夢追い人~異世界に飛ばされた残念な男は気ままに暮らす~

夜夢

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第1章 異世界らしい。

05 レベルアップ?

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    二時間後、愛斗はギルマスの部屋で特製のギルドカードを受け取っていた。 

「これは?」

「本来はランクFから始めるのが普通なんだけど、それだと成長に時間が掛かるでしょ?だからね、愛斗のカードは特別製。FはFでもフリーのFよ。ギルド員にも伝えてあるわ。これはランクのアップダウンが無い代わりに、全てのランクの討伐クエストを受ける事が出来るカードなの。どう?嬉しいでしょ~?」

    愛斗は叫んだ。

「嬉しい訳あるかぁぁぁっ!どうやったら最弱な俺が討伐クエストなんかクリア出来るんだよ!」

「ふふふっ、任せなさい。既に装備を作ってくれるドワーフを確保しているわ。昔の仲間なんだけどね。腕は確かよ。」

「ど、ドワーフって…あの樽みたいな体型のオッサン?」

「それはオスね。私の仲間は女ドワーフよ。因みに…可愛いわ…。」

    女ドワーフ…あの成長が子供で止まってる様な感じの奴だっけ?そんなのが仲間に居るのか、この残念なギルマスに。

「まぁ…そうだな。装備は大事だ。是非ともお願いしたい。あ、そういや俺の装備って何が適正なんだ?職業夢追い人って何が得意何だ?」

「さぁ。適正は無いわね。本人が使いやすいって思った武器が適正なんじゃないかしら。過去の偉人達は剣だったり槍だったり様々居たわ。」

「ほ~ん。使いやすい武器ねぇ。なら…刀かなぁ?アレが一番なれている。一応免許皆伝までいったしな。」

「刀?確か東の大陸で使われている武器…だったかしら。それなら確か…。」

    リリィはクローゼットの中にあった宝箱を引き摺り出し、ガラクタを撒き散らしながら中身を漁っていた。

「これでもない、これも違う…あれぇ~?どこやったっけ?う~ん。」

「な、何をしているんだ?ゴミだらけじゃないか!」

「確かこの中に刀があった筈なのよ~。ないなぁ~…。」

    おかしい…明らかに外に出た物の方が多い。レジストリとか言うモノか?愛斗は茶を啜りながら刀が出るのを待っていた。

「まだなのら?」

「「!?」」

   突然背後から声がしたので振り向いたら、扉を開けて幼女が1人立っていた。

「の、【ノーラ】!?何時から!?」

「ガラクタが山になったあたりかなぁ。リリィは相変わらずなのら。たまには片付けた方が良いのら!そこのお兄ちゃんも呆れてるのらよ。」

    お、お、お兄…ちゃん!?

    愛斗は現世では一人っ子であり、密かに兄妹と言うものに憧れていた。

「そこの幼女よ、俺の名はマナトだ。」

「じゃあ…マナト…お兄ちゃん?」

    おぉぉぉぉぉっ!!お兄ちゃん!初めて呼ばれた!あの子が何歳かは知らないが…お兄ちゃんって!

