異世界召喚されたが無職だった件〜実はこの世界にない職業でした〜

夜夢

文字の大きさ
17 / 106
第一章 始まり

第17話 別れ

しおりを挟む
 夜まで町の外に出て薬の材料になりそうな素材を集めた俺は一度宿に戻った。ちょうど夕食後で酒を飲んでいたグレッグに出掛けてくると伝えるといきなりニヤニヤし始めた。

「おいお~い、こんな時間からお出掛けかぁ~? 女か? 女だろ? 手がはぇぇな~」
「何言ってんだか。依頼だよ依頼」
「何の依頼だ~? 夜の対戦相手かぁ~?」

 酔っ払ったグレッグは下品極まりない。そんなグレッグを無視しガロンが問い掛けてきた。

「明日じゃだめなのか? もう夜になるが」
「ちょっとね。依頼者はギルドの受付なんだよ。それに欲しい物があるからさ」
「……そうか。依頼はすぐ終わるのか? 明日にも盗賊達が事切れそうでな」

 明日で剣は完成する。そちらは問題ないが、あるとすれば今日受けた依頼の方だ。病次第では終わらない可能性すらある。

「微妙に間に合わない……かもしれない」
「そうか」

 ガロンは何やら考え真剣な表情で俺に問い掛けてきた。

「なあリヒト。お前この町に残る気はないか」
「え? い、いきなり何言ってるんだよガロンさん。残る気なんてないよ。俺は村に帰るよ」
「……リヒト、お前はまだ若い。何かやりたいことはないのか?」
「あるよ。村のために俺ができることを増やして力になりたい」
「できる事を増やすか。ならなおさら村にいたらダメだ」
「な、なんでだよっ」

 ガロンは立ち上がりグレッグも少し正気に戻った。

「リヒトよぉ、なにも一生離ればなれになるわけじゃねぇんだ。村のことを考えてくれるのはありがてぇよ? だがな、お前にはもっと広い世界に出てもらいたくてな」
「や、やめろよグレッグ! 俺は村で暮らしたいんだっ!」

 そんな俺にガロンも続いた。

「リヒト、いつまで借家で満足する気だ。あの村にいたらお前は小さなまま終わってしまうだろう」
「べ、別に良いよ小さくても」
「ふぅ。なら言うが最近お前は俺達といる時間より冒険者活動をしている時間の方が多いだろう?」
「そ、それは剣が欲しくて」

 先ほどまで酔っ払っいたグレッグが今はシラフに見える。

「村にいた時は剣のことなんか口にしたことすらなかっただろ。毎日同じことの繰り返しで飽きてたんじゃねぇの?」
「怒るよグレッグ。村での暮らしに飽きるなんてありえないよ」
「わかってんよ! だぁぁもうっ! ガロン、無理だ! 俺には説得できねぇ」
「は?」

 ガロンは肩をすくめ俺に言った。

「リヒト、村を思ってくれるのはありがたい。だが俺達もお前のためを思っていってるんだ。村で暮らすより広い世界に出てみろ。困っているのは俺達の村だけじゃない、お前の力はこの国を良くするために振るって欲しい」
「国なんか……どうだっていい。みんなと暮らせたらそれで満足んだよ」
「甘えるなリヒト。エイズームから追放され俺達の村に流れてきたお前は今安寧を求め過ぎているだけだ」
「そんなことはないっ! 俺は村が、みんなが好きなんだ!」
「だからだ」
「え?」

 グレッグは再び酒を煽りながら言った。

「隣の国で戦争が起きてる。エリンは戦う力がない脆弱な国だ。せっかく作った野菜なんかも無理矢理徴収されちまうんだ。逆らったら国ごと消されちまう」
「無理矢理だなんて……」
「俺達だって余裕があるわけじゃねぇ。戦争が起きてる今年は節制しなきゃ暮らしていけねぇんだわ。俺達もギリギリで生きてるんだ。お前は一人でも生きていける力がある」

 酔ったグレッグの目が赤くなっている。

「会いたくなったら村にくればいい。なに、二度とくるなって言ってるわけじゃねぇ。もっと世の中を知れよ。俺達はずっとあの村で暮らしてきたからお前に道を示してやれねぇんだ。くっ……わりぃガロン、あとは頼むわ」

 グレッグが顔を隠し身体を背けた。

「リヒト、始めて一緒に狩りに出掛けた時から数日で成長したお前には必ず才能がある。何が理由で追放されてきたかわからないが見返してやりたくはないのか?」
「それは……正直バカにされて悔しかったのは覚えてるけど」
「悔しいと思うならもっと成長するんだ。相手が何かは知らないがお前ならいつか乗り越えられる。だが村にいたら小さくまとまり夢は叶わないだろう。せっかくこの世に生まれてきたんだ、人生を楽しめリヒト」

 大恩あるグレッグに尊敬するガロン。この二人から説得されたらもう折れるしかない。他人への感情が希薄だった俺が一応人間らしくなれたのは二人と村のみんなのおかげだ。

「わかったよ。けど二人には真実を話しておくよ。聞いてもらえるかな」
「ああ」

 俺はグレッグとガロンに全てを語った。

「異世界……召喚だと?」
「自分でジョブを変えられる……のか。なるほど、どうりでな。グレッグ、見ただけでジョブを手に入れられるってどう思う?」
「正直……危険だ。リヒトはこの世界にある全てのジョブを手に入れられる可能性がある。例えば勇者は勇者のスキルしか使えないが、リヒトは単独で勇者や他のスキルを使えてしまうだろう。エイズームはバカな真似をしたなと思う」
「だよなぁ。だったらなおさら広い世界に出してやらねぇとな。リヒト、一ついいことを教えよう」
「いいこと?」

 グレッグは笑いながら言った。

「ジョブの中に時空魔導師ってのがあってな。そのスキルは異次元に大量の荷物を入れられたり一度行ったことがある場所なら一瞬で行けるスキルがあるんだわ」
「す、凄い! そんなジョブが!」
「それ覚えたらいつでも村に遊びにこいよ。できたら俺らが死ぬ前にな」
「は、ははっ。わかった、絶対行くよ」
「よし、したら盃交わすか! リヒト、一杯だけ付き合えよ」
「え? いや、酒はまだ飲めないよ。未成年だし」

 するとグレッグとガロンが笑った。

「いやいや、お前アホか! 成人は十五からだろうが」
「ははは、異世界とは違うのだぞリヒト。国によっては十二から成人の国もある。酒くらい飲めないと笑われるぞ」
「そ、そこまで言うならす、少しだけ」

 小さなグラスにエールをもらい三人で乾杯した。

「……うぇ、苦っ。よくこんなの飲め……うっ、うぅぅ」
「泣くなよリヒト。またいつでも会える」
「次に会う時は朝まで飲み明かそう。冒険の話をたくさん聞かせてくれ」
「わかった、約束だよ。戻るまで死なないでよね」

 こうして俺は村から送り出されることになった。一生居てもいいと思うほど好きだった村だ。別れは寂しいが甘えてばかりもいられない。

 小さなグラスを空にした俺は二人と再会を誓い宿を出るのだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。 失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった! この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。 一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。 「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」 底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

処理中です...