魔族と組んで異世界無双 2

夜夢

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第1章 始まりの章

14 決着

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    翌日朝、遂に戦いが行われる事となった。枢は深くベールを被り、気配を殺しながら成り行きを見守る事にした。

「従う準備は出来たか?マーレよぉ。」

「ライゾ、戦いはやってみないとわかりませんよ?それと戦う順番に関して提案が。」

    マーレはライゾに昨日枢から聞いた順番を提案する。

「順番なんかどうでも良いさ。それで俺達が先に2勝して終わりだ。」

    マーレは更に続けた。

「私達が勝った場合はどうするのですか?」

「くははっ、まぁ…万に一つも無いだろうが…その時は無理矢理従わせている府抜けた男共を返してやるよ。だがよ、俺は、俺の一団お前には従わない。負けたら集落を離れる。」

「そうですか、それならそれでも構いません。では始めましょうか。」

    マーレは自陣に戻り選手達に語り掛けた。

「素材は落としても構いません。どうせ勝ち目は無いのですから。」

「は、はい。」

「ライム、リンダ…勝てばあの町に…枢さんの町に行ける。ライムは既に関係を持ってしまいましたから尚更負けられませんよ?」

    ライムは胸を張ってマーレに応えた。

「大丈夫さ、私には枢から習った算術がある。全問正解で勝ちますって。」

「頼みましたよ。そしてリンダ?」

「はい。」

「良いですね?勝ったら枢様にお礼をして差し上げなければ…。」

「ふふっ、どちらが先にお礼するかは話し合いで。」

「その気持ちを忘れずに力を発揮してね?では…勝ちますよっ!!」

「「「おぉ~!!」」」

    ライゾはその様子を遠目で見ていた。

「けっ。勝ち目が無えってのによ。お前ら、ミスんなよ?勝ったら素材と引き換えにやりたい放題のパラダイスが待ってんだ。さっさと片付けて来やがれ。」

「「「おうっ!」」」

    それからすこし間を置き、戦いが始まった。

「では、僭越ながら私が進行を。まずは…素材バトルです!代表者、素材を持って前へ!」

    双方から素材を持った代表者が前に進んだ。

「先ずはマーレ側から、これは?」

「い、一角兎の角です。」

    それを聞いたライゾ達が笑い転げていた。

「では、ライゾ側は?」

「こっちは…ポイズンヴァイパーの牙だ!」

「確かに…。鑑定でも分かります。」

    あの司会…鑑定持ちか?価値が分かる奴は貴重だ。町に欲しいな。女側から悲壮な叫びがあがる。どうやら初戦は落とした。予想通りだな。奴等、初戦を勝った事で油断していやがる。

