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第1章 始まりの章
17 町の様子と今後
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枢が貨幣制度を施行し数日後、様々な人達が質問にやって来ていた。
「換金場所ってあります?」
「ダンジョン近くにある店で素材を換金出来るぞ。そして、欲しい素材があれば買う事も出来るから行ってみてくれ。」
「この貨幣、相場は変動するのかい?」
「市場にある物質の量次第で物質の値段は変わるが、貨幣の価値は変わらない。例えば、薬草が千枚ある時は銅貨1枚で買えるが、数が少なくなると値段が上がると言う事もある。」
「物々交換じゃダメなの?」
「自分が損してもいいなら構わないぞ?貨幣は物の代わりだ。高い時に売って金に代え、安いときに買う。得だろう?」
「素材の価値は誰が判断するんだ?」
「店にいる店員が鑑定スキル持ちだ。鑑定し、適正価格を付けてくれる。間違ってもイチャモンつけるなよ?店は俺の庇護下にある。暴れたら俺が出ると思え。」
連日枢の家に質問をしに来る魔族達。枢は対応に追われ未だに新しい魔族を探しに行けないでいた。
「ミスった…。役所作ってからにすれば良かった…。」
ラピスが枢にお茶を出しながら労った。
「大変ですねぇ…。でも、貨幣制度は順調に機能しているみたいですね。少し文化的になった気もしますし。」
「まぁ…な。ん?ラピス…その抱えているのは…。」
「あ、先日産まれましたの。私達の子供ですよ?」
「は、はぁぁっ!?早くね!?」
「?そうでしょうか?私達魔族は妊娠から出産まで凡そ10日、知っているでしょう?」
10日…だと。そんな周期で産まれたら直ぐに魔族が増えるんじゃないか!?
「産んだらまた直ぐに妊娠可能なのか?」
「いえ、産んでから1年は生理がありません。」
成る程なぁ…。この世界ではそんな仕組みに…。
「アナタ♪この子に名前を付けて貰えます?因みに…男の子です。」
「長男か!でかしたぞ、ラピス!そうだなぁ…悩むなぁ…。」
「ふふっ、嬉しそうですね♪」
「そりゃあな?何せ俺の第一子だしなぁ。うん、決めた。名前は【ファウスト】だ。」
「ファウスト…強そうな名前ですね。」
「まぁ…俺の子だしなぁ。強くなるだろう。次の長にするつもりだからな。育ったら英才教育をせねば!」
「…やりすぎは禁物ですよ?」
「ああ、大事に育てるさ。ありがとうな、ラピス。愛してるぞ?」
「あ…。ふふっ、はいっ、アナタ♪」
「あの~質問が…。」
「「空気読め(や)(んで)!!」」
「す、すみませんっしたぁぁぁぁっ!!」
と、こんな一幕があったものの、町は順調に発展していた。
「いや~、ダンジョン楽しいな!死ぬ心配なく腕が磨けるなんてよ。」
「素材も買い取って貰えるしなぁ。もう少し稼いだら嫁さんでも貰うかなぁ。」
「だな!この町に来て良かったぜ!」
魔族達に余裕が見えて来た。安定した稼ぎと安全に食糧を手に入れられる環境が良い効果を生み、次第に結婚するカップルも増えて来た。
「良い傾向だ。さて、漸く質問も一段落したし…次の集落を探しに向かうとするか。」
枢は町を眺めながら結果に満足していた。それから3ヶ月が過ぎ、枢は大陸中に散らばるほぼ全ての魔族を町に集めた。町の住民は新しく産まれた子を合わせて凡そ7000、これからも増える事を予測し、枢は町を更に拡張した。
「あの小さかった集落が今やこんな大きな町に…。ほっほ、主に任せて良かったわい。」
「魔族は全て集まった。争いもなく皆楽しい毎日を送っている様だ。これならもう絶滅の危機は去ったと見て良いだろう。」
