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第一章 はじまり
第06話 修行
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各人役割を決め一ヶ月、アクトは居残り組のための食糧を集め終えリゲルの修行に付き合っていた。
「シッ!!」
「おぉ~」
リゲルの放った矢がこれまで二対一でしか勝てなかった魔物を一撃で討伐した。これにはゴルノバも満足そうな笑みを浮かべていた。
「よし、リゲルはまた一段階強くなったようだな」
「ありがとうございますゴルノバさん!」
「気配の消し方はもう一流だ。慢心さえしなければ俺の代わりが務まるだろう」
「精進します! 同じように苦しんでいる同胞のためにも!」
「あまり気負うなよリゲル。緊張は過ぎれば毒になる。心は常に冷静にだ。たとえ同胞が苦しめられている姿を見たとしてもな」
リゲルはゴルノバにツッコミを入れた。
「あれ? でもゴルノバさん……妹さんの扱いを聞いて号泣──あいたぁぁぁっ!?」
「……ふん」
ゴルノバの拳がリゲルの頭に落ちた。拳を落としたゴルノバはアクトとリゲルに背を向けながら口を開く。
「それはそれ、これはこれだ。敵前でなければ良いんだよ! そのくらいわかれ!」
「「理不尽極まりねぇ……」」
こうしてリゲルの修行が終わり、リゲルは一足先に拠点から同胞の捜索へと向かった。
そして拠点では待機組のサラ、ロイ、モーラとララァ、リリィの双子姉妹がゴルノバとアクト、イルハを見送る。
「代表はそうだな……ロイ、お前がやれ」
「ぼ、僕が代表なんですか!? ほ、僕より水魔法が使えるサラの方が……」
ゴルノバは挙動が怪しくなったロイの両肩に手を置き諭した。
「バカ野郎。お前は拠点に残る唯一の男だろうが。お前はやればできる男だって俺にはわかる」
「け、けど僕は農業しか……あ、いやそれもまだできてないしっ」
「倉庫にある剣か斧を使え。鍬を振り下ろす動作はこれらに通ずるものがある。魔物やら敵がきたら耕せ」
「無茶苦茶だ!?」
「無茶苦茶でもやらなきゃ後ろの四人は守れねぇぞ? また昔のように苦しんでもいいのか?」
するとロイは声を震わせ叫んだ。
「い、いやだっ! あんな生活はもうっ!!」
「だったら度胸をつけろ。自信を持て! せっかく恵まれた体格に生まれたんだ、ここらで一華咲かせてみようや、なぁ?」
「わ、わかり……ました。自信はないけど僕にできる事をやってみます」
「頼むぞロイ。サラとモーラも力を合わせて踏ん張ってくれ」
「「はいっ!」」
最後に双子姉妹に声を掛ける。
「お前たちは無理せず危なくなったら地下に身を隠すんだ。間違っても森の中には逃げるなよ~? こわ~いバケモンがわんさかいるからなぁ~?」
「「私達だけ子ども扱い」」
「そう、お前らはまだ子どもだ。力になりたいなら成人してからだ。それまでは何があってめ仲間を頼れ。いつか力になれるようにな」
双子は黙ったままこくりと頷いた。
「よし、そんじゃあアクトとイルハは俺についてきな。今から一ヶ月で森の中心部に向けていけるとこまでいく」
「わかった」
「あの、私は戦えないのですがっ」
「戦うのはアクトだけだ。イルハは俺から離れるなよ。アクト、俺は口出ししかしねぇから頑張って強くなれ。お前のスキルにはそれだけの価値があるからな」
「はいっ!」
こうしてアクトはゴルノバの稽古を受けるために森の中心部に向かい移動を始めた。移動しながらアクトはゴルノバに質問していく。
「あの、ゴルノバ伯父さん」
「ん? なんだアレク」
「疑問なんですが……なぜ森の中心部に近づくたびに魔物が強くなるんでしょうか?」
「あ、それ私も気になります!」
ゴルノバは現在の仲間達の中で唯一中心部まで到達している猛者だ。当然答えも持っている。
「そうだな、教えとくか。お前らは森の中心部に何があると思う?」
二人は少し考え口を開いた。
「森だから……森じゃ……?」
