スキル『箱庭』を手にした男ののんびり救世冒険譚〜ハズレスキル? とんでもないアタリスキルでした〜

夜夢

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第27話 休息

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 全ての報告を終え、宿に戻る前に受付に寄った。そこで今回黒い鴉にかかっていた賞金を受け取る。

「な、なにこの額……!?」
「す、凄いなのっ!」
「こちらがゴンズにジャミ、その他構成員にかかっていた賞金になります」

 受付のカウンターにトレイがある。そのトレイには【黒金貨】が三枚置かれていた。ちなみに、黒金貨の価値を仮に円換算した額を以下にまとめる。

・銅貨=百円
・銀貨=千円
・金貨=一万円
・大金貨=十万円
・白金貨=百万円
・黒金貨=一千万円
・虹金貨=一億円

 かなりの数がいたが頭目のネスト以外の総額が黒金貨三枚だ。

「こんなに貰えるんですか!?」
「はい。ゴンズやジャミ達に関しては元ギルドメンバーという事で、威信にかけて捕まえたかったので」
「いやいや、あいつら普通に町歩いてたじゃないですか」
「レイ様。一般人が黒い鴉に手を出すはずがないでしょう? 必ず報復されますから」
「あ、そうか! 捕まえたくても捕まえられなかったのか」
「はい。ですので頭目のネストは逃しましたが、黒い鴉を潰した功績も含めこの額になります」
「わかりました。ではいただきます」

 レイは賞金を受け取りリリーを見る。

「リリー、半分にしたいけど持ち合わせがないんだよね」
「ん? 全部レイが持ってて良いなの」
「いやいや、今回の件はリリーも頑張ってくれただろ? タダ働きは悪いよ」
「ふっふ~ん。タダ働きじゃないなの! このあと箱に──ふぐっ!?」

 レイは慌ててリリーの口を塞ぎ受付に愛想笑いをし、リリーを引き摺り冒険者ギルドを出た。

「な、ななななにするなのっ」
「アホかぁっ! あんな場所でギルドマスターにも秘密にしてた事口にしようとする奴があるか!」
「……あ」
「頼むからもう少し慎重になってくれ。僕のスキルはどの国にとっても喉から手が出る程欲しいスキルなんだ。この国がそうとは言わないけど僕は国に利用されたくない」
「ご、ごめんなの……」

 レイはため息を吐きリリーの脊中を叩いた。

「わかってくれたら良いよ。さ、宿に戻ろう。食事した後で今後の予定でも組もうか」
「うんなのっ!」

 こうして全てを終えた二人は宿に戻り母娘に一連の出来事を話した。

「わ、私達のせいで黒い鴉とそんな事にっ! な、なんて謝ったら良いかっ!」
「そ、そんな。頭を上げて下さいよ」
「でもっ! 私達のせいでとんでもなく危険な事にっ!」

 レイはリリーを見る。

「危険だったかな?」
「全然なの」
「え?」

 女将は黒い鴉との戦いをまるで薬草採取でもしてきたかのように語る二人を見て唖然とした。

「あ、でもネストは強かったかな。剣折れちゃったし」
「あんな安物使ってるからなの」
「安物って言うなよ。駆け出しだったから量産品しか買えなかったんだからさ」
「あ、あの……」
「「ん?」」

 女将がもう一度頭を下げた。

「本当にありがとうございました。それで……私はこの恩をどう返せば良いでしょうか。見ての通り潰れかけの宿しかありません。返せるものと言えば……」

 女将の顔が赤くなる。

「よ、夜のお相手くら──」
「お母さん、夜のお相手って何~? お兄さんと一緒に遊ぶの!? リリアも遊ぶっ!」
「な、なに言ってるのリリア! リリアにはまだ早いわよっ」

 レイは困惑しながら女将に言った。

「あの、そんな気はないですから。そうですね、僕らこれから一週間ほどこの町にいなきゃならないのでその間ここに泊めてもらえたらなと」
「も、もちろん大丈夫ですっ。他に宿泊客もいませんし、最大限お世話させていただきますっ」
「普通の対応で大丈夫ですからね?」
「は、はい。リリア、お部屋の準備頼める?」
「は~いっ。一番良い部屋準備するねっ」

 リリアが二階に上がって行った。そこでリリーのお腹から催促の合図が鳴り響いた。

「お、お腹空いたなのぉ~……。昨日の夜から何も食べてないなの……」
「それが普通なんだけどね? まあ沢山動いたし寝てないし仕方ないか」
「す、すぐに食事の準備をいたします! 魚料理で大丈夫ですか?」
「「大丈夫ですっ!」」
「かしこまりましたっ」

 一階の食事スペースで食事を待つ。少しして魚の焼ける良い香りが空腹をさらに刺激してきた。

「お、お腹減って死んじゃうなの……」
「魚の焼ける匂いってなんでこんなに美味そうなのかなぁ。待ち遠しい……」

 そこに女将が焼けた魚に付け合わせを乗せたプレートを二つ運んできた。

「まずは焼き魚です。この魚は今朝湖から揚がったばかりの採れたてになります」
「で、デカいな。なんて魚?」
「ブラックマスです。黒い見た目からは想像がつかないくらい身は白く脂ものってます」
「へぇ~。あ、もしかして釣り大会ってこの魚を?」
「はい。大会終了後に釣れた魚を使い後夜祭がありますね。屋台も並んで楽しいですよ」
「へぇ~」
「おかわりなのっ!」
「早いよっ!?」

 話しているとリリーの皿が空になっていた。

「あ、すぐにお持ちしますねっ。次はスープになります」

 それから沢山の魚料理が運ばれ、ほとんどが綺麗にリリーの腹に納まった。

「すっごく美味しかったなのっ!」
「お粗末様でした。お部屋の準備も整いましたのでお休みになられますか?」
「はい。夜寝てなかったから食べたら眠くなって」
「んん……まだ……大丈夫……」

 満腹になったリリーはもはや限界を迎えていた。

「ふふっ、では案内いたしますね」

 満足のいく食事を済まし二階に上がる。部屋は一つでベッドが二つ。相部屋だった。

「相部屋ですか」
「え? あ、別々が良かったでしょうか? てっきり同じ部屋が良いかと……。その、恋人同士ですよね?」
「ち、違いますよ!? リリーは冒険者仲間です。そんな関係じゃありませんよっ」
「も、申し訳ありませんっ。だいぶ仲良くみえましたのでっ。で、では今からもう一部屋準備をっ」
「いや……。もう眠いし……明日からで……」

 ここまで頑張っていたがレイにも眠気が襲い掛かってきた。

「今日はもう休みます」
「はい。ごゆっくりおくつろぎ下さい。レイさん」

 レイは女将が扉を閉めると同時に横になり、そのまま眠りに就くのだった。
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