喋る玉を拾った僕の不思議な物語~拾った玉は何でも願いを叶えてくれる不思議な玉でした~

夜夢

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第15話 護衛依頼

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 ギルドマスターにつき二階の部屋に入る。そこには先客がいた。先客はソファーに腰掛けこちらを見ている。後ろの二人は護衛だろうか、騎士のような出で立ちをしている。

「お待たせしました。こいつが先ほど名前の出たライルです。ライル、こちらは我が国プラウヴァルトの姫君であらせられる【リーン・プラウヴァルト】様だ。挨拶を」
「ひ、姫!? ははぁぁっ! 僕は南にある小さな村出身のライルと申しますっ!」

 それを受け姫は口にしていたティーカップをテーブルにおく。

「そう畏まらずとも良い、ライルよ。こちらは願い出ている立場なのでね」
「は、はぁ。願い出ている? マスター、何の話でしょう?」

 ライルの問い掛けにギルドマスターが答える。

「実はな、プラウヴァルトにダンジョンが出現したんだ」
「ダンジョン?」
「ああ。できたばかりだがなかなかに深くてな。先立って百名ほどの騎士を向かわせたそうだが……一ヶ月経っても誰一人戻らなかったそうだ」

 その前にとライルは言った。

「マスター、ダンジョンって何ですか?」
「あぁん? そうか、お前まだダンジョン行った事なかったか。ダンジョンって言うのはな……」

 そこに姫の後ろにいた騎士が口を挟む。

「姫、さすがにこの方では……」
「ダンジョンが何かも知らない足手まといを連れて行っては逆に危険が……」

 姫はその言葉を片手で制した。 

「そんな事はどうでも良い。要は力があるかどうか。マスター、彼はあなたが推薦した。それはこの依頼をこなせる力があると判断したからであろう?」
「はい。ライルなら朝飯前というやつですな」
「それは頼もしい。ではマスター。あなたから彼にまずダンジョンとは何か説明を」
「ははっ」

 ギルドマスターはライルにダンジョンとは何かを説明していく。

「ライル、ダンジョンとは魔物の巣窟の事を言うのだ」
「ま、魔物の巣窟!?」
「そうだ。ダンジョンの中で死んだ者はダンジョンに吸収され糧にされる。代わりに、魔物を倒すと宝箱が手に入るんだ。中身はランダムだ。使えるアイテムもあればゴミアイテムもある」
「宝箱……ですか」
「ああ。そして何より注意しなければならないのがスタンピードだ」
「スタンピード??」
「そうだ。ダンジョンを放置していたら中で魔物が増え続け、やがてそれが地上に溢れだしてくるのだ」
「あ、危なくないですか!?」
「そうだ。だから新しく発見されたダンジョンは国か冒険者ギルドの管理下に置かれる。国がどうにもならないと判断した場合、冒険者ギルドからハイレベル冒険者が派遣され、冒険者ギルドの管理下となる。今はまだ国の調査段階だ。今わかっているのは訓練された騎士百名が戻らない危険な場所って事だけだ」

 ライルは生唾を飲む。

「そこでだ、国から冒険者ギルドに依頼が入った。姫自ら指揮をとり調査が始まる。そこで冒険者ギルドに護衛の依頼が舞い込んだってわけだ」
「ま、待って下さいよ。僕まだDランクになったばかりの駆け出しですよ?」
「わかっている。だが、この依頼を完遂したらCランクにしてやれる。国からの依頼ってのはそんだけ重要な事なんだ。Cランクになれば国をまたいでの活動が許可されるし、徴兵も免除される。良い話だと思うが」
「えぇぇ……。でもそれ僕一人じゃダメなんですか?」

 それを聞いた騎士達が鼻で笑った。

「はっ、ランクDに成り立ての奴が一人でダンジョンに潜る? 何の冗談だ」
「お前は騎士百名より強いとでも言うのか? ふざけた奴だ。姫、やはり調査は我々だけで……」
「ならぬ。これ以上騎士を減らせば隣国に付け入る隙を与えてしまう」
「ですが……!」

 そこで姫は騎士を見て言った。

「ならば二人でその者の力を試してみれば良いだろう。お前達に負けるようでは話にならぬからな。マスター、よろしいだろうか?」
「構いませんよ。じゃあ地下にある訓練場に行きましょうか。ライル、遠慮なくボゴっちまえ」
「えぇぇぇぇ……」

 ライルは騎士二人をチラリと見る。二人は鬼の形相でこちらを睨んでいた。

「ひぇぇぇ……」

 地下に到着しライルと二人の騎士が対峙する。戦闘前にライルがギルドマスターに尋ねた。

「あの、僕一人で二人相手に?」
「あん? 楽勝だろ楽勝。力の差を見せつけてやりな。ああ、だが殺すんじゃねぇぞ?」
「は、はぁ……」

 そのやりとりを聞き騎士が怒りに震える。

「上等じゃないか。我らとて幾年も日々鍛練を積んだ騎士、ガキ一人に負けられるか!」
「おうっ! 殺す気で行くぞ!!」
「二人とも、やり過ぎないようにね」

 姫は止める気などさらさらないようだ。ギルドマスターが三人の間に立ち手を挙げる。

「いいか? 気を失ったり降参した方の負けだ。負けた方は今後一切勝った相手に逆らわない。それでいいか?」
「「おうっ!!」」
「は、はいっ」 
「よし。では……はじめぇぇぇぇぇいっ!!」
「「おぉあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 騎士二人が合図と共に剣を抜き上段振り下ろしと横凪ぎの連携体勢に入る。

「武技!! 【唐竹割り】ぃぃぃぃっ!」
「武技!! 【水平斬り】ぃぃぃぃっ!」

 確かに当たる直前までライルはその場にいた。だが、二人の騎士が攻撃を当てる直前。

「ふっ……! 【縮地】!!」
「「なっ!? き、消え……」」
「雷魔法……【ショック】!!」
「「んぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 ライルは一瞬で二人の背後へと移動し、首を手で掴む。そして軽い電撃魔法で二人を麻痺状態においやった。

「バ、バカ……な……」
「は、速すぎて……見えなかった……! ぐふっ……」

 二人は手から剣を取りこぼし地面に転がった。そして指一本動かない。その状態をギルドマスターが確認し、ライルの手を天に掲げた。

「勝者ライル!」
「あ、ありがとうございましたっ」

 それを見てリーンは唸った。

「これはこれは……掘り出し物を見つけた気分だ。まさか私の護衛二人を瞬殺とは……ふふふっ」

 こうして、ライルは新たな問題へと巻き込まれていくのだった。 

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みんなの感想(11件)

うめぼし
2021.04.17 うめぼし

ここの最新、待ってますぜ旦那

2021.04.17 夜夢

新作でも読んでてくださると……(´;ω;`)

解除
れび
2021.02.14 れび

2つめの玉ー2つめの玉玉ー
……?
なんかちょっと卑猥。ごめん、純粋な主人公ー!

こんな感じで現在脳内論争勃発中です。更新待ってます!

2021.02.14 夜夢

ぼちぼち書こうかなぁ~……
休日書きます(笑)

解除
うめぼし
2021.02.09 うめぼし

おっ二つ目ようやく出てきたな…
一つだけであれだけできたと言うことは次はもう少し大きく言っても叶うのかな?
どんな願い事を言うのだろう(まぁ人助けだろうけど)
てか…いま持ってる鉱石群…出したらみんな腰抜かしそう…

2021.02.10 夜夢

とりあえず願いは保留で( ´∀`)

鉱石はね……依頼分しか出しません(笑)

解除

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