夢追い人~異世界に飛ばされた残念な男は気ままに暮らす~

夜夢

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第1章 異世界らしい。

03 まだ冒険は始まらない

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    ガラテアで暮らして1ヶ月が過ぎた。道具屋に物を売って得た金でミーアには借りを返した。その後、余った金でカジノへゴー。愛斗はブラックジャックとポーカーで荒稼ぎしていた。何故なら、カードを全て覚えられるからだ。最初は軽く張り、カードを全て覚える。後は強い役が出た時のみ大金を賭ける。愛斗は既に億万長者となっていた。

「かははっ。もう笑いが止まりませんな。」

「お帰りなさい、今日はどうだったんだい?」

「あ~。いつも通り、楽勝よ。カジノ様々だねぇ。」

「なぁ、勝つ方法教えてくれよ~旦那ぁ~。」

「はは、宿屋で地道に稼ぎなよ。あいつら平気でイカサマやるし、見抜けなきゃ勝てないぜ。じゃ道具屋に行ってくるわ。買い戻ししなきゃな。」

「ちっ、はいは~い。いってらっしゃいよ。」

    愛斗は金を握り道具屋へと向かった。

「こんちわ~す。」

「あら。いらっしゃい。何か御用?」

「この前売った物、まだある?出来たら買い戻したいんだけど。」

「金貨20枚だったら返すわよ?」

「ちっ、高ぇ…と言う所だが、生憎俺は金を腐る程稼いだからなぁ。払うよ、物を返してくれ。」

「ん。確かに。じゃあこれね。毎度あり~♪」

    楽して儲けた道具屋はニコニコ笑っていた。

    愛斗が道具屋を出ようとした時、一組の冒険者らしきグループが入って来た。

「す、すみません!ポーションとアンチドーテ有りますか!?」

「え~?もう閉店なんだけど…。」

「そこを何とか!仲間が毒で死にかけて…!」

「売ってやれば?あるんでしょう?」

「はいはい…分かったわよ、はい。ポーションとアンチドーテね。」

「あ、ありがとうございます!カトラ、これ飲んで!」

「ん…こくっ…こくっ…。すぅ…すぅ…。」

    顔が紫がかっていた冒険者はすっかり回復し寝てしまった。もう1人の傷だらけだった人もポーションで傷を癒していた。

「あ、ありがとうございました。幾らですか?」

「金貨3枚。」

「は?」

「だから金貨3枚よ。」

「そ、そんな!た、高過ぎます!相場だと銀貨3枚位なのに!」

「あらぁ?売値は店主の自由よ。知らないの?使う前に払うべきだったわね。でも…命の値段にしたら安いモノでしょ?さ、金貨3枚払って貰おうかしら?」

    冒険者達は下を向いて言った。

「そんなお金…持ってません。私達まだ新人で…。」

「知らないわよ。貴方達はお金を払う前に商品を使った。使った分は払って貰わないとねぇ。」

「そんな…。」

    冒険者達は愛斗の方を見た。

「なんだ?金なら貸さないぞ?払えないなら装備でも何でも売れば良いだろ?」

「これを売ったら明日から冒険が…!」

「それこそ知らんがな。彼女の言う通り、値段を確認しないで使ったお前達が悪いんじゃね?諦めれば?」

    冒険者達は装備を外そうとマントを外した。そこでふと愛斗は思った。

「お前達…冒険者だよな?」

「…それが何か?」

「いや、少し話を聞かせてくれたら金貨3枚出してやる。どうだ?」

    冒険者達は顔を見合わせた。

「あの…貴方はお金持っているのですか?」

「ふむ、まぁ…一生遊んで暮らせる位は持ってるよ。カジノ様々だ。ほら。」

    愛斗はテーブルに金貨がぎっしり詰まった袋を1つ置いた。

「そ、それ!全部金貨!?」

「そうだよ。じゃあ此処は立て替えとくから、俺が泊まってる宿屋に行こうか。」

    愛斗は道具屋に代金を支払った後、冒険者達を連れ、自分が借りている部屋に向かった。途中宿屋の親父が親指を立てていたので、愛斗は笑顔で金貨を1枚投げつけてやった。

「先ずは…助けて頂きありがとうございました。それより…ただ話をするだけで本当にお金を貰えるのですか?」

「金なんざ幾らでも稼げる。だが、俺は冒険者や戦闘方法等については全くの無知だ。魔法も使えないしな。兎に角何でも良い、有益な情報なら金貨3枚と言わずに何10枚でもくれてやる。だから、正直にしっている事を全て話せ。」