「わかった! 強い魔物達が暮らしてる村みたいな場所がある!」
「アクトは……リゲルじゃねぇんだからもう少し頭使え。イルハはまぁ正解に近いか」
「くっ」
「やたっ」
アクトはリゲル以下といわれ少なからずショックを受けていた。
「森の中心部には迷宮がある」
「「迷宮?」」
「そうだ。迷宮は魔力を使い大量の魔物を生み出すんだ」
「「えぇっ!?」」
「適度に間引きすれば迷宮から魔物が溢れ出す事はねぇんだがよ。この地方には迷宮に挑む人間がいないんだ」
アクトが何かに気づき口を開く。
「ま、まさか溢れ出した魔物が森全体に散らばって?」
「そうだ。迷宮に近い場所は強い魔物が縄張りにし、遠くに行くほど弱い魔物が縄張りにしている」
話を聞いていたイルハが割って入る。
「迷宮は消せないんです?」
「戦力が揃わなきゃ無理だ。迷宮はモノによっちゃ浅いモノから深いモノまで様々なんだ。古くからある迷宮ほど魔力を糧に深く育っていくのさ」
「中心部にある迷宮は古くからあるのです?」
「それもわからん。この地方は人口が少ないからな。もしかしたら未発見の迷宮かもしれん」
「未発見??」
「人間の国には迷宮探索を請け負う冒険者ギルドってのがあるんだわ」
アクトがゴルノバに尋ねる。
「あの、人間はなぜ迷宮探索を?」
「そりゃ迷宮は資源の宝庫だからさ」
「資源の宝庫??」
「ああ。倉庫に武器やら魔石があっただろ?」
「はい」
「あれは迷宮の中から俺が拾ってきたモンでな。深くは潜ってねぇが迷宮では武器やら魔石、食糧や回復薬、金なんかも手に入るんだぜ」
「す、すごいじゃないですか! あ、だから人間は探索してるのか」
「そうだ。だがそんな旨味がある迷宮が放置されてるって事はだ」
「……未発見の可能性が大きい」
「正解だ。お前が強くなったら迷宮に挑むのもアリかもな」
「なるほど……迷宮……」
迷宮について考えるアクトの前に未発見だった魔物が現れた。
「と、虎!?」
「フォレストタイガーだ。ガタイと爪、噛みつきにさえきをつけりゃなんてこたぁねぇ。やってみな」
「は、はいっ!」
アクトは腰に下げていた鞘から剣を抜きフォレストタイガーに向かっていくのだった。
「シッ!!」
「おぉ~」
リゲルの放った矢がこれまで二対一でしか勝てなかった魔物を一撃で討伐した。これにはゴルノバも満足そうな笑みを浮かべていた。
「よし、リゲルはまた一段階強くなったようだな」
「ありがとうございますゴルノバさん!」
「気配の消し方はもう一流だ。慢心さえしなければ俺の代わりが務まるだろう」
「精進します! 同じように苦しんでいる同胞のためにも!」
「あまり気負うなよリゲル。緊張は過ぎれば毒になる。心は常に冷静にだ。たとえ同胞が苦しめられている姿を見たとしてもな」
リゲルはゴルノバにツッコミを入れた。
「あれ? でもゴルノバさん……妹さんの扱いを聞いて号泣──あいたぁぁぁっ!?」
「……ふん」
ゴルノバの拳がリゲルの頭に落ちた。拳を落としたゴルノバはアクトとリゲルに背を向けながら口を開く。
「それはそれ、これはこれだ。敵前でなければ良いんだよ! そのくらいわかれ!」
「「理不尽極まりねぇ……」」
こうしてリゲルの修行が終わり、リゲルは一足先に拠点から同胞の捜索へと向かった。
そして拠点では待機組のサラ、ロイ、モーラとララァ、リリィの双子姉妹がゴルノバとアクト、イルハを見送る。
「代表はそうだな……ロイ、お前がやれ」
「ぼ、僕が代表なんですか!? ほ、僕より水魔法が使えるサラの方が……」
ゴルノバは挙動が怪しくなったロイの両肩に手を置き諭した。
「バカ野郎。お前は拠点に残る唯一の男だろうが。お前はやればできる男だって俺にはわかる」
「け、けど僕は農業しか……あ、いやそれもまだできてないしっ」
「倉庫にある剣か斧を使え。鍬を振り下ろす動作はこれらに通ずるものがある。魔物やら敵がきたら耕せ」
「無茶苦茶だ!?」
「無茶苦茶でもやらなきゃ後ろの四人は守れねぇぞ? また昔のように苦しんでもいいのか?」
するとロイは声を震わせ叫んだ。
