職業『精霊使い』に覚醒したら人類圏から追放されました(完結)

夜夢

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第4章 東の大陸編

07 合流

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 全速力で砂浜を北上する事数時間、前方に船が停泊している港町が見えた。アーレスはその港町の入り口に並ぶ人間に声を掛け尋ねた。

「この町の名前? あんた知らないできたのか?」
「ああ、田舎から出てきたばかりでな」
「どんな田舎だよ。ここは東の大陸の玄関口、オルニースだ」
「へぇ、ありがとう」

 こうしてアーレスは無事目的地へと到着した。そして入り口で金を払い町に入ったが、肝心の玄武達を全く発見できない。

「あいつらはどこ行ったんだ? どこ探しても見つからないっていうか人が多すぎる!」

 東の大陸の玄関口というだけあり、オルニースは人でごった返していた。建物も多く宿も一つや二つではない。アーレスは片っ端から宿を回り玄武達を探す。

「亀の獣人かい? ウチには泊まってないねぇ」
「……そうか、すまんな」

 アーレスは宿から出てふと思い立った。

「……もしかしてあいつら金持ってないとか? いや、持ってないにしても青龍がいるからどうにでもなるか? 朱雀はともかく青龍は賢い。まさか野宿してたりしないよなぁ……」

 全ての宿を回り終えたアーレスは四人組の獣人を見掛けた事がないかと町の住人に尋ねて回り、ようやく四人を見つける事ができた。

「アーレス! 無事だったか!」
「お前らなぁ……ちゃんと宿に泊まれよ! なんで廃墟になった教会にいるんだよ!?」
「だってボク達お金ないし! 稼ごうにも町から出たらまたお金とられるじゃん!」
「我々は冒険者ではありません。そして人間の駒になる気はないので」
「ひもじいよぉ……」

 どうやら四人は町に侵入できたは良いものの、中々に厳しい生活を強いられていたようだ。

「はぁ……。金なら俺が持ってる。とりあえず場所を移して今後の事について相談しようか」
「ん? わしらの隠れ里に向かうのではないのか?」
「それについては何か食べながら話そう。黄龍が空腹で死にそうだからな」
「お腹空いたよぉ~……」

 アーレスは四人を引き連れ町で一番立派な宿に向かった。そしてまず部屋に食事を運ばせ、四人を労った。

「がふがふがふっ!」
「あ、黄龍! それボクの肉!」
「ずずず……、ほう、このスープは中々に美味い」
「がはははっ、酒が美味いぞアーレス!」
「……もっと上品に食えないのか。品があるのは青龍だけかよ」

  四人はとにかく運ばれてきた料理を腹に納め続け、宿からもう食材がないとストップがかかった所でようやく落ち着いた。

「ふぅ~食った食った!」
「久しぶりの食事でしたからつい手が止まらなく……」
「う~……ボクも食べ過ぎたかも~」
「美味しかった!」

 四人が食事に満足した所でアーレスは本題に入った。アーレスは玄武と魚人族に捕まった所からこれまでの経過を語る。

「なんと、魚人族を保護したのか!」
「ああ。リヴァイアサンの事もあってな。それでだ、お前達に尋ねるが、商業国家【ユーテリア】がどこにあるかわかるか?」

 その問い掛けに青龍が手を挙げる。

「もちろん存じておりますとも。ユーテリアはこの東の大陸の中央にあります。そして私達の隠れ里はそこからさらに南へと進んだ先にある森の中。隠れ里に向かうためにはユーテリアを通過する必要がありますね」
「なるほど。で、そのユーテリアはどんな国なんだ? リヴァイアサンからはただ滅ぼして欲しいとしか聞いてなくてな」

 そう尋ねると引き続き青龍が応じる。

「そうですねぇ……。ユーテリアは商人の国です。そして、ユーテリアではあらゆるモノが取引されております」
「……人魚の肉とかか?」
「はい。それ以外にも人間、魔獣、違法薬物、冒険者ライセンスなどなど、通常取引が禁止されている品でも金さえ積めば手に入ります」
「ほう……」
「奴ら商人はとにかく金に汚い。今あるユーテリアも元は小さな国に過ぎませんでしたが、今の王がその国家を転覆させ、牛耳ったのですよ」

 アーレスは青龍の話を聞き、今後の方針を決める。

「……よし、そんな国なら問題ないな。潰してしまおうか」
「我々も動きますか?」
「いや、青龍達は先に隠れ里とやらに向かってくれ。もしかするとユーテリアの奴らに里が襲われているかもしれん。いくら教国の庇護下にあったとはいえ、そんな欲深い商人がおとなしく従っていたとは思えんからな。だからまずは仲間の安全を確認してきて欲しい」
「……確かに。そう言われると急に不安になってきましたな」

 こうして今後の方針が決まった。アーレスはひとまずユーテリアに潜入し、国の様子を確認する。その間に青龍達は隠れ里に向かい仲間達の安否を確認し、問題がなかった場合は青龍がユーテリアにいるアーレスと合流する。

「決まりだな。明日の朝この町を出るぞ。今日はゆっくり休んでくれ」
「ははっ!」

 そして夜、アーレスのベッドに朱雀と黄龍が忍び込んできた。

「ゆっくり休めと言ったはずだが?」
「久しぶりに一緒にいるんだから同じベッドで寝ようよ~」
「わ、私にあんな事をしておいて放置したままなんて酷いです! なので一緒に寝て下さい!」
「やれやれだな。明日は馬車での移動になりそうだ」

 そして翌朝、案の定朱雀と黄龍は足腰に力が入らなくなったため、ユーテリアとの国境までは馬車での移動となった。

「うえぇ~……揺れが響く~……」
「腰が辛いですっ」
「アーレスよ、ほどほどという言葉を知らぬのかお主……」

 そう嗜めてきた玄武にアーレスは朱雀と黄龍を見ながら言った。

「俺は何度も止めておけと言ったのだがな。あいつらが競うように襲い掛かられてな」
「ふっ、モテモテですねぇ」

 すでに青龍は諦めていたようで、窓から空を見上げていた。

 そうして五人の乗った馬車はいくつか町や村を経由し、大陸中央へと向かって行った。そこでアーレスが異変に気付く。

「大陸中央、ユーテリアに近付く度に浮浪者が増えていくな。御者、何か知ってるか?」
「はい? ああ……こんなのまだマシな方ですよ。ユーテリアに入ったらもっと酷い事になってますので」
「ふむ」
「ユーテリアは貧富の差が激しいんでさぁ。富める者は天井知らず、貧しい者はその日の食事にすら困り、身売りする。ユーテリアで偉いのは商人なんでさあ」
「なるほどな。王が商人だから商人が優遇されているのか」
「へえ。できたらあまり近付きたくない国でさ」

 御者からも近付きたくないと言われるユーテリア。アーレスは御者の話を聞き、逆に興味を抱いていた。

 そして数日後、いよいよ馬車はユーテリアとの国境に到着した。

「では俺はここから一人でユーテリアに侵入する。青龍達はこのまま馬車で行ける所まで南下し、隠れ里に向かってくれ」
「わかりました。必要ない言葉ではあると思いますが一応言っておきましょうか。アーレス殿、お気をつけて」
「ははっ、全く必要ない言葉だな。だが心遣いだけはもらっておこう。青龍、後は頼む」
「かしこまりました」

 そうしてアーレスが降りた馬車はユーテリアを迂回し南下していった。

「……さて、ユーテリアか。最上位精霊リヴァイアサンから滅ぼして欲しいとまで言われた国はいったいどんな国か楽しみだな」

 アーレスは口角を上げ、国境の門へと向かうのだった。 
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