職業『精霊使い』に覚醒したら人類圏から追放されました(完結)

夜夢

文字の大きさ
43 / 55
第4章 東の大陸編

04 出立準備

しおりを挟む
 魚人族の里にきて一週間が経った。アーレスは毎日朝からリヴァイアサンと修行に行き、夕方からは人魚と楽しんでいた。おかげでほぼ全ての人魚がアーレスの種で新たな命を宿し、もうしばらくすれば人魚の数が単純に計算したとしても倍以上になる。

 アーレスは既に卵を産み落としたミューズの所にいた。

「人魚って卵から産まれるんだなぁ……」
「ええ。産むまでは早いですが、孵化まではもうしばらくかかります」
「なるほどな。しかし……ずいぶん産んだな。ひー……ふー……みー……五つか」
「中には七つ、八つ産む人魚もいますよ? 五つは平均です」

 それを聞いたアーレスは疑問を覚えた。

「一度にそんな産まれるのに人魚が少ないのは何故だ? 普通この数が産まれたらあっという間に増えると思うのだが」
「それは……人間のせいでもありますが、魔物のせいでもありますね。海の魔物は深い場所にいるほど強いので」
「強い……ねぇ」

 アーレスはリヴァイアサンとの修行を思い返すが、強いと思った魔物など皆無だった。

「里の周辺にいた魔物はこの一週間でほぼ狩り尽くしてしまったな」
「え?」
「いやほら、俺とリヴァイアサンが里の外で魔法の修行してただろ? あれの影響でサッパリ魔物の姿が見えなくなっちまってさ」
「クラーケンやダゴンも……ですか?」
「ああ。一匹もいないぞ」

 ミューズは改めてアーレスの力に驚いていた。

「強いとは思っていましたが……まさかここまで強いだなんて……」
「まあ、一応俺は魔王国バハートスの王だからな。弱くちゃ話にならんだろ」
「魔王国? ああ、魔族の国ができたのですか」
「まあな。お前達も来るか?」
「ありがたい話ですが……私達は水がなければ生きていけませんので」

 そこでアーレスは少し考え、一つ名案を思い付いた。

「あるぞ水」
「え?」
「魔族領にダンジョンがあってな、そこの最下層が魔王城になってるんだよ。確か地下九十五階層が地底湖になっていたはずだ。淡水でも大丈夫か?」
「え、ええ……。水ならなんでも……」
「よし、じゃあ一度見に行ってみよう。ミューズ、手を」
「え? え?」

 アーレスはミューズの手を取り、空間魔法で転移ゲートを開いた。

「こ、これは?」
「転移ゲートだ。行き先は魔族領のダンジョン地下九十五階だ。行くぞ」
「え、えぇぇぇぇっ!?」

 アーレスはミューズを腕に抱えゲートを潜る。

「な、なに……ここっ!?」
「地底湖だよ。ほら、水に降ろすぞ?」
「は、はいっ」

 アーレスはゆっくりとミューズを地底湖に降ろした。ミューズは浸かった瞬間水質が気に入ったようで、凄まじい勢いで泳ぎ回っていた。

「凄く綺麗な場所ですね! 魔物もいないようですし」
「魔王が管理していたダンジョンに魔物がいるはずないだろ? このダンジョンではかつて魔族達が暮らしていたらしいしな」
「今はいないの?」
「ああ。人間の国をぶっ潰してそこを拠点にしたんだ」
「人間を……それは素晴らしいわねっ! 私……あなたの事を誤解していましたわ。人間と敵対するならあなたは私達の同類ではないですか」
「俺にも色々あるんだよ。ちなみに人間は殺したいくらい嫌いだ」
「その意見には激しく同意するわ」

 そう言い、ミューズはアーレスに手を伸ばした。

「一度戻ってみんなに話しましょう。みんなが納得したら引っ越しね 
「まあ……普通に納得するだろ」

 そして再び転移ゲートで魚人族の里に戻り、ミューズはすぐに全ての人魚を集めた。

「──という場所があるのですが。皆さん、この際ですから新たな地に引っ越しませんか?」

 話を聞いた人魚達はそれぞれ顔を合わせながら不安そうにしている。

「本当に安全なのですか?」
「ええ、魔物もいないし、人間もいないわ」
「あの……食糧は……」
「淡水魚がたくさんいたわね。誰も狩らなかったせいかかなり立派な魚でしたわ」

 ミューズは矢継ぎ早に飛んでくる人魚達の問い掛けに全て対応していく。この判断力はさすがと言いたい。だがここで思わぬ人物が反対の意を示した。

「長様、私は移住に反対します」
「なぜ……?」

 この声を上げたのは守護隊長だった。

「私はその人間を信用していません。そもそも私達に新たな棲み家を与えてその人間に何の得があるのですか? 浅ましい人間が損得も考えずに取引を持ち掛けるなどありえないでしょう」