《職業:夢追い人がレベル2になりました。》

「は?」

「マナトお兄ちゃんどうしたのら?」

「いや、今…職業レベルが上がった…。」

    その言葉にリリィが反応した。

「う、嘘!?もう!?戦闘すらしていないのに!?」

「夢が叶ったからだろうか…。今一良く分からん。」

「夢…マナトの夢って何?」

    愛斗は胸を張って言った。

「俺はっ!弟か妹が欲しかった!そして…お兄ちゃんって呼ばれるのが夢だったんだよぉぉぉっ!!そして…夢はもう1つあるっ!」

    愛斗はノーラを見ながら言った。

「ノーラ、この町に屋敷を買うから一緒に暮らさないか…?」

「のら?ん~…工房も作ってくれるのら?」

「幾らでも作ってやるっ!屋敷と工房の設計を頼むぜっ!」

「やったのら~♪遂に自分の工房兼自宅が持てるのらっ!マナトお兄ちゃん、大好きなのらぁ~♪」

    ノーラは満面の笑みを浮かべ、別室に図面を引きに行った。

《職業:夢追い人のレベルが3にあがりました。》

「なっ、わ、私が先に目を付けたのにっ!なんでよぉぉぉぉっ!うわぁぁぁぁんっ!」

    リリィはガチ泣きしていた。

「リリィ、夢追い人のレベルが3になった。こんなに早く上がるものなのか?」

「は?ちょ、ちょっと!もう3!?1上げるのに普通一年は掛かるのよ…って、そうか!夢追い人は夢を叶えたら1上がる…って事は?」

「いや、ノーラがな、思った以上に妹っぽかった。妹に兄と呼ばれる。妹と一緒に暮らす。多分この2つが叶ったからだなぁ。」

    リリィは崩れ落ちた。

「そ、そんなぁ…。私は1も上げられなかったのにぃ…。」

「諦めるなリリィ、俺の夢はまだある。これはお前にしか出来ない事だ。」

「や、やる!何でもやる!な、何をすれば良いのっ!?」

    愛斗は立ち上がってリリィの肩に手を置いた。

「ゴニョゴニョ…………。」

    リリィはこくんと頷いた。

「よし!行きますっ!こらっ、マナト!お姉ちゃんの言う事をちゃんと聞きなさい!めってしちゃうゾ!?」

「ね、姉さんだぁぁぁっ!あぁぁ…年上のお姉さんに言われるとは…!妹や弟も欲しかったが…、姉も欲しかった!最早得る事は無いと思っていたが…!リリィ、良く言ってくれた。感動したっ!」

《職業:夢追い人のレベルが4にあがりました。》

「おぉぉぉっ!上がった!リリィ、上がったぞ!」

「や、やった…はぁ…も…恥ずかしぃ~。ぱたんっ…。」

    リリィは気を失った。

「やれやれ、だらしない。しかし…職業レベルが上がっても全然強くなった気がしないな。これはあれか?ド◯クエの遊び人みたいなもんか?はぁ…。先は長そうだなぁ。」

    愛斗は服を着替え、下へと降りていった。外は丁度夜で、ギルドに併設された飲食店が賑わっていた。

「成る程、夜は酒場になるのか。」

「あ、マナトさ~ん!」

「あ?」

    愛斗は声を掛けられたので振り向いた。

「昨日ぶりです!無事登録は済みましたか?」

「おお、昨日の冒険者達か。装備が変わってたから分からなかったぜ。」

    彼女達は全身に真新しい装備を纏っていた。

「マナトさんのお陰ですよぉ。この町で最高の装備を整えました。お陰でクエストも捗って捗って♪今日は金貨7枚稼げました。」

「ほ~。なかなかやるなぁ。お前達の為になったのなら良かった。」

    愛斗はキラーンとした笑顔を彼女達に見せた。

    キュゥゥゥゥゥン!!!!

「あ、あの…宜しければ一緒に飲みませんか?」

「ん?良いのか?ってか俺酒飲んだ事ないな(この世界のは)。」

「大丈夫ですよぉ。エールは水と同じれすからぁ~♪」

「…大丈夫じゃなさそう何だが。」

「あははは。気にしない気にしない。さ、飲もう飲もう♪」

    チュン…チュンチュン…。

「い、いたたた。き、記憶が…ねぇ。あれからどうな…」

    むにゅ。

「へ?」

    愛斗の手には丁度良い膨らみが…。

「はあっ!?」

    周りには下着姿の女の子が4人。しかも、全員愛斗に寄り添う様に寝ていた。

「う、嘘…だろ?ま、まさか…。」

「あ、マナトさぁん♪昨夜はありがとうございましたぁ♪」

「は!?」

「うみゅ~…。もう入らないのぉ~っ…くぅ~。」

「はぁ!?」

「実に良い戦いだった…♪」

「ちょ…!?」

「4人一遍に飲み比べだなんて…逞しかったです♪」

    飲み…比べ?そ、そうか!は、ははは。

「な、何だ…ヤってないんだな。よ、良かった!」

「最後の1人と同時に倒れたらしいですよ。宿屋の親父さんがこの部屋に纏めて放り込んだらしいです。」

「あの親父め…。後で悪戯してやる…。」

    宿屋の一室に愛斗の暗い呟きが木霊するのであった。  
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