    冒険者達は頷き、自分達が知っている情報を全て話した。

    まず最初に、この町周辺のモンスターは比較的弱いらしい。簡単な訓練を積んだ冒険者ならば数名集まればまず負ける事がない位には弱い。ただし、状態異常には気を付けないと、こうなると。しっかり準備すれば駆け出し冒険者でも勝てると言う事だ。

    次に、職業(ジョブ)について。これは戦士やら魔法使いやら色々細かく分類されており、冒険者ギルドで登録を済ませる際に、ステータスを確認する時に分かるのがほとんどらしい。大体は成人(15歳)と同時に何かしらの職業に目覚めているとか何とか。冒険者や商人、騎士等を目指さない人にとっては職業は何の意味もなさない。しかし、職業次第で得られるスキルも変わるので、それで人生が変わると言っても過言ではない。例えば王国騎士を目指す若者がいたとする。成人と同時にステータスを確認し、もし戦闘職じゃなかったらそこで騎士への道は閉ざされる。それ位職業とは重要なのである。

    次に魔法について。魔法とは体内に存在する魔力を使い、攻撃や回復、バフ、デバフ等多岐に渡る魔法と呼ばれる奇跡の事をさす。大体は職業がウィザード系統かプリースト系統、が得意としている。希に賢者と呼ばれる職業の者が出るらしい。賢者はあらゆる魔法を使いこなすと言われている。それとは別に誰でも使える魔法も存在する。所謂生活魔法と呼ばれる者だ。これは大体の人が子供の頃親から学ぶ。この世界の人は魔法が使えて当たり前なのだと言う。俺が使えるかどうかはまだ分からん。そもそも魔力が何かも知らないのだ。基礎から分からないから仕方無い。

    最後に、この世界では盗賊等の犯罪者を殺しても罪にはならない。寧ろ殺さなければ、殺されるか奴隷として売られるかしか未来は無いらしい。何て命の軽い世界なんだ。比較的平和な日本で生まれ育った俺には少々辛い現実が待っているのかもしれない。まぁ、いざ危険を感じたら躊躇無く殺るが。

    冒険者達から聞いた話は大変為になった。

「ふむ…中々有益な情報をありがとう。これは謝礼だ。貰ってくれ。」

    と、愛斗は金貨がぎっしり詰まった袋を冒険者達に1つ渡した。

「金貨100枚入ってる。情報料代わりだ。」

「ひ、100枚って!そ、そんなに貰えません!」

「いいよ、余ってるし。そうだな、あそこの柱…よ~く見てみ?」

    冒険者の1人が柱を見た。

「木の…板………って!まさか!?」

「あれ、ぜんぶ金貨一万枚の手形な。分かったろ?金貨100枚なんか痛くも痒くもないんだよ。だから、たまたま出会えた事に感謝し貰ってくれ。それで次からドジ踏むなよ?」

「う…は、はい!あの、お名前は?」

「マナトだ。いずれ商売敵になるかもしれないが、その時はお手柔らかにな?」

「ふふ、その時は先輩冒険者として指導してあげますよ?」

「はは、そりゃいい。何かあったら頼むわ。」

    冒険者達は愛斗の部屋を後にし、宿屋の隣にある食堂へと向かっていた。

「凄い人だったね…マナトさん。あれカジノだけで稼いだんでしょ?よっぽどツイてるかイカサマしてるか…。」

「多分…スキル探知に引っ掛からない何らかのスキルを使っているのでしょう。」

「え?でも…マナトさん…職業の事すら今さっき知ったみたいだし、スキルなんて持ってないんじゃない?」

「「「はっ!?」」」

「な、何者なのかしら…。今後じっくり観察しなきゃならない人みたいね…。」

「あれ~?惚れたのかにゃ?」

「な、なななな何を!?」

「あ、私は良いなぁって思った♪誰も狙わないなら私行こっかなぁ♪」

「「「抜け駆け禁止!!」」」

「な、なんでよー!」

    冒険者達はガールズトークで盛り上がりつつ食堂へと向かっていった。

    その頃愛斗はと言うと。

「まずまずの情報が得られたな。冒険者やら職業、スキルについては大体仕組みが分かった。先ず向かうは冒険者ギルドだな。明日早速行ってみるか。」

    愛斗は漸く冒険者としての一歩踏み出そうとするのであった。
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