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第一章 はじまり
第05話 繋がり
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拠点で暮らす事数日、アクトは仲間達と打ち解け楽しい日々を過ごしていた。
「肉獲ってきたよ」
「「「待ってました!」」」
「うわっ!?」
鹿を担ぐアクトは瞬く間に囲まれ鹿を奪われた。
「はははっ、アクトがきてから毎日肉食えるようになったもんなぁ」
「最近みんなの食欲旺盛すぎない!?」
「知ってるか? 一度幸せを知っちまうと前の生活には耐えられなくなるんだぜ。ほらよ、アクト魔石だ」
リゲルはアクトに魔石を手渡した。アクトは受け取った魔石をそのまま口へと放り込む。
「食事前に魔石渡すとかさぁ、計算済みだよな」
「肉は奪い合いだからな! ライバルは減らしとかねぇとよっ」
「やっぱりか。って知らない味がする。これ何の魔石?」
「なんか毛玉みたいなやつ? 初めて見たんでわかんねぇ」
「毛玉? 跳ね兎の亜種かな? まだ知らない魔物がいるのか」
「あとでイルハに見てもらいな」
「そうする」
アクトは食事のあとイルハに鑑定してもらった。
「スキル【フェザースキン】が追加されてますよ」
「フェザースキン?」
「体表に羽毛を発生させて寒さをしのぐスキルですね」
「これまた微妙な……」
「冬などは便利ですよ? みんなの布団代わりにされますね」
「その前に布団作るよ」
「むぅ」
みんなと馴染んだことで当初はクールだったイルハもだいぶ豊かに感情を表すようになっていた。
「アクト、明日は木を切りに行こうぜ」
「木?」
「ああ。建物直したいからな」
「わかった。でも木は乾燥させないと使えないよ?」
「そこはサラに頼む。水魔法使い様だからな。水を抜いてもらうんだよ」
アクトは驚いていた。
「なんかみんな有能じゃない?」
「どんな力でも使い方次第で化けるもんだ。一人で生きていけるやつなんかいねぇって」
「そうだよなぁ。ここにきて人間との価値観の差に驚いてるよ」
人間でもてはやされているスキルは戦闘に特化したものばかりだ。強力な戦闘スキルを持った者を上級国民とし、スキルによりランク分けされている。
「んな価値観捨てちまった方が楽しく生きられんぜ」
「そうだな……うん、そう思うよ」
アクトの考え方もだいぶ変わり復讐心も薄れてきた頃、拠点に長が帰ってきた。
「おぉ~ガキども! 息災か!」
「「「「長さまっ!」」」」
朝食の片付けをしていると筋骨隆々で額から角を生やした大男が幼い子どもを両腕に抱え拠点に姿を見せた。
「おせーよ【ゴルノバ】! どこまで足伸ばしてんだっつーの!」
「すまんすまん、西から南まで……ん? お前……初めて見る顔だな」
ゴルノバの視線がアクトに向く。
「アクトです。南にあるオデット村から──え?」
オデット村と告げるとゴルノバは子どもをリゲルに手渡しアレクの肩に手を置き尋ねた。
「まさか……お、お前の母親の名は!?」
「え? えっと……【マーサ】ですが」
「あ……あぁぁぁぁっ!! マーサは!?」
「ち、小さい頃に病で」
「なっ! 嘘……だろ……! あぁ、マーサ!!」
ゴルノバの両眼から涙があふれ出した。
「ゴルノバ? どうしたんだよ?」
いきなり泣き出したゴルノバにリゲルが尋ねた。
「マーサは……俺の妹だ」
「「「「え……えぇぇぇぇっ!?」」」」
「い、妹? 母さんが?」
ゴルノバは涙を拭い改めてアクトの顔を見る。
「マーサの面影がある……。なあアクトよ……マーサはその……幸せだったか?」
この問い掛けにどう答えるか悩んだがアクトはゴルノバに真実を告げた。
「幸せ……そんなものはカケラもなかった」
「……は?」
「母さんは働かない父……いや、あの男から毎日奴隷のように扱われロクに食事も与えられず病に倒れました」
「……」
ゴルノバの表情に怒りが浮かび上がる。
「あの男は母さんが稼いだ金で毎日酒を浴び、醉うと暴力を振るってたんです。母さんが亡くなってからは俺がその対象になり……成人前日に無一文で家から追い出だされたんです」
「くっ……ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 人間……クソどもがぁぁぁぁぁぁっ!!」