 守護隊長の主張を聞いた人魚達はまた少し不安を覚えたようだ。そこからミューズと守護隊長で意見が対立し、話は平行線になった。一向に話が進まない状況に苛立ったアーレスは守護隊長の肩を叩いた。

「な、何をする!」
「そんなに不安なら自分で確かめてきな。開け転移ゲート」
「へ? おわぁぁぁっ!? お、落ち──」

 アーレスは守護隊長の足元に転移ゲートを開き、両肩を思いっきり下に押した。守護隊長は転移ゲートを潜り抜け、地底湖の真上から水面へと落下していった。

「ミューズ、ちょっと行ってくるからこっちの意見をまとめておいてくれ」
「わかりました。あまり苛めないで下さいね?」
「それはあいつ次第だな。開け転移ゲート」

 アーレスはミューズに意見の取りまとめを任せ、再び地底湖へと戻った。

「……おい」
「へっ!?」

 アーレスが地底湖に転移すると先に転移していた守護隊長は楽しそうに水面に浮かんでいた。

「ずいぶん楽しそうじゃないか」
「た、楽しいわけないだろっ! いきなり空中から水面に叩き落とされたんだぞっ」
「ほ~。ならその手にある食いかけ。魚はなんだ?」
「うっ!?」

 守護隊長は慌てて魚を隠すが既に時遅し。しっかりと地底湖を満喫していた事がバレてしまった。

「べ、別に構わないだろう! そう、これは安全性を確かめたのだ! 貴様の言う事など信用ならんからな!」
「ほ~? そこまで言うなら仕方ない。あんただけあの里に残れば良いじゃないか。他の奴らは多分全員来るだろうからな」
「はあ? そんなわけ──おい貴様。まさか……」

 アーレスはニヤリと笑った。

「ああ、そうだ。あの里でまだ抱いてない人魚はあんただけだよ、ララァ」
「わ、私の名を気安く呼ぶなっ! やはり人間は信用ならんっ! 全ての人魚を抱いただと? 貴様に愛はないのか! 快楽さえ得られればそれで良いのだろう!」
「いやいや、だって俺ミューズから人魚を増やすように言われただろ。それはララァだって聞いてただろう」
「しかし嫌がる相手はダメだと──!」
「嫌がる奴はいなかったぜ」
「な、なんだと!?」

 アーレスは全ての人魚をどう落としていったか語った。

「どんなに嫌だろうがな、快楽には勝てないんだよ」
「なんだと?」
「俺はな、嫌がる人魚に見せつけるように毎日たっぷりと望んできた人魚を愛してやった」
「……は?」
「目の前で仲間が気持ち良さそうに孕んでいく姿を見ていると嫌がっていた人魚もやがて我慢がきかなくなり……自分から求めてくるようになった。そうやって俺はあんた以外を手にしたのさ」
「この……卑怯者! そんなずるい手で女を弄んで満足かっ!」
「弄ぶ? なら聞くが、あの里に不幸そうな人魚はいたか? 誰かから俺に無理矢理犯されたと相談されたか?」
「それは……」

 ララァは口ごもってしまった。確かに誰からも相談はつけていないし、不幸そうな人魚も見当たらなかった。

「いないだろ。みんな俺に抱かれて幸せになったんだよ」
「……そ、それがどうした! 他の奴らがどうなろうと私だけは──」
「なら一人あの里に残れば? 俺は無理に来てもらわなくて構わない。これから人魚はどんどん増えていくしな」
「うぅっ、わ、私は……長様の守護隊長……! 離れるわけには……」
「その長が俺を認めてんだよ。お前もいい加減認めろよ。ちょうど二人きりだ、お互い腹を割って話し合おうじゃないか」

 アーレスは湖岸に腰掛け、ララァと対話を試みるのだった。
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」  ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ
ファンタジー
伯爵家の三男リアムは【鑑定不能】スキル故に「無能」と追放され、辺境に捨てられた。だが、彼が覚醒させたのは神すら解析不能なユニークスキル《概念創造》! 認識した「概念」を現実に創造できる規格外の力で、リアムは快適な拠点、豊かな食料、忠実なゴーレムを生み出す。傷ついたエルフの少女ルナを救い、彼女と共に未開の地を開拓。やがて獣人ミリア、元貴族令嬢セレスなど訳ありの仲間が集い、小さな村は驚異的に発展していく。一方、リアムを捨てた王国や実家は衰退し、彼の力を奪おうと画策するが…? 無能と蔑まれた少年が最強スキルで理想郷を築き、自分を陥れた者たちに鉄槌を下す、爽快成り上がりファンタジー!

処理中です...