゃなくてご褒美だよっ」

 壇上でバカップルが爆誕していた。

「……僕は何を見せられてるんだろ」
「からくりがわかったなの。この大会はああして家はあるけど行き遅れになってる男女をくっつけるための大会なの!」
「……参加しなくて良かったなぁ」

 こうして落ちがついた所で大会は後夜祭に移った。

「レイさん、大会はどうでした?」
「あ、うん……。見る分には楽しかったかな。湖にあんな大きい魚いたんだ~って」

 夜、客がいない女将は娘のリリアと後夜祭に出てきていた。

「まさか家をもらう条件があったなんてびっくりしましたよ」
「あ、初めて見る方は驚きますよね。毎年あんなですよ。去年は男の方でしたが、結局決まらず盛り上がりに欠けました」
「その割に参加者多くないですか?」

 女将が悪戯っぽく笑みを浮かべた。

「結婚と天秤にかけても家が欲しいという方もいらっしゃいますし。今年は町でも有名な恋人が結婚にいたったので大盛況でした」
「初めから結婚すれば良いのに」
「あら、どうせならドラマがあった方が記念になるじゃないですか。そうですね~……来年は私が商品になってみようかしら?」
「酔ってます?」

 女将の顔が若干赤い。

「夫はどうせ野垂れ死んでるだろうし。宿も流行らないし……。誰かに助けて欲しいかな~」
「ちょっ!?」

 女将がレイにもたれ掛かる。

「リリーちゃん! あっちでケーキあるみたいだよ!」
「なん!? リリアいくなのっ!」

 お子様と精神年齢お子様の二人は屋台に消えて行った。

「レイさん、今なら宿に私達母娘がついてお買い得ですよ?」
「い、いやっ。僕はまだ結婚する気ないですし! それに……まだ冒険者続けたいからっ」
「残念、ふられちゃいました」

 女将の身体がそっと離れた。

「でも苦しいのは本当ですよ? 多分宿も閉める事になります」
「そんな……。両親が残した宿でしょう?」
「はい。ですが思い出より生活ですよ。これ以上リリアに迷惑はかけられません。ですのでレイさん達が出たら宿を売ってどこか田舎にでも移ります」

 レイは正直そこまで経営が苦しいとは想像もしていなかった。

「あの! 今から少し時間良いですか?」
「はい? お誘いですか?」
「まあ……誘いになりますかね。見せたいものがあります。宿に戻ったら見せますね」
「リリアも一緒に?」
「もちろんです」
「何かしら~? 楽しみね」

 その後、後夜祭をたっぷり満喫してきた二人と合流し、レイは宿に戻ったのだった。
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