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第3章 打倒、聖フランチェスカ教国編

08 いざ中央大陸へ

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 盛大な酒宴が行われた翌日。

「お前……俺様に酒で勝つなんてどんな内臓してやがんだ……いたた、あー……頭いてぇ……」
「若いからな。分解速度が速かったんじゃないか?」

 アーレスは平然とし、シュテンとヘルは二日酔いに苦しんでいた。

「うっぷ……、ぎぼぢわるい……」
「ヘル……そこで吐くなよ!? 俺様の部屋がげろまみれなんて笑えねぇからな!?」
「……ごぽ」

 しばらくお待ち下さい。

「あ~……水が美味しいわ~……」
「このクソアマ……! しくしくしく……」

 シュテンは泣きながらカーペットに掃除していた。

「さて、挨拶も済ませたところだし、俺達はそろそろ港町に向かうとしようか」
「あん? 港町? なにしによ?」
「昨夜言っただろ。俺達は聖フランチェスカ教国を潰すために中央大陸を目指してたんだ。中央大陸へと渡るためには港町から一度隣の大陸へと渡り、隣の大陸から中央大陸へと渡るしか手段がない」
「いやいや、他にも手段ならあるぞ」
「なにっ!?」

 シュテンはバケツに雑巾を放り込みアーレスに言った。

「ここはその聖フランチェスカ教国がこの大陸を支配するために属国にしたんだぜ? 隣の大陸なら船で渡れるがよ、ここまでは長い船旅になっちまう。そこで教国はこの国に直接来る事ができるようにする手段を講じてんだわ」
「なん……だと!? 直接中央大陸に行けるのか!?」
「ああ、ついてきな」

 シュテンは二人を連れ神殿の地下に向かった。地下は薄暗くいくつか部屋がある。シュテンはその一番奥にある扉の前で立ち止まった。

「ここだ。さ、入りな」
「ああ」

 シュテンが扉を開くとそこには魔法陣が敷かれていた。

「これは……」
「転移魔法陣だ。これなら一瞬で大部隊をこの大陸に送り込めるだろ?」
「転移魔法陣……か。これはまだ起動してるのか?」
「ああ。代替わりした俺様は上手いこと信者を演じてたからよ。まさか俺様が裏切るとは思っちゃいねぇだろ」

 シュテンはアーレスとヘルを見て言った。

「さっさと教皇なんぞぶっ潰してこいよアーレス。そんでまた酒でも飲もうや。神が人間に負けたまんまじゃ終われねぇからよ」
「……ははははっ。飲み比べでリベンジか。なら……負けないように内臓鍛えとけよ、シュテン」
「にゃろう。次は負けねぇっての! おら、さっさと行け。こいつはいつ使えなくなるかわかんねぇからよ。それと、こいつがどこに繋がってるかわかんねぇ。十分気を付けろよな」
「ああ、一応警戒して行く。ヘル」
「……はい? あら、ここはどこかしら? 今は夜なの? うっ……なぜか気持ち悪いわ……」

 どうやらヘルはあまりの気持ち悪さに主導権をヘラに返したようだ。アーレスは今の状況をヘラに伝えた。

「この転移魔法陣で中央大陸に……。ようやく……ようやく復讐できるのね! なにしてるのアーレスちゃん! 早く行きましょっ!」
 「急に元気になったな。まあ良い」

 アーレスは魔法陣の前に立ちシュテンの方を向く。

「シュテン」
「あん?」
「もし……もし俺達が戻らなかったら魔王国を頼めるか?」

 シュテンは一瞬ポカンとし、笑った。

「ははははっ、お前が簡単に死ぬなんざ最初から思っちゃいねぇよ。俺様より強ぇし、何よりヘルもいる。それに……多分だがもうすぐルシファーの奴も降りてくるだろ」
「ルシファー……。堕天使の長だったか」
「ああ。あいつの真の力は俺様ですら知らん。だが……お前とは気が合うような気がするよ」
「そうか。まあ、敵にならないなら良しとしておくよ」