ゴルノバからオーラが噴き出す。
「許さん……皆殺しだ……!! お、俺のたった一人の妹をっ!! オデット村だな、焼き払ってくれるわっ!!」
「ま、待てってゴルノバ! いくらあんたでも人間の村を襲っちまったら!!」
「これが許されるかっ!! なにが人間だ、なにが魔族だ! こちらは歩み寄ろうともがいてきたにも関わらず非情な仕打ちを受けたのだ!! もはや許してはおけぬわっ!!」
そう怒り狂うゴルノバを誰も止める事はできなかった。ゴルノバの怒りは多少の差はあれここにいる全員が感じてきたものだ。
だがゴルノバを止めたのは他でもないアクトだった。
「ゴルノバ……いや、ゴルノバ伯父さん」
「アクト……い、今なんと?」
「母さんの兄なら伯父になるよね?」
「う、うむ」
「まだ家族はいる。俺がいるじゃないか」
「あ……あぁ……っ、アクト!!」
再びゴルノバの両眼から涙があふれ出した。
「あまりに居心地が良くて忘れかけていたよ。俺も同じ気持ちだよ伯父さん」
「そうか……ならば!」
「でもまだだ」
「なに?」
アクトはゴルノバに自分のスキルについて話した。
「コア……イーター? ま、魔王様のスキルを持っているのか!?」
「はい。けど俺はまだ弱いです。中心部の魔物には歯が立ちませんでした」
「……だろうな。成人したばかりでは厳しいだろう」
「だからもっと力を蓄えこの森で最強になったら復讐に行きます。俺が……俺がこの手で果たさなきゃダメなんです」
アクトの熱い視線にゴルノバは表情を和らげた。
「そう……だな。憎いのは俺だけじゃなかった。うむ、俺も手伝うぞアクト」
「手伝う……とは?」
ゴルノバはリゲル達に宣言した。
「お前ら! 今後は俺の代わりに魔族や半人半魔を捜索するんだ!」
「「「「えっ!?」」」」
「俺はアレクと共に魔物狩りに向かい稽古をつける! イルハ」
「は、はい」
「お前もこっちだ。鑑定は唯一無二、アクトが鑑定を身につけるまで力を貸せ」
「わ、わかりました長!」
「リゲルは単騎で捜索、気配を殺せるお前なら必ずできる」
「お、おうっ」
「残りはここで待機だ。修行開始は一ヶ月後だ。一ヶ月の間にリゲルは修行、アクト達は待機組みのために食糧集めだ」
「「「「はい!」」」」
「はいっ!」
「よし、各人行動に移れ!」
アクト達はゴルノバの指示に従い与えられた役割のために動き出したのだった。
「肉獲ってきたよ」
「「「待ってました!」」」
「うわっ!?」
鹿を担ぐアクトは瞬く間に囲まれ鹿を奪われた。
「はははっ、アクトがきてから毎日肉食えるようになったもんなぁ」
「最近みんなの食欲旺盛すぎない!?」
「知ってるか? 一度幸せを知っちまうと前の生活には耐えられなくなるんだぜ。ほらよ、アクト魔石だ」
リゲルはアクトに魔石を手渡した。アクトは受け取った魔石をそのまま口へと放り込む。
「食事前に魔石渡すとかさぁ、計算済みだよな」
「肉は奪い合いだからな! ライバルは減らしとかねぇとよっ」
「やっぱりか。って知らない味がする。これ何の魔石?」
「なんか毛玉みたいなやつ? 初めて見たんでわかんねぇ」
「毛玉? 跳ね兎の亜種かな? まだ知らない魔物がいるのか」
「あとでイルハに見てもらいな」
「そうする」
アクトは食事のあとイルハに鑑定してもらった。
「スキル【フェザースキン】が追加されてますよ」
「フェザースキン?」
「体表に羽毛を発生させて寒さをしのぐスキルですね」
「これまた微妙な……」
「冬などは便利ですよ? みんなの布団代わりにされますね」
「その前に布団作るよ」
「むぅ」
みんなと馴染んだことで当初はクールだったイルハもだいぶ豊かに感情を表すようになっていた。
「アクト、明日は木を切りに行こうぜ」
「木?」
「ああ。建物直したいからな」
「わかった。でも木は乾燥させないと使えないよ?」
「そこはサラに頼む。水魔法使い様だからな。水を抜いてもらうんだよ」
アクトは驚いていた。
「なんかみんな有能じゃない?」
「どんな力でも使い方次第で化けるもんだ。一人で生きていけるやつなんかいねぇって」
「そうだよなぁ。ここにきて人間との価値観の差に驚いてるよ」
人間でもてはやされているスキルは戦闘に特化したものばかりだ。強力な戦闘スキルを持った者を上級国民とし、スキルによりランク分けされている。
「んな価値観捨てちまった方が楽しく生きられんぜ」
