スキル『箱庭』を手にした男ののんびり救世冒険譚〜ハズレスキル? とんでもないアタリスキルでした〜

夜夢

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第26話 アクアヒルのギルドマスター

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 事の顛末を聞いた冒険者ギルドの職員は上から下まで大騒ぎとなった。

「おい、こいつ賞金首のゴンズとジャミだろ!?」
「他にもあるぞ!? 総額いくらになるかわかんねぇな!?」
「誰か陛下に伝えに行ったか!」
「まだです!」
「そっちを急げよ! 国家顛末を謀るテロリストだぞ!」
「は、はいぃぃぃっ!」

 そして事の発端であるレイは冒険者ギルドに呼び出され、ランクアップを言い渡されていた。

「あの、いきなり何段も飛ばして良いんですか?」
「構わん。全てを加味してワシが決めた。お主は今日から【鋼級冒険者】じゃ。今回の事は助かった、礼をいうぞレイよ」
「えっと、はい」

 一息で銅級から鋼級まで上がるなど前代未聞の話だ。しかしそれほど今回レイが為した事は大きい。

「エルドニアの国を狙う奴らか。黒い鴉の他にもいるんじゃったな?」
「はい。頭目のネストはそう言ってましたね」
「頭が痛いのう……。ゴンズやジャミもそうじゃが、今回の事で現役の冒険者や元冒険者が多く関わっていた事がわかったのじゃ」

 高齢のギルドマスターがため息を吐きながら書類に目を通し嘆いている。

「これからどうなるんですか?」
「ふむ。恐らくテロリストの炙り出しが始まるじゃろうな」
「炙り出し?」
「うむ。エルドニアにいる冒険者の記録を精査し、怪しげな輩は呼び出して尋問、応じない者は指名手配じゃな。やりたくはないが陛下からそう通達が入るじゃろう」

 今回の件は国を揺るがす可能性がある。ならば国が動かないわけがない。いくら平和といっても平和呆けしている国ではない。

「そっか。ならこれ以上僕が関わる事はないかな」
「ん? 何を言っておる。お前はこれから陛下と謁見じゃよ」
「……へ?」

 ギルドマスターは誇らしげに蓄えた髭を撫でた。

「まさかこのアクアヒルから国に貢献できる冒険者が現れるとは思わんかったわい」
「ち、ちょっと待って下さい! 僕にも予定がですね……」
「ふむ。断れば不敬にあたるが良いのか? レイ・イストリア殿?」
「なっ!?」

 ギルドマスターから捨てたはずの家名が飛び出しレイは固まった。

「な、なぜ……」
「悪いが調べさせてもらった。お主が登録した場所はフォールガーデンのミーレスじゃろう? さすがにないとは思うが、組織を一つ犠牲にして陛下と対面。そのまま暗殺する手もないわけではないからのう」
「冒険者ギルドはそこまで調べられるのですか」
「全ての冒険者ギルドは繋がっておる。中には諜報専門の機関もあるのじや。これが世界中に根を張る冒険者ギルドよ」

 レイは冒険者ギルドの力を見誤っていた。冒険者ギルドは困っている人から依頼を受け冒険者を使い助ける。そんな組織だとばかり思っていた。だが実態は世界の全てを監視できる中枢機関だった。

「畏いですね」
「悪人にとってはの。普通に暮らす分には恩恵しかないじゃろう? なに、出自は秘密にしておく。お主が元貴族だと知っておるのはワシと諜報にあたった職員だけじゃよ」
「……別に秘密にしていたわけじゃありませんよ。ただ名乗るなと言われただけですから。そして二度言わせる名乗る気もありません」

 全てを知るギルドマスターはレイに同情していた。

「うむ。不遇スキルによる追放じゃったか。そんな事で我が子を追放するとはのう。人種の貴族とは愚かよの」
「人種?」
「ん? ははは、気付かぬか。ワシはドワーフじゃよ」
「え!?」

