スキル『箱庭』を手にした男ののんびり救世冒険譚〜ハズレスキル? とんでもないアタリスキルでした〜

夜夢

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第25話 黒い鴉の正体

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 空が白んできた頃、全ての悪人を倒し終えた二人の前にゲノムが男を一人連れて戻ってきた。

「頭っ! アイツです! アイツが仲間をっ!」
「……使えねぇな」
「え? あ──な、なん……で……」
「「っ!?」」

 男は前に出てレイ達を指差すゲノムを後ろから斬り絶命させた。

「ふん、おいお前ら」

 男は片手剣に付いた血を払いレイに向ける。レイは剣を構え男に尋ねた。

「お前が黒い鴉のリーダーか?」
「あ? まぁ……そうだな。俺が黒い鴉の頭目【ネスト】だ」

 ネストと名乗る男は全身に黒く染めた鎧をまとい、刀身まで黒い剣を掲げている。顔はマスクでハッキリとはわからないが、レイよりは年上だ。

「そうか。ならあんたを倒せば終わりって事になるかな」
「倒せるならな。ま、戦う前に一つ話でもしようか」
「話?」

 ネストは剣を納めマスクを外す。顔には大きな古傷が見える。ネストは懐から煙草を取り出すとそのまま咥え火を点けた。

「ふぅ~……。お前、名前は?」
「レイだ」
「ほ~う。んじゃレイよ。お前、この国をどう思うよ」
「は? どういう意味だ」

 ネストは煙を吐き頭を搔く。

「そのまんまの意味だ。この国は世界中で戦をしてる中、平和を享受してやがる」
「? 別に良い事じゃないか」
「良くねぇよバカが」
「なんだと!?」

 ネストは咥えていた煙草を足でもみ消し新しく煙草を咥え火を点ける。

「戦ってなぁすればする程強くなるもんだ。お前さん、この国の生まれじゃねぇだろ」
「それがどうした」
「この国を見てわからないか? 争いのないこの国は誰も彼も雑魚ばっりだ。こんな小さな組織でも幅利かせられんだぜ? みっともねぇとは思わねぇか?」

 ネストは空を見上げ呟いた。

「今はまだ侵略する価値すらねぇ国だから隣の国も仕掛けてこねぇがよ。いずれ物資が足りなくなったらこの国に仕掛けてくるかもしれねぇ。そうなった時、戦い方を知らねぇこの国は終わりだ」
「お前は結局何を言いたいんだ。まさかとは思うけど自分の行いが正しいと思ってるんじゃないよな?」

 するとネストは腹を抱えて笑った。

「ひははははっ。正しい? 正しいだろ。戦になったらこの国は終わる。黒い鴉はよ、ただの犯罪者集団じゃねぇ。国家を転覆させるために集まったテロリスト組織の一つだ!」
「なっ!? テロリストだって!?」
「おうよ。ちなみに、黒い鴉一つ潰した所でテロは止まらねぇよ。同じような組織は国中にある。そんでまぁ……俺らにここまでしちまったお前さんは第一級のターゲットに指定された。おめでとさん」

 ネストはバカにするように笑いながら手を叩いた。

「僕がターゲットか。丁度良い、黙っていてもお前達が襲いにきてくれるんでしょ? 楽で助かるよ」
「はっはっは。舐めてんなお前? 今のこの国に不満を抱えてる奴なんか山程いるんだぜ? それに対してお前は一人……いや、二人か? 勝てると思ってんのか?」
「当然勝つね。負けるつもりで戦う奴はいないよ」
「ま、そうだわな」

 ネストは咥えていた煙草を吐き捨て真面目な表情に変わった。

「最後に一応聞いといてやるぜレイ。お前、俺達の仲間にならないか?」
「なるわけないだろう」
「だよなぁ」

 ネストが剣を抜き構える。それを受けレイも剣を構えた。

「んじゃ始めっか。殺しちまうには惜しい男だが従わねぇってんなら敵だ。敵は容赦しねぇ。この国をどこよりも強い国にするためだ、死んでくれ」
「そんな歪んだ考えには賛同できない! 強さが全てとか間違ってる! 僕は勝ってお前達の考え方を否定するっ!」
「やってみろ若造っ!」

 ネストとレイは同時に飛び出し鍔迫り合いになる。

「こいつっ! この馬鹿力がっ!」
「こんなものかっ! これで国を変えるとかよく言えるなっ!」
「はっ、今にわかるさ。アァァァァァッ!!」
「え?」

 二人の剣の間に火花が散る。剣の根本でぶつかり合っていた力がズレ、ネストの剣がズリ上がりレイの剣に入っていたヒビから剣を真っ二つに叩き割った。

「け、剣がっ!」
「終わりだな。武器はちゃんと整備しとかなきゃダメだぜ! 死ねっ!!」
「くっ、まだだっ!!」
「なっ!?」

 レイは振り下ろされる剣を見切った上で腹に掌打を叩き込む。その衝撃が黒い剣にヒビを入れ、次に繰り出した蹴りでネストを後方に吹き飛ばした。

「ごはっ!? こ、こいつ格闘もできんのかよっ!? くっそ痛ぇっ! 思いっきり蹴り入れやがって!」
「自分から後ろに飛んだか。やるじゃないか」
「くそっ、剣が死んだかっ」

 その時、ネストの手に石が触れた。

「どうした、降参か?」
「……ま、ここまでかな。剣がなきゃ俺は何もできねぇ。今日は降参しとくわ」
「今日は? まさか逃げられるとでも?」
「まあな。ほれ」
「あっ!」

 ネストが触れた石。それはゲノムが持っていた転移石だった。ネストは口に溜まった血を吐き転移石を掲げた。

「今日は負けといてやるよ。だが次はねぇ。お前の力は見切ったからよ。次はもっと強ぇ奴を連れてきてやんよ」
「逃がすかっ!」

 レイは逃してはならないとネストに飛びかかる。だがレイが捕まえるより早くネストの握った転移石が光った。

「あばよっ!」
「あっ! くそっ!」

 レイの手が触れる直前、ネストは光が包まれその場から消えた。レイは勢い余り地面に転がった。

「逃したか~……。あとちょっとだったのになぁ」
「レイ~!」
「リリー……」

 レイは身体を起こし駆け寄ってきたリリーに言った。

「ごめん、逃した」
「大丈夫なのっ。お互い武器も壊れたし引き分けなのっ!」
「引き分け……かぁ。はぁ、僕もまだまだだなぁ~……」

 そう呟きレイは地面に転がり天を仰ぐ。

「テロリスト……か。平和なこの国を争いに巻き込もうとするなんて絶対に許せない!」
「どうするなの?」

 レイは少し考えリリーに告げた。

「冒険者ギルドを使おう。リリー、ちょっと冒険者ギルドに行って黒い鴉を討伐したって伝えてきてもらえるかな?」
「わかったなのっ。レイは少し休んでるなのっ!」
「頼んだ」

 リリーが町に向かった後、レイは積み上がった死体の山を見る。

「黒い鴉は頭目以外全部潰せたかな。でもあいつ……まだ他にも似たような組織があるって言ってたよなぁ。あ~……どれだけいるか聞いておけばよかったなぁ~」

 そう呟き柄だけになった剣を見る。

「剣も新しくしないと。これはいよいよリリーの生まれ故郷まで行かなきゃダメかな。ドワーフの打つ剣は頑丈らしいし。やる事が山積みだ」
「レイ~!」
「お、来たか。よっと」

 リリーが冒険者ギルドの職員を引き連れ戻ってきた。レイは疲れた身体を起こし、到着した冒険者ギルド職員に事の顛末を話すのだった。
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