「そうだな……うん、そう思うよ」
アクトの考え方もだいぶ変わり復讐心も薄れてきた頃、拠点に長が帰ってきた。
「おぉ~ガキども! 息災か!」
「「「「長さまっ!」」」」
朝食の片付けをしていると筋骨隆々で額から角を生やした大男が幼い子どもを両腕に抱え拠点に姿を見せた。
「おせーよ【ゴルノバ】! どこまで足伸ばしてんだっつーの!」
「すまんすまん、西から南まで……ん? お前……初めて見る顔だな」
ゴルノバの視線がアクトに向く。
「アクトです。南にあるオデット村から──え?」
オデット村と告げるとゴルノバは子どもをリゲルに手渡しアレクの肩に手を置き尋ねた。
「まさか……お、お前の母親の名は!?」
「え? えっと……【マーサ】ですが」
「あ……あぁぁぁぁっ!! マーサは!?」
「ち、小さい頃に病で」
「なっ! 嘘……だろ……! あぁ、マーサ!!」
ゴルノバの両眼から涙があふれ出した。
「ゴルノバ? どうしたんだよ?」
いきなり泣き出したゴルノバにリゲルが尋ねた。
「マーサは……俺の妹だ」
「「「「え……えぇぇぇぇっ!?」」」」
「い、妹? 母さんが?」
ゴルノバは涙を拭い改めてアクトの顔を見る。
「マーサの面影がある……。なあアクトよ……マーサはその……幸せだったか?」
この問い掛けにどう答えるか悩んだがアクトはゴルノバに真実を告げた。
「幸せ……そんなものはカケラもなかった」
「……は?」
「母さんは働かない父……いや、あの男から毎日奴隷のように扱われロクに食事も与えられず病に倒れました」
「……」
ゴルノバの表情に怒りが浮かび上がる。
「あの男は母さんが稼いだ金で毎日酒を浴び、醉うと暴力を振るってたんです。母さんが亡くなってからは俺がその対象になり……成人前日に無一文で家から追い出だされたんです」
「くっ……ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!! 人間……クソどもがぁぁぁぁぁぁっ!!」
ゴルノバからオーラが噴き出す。
「許さん……皆殺しだ……!! お、俺のたった一人の妹をっ!! オデット村だな、焼き払ってくれるわっ!!」
「ま、待てってゴルノバ! いくらあんたでも人間の村を襲っちまったら!!」
「これが許されるかっ!! なにが人間だ、なにが魔族だ! こちらは歩み寄ろうともがいてきたにも関わらず非情な仕打ちを受けたのだ!! もはや許してはおけぬわっ!!」
そう怒り狂うゴルノバを誰も止める事はできなかった。ゴルノバの怒りは多少の差はあれここにいる全員が感じてきたものだ。
だがゴルノバを止めたのは他でもないアクトだった。
「ゴルノバ……いや、ゴルノバ伯父さん」
「アクト……い、今なんと?」
「母さんの兄なら伯父になるよね?」
「う、うむ」
「まだ家族はいる。俺がいるじゃないか」
「あ……あぁ……っ、アクト!!」
再びゴルノバの両眼から涙があふれ出した。
「あまりに居心地が良くて忘れかけていたよ。俺も同じ気持ちだよ伯父さん」
「そうか……ならば!」
「でもまだだ」
「なに?」
アクトはゴルノバに自分のスキルについて話した。
「コア……イーター? ま、魔王様のスキルを持っているのか!?」
「はい。けど俺はまだ弱いです。中心部の魔物には歯が立ちませんでした」
「……だろうな。成人したばかりでは厳しいだろう」
「だからもっと力を蓄えこの森で最強になったら復讐に行きます。俺が……俺がこの手で果たさなきゃダメなんです」
アクトの熱い視線にゴルノバは表情を和らげた。
「そう……だな。憎いのは俺だけじゃなかった。うむ、俺も手伝うぞアクト」
「手伝う……とは?」
ゴルノバはリゲル達に宣言した。
「お前ら! 今後は俺の代わりに魔族や半人半魔を捜索するんだ!」
「「「「えっ!?」」」」
「俺はアレクと共に魔物狩りに向かい稽古をつける! イルハ」
「は、はい」
「お前もこっちだ。鑑定は唯一無二、アクトが鑑定を身につけるまで力を貸せ」
「わ、わかりました長!」
「リゲルは単騎で捜索、気配を殺せるお前なら必ずできる」
「お、おうっ」
「残りはここで待機だ。修行開始は一ヶ月後だ。一ヶ月の間にリゲルは修行、アクト達は待機組みのために食糧集めだ」
「「「「はい!」」」」
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