半人半魔の魔核喰らい《コアイーター》

夜夢

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第一章 はじまり

第04話 初めて得た仲間との楽しい日常

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 初めて酒を口にし目を回したアレクは朝まで目を覚まさなかった。これまでの疲れもあったかもしれないが、アクトは初めて他人といる時間を楽しいと感じていた。

「ん……」
「起きたかアクト」
「起き……はっ!」
「んがっ!?」

 飛び起きたアクトの額がリゲルの顔面にヒットした。

「ぐおぉぉ~……っ! な、なにしやがるっ!」
「わ、悪いリゲル! 俺寝てた!?」
「っててて。寝てたよ! 一口酒飲んでそのままな!」
「うっ。わ、悪い。初めてだったもので」

 リゲルは鼻を擦りながらアクトに手を伸ばした。

「起きたら飯にすんぞ。獲物狩りに行こうぜ」
「あ、ああ。何を狩るんだ?」
「そうだな。兎か猪……鹿もありだな」
「魔物じゃなく?」
「魔物の肉は浄化しなきゃ食えねぇんだよ。つーかお前今まで何食ってたんだ?」

 アクトは魔石の事を話した。

「は? 魔石で腹一杯になる? え、なんだそれマジか!?」
「ああ。一日一個も食べれば十分なんだけど」
「……羨ましいっつーか。ちなみに味とかあんの?」
「あるよ? オークは肉の味がする」
「普通の食事は?」
「村を出てからはしてないかな。調理器具もないし」
「俺だったら死んでる自信あるわぁ……」

 リゲルは咳払いをし弓を担いだ。

「とりあえず俺達は食わなきゃ死ぬからよ。狩り手伝ってくれよ」
「もちろん協力するよ」
「んじゃサクッといくか」

 他の皆はまだ寝ている中リゲルは率先して動いていた。

「リゲルは皆の代表みたいな感じなのか?」
「一応長からあいつらの事任されてるからな。よっ」
《キュウッ!?》
「お見事」

 リゲルの放った矢が兎の眉間に突き刺さる。

「アクトはそいつの首落として血抜き頼むわ。あ、穴掘ってそこに血を溜めるんだぞ? そのままにしたら魔物が寄ってきちまうからな」
「了解」

 アクトは地面に穴を掘り木の枝から蜘蛛の糸で頭を落とした兎を吊るす。そうしている間にリゲルがさらに二羽の兎を狩り運んできた。

「早いな」
「こんなん朝飯前よ。毎日やってるからな」
「他の皆は狩りに出ないの?」
「役割分担ってやつだな。俺は狩りはできるが料理はからっきしだしな。ちなみにイルハに料理はさせちゃダメだ」
「え? なんで?」
「間違いなく死人が出る。長でさえ三日腹下してたからな」
「細心の注意をはらおう」
「死にたくなかったらそうしてくれ。っと、猪だ、アレ狩ったら血抜きして戻ろうぜ。拠点に戻ったら内臓抜いて水洗いしてもらう」
「わかった。俺は兎やっとくよ」
「おう」

 リゲルの弓は見事なもので、獲物に一切気付かれる事なく確実に仕留めていた。

「凄いな。気配の消し方にコツとかあるの?」
「意識した事はないな。ただ弓を構える時は無心になるからそれじゃないか?」
「無心か。俺はまだ無理かな。魔物を見たら気がはやる」
「魔物はなぁ。動物の違ってスキル使ってくるから仕方ないっちゃ仕方ないと思うぜ」

 そうこうしている内に兎の血抜きが終わった。リゲルは話をしながら木の枝に縄で猪の手足を括っていた。

「後ろ担げるか? 二人で運んで帰ろうぜ」
「そのくらいなら任せてくれ」
「いや、助かるわ。いつもなら猪一人で担ぐからもうちょい小さいやつしか狩れなくてさ」
「助けになれたなら何よりだよ」

