職業『精霊使い』に覚醒したら人類圏から追放されました(完結)

夜夢

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第3章 打倒、聖フランチェスカ教国編

12 青龍の塔へ

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 一つ目の塔、朱雀の塔を破壊したアーレス達は次に東にある青龍の塔を目指す。

「朱雀、青龍はどんな奴なんだ?」
「う~ん……実はボクもあまり知らないんだよね。青龍もボクと同じく龍人族の代表で来てるとは思うんだけど」
「そうか。とりあえず行ってみるしかないか。母さんも知らないよな?」
「私は白虎しか……」
「わかった。じゃあ東に向かおうか」

 そうしてアーレス達が東へと向かっている頃、教皇メイギス・フラジャイルは祭壇で精霊神に祈りを捧げていた。

「……いつからだろうか。精霊神、貴様は私に神託を授けなくなったな。どうやらワシは相当に嫌われたらしい。だが……ワシも貴様が嫌いだ。何が精霊神だ、世界を統べる者はワシだけで良い。必要なのは貴様の名前だけよ。神託なんぞいくらでも捏造できるからなぁ? ふん」

 そう吐き捨て、教皇は祭壇の間を出た。そして玉座の間に移動し、配下に語りかける。

「先ほど新たな神託を授かった!」
「「「「おぉぉぉ!」」」」
「塔はまだ三つある、案ずる事はない。精霊神の加護がある限り教国に不安など一つもない! 引き続き大神殿にて警護を続けよ。そして地下にいる黄龍を監視するのだ! 決して逃がすでないぞ!」
「「「「はっ!!」」」」

 配下が去った玉座の間で一人玉座に腰掛ける教皇は苛立ちを覚えていた。

「朱雀め……ワシを裏切った者がどうなるか教えてやらねばな。誰ぞおるか!」
「はっ!」

 教皇が叫ぶと扉が開き神官が入ってきた。

「地下牢にいる火鳥族の女を全て殺せ! そして死体を大神殿の入り口に磔にせよ!」
「こ、殺すのですか? 少々もったいない気が……」
「ふん、何がもったいないじゃ。殺し方は好きにせい。大神殿にいる全ての男を使い壊せ。朱雀は教国を裏切ったのだからな!」
「ははっ!」

 そうして捕らえられていた火鳥族は大神殿にいた全ての男から延々陵辱の限りを尽くされ、最後は股から串刺しにされ大神殿の前に磔にされたのだった。

 一方、同胞が惨殺された事を知らない朱雀はアーレス達と共に青龍の塔に到着していた。

「さ、さささ寒いっ! ボクもう無理! これ以上近付けないよぉ~!」
「今度は氷の塔か」

 近付いただけで寒さを感じる青龍の塔を前に、朱雀はガタガタと震えていた。

「アーレスちゃん、ここは私もちょっと無理です~!」
「母さんもか。仕方ない、ここは俺一人で行こう。二人は塔の近くで待っててくれ」
「ごめんね~アーレスちゃんっ」

 二人を塔の近くで待機させ、アーレスは一人青龍の塔に入った。塔の中は全てが氷でできており、とにかく寒かった。

「これは……あまり長居はしたくないな。さっさと片付けてしまおう」

 塔の構造は朱雀の塔と同じだった。アーレスは氷の螺旋階段を進み、青龍の部屋に入った。

「おや、お客様など珍しい」
「あんたが青龍か」

 部屋の中央にテーブルセットがあり、中華服を着た初老の龍人が優雅に茶を嗜んでいた。

「いかにも。それで……私に何か御用ですかな?」
「あんたに用はない。結界を解除するためにこの塔を破壊しに来ただけだ」
「結界ですか。それならば私は結界を解除させないためにあなたと戦わなければなりませんな」
「そうなるな。抵抗しないでくれると助かるんだがな」
「それは無理ですな。私は囚われている姫様のためにもここを守護し続けなければなりません」
「姫?」

 アーレスは青龍の事情に興味が湧き、質問した。

「姫を人質に取られてんのか?」
「人質とはまた違いますよ。私達龍人族を守るため、姫様は教国にその身を捧げられました。そして私は姫に手出しをさせないためにこの塔を守護しているのです。私が負けてしまえば姫は汚されてしまいます。私は……誰にも負けられないのですよ」

 青龍の雰囲気が穏やかなものから熱いものへと変わる。

「ふむ。その姫とやらは本当に手出しされてないのか?」
「はい? 当たり前でしょう。そういう契約ですからねぇ」
「……やれやれだな。あんた、本当に教国がそんな契約を守ると思ってんのか? だとしたら甘すぎるぜ」
「何を……」

 アーレスはヘラから聞いた捕まった者の末路を話した。

「そんなはずはないっ! 姫はきっと無事であらせられる!」
「確証は? あんたの思い込みだろ」
「黙らっしゃい! ならばあなたを倒し確認に向かうまでです!」
「ああ、なら先に確認しに行けば良い。俺は別にあんたと戦いに来てるわけじゃないからな。あんたも戦う理由がなくなったと知るだろうしな」
「……約束しなさい。私が戻るまで塔は破壊しないと」
「ああ、約束しよう。俺は教国とは違うからな」
「失礼する」

 そう言い、青龍は大神殿へと向かっていった。アーレスは約束を守り一度塔を出て二人と合流した。

「青龍の姫ですか。私のいた牢の近くにはいませんでしたね」
「多分一つ下の階層じゃないかな。ボクの仲間もそこにいるはずだよ」
「そうか。まぁ……多分手遅れだろうな」
「でしょうね」

 その頃地下牢では。

「うっくぅっ! 相変わらずつまんねぇ姫様だな。犯されてるってのに反応一つしねぇとはよ」
「しっかりやる事やってボヤいてんじゃねぇっての。お前いつもそいつばっか犯してんじゃねぇか。ロリコンが」
「うっせ。おら、もう一回だ。後ろ向けよ」
「……」

 青龍の言っていた姫はアーレスの予想通り汚されていた。

「ん? なんか少し寒くね?」
「はぁ? ……おかしいな。やけに静かだ」

 そこに感情をどうにか抑え込んだ青龍の姿が現れた。

「……ここまでのようですな」
「青龍! ダメッ!」
「「あ──」」

 青龍の手から冷気が溢れ出し、姫を汚していた騎士らは一瞬で氷漬けになった。

「青龍! なにをっ!」
「姫様……! 直ちにこの場を離れましょう」
「だ、だめだよ。皆もいるし……」
「姫様! 私達と同様ここに来た者で生きているのは私達だけです!」
「……え?」

 青龍は怒りに震えていた。

「道中仲間の亡骸を確認しました。教国は契約を破り……同胞や姫様を汚していたのですね」
「青龍……皆……死んだの?」

 青龍は無言のまま頷き、涙を浮かべる姫を毛布で包んだ。

「姫様、私と逃げましょう」
「どこに? この大陸からは出られないよ」
「……今私の塔に教国を倒しに来た者がおります。彼ならば姫様を助けてくれるでしょう」
「信用できるの?」
「おそらく。教国よりは信用に値するでしょう」
「わかったよ。青龍、来てくれてありがとう。もう手遅れだけどね……」
「くっ! 姫様っ!」

 青龍は気絶した姫を抱え、塔に戻るのだった。 
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