 そして二人は拳を重ね、アーレスとヘラは転移魔法陣の中へと飛び込んだ。シュテンは二人が消えた魔法陣を見ながら呟く。

「ヘル、アーレスを頼むぜ。あいつはこれからの世界に必要な男だからな。絶対に死なせるんじゃねぇぞ」

 そう呟き、シュテンは部屋を出るのだった。

 時を同じくし、転移魔法陣で中央大陸へと潜入した二人は辺りを見回していた。

「ここがどこかわかる? 母さん」
「ええ。ここは中央大陸にある港の倉庫です。私が船で連れて来られた時ここを通りましたので」
「母さんは船で運ばれたのか」
「ええ。道中も延々辱められました」

 アーレスの表情に苛立ちが見える。

「そうか。やはり許せんな。ここから先は見かけた者は全部殺す。地上から教国関係者を消し去らねばな」
「女子供も?」
「ああ。女子供に罪はないとか言うなよ。誰かの犠牲の上でのうのうと自分だけ平和そうに生きている奴らに慈悲はない。俺は善人でもなければ万人を愛する神でもないからな」
「そうですね。あ、でも……」
「なんだ?」

 ヘラは大神殿の地下で同じように囚われている犠牲者の事を思い出した。

「私と同じ被害者が大神殿の地下牢に囚われてます。その方たちはとうします?」
「そっちは母さんに任せるよ。助けを求めてくるようなら救ってやればいい」
「わかったわ。あ、それと一つ大事なことが」
「なんだ?」
「おそらく今大神殿には入れないと思うの」
「なぜだ?」

 そこでヘラは大神殿に張られた結界と四つの塔について語った。

「なるほど。その塔を破壊しないと大神殿の結界は解除されないわけか」
「ええ。四つの塔は中央大陸全土に結界を張りつつ、大神殿の結界を強固にしているの。多分アーレスちゃんでも破れないわ」
「そうか。だがそれはどうでも良い話だな」
「え?」

 アーレスは嗤いながら闇の魔法剣を構えた。

「どの道全員殺すんだ、塔が先か大神殿が先かの違いだけだ。派手に暴れて全員殺す。ハッ!!」
「え?」

 アーレスは扉に向かい剣を突き刺した。すると扉の向こうから断末魔が聞こえ、アーレスが剣を引くとべっとりと赤い血が付着してきた。そして剣を引いたアーレスは力を籠めて扉を蹴破った。

「見張りがいるだろうとは思っていた。外から侵入できない今、この大陸に渡る手段は転移魔法陣しかないからな」
「し、侵入者めっ! 何者だ!!」

 アーレスは扉を守護する騎士に剣を向け宣言する。

「俺は魔王国バハートス国王アーレスだ。大人しく全ての命を差し出せ。ああ、抵抗するならしてくれて構わんよ。ほら、早く大神殿に知らせな」
「くっ!」

 騎士は耳に手を当て魔法陣を顕現させる。

「至急至急!! 第五倉庫から侵入者あり! 敵は魔王国国王と名乗り──があっ!? あ……ぐふっ……」
「き、貴様!! 通信中の騎士になんて真似を!!」

 アーレスは騎士の頭から剣を引き抜き、怒る騎士に向け冷徹な視線を向ける。

「重要な部分は伝えさせてやったのだからもう良いだろう。俺は貴様らが連絡する間もなく殺れたんだぞ? 少し待ってやっただけ感謝して欲しいくらいだ」
「アーレスちゃん、わざとでしょ? あっちから攻めて来させて楽しようとして」
「ははは、バレたか。一々探し出して殺すのも面倒だしな。まずはこの後港にある船を破壊。そして転移魔法陣を消す。これで誰一人逃げ出せない牢獄の完成だ」
「わ、我々を無視するなぁぁぁっ!」
「……ああ、まだいたのか羽虫が。ほら、焼き尽くしてやるからかかってきな」
「「「「「あ──あぁぁぁぁぁぁっ!!」」」」」

 ただの騎士などアーレスの相手になるはずもなく、この後港はアーレスの宣言通り破壊され尽くしたのだった。
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