「い、いやだっ! あんな生活はもうっ!!」
「だったら度胸をつけろ。自信を持て! せっかく恵まれた体格に生まれたんだ、ここらで一華咲かせてみようや、なぁ?」
「わ、わかり……ました。自信はないけど僕にできる事をやってみます」
「頼むぞロイ。サラとモーラも力を合わせて踏ん張ってくれ」
「「はいっ!」」
最後に双子姉妹に声を掛ける。
「お前たちは無理せず危なくなったら地下に身を隠すんだ。間違っても森の中には逃げるなよ~? こわ~いバケモンがわんさかいるからなぁ~?」
「「私達だけ子ども扱い」」
「そう、お前らはまだ子どもだ。力になりたいなら成人してからだ。それまでは何があってめ仲間を頼れ。いつか力になれるようにな」
双子は黙ったままこくりと頷いた。
「よし、そんじゃあアクトとイルハは俺についてきな。今から一ヶ月で森の中心部に向けていけるとこまでいく」
「わかった」
「あの、私は戦えないのですがっ」
「戦うのはアクトだけだ。イルハは俺から離れるなよ。アクト、俺は口出ししかしねぇから頑張って強くなれ。お前のスキルにはそれだけの価値があるからな」
「はいっ!」
こうしてアクトはゴルノバの稽古を受けるために森の中心部に向かい移動を始めた。移動しながらアクトはゴルノバに質問していく。
「あの、ゴルノバ伯父さん」
「ん? なんだアレク」
「疑問なんですが……なぜ森の中心部に近づくたびに魔物が強くなるんでしょうか?」
「あ、それ私も気になります!」
ゴルノバは現在の仲間達の中で唯一中心部まで到達している猛者だ。当然答えも持っている。
「そうだな、教えとくか。お前らは森の中心部に何があると思う?」
二人は少し考え口を開いた。
「森だから……森じゃ……?」
「わかった! 強い魔物達が暮らしてる村みたいな場所がある!」
「アクトは……リゲルじゃねぇんだからもう少し頭使え。イルハはまぁ正解に近いか」
「くっ」
「やたっ」
アクトはリゲル以下といわれ少なからずショックを受けていた。
「森の中心部には迷宮がある」
「「迷宮?」」
「そうだ。迷宮は魔力を使い大量の魔物を生み出すんだ」
「「えぇっ!?」」
「適度に間引きすれば迷宮から魔物が溢れ出す事はねぇんだがよ。この地方には迷宮に挑む人間がいないんだ」
アクトが何かに気づき口を開く。
「ま、まさか溢れ出した魔物が森全体に散らばって?」
「そうだ。迷宮に近い場所は強い魔物が縄張りにし、遠くに行くほど弱い魔物が縄張りにしている」
話を聞いていたイルハが割って入る。
「迷宮は消せないんです?」
「戦力が揃わなきゃ無理だ。迷宮はモノによっちゃ浅いモノから深いモノまで様々なんだ。古くからある迷宮ほど魔力を糧に深く育っていくのさ」
「中心部にある迷宮は古くからあるのです?」
「それもわからん。この地方は人口が少ないからな。もしかしたら未発見の迷宮かもしれん」
「未発見??」
「人間の国には迷宮探索を請け負う冒険者ギルドってのがあるんだわ」
アクトがゴルノバに尋ねる。
「あの、人間はなぜ迷宮探索を?」
「そりゃ迷宮は資源の宝庫だからさ」
「資源の宝庫??」
「ああ。倉庫に武器やら魔石があっただろ?」
「はい」
「あれは迷宮の中から俺が拾ってきたモンでな。深くは潜ってねぇが迷宮では武器やら魔石、食糧や回復薬、金なんかも手に入るんだぜ」
「す、すごいじゃないですか! あ、だから人間は探索してるのか」
「そうだ。だがそんな旨味がある迷宮が放置されてるって事はだ」
「……未発見の可能性が大きい」
「正解だ。お前が強くなったら迷宮に挑むのもアリかもな」
「なるほど……迷宮……」
迷宮について考えるアクトの前に未発見だった魔物が現れた。
「と、虎!?」
「フォレストタイガーだ。ガタイと爪、噛みつきにさえきをつけりゃなんてこたぁねぇ。やってみな」
「は、はいっ!」
アクトは腰に下げていた鞘から剣を抜きフォレストタイガーに向かっていくのだった。
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