転生発明家は異世界で魔道具師となり自由気ままに暮らす~異世界生活改革浪漫譚~

夜夢

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第1章 転生

第4話 家を造ろう

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 姉に懇願されエルフの里入り口でしばらく暮らす事になったアースだったが、家を姉妹が作ると言ってから数日、中々その作業は進まなかった。

「……ねぇ、本当に家建てられるの?」
「ま、任せておけ! 子供は何も心配しなくていいんだ!」
「お、お姉ちゃ~ん、今にも崩れそうだよぉぉ……」

 そして崩れた。

「ぐぬぬ……。よもや家造りがこんなに難しいものだったとは……!」

 これがもう三度ほど繰り返されていた。最初に手を貸そうとしたら姉に"これは礼だ、アースはそこで見ていてくれ"と言われて断られた。だが見ていて申し訳なくなってきた。姉妹も集落には入らず、この入り口でアースとずっと野宿していたのだった。

「はぁぁ。もう諦めて俺に任せてよ。これじゃ森を出た方がマシな気がしてきたよ……」
「……うぅぅぅっ、何故上手くいかないのだ!」
「そこからかー……」

 アースは姉妹の作業をずっと見ていて気付いていた。姉妹は採寸もなにもせず、ただ木を蔦でまとめ組んでいただけ。これでは一生かかっても家は完成しないだろう。

「仕方ないなぁ……。じゃあ口だけ出しても良い?」
「……なに? アースは家の作り方がわかるのか?」
「うんまぁ……。木の上に作るのはわからないけど、地面に建てるならわかるよ」
「そ、そうか! ならすまないが教えてもらえるか? さすがにもうどうして良いかわからなくなっていたんだ……」

 姉の長い耳がしゅんっと垂れ下がっていた。

「はいはい。じゃあ……先ずは設計図からちゃんと作ろう」
「設計図?」
「……書きながら教えるよ」

 どうやら設計図すら知らなかったらしい。これで家を建てようと言うのだから吃驚仰天だ。

 アースは地面に木の枝で線を引きおおよその形を記していく。

「先ずは土台ね。これがしっかりしてないと建物が歪んでしまうんだよ」
「ふむふむ……」
「土台は平行になるようにこう魔法で平らに」

 アースは目の前に土魔法で平らな土台を作る。

「なるほどなるほど」
「で、土台には柱を立てる穴を開けておく。そこに柱をこう立てるんだよ」

 アースは風魔法で加工した木材を設計図通りに立てていく。

「ほほ~う」
「立てたら次は梁を渡すんだ。数字通りに加工していればキッチリと組める」

 アースは垂直に立てた柱にどんどん梁を渡していく。ついでに三角屋根も型にしておく。

「おお、家っぽくなってきたぞ!?」
「そしたら次は壁ね。柱と柱の間に板を張っていく。外側から板を張って中に断熱材代わりに葉っぱを圧縮した物を入れ、今度は内側から板を張るんだ。あ、窓になる部分は開けておくように」
「ふむふむ」

 姉は集中しているのか気付いていなかった。

【ここまでの作業全部をアースが行っていた事を】

「本当は釘があれば良いんだけどないから土を高圧縮した代用品で賄う。後は屋根の部分に板を張って、木が雨や風で痛まないように葉を重ねて並べよう」
「ああ、それは大事だな。屋根がないと困る」
「そしたら次は内装ね。これも部屋ごとに仕切りを作るように板を張っていこう」
「ふむふむ……」

 アースは内装まで手掛け、二階に上がる階段、リビング、ダイニング、個室と瞬く間に内装を仕上げる。絨毯などは無いため、板張りのままだが、これはこれで味があっていいのかもしれない。

「最後に外壁ね。これは白砂と言って塗ると壁が白くなるんだ。火山灰と白砂、それに水を加えて練る」
「ほぉ~……」

 アースは窓枠を嵌めた後、外壁を白く塗り固めて作業を終えた。

「はい、完成! これが家の作り方だよ」
「「おぉぉぉぉぉぉっ!」」 

 姉妹の目の前に立派な一軒家が完成した。

「って私達何もしていないではないか!」

 ようやく気付いたらしい。だが家は既に完成してしまっていた。ここでアースが姉妹に言った。

「あはは、まだ家具とかはないからさ、そこを協力していけばいいんじゃないかな?」
「むぅぅぅ……。子供の癖になんて生意気な……」

 もう百年以上前世で生きていたなんて言えないよね。

「凄くしっかりした家です! アースさん、凄い!」
「ありがとう。もし次にまた家を作る機会があったら今見せた事を思い出しながら作ると良いよ」
「はいですっ!」

 それから数日かけ、姉妹には家具を、アースは家の外に屋根付きの釜戸を作った。これまで何度か食事を共にしてきたが、エルフは焼いた石の上で肉を焼いたり、焚き火で炙って食べたりしていた。現代で育ったアースはそのワイルドさに若干付いていけなく、釜戸を作ったのだった。

「さて、次の作業に移ろう」

 アースは山で集めていた鉄鉱石を使い、神から与えられたスキル【発明】を使用した。

「発明! 包丁!」

 アースがスキルを使うと、手に握られていた鉄鉱石がその姿を包丁へと変化した。姉妹二人は家具作りに没頭し気付いていない。

「発明! 鉄鍋!」
「発明! フライパン!」
「発明……発明……!」

 アースは調理器具をガンガン作っていく。これも快適な生活のためだと自重することはなかった。結果、やり過ぎた。

「アース! これらはなんだ!?」
「あ、あはは。料理に使う道具だよ」
「料理とは……こんなに沢山の道具を使うものなのか? 焼いて食えればそれで良いではないか」
「そんな原始人みたいな生活嫌だよ……」
「げ、原始人? 私達がか!?」

 違うと言うのだろうか。

「そうだよ。どうせ食べるなら美味しいものを食べたいじゃん。明日からこれを使って俺が料理の基本を教えてあげるよ」
「ふ、ふんっ。そこまで言うならやってもらおうじゃないか! ま、不味かったら承知しないからなっ」

 こうして、家を完成させたアースは次に衣食住で大事な食について姉妹に講義を行うのであった。
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