「初戦はライゾ側の勝利です!続きまして…2回戦は計算による対決です。問題は私が今朝用意しました。どちらにも内容は知らされておりません。双方、代表者前へ!」

    計算問題を作れると言う事は…それなりに計算を知っていると言う事か。益々欲しいな。商人として雇いたい位だ。

    双方から代表者が前に出る。テーブルに問題が裏返しで置かれ、合図と共に解き始めるのだろう。ここで枢はライムにある策を仕込んでいた。

「始めっ!」

    開始から凡そ5分、ライムが手を上げた。

「終わりましたー。」

「なにぃっ!?」

「問題を持ってきて。採点するわ。」

「はい、どうぞ?」

    まだ男側が解いてる最中だと言うのに採点が始まった。男側は少し焦りながら問題を解いていく。

「終わりました。結果は後程。」

「くそっ。こっちも終わった!採点してくれ。」

「はい、では…ふむ。こことここ、ここも間違っていますね。2回戦はマーレ側の勝利です!」

「な、なにっ!?嘘だろ!?」  

    場に歓声が響く。

「ま、待て!あっちは何点なんだ!?」

「満点ですよ。不正解なし。マーレさん、いつの間に…。凄いですね?」

「ま、満点…だと!?か、完敗だ…。」

    マーレは勝ち誇った表情を浮かべて言った。

「私だってこれ位はね~?余裕よ余裕♪」

「にしても…早すぎです。私より早いかも…。」

「タネは後で教えてあげるよ。ほら、最後の戦いやっちゃお?」

「あ、はい。これで一対一!最後の料理バトルで勝った方が勝ちとなります!代表者は前へ!それと審査員の五名は此方へ。」

    男女から無作為に選ばれた5名がテーブルに横並びとなる。

「素材の持ち込みは自由。完成したら審査員の前に並べて下さい。では、料理スタート!」

    双方の代表者が調理に取り掛かった。

「負けられねぇっ!此方は分厚いオーク肉の網焼きで勝負だっ!この為に準備した塩と胡椒で焼き上げるっ!」

    …味付けが塩と胡椒のみだと?バカか。料理を舐めてやがる。ただのオーク肉だぞ?キングやエンペラーならいざ知らず…。しかもただ焼いただけ。貰ったな。

「雑な調理です事。見る価値すらありませんわね。此方は勝手にやらせて貰いますわ。」

    リンダは相手を見るのを止め、オーク肉、バード肉、ドラゴン肉をそれぞれ2本の包丁を使いミンチにしていく。それに刻んだ玉ねぎ、人参を混ぜ、ボウルの中で混ぜていく。

「に、肉だと!?一体何処からっ!」

    ライゾが立ち上がり驚いていた。

「後は…キッチリ空気を抜いてっと…。」

    リンダは素早く両手で肉を交差させ、塊の空気を抜いていく。そして、それを5つ作り、小麦粉をまぶしてから焼きに入った。同時に別の鍋で油に芋を揚げ、更に別の鍋で人参のグラッセを作る。練習通りだ。

「出来たぜ!さぁ、食べてくれ。」

    ライゾ側が先に完成させ審査員の前に並べた。

「肉だね、普通の。」

「うん、特に…言う事は無いかな。」

    中々辛辣な…。グルメなのか?

「焼き上がりはオッケーね。後は盛り付けかしら。」

    リンダは熱した鉄板皿にハンバーグを乗せ、芋と人参を飾り付け、特製ソースをわざと別に用意して審査員の前に並べた。

「先ずはソース無しで素材の味をお楽しみ下さい。その後にソースを掛けてもう一度お召し上がり下さいませ。」

    審査員達の喉が鳴る。

「さっきのステーキとは丸で別物だ…。これは期待出来る!」

「あむっ…。うぉぉぉぉっ!?恐ろしく美味いぃぃぃっ!?ザ肉って感じだっ!肉汁が口の中で広がり…更に玉ねぎの食感が良いアクセントにぃっ!」

    なんだアレは…どこぞの評論家か?