 レイはギルドマスターがドワーフだと知り驚いた。

「リリー、気付いてた?」
「うんなの」
「ほっほ。久しぶりですな、リリー・エルナルド様」
「え?」
「ちょっと! それを言うななのっ!」

 レイはリリーに家名があると知り驚いた。ここにきて驚いてばかりだ。

「リリーって貴族なの?」
「ち、違うなのっ! エルナルドは工房名なの!」
「そうじゃな。南にドワーフの地で一番の工房。それがエルナルド工房じゃ。リリー様はそこの跡継ぎとして生まれたのじゃ」
「へぇ~……。え? でも鍛冶はできないって……」

 リリーは以前鍛冶ができないから冒険者をしていると口にしている。

「婿探しは終わりですかな?」
「む、婿?」
「ち、違うなのっ! レイとはただの冒険者仲間なのっ!」
「照れんでも良いではないですか。これで工房の未来も明るいですなぁ。レイ殿は鍛冶を授かったのでしょう?」

 そう口にしレイを見るギルドマスターだったが、レイは鍛冶などした事すらない。

「い、いえ。僕は鍛冶なんてできませんよ」
「は?」
「リリーとはイストリアでたまたま知り合い、再会してから一緒に冒険してるだけです」
「そうなのっ! レイとは別に……」
「そうでしたか。ま、まぁ……父上もまだまだ現役ですからの。焦る必要もありますまい。リリー様、ファイトですぞ!」
「リリーは結婚なんかしないなのっ!」

 そう言ってリリーは部屋を出ていった。

「ほっほ。まだまだ子どもじゃなぁ。さてレイよ」
「え?」

 ギルドマスターの顔が真面目なものに変わった。

「お主のスキルは箱庭じゃな」
「調べたのですか」
「うむ。イストリアで噂になっていたからの。調べるのは容易かった。じゃが箱庭というスキルは長く生きておるワシでも初めて聞くスキルじゃ。黒い鴉を撃退したのは剣と魔法じゃろ。そこから考えるに箱庭は戦闘向きのスキルではない。のう、詳しく教えてはもらえんか?」

 レイは首を横に振った。

「例えギルドマスターでも教える気はありません」
「ふむ。しかし知らねば陛下と謁見する際護衛が困る。詳細不明なスキル持ちから陛下を守らねばならんからの」
「戦闘向きのスキルじゃない事は確かです。そして暗殺なんて考えてもいません」
「ふぅむ、口にせんか。なるほどなるほど。どうやら余程とんでもないスキルのようじゃな」
「はい?」

 ギルドマスターはニヤリと笑みを浮かべた。

「普通使えんスキルならどんなものか簡単に口にするもんじゃ。それすら口にせんなど秘密にしておかなければ不都合だという事になる。もしくは知られたら困るスキル。違うか?」
「……はい。ですが本当に暗殺なんか考えてません。僕はただ困っている人達を助けたいだけなので」
「……そうか。ならば信じるとしよう。謁見の迎えは一週間後じゃ。釣り大会が終わった翌日じゃな。一週間後にここに来るのじゃ」
「従わなければ不敬罪で捕まるなら仕方ないです。わかりました」
「うむ。ではまた一週間後にの」

 そうしてレイは一週間後エルドニア国王と謁見する事になった。面倒を抱え部屋を出るとリリーが扉の前で待っていた。

「終わったなの?」
「うん。謁見は一週間後だってさ。にしても……」
「な、なんなの?」

 レイは改めてリリーを見る。

「まさかリリーがあんなに有名人だとは思わなかったよ」
「リリーはただのリリーなのっ! まだ結婚する気もないなのっ」
「そっか。安心したよ」
「へ?」
「それならまだ一緒に旅を続けられるって思ってね。リリーは僕のスキルを知ってるし、簡単には手放せないからさ」
「む~。別れても秘密は守るなの!」
「別れるの?」
「そんな気はないなのっ! 毎日美味しいご飯食べられるし!」

 リリーは色気より食い気。まだまだ子どもだった。

「じゃあ宿に行こっか。あの母娘も心配してるだろうし」
「うんなのっ」

 二人は冒険者ギルドをあとにし、発端となった宿に戻るのだった。
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