 リゲルと二人で狩りを終え拠点に戻ると寝ていた皆も目を覚ましていた。

「お~い帰ったぞ」
「兄さん、お帰り。獲物は?」
「兎に猪だ。ちなみにいつもよりデカいぜ」
「ん。じゃあ解体するからいつもの所に」
「あいよ。アクト、こっちだ」
「ああ」

 リゲルの先導で一番大きい建物の裏側にまわる。そこには仲間の一人がいて穴に手から水を出し溜めていた。

「水魔法? 魔法使えるのか!?」
「あ、アクトくんだ。うん使えるよ。水魔法だけだけどね」
「こいつは【サラ】ってんだ。水魔法使いだがもっと凄いスキルも持ってんだよ」
「凄いスキル?」

 リゲルは盃を傾ける仕草を見せた。

「サラは水を酒に変えるスキルも持ってんだよ」
「え? スキル二つも?」
「あ~、違う違う。本人は水魔法って言ってるがアレもスキルなんだよ。ただ水魔法使いって呼ばないと酒出してくれなくなってよぉ」
「へ、へぇ~」
「んじゃ腹割いて内臓出したら水に沈めとこうぜ。したら兎の解体してもらって飯だ」
「わかった」
 
 猪は昼食に回すようで朝は兎三羽と森で採取した野草を炒めた物を食べた。
 
「いつもこんな感じなのか?」
「まぁな。っても実は俺達もそんな長く一緒にいるわけじゃなくてさ」
「え?」

 ササッと食べ終えたリゲルは水で喉を潤し口を開いた。

「長が強いって話したろ?」
「ああ」
「ここにいる全員がこの森のあちこちから長に助けられてここに連れてきてもらったんだよ」
「それは……凄いな」
「ああ。多分今回もまた新しい仲間が増えるんじゃないかな。そろそろ大工とか鍛冶スキル持ちが欲しいとこなんだがなぁ」
「なんで?」
「ここ修繕したいだろ。畑作っても柵がなきゃ魔物や獣に荒らされるしよ。畑があれば森で野草探さなくても食っていけるし」

 改めて明るい陽の下で拠点を見ると雨風さえしのげないほど朽ちていた。

「雨の日とかどうしてるんだ?」
「あの地下室で雑魚寝だよ」
「……大工欲しいな」
「ああ。ちゃんとした家に住ましてやりてぇよ」

 食事を終え全員で片付けを済ませた後は自己紹介の続きだ。拠点にはリゲル、イルハ兄妹と先ほどのサラ。他に四人の半人半魔がいる。

 まずは双子姉妹。

「私は【ララァ】」
「私は【リリィ】」
「二人はまだ成人前でスキルがないんだ。先月長が西から連れてきたんだよ」
「よろしく、ララァにリリィ」
「「よろしく」」

 次にやたらと体格が良い男だ。

「ぼ、僕は【ロイ】です。スキルは【農作業】なんだけど……の、農具がなくてまだ何もできてないんだ」
「こいつはガタイは良いが度胸がなくてなぁ。けどいい奴なんで仲良くしてやってくれ」
「よろしくロイ」
「う、うんっ。こ、こちらこそ」

 最後は今朝の料理も担当した元気そうな女の子だ。

「私は【モーラ】だよ。スキルは【調理】でここの食事担当してるんだよね~」
「モーラは俺達の次に仲間入りした古株だな。ああ見えて俺より年上だから騙されんなよ?」
「え!?」

 モーラは双子姉妹と同じくらいちんまりとしていた。

「騙すってなに? リゲル、あんた昼飯抜きにしちゃうよ?」
「だぁぁっ、悪かった! 飯抜きだけは勘弁っ!」
「次変なコト言ったら激苦スープだかんね!」
「許してくれって~」
「「「「「あははははっ」」」」」

 皆の仲の良さを見たアクトは久しぶりに声を出し笑うのだった。
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