「魔族の救世主じゃな、主は。時に枢殿、主はこれからどうするのじゃ?」
「どう…とは?」
長は奥にあるタンスの引き出しから世界地図を持ってきてテーブルに広げた。
「これは…世界地図か!持っていたのか!」
「うむ。この大陸に押し込められる以前の地図じゃがな。大陸の位置は変わらんじゃろうが…国々は様変わりしておるじゃろう。」
「いや、大陸の位置が分かるだけでもありがたい。この大陸はどこだ?」
長は地図の右下にスッと指を置いた。
「ここじゃよ。」
「…大陸ってより…島じゃねぇか。」
「うむ。陸地の全てが森、更には強力なモンスターが跋扈する恐ろしい島じゃ。」
そうだ、忘れていた。まだやらなきゃいけない事があった。
「今の話を聞いてやる事を思い出した。この大陸にあるダンジョン、それを破壊しないと。」
「ダンジョンは3つあるとされておる。島の最北に1つ、西に1つ、そして、この集落から東に行った場所に1つじゃ。一番弱いのが東、続いて西、北に至っては想像すらつかない程危険なダンジョンらしい。それでも行くのか?」
枢はさも当たり前の様に答えた。
「行かない訳にはいかないだろう。安心して外も出歩けないんじゃ意味がないからな。危険がある内は真に平和になったとは言えないからな。まぁ、俺に任せておけ。パパッと片付けて来てやるよ。」
「頼もしいのう。何も出来ずにすまんの…。主に頼りきりじゃ。」
「気にするなよ。俺が望んでやっている事だ。大船に乗ったつもりで待っててくれ。」
「かたじけない。最後まで頼らせて貰うぞ。主が居ない間は町は儂に任せい。その位は役に立ってみせようぞ。」
「ありがたい。そうだ、他の集落の長達を集めて議会を作ってくれないか?」
「議会?」
「ああ、俺には直接言えないかもしれないが、長く集落の長をしていた奴になら言える事もあるかもしれない。長にはそれを纏めて欲しい。マーレと2人でやってみてくれないか?」
長は枢の頼みを二つ返事で受け入れた。
「成る程、主と民達の中間に立てば良いのだな?」
「理解が早くて助かる。そう言う事だ。出来るか?」
「任せてくれぃ。伊達に長く生きておらんのでな。議会と言ったか、直ぐに動くとしよう。」
こうして、枢は町に新たなシステムを組み込み、大陸最後の問題へと立ち向かって行くのであった。
「換金場所ってあります?」
「ダンジョン近くにある店で素材を換金出来るぞ。そして、欲しい素材があれば買う事も出来るから行ってみてくれ。」
「この貨幣、相場は変動するのかい?」
「市場にある物質の量次第で物質の値段は変わるが、貨幣の価値は変わらない。例えば、薬草が千枚ある時は銅貨1枚で買えるが、数が少なくなると値段が上がると言う事もある。」
「物々交換じゃダメなの?」
「自分が損してもいいなら構わないぞ?貨幣は物の代わりだ。高い時に売って金に代え、安いときに買う。得だろう?」
「素材の価値は誰が判断するんだ?」
「店にいる店員が鑑定スキル持ちだ。鑑定し、適正価格を付けてくれる。間違ってもイチャモンつけるなよ?店は俺の庇護下にある。暴れたら俺が出ると思え。」
連日枢の家に質問をしに来る魔族達。枢は対応に追われ未だに新しい魔族を探しに行けないでいた。
「ミスった…。役所作ってからにすれば良かった…。」
ラピスが枢にお茶を出しながら労った。
「大変ですねぇ…。でも、貨幣制度は順調に機能しているみたいですね。少し文化的になった気もしますし。」
「まぁ…な。ん?ラピス…その抱えているのは…。」
「あ、先日産まれましたの。私達の子供ですよ?」
「は、はぁぁっ!?早くね!?」
「?そうでしょうか?私達魔族は妊娠から出産まで凡そ10日、知っているでしょう?」
10日…だと。そんな周期で産まれたら直ぐに魔族が増えるんじゃないか!?