「美味しいっ!!昨日より格段にっ!ソース、ソースをっ…!」

    女の審査員がソースを掛ける。熱せられた鉄板でソースが焼け、食欲をそそる香りが会場中に立ち込めた。

「良い匂いだ!これは絶対に美味いっ!あむっ…!ふぉぉぉぉぉっ!?ソースを掛けたら味がまた一段とっ!はっ、もう無いのかっ!?いつの間に…!」

「見た目も味も文句無し…皆さん、これは決まりで宜しいのでは?」

「ああ、マーレ側の勝ちだ。こんなの…ライゾ側の肉がゴミに感じられるぜ。」

「あれは料理とは呼べませんでしたからねぇ。決まりでしょう。」

    審査員達は満場一致でリンダの勝ちを宣言した。 

「ま、負けた…。胡椒まで使ったのに…。」

「はい!料理バトルはマーレ側の勝利です!この結果により、代表者はマーレさんに決定で~す!」

「待てやごらぁぁぁぁっ!!」

    ライゾが立ち上がり司会に詰め寄る。

「な、何ですか?」

「こんな勝負認められるか!女達が肉を用意出来る訳が無えっ!しかも…計算だって怪しいぜ!誰が正解を証明するんだ!ああっ!?」

「わ、私の算術スキルに文句をつけるの!?」

    そこで枢が前に出た。

「そこまでだ。その手を離せ。そいつは俺のモンだ。怪我でもさせたら殺すぞ貴様。」

「なっ!?誰だテメェッ!!」

「誰でも良いだろ。計算にイチャモンつけんならそっちの代表者に解答を確認させてみろよ。少しは出来るんだろ?」

    ライゾは計算代表の男を呼び、ライムの用紙を確認させた。

「全部…合ってます。ライゾさん、もう止めましょうや。俺ら…負けたんっすよ。」

「そっすよ。オーク肉をただ焼いただけであれに勝てる訳が無い。認めましょうや。」

「て、テメェ等ッ!」

    ライゾは司会の女を持ち上げ様とした。が、それは叶わず、手首から先を失った。

「て、ててててててて手がぁぁぁぁぁっ!?」

「傷つけんなって言った筈だ。まだ力量の差が分からないか?次は首を飛ばすぞ?」

    枢は司会の女からライゾの手を剥ぎ取り、魔法で消し飛ばして見せた。

「か、格好いい…惚れた…。」

「「あんっ!?」」

    リンダとマーレが司会の女を睨んだ。

「そ、そうか!分かったぞ!テメェか!女共に要らん知恵を吹き込んだ奴はっ!!」

「ほう?少しは考える頭がある様だな?で?それが何か?別にルール違反じゃないだろ?勝とうと思えば素材勝負だって勝てたんだぜ?一つ譲っただけで油断しやがって。あぁ、良く踊ってくれたよ。良い余興だった。」

「き、貴様ぁぁぁっ!!計画を台無しにしやがって!殺す…殺してやるっ!!お前らっ!武器を構えろ!こいつを殺して集落をモノにすんぞっ!!」

    しかし、誰も武器を構えなかった。

「ライゾさん、止めましょう。勝ち目ねぇっす。」

「そっすよ、それでもやるってんなら…1人でやって下せえ。俺達はもう降りる。謝って許してもらうわ。」

「こ、この腑抜け共がぁぁぁぁっ!貴様らなんぞもう要らんわ!役立たずがっ!!」

    ライゾは武器を構えて枢に向ける。

「一番の役立たずはお前だろうが、ライゾ。終わらせてやる。きな?」

「死にさらせやぁぁぁぁっ!!」

    枢は振り下ろされる剣を指2本で受け止め、ライゾの腹に手を当てた。

「じゃあな、愚か者。【バースト】。」

「げぼっ…て、め…………。」

    ライゾは腹に風穴を開け、絶命した。

「つ、強い!益々惚れ…」

「「あぁん!?」」

「い、いえ…おほほほほ。」

    ライゾの仲間達は震えていた。

「つ、つえぇ…。あのライゾが丸で話にならねぇ…!」

「な、何者だよ。」

「だ、誰でも良い。悪かった!ライゾに脅されて無理矢理やらされていたんだ!反省する!頼むっ!許してくれぇっ!」

    ライゾの仲間達が地に額を擦りながら謝罪していた。

「だってよ、マーレ。どうする?決めるのはお前だ。許しても良いし、許さなくても良い。お前が決めるんだ。」

    マーレは謝る男達を見て言った。

「今後魔族に…いえ、女に手を掛けずに守ると誓うならば許しましょう。」 

「ち、誓う!何でもする。だから命だけは…!」

「分かりました。では、後は枢さん?」

「ああ。良かったな、お前ら。彼女達は全員俺の町に引っ越す。お前らも暴れないと誓うなら連れていってやる。どうする?」

「従うよ。俺達は今後貴方に忠誠を誓う。だから俺達も連れていってくれ。いや、下さい!」

「分かった。荷物を纏めておけ。明日の昼には此処を出る。良いな?」

「「「「は、はいっ!」」」」 

    こうして、争いは終結した。その夜、集落では宴が開かれる事になるのであった。 
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