スキルで快適!異世界ライフ(笑)

夜夢

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第1章 はじまり

01 転生

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    目が開かない。身体が動かない。声が出ない。でも、耳は聴こえる。聞いた事の無い言語だ。かろうじて自分の名前が【レン】と言う事だけは何とか理解出来た。何故、これほど理解が早いのか、それは前世での記憶があるからに他ならない。

    それから幾ばくかの時間が過ぎ、漸く目が見える様になった。母親が何回も同じ童話を開きながら読み聴かせてくれたので、ある程度簡単な言語は理解した。

    蓮は周囲を見回す。この家はあまり裕福そうには見えない…どころか閑散としていた。どうやら父親はあまり家には帰っては来ないみたいだ。たまに来てはまとまったお金と何冊かプレゼントとして本を置いていく。父は蓮にあまり側に居てやれなくてすまない…と謝り、母親に次の依頼に行って来ると告げ、家を出て行った。

    2歳になると蓮は自分の力で家の中を歩き回れる様になった。父は冒険者として稼いでいて、母は近くにある雑貨屋で働いている事も知った。蓮は村の中で一番幼かった。そして、周りはほとんどが大人で、蓮には友達と呼べる者はいなかった。だが、蓮は周りの大人達から色々な話を聞いてすくすくと育っていた。

    蓮が特に興味を持った話が魔法についてだ。どうやらこの世界には魔法があるらしい。誰にでも使える生活魔法から、魔導書から学ぶ属性魔法、神官が使う神聖魔法、エルフ等が使う精霊魔法、ドラゴンなどが使う種族魔法など色々あるらしい。

    父親のプレゼントに魔法の入門書があった事を思い出した蓮はひたすらそれを読み、学んでいった。魔法を使っては倒れてと毎日繰り返していた。おそらく魔力枯渇だろう。

    そんな感じで4歳くらいになると、初級属性魔法を全て使える様になっていた。それに驚いた父親は天才だ!と言い、母親も驚いていた。何日かして父親が中級の魔導書を買ってきた。高かったんじゃないの?と聞くと、仲間の魔導師から貰ったんだと言っていた。確かにボロいが、ありがたい。

    5歳になった。その位になると初級、中級の属性魔法は無詠唱で使える様になっていた。ここ半年程村に滞在していた神官様に神聖魔法も習った。後は精進なさい、と言われたので頑張った。

    6歳になった。どうやらこの歳になると王都にある魔法学院に入学出来るらしい。両親や村の人達から行った方がいいと言われ、援助を受けて行くことにした。

    それから6年…、貧乏人と罵る貴族にイジメられながらも毎日学院の大図書館で勉強に明け暮れた。いつか世話になった村の人達に恩返しがしたくてひたすら努力した。

    卒業間近になると蓮はほぼ全ての魔術が使える様になっていた。皆からは大賢者と呼ばれるまでに。

   そんな12歳となったある日、いつもの様に大図書館にいると突然神の世界に呼ばれた。

「久しいな、工藤 蓮よ。そなたの暮らしぶりはずっと見ておった。よくぞここまで成長したものだ。約束通り1つワシからスキルを贈ろう。何か希望のスキルはあるか?」

    レンは考えていた転生当初から。

「神様、僕は両親や村の皆に幸せな生活をさせてあげたいのです。魔法では無理でした。なので、何か今までの知識を活かせるスキルがあればと。」

「ふむ、ならばスキル【万物創造】を与えよう。イメージや知識から魔力を使い、物質なんかを生み出すと言うものじゃ。」

    神様の手から光が降り注いだ。何か身体が暖かく感じた。

「神様、1つ質問してもいいでしょうか?」

「なんじゃ?」

「このスキルは消えたりしません?」

「あぁ、お主のこれまでの善行を思い、ワシが与えたモノじゃ。もはや死ぬまで消える事はないぞ?」

「ありがとうございました。これからこの力を使って更に精進します。」

「うむ、励むと良い。では、さらばじゃ。もう死ぬまで会うことはないじゃろう。達者でな。」

    目映い光に包まれ…気がついたら大図書館にいた。夢だったのかと思いつつ手の平に石ころよ出ろと念じたら………出た。

「くっ…くくくくくくくっ、ふははははははははっ。」

    突然笑いだしたレンに周りは奇異の目を向けた。失礼しました。と謝り図書館を後にした。

「ふ~っ、馬鹿だなぁ、神。全部演技でしたー。魔法も必要だったから学んだだけですー。全て計画通りだ。」

    この日を境に、真面目だった少年はゲスい少年へとクラスチェンジするのであった。
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