「産んだらまた直ぐに妊娠可能なのか?」
「いえ、産んでから1年は生理がありません。」
成る程なぁ…。この世界ではそんな仕組みに…。
「アナタ♪この子に名前を付けて貰えます?因みに…男の子です。」
「長男か!でかしたぞ、ラピス!そうだなぁ…悩むなぁ…。」
「ふふっ、嬉しそうですね♪」
「そりゃあな?何せ俺の第一子だしなぁ。うん、決めた。名前は【ファウスト】だ。」
「ファウスト…強そうな名前ですね。」
「まぁ…俺の子だしなぁ。強くなるだろう。次の長にするつもりだからな。育ったら英才教育をせねば!」
「…やりすぎは禁物ですよ?」
「ああ、大事に育てるさ。ありがとうな、ラピス。愛してるぞ?」
「あ…。ふふっ、はいっ、アナタ♪」
「あの~質問が…。」
「「空気読め(や)(んで)!!」」
「す、すみませんっしたぁぁぁぁっ!!」
と、こんな一幕があったものの、町は順調に発展していた。
「いや~、ダンジョン楽しいな!死ぬ心配なく腕が磨けるなんてよ。」
「素材も買い取って貰えるしなぁ。もう少し稼いだら嫁さんでも貰うかなぁ。」
「だな!この町に来て良かったぜ!」
魔族達に余裕が見えて来た。安定した稼ぎと安全に食糧を手に入れられる環境が良い効果を生み、次第に結婚するカップルも増えて来た。
「良い傾向だ。さて、漸く質問も一段落したし…次の集落を探しに向かうとするか。」
枢は町を眺めながら結果に満足していた。それから3ヶ月が過ぎ、枢は大陸中に散らばるほぼ全ての魔族を町に集めた。町の住民は新しく産まれた子を合わせて凡そ7000、これからも増える事を予測し、枢は町を更に拡張した。
「あの小さかった集落が今やこんな大きな町に…。ほっほ、主に任せて良かったわい。」
「魔族は全て集まった。争いもなく皆楽しい毎日を送っている様だ。これならもう絶滅の危機は去ったと見て良いだろう。」
「魔族の救世主じゃな、主は。時に枢殿、主はこれからどうするのじゃ?」
「どう…とは?」
長は奥にあるタンスの引き出しから世界地図を持ってきてテーブルに広げた。
「これは…世界地図か!持っていたのか!」
「うむ。この大陸に押し込められる以前の地図じゃがな。大陸の位置は変わらんじゃろうが…国々は様変わりしておるじゃろう。」
「いや、大陸の位置が分かるだけでもありがたい。この大陸はどこだ?」
長は地図の右下にスッと指を置いた。
「ここじゃよ。」
「…大陸ってより…島じゃねぇか。」
「うむ。陸地の全てが森、更には強力なモンスターが跋扈する恐ろしい島じゃ。」
そうだ、忘れていた。まだやらなきゃいけない事があった。
「今の話を聞いてやる事を思い出した。この大陸にあるダンジョン、それを破壊しないと。」
「ダンジョンは3つあるとされておる。島の最北に1つ、西に1つ、そして、この集落から東に行った場所に1つじゃ。一番弱いのが東、続いて西、北に至っては想像すらつかない程危険なダンジョンらしい。それでも行くのか?」
枢はさも当たり前の様に答えた。
「行かない訳にはいかないだろう。安心して外も出歩けないんじゃ意味がないからな。危険がある内は真に平和になったとは言えないからな。まぁ、俺に任せておけ。パパッと片付けて来てやるよ。」
「頼もしいのう。何も出来ずにすまんの…。主に頼りきりじゃ。」
「気にするなよ。俺が望んでやっている事だ。大船に乗ったつもりで待っててくれ。」
「かたじけない。最後まで頼らせて貰うぞ。主が居ない間は町は儂に任せい。その位は役に立ってみせようぞ。」
「ありがたい。そうだ、他の集落の長達を集めて議会を作ってくれないか?」
「議会?」
「ああ、俺には直接言えないかもしれないが、長く集落の長をしていた奴になら言える事もあるかもしれない。長にはそれを纏めて欲しい。マーレと2人でやってみてくれないか?」
長は枢の頼みを二つ返事で受け入れた。
「成る程、主と民達の中間に立てば良いのだな?」
「理解が早くて助かる。そう言う事だ。出来るか?」
「任せてくれぃ。伊達に長く生きておらんのでな。議会と言ったか、直ぐに動くとしよう。」
こうして、枢は町に新たなシステムを組み込み、大陸最後の問題へと立ち向かって行くのであった。
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