職業『精霊使い』に覚醒したら人類圏から追放されました(完結)

夜夢

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第4章 東の大陸編

09 レジスタンス

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 死にかけていた村人を救い、その村人に金と食糧を運ばせたアーレスは着々と村を改造し、ボロボロだった村を要塞化していた。

「アーレス様! 新しく二十名の村人が集まりました!」
「うむ。戦えそうな者は?」
「はっ! 木こりが五名、狩人が二名です!」
「そうか。ではその七名は地下の訓練所に。残りは食糧調達班に回しておくように」
「はっ!」

 アーレスは戦えそうな者を地下の訓練所に集め戦う術を教えていた。そして戦えない者は農作業に回し、要塞内で暮らす民のために食糧生産に回す。国に散々虐げられてきた者達は施しを与えてくれるアーレスを仰ぎ、ひたすら国を倒すためにスキルを磨いていった。

 そうして国内の町や村から難民を集めていき一ヶ月、アーレスは国を倒すために最初の一手を打つ。

 アーレスは執務室に七人の男を集め、金を手渡した。

「アーレス様、この金はなんでしょう?」
「うむ。お前らは見た目も良く、少し身形を整えれば村人には見えん。そこでまずその金を持ってカジノで暴れ回ってもらう」
「カジノ……ですか。あの、俺達カジノなんて入った事もなくて……」
「安心しろ、もちろん俺も行く。お前ら七人は俺の従者という呈でカジノに入る。お前らの担当はルーレットとスロットマシンだ。なに、魔法で幸運値を最大まで引き上げてやる。万に一つも負けはない」
「「「「おぉっ!」」」」

 アーレスに絶大な信頼をよせている村人達はこの言葉に歓喜し震えた。

「稼いだ金は全部お前らにやる。元々はお前らの金だからな。おそらくカジノは奴らの一番の収入源だ。そこを潰して反撃に出るぞ」
「「「「お──おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」

 アーレスは七人の身形を整え豪華な馬車でカジノへと向かった。カジノは村から南下した先にあった。元々町だった場所に建設したらしく、カジノを中心に歓楽街ができ、様々な異国の人間達で賑わっていた。

「全体が金で塗られてるな。悪趣味な建物だ」
「アーレス様、ここを潰すなんてできるんですか?」
「もちろんできる。お前達のやるゲームは運がものをいうゲームだ。ルーレットはディーラーの技術介入もあるだろうが、運の力は神の与える絶対たるものだ。お前達に負けはない。強気でガンガン張っていけ」
「わかりました! それでアーレス様は何を?」
「俺はカードで稼いでくる。カードはイカサマ要素が強すぎるからお前達では勝てん。だが俺なら必ず勝てる方法があるからな。そっちは俺が担当しよう」
「必ず勝てる方法……さすがアーレス様ですな! さあ、行きましょう! 商人達から全部むしってやりましょう!」
「ああ、尻の毛までむしってやろうじゃないか」

 そうしてアーレスは七人の村人を従えカジノの入り口に向かった。そして中に入ろうとした所で最初の関門があった。アーレス達を見た黒服が入場を阻む。

「失礼ですがお客様はどちらからおいでに?」
「ん? それは答えなければここで遊べないのか?」
「いえ、ずいぶん若く見えましたので確認のため。ここは大金が一夜で消し飛ぶ可能性もありますため、身分の確認をしているのです」
「なるほど。俺は北の大陸からきた貴族なんだがな。せっかく大金を落としてやろうと思って来たのに残念だ」

 そう言い、アーレスは白金貨のみが詰まった皮袋を開いて黒服に見せた。するとその中身を見た黒服の表情は一瞬下衆な笑みに変わり、すぐに態度を改めてきた。

「これはこれは。貴族様でしたらなんの問題もございません。後ろの方々はお付きの者でしょうか?」
「ああ。俺の世話係だ。今日は労いもこめて全員に同じだけの金を持たせて遊ばせるために来たんだ」
「ぜ、全員にあの額を!? は、ははは。ずいぶんお持ちのようで」
「金だけはあるからな。で? 入れるのかな?」
「はい、もちろんでございます。では中に入りまずチップを購入して下さい。換金率は等価。それではごゆっくりとお楽しみ下さいませ」
「ああ、楽しませてもらうよ」

 アーレスは難なく最初の関門を突破し、カジノ内部に潜入した。そして金を全てチップに変え、村人達に指示を出す。

「よし、あとはひたすらカジノから金を抜いてこい。もし荒事になったら俺を呼べ。その時はカジノ丸ごと潰して逃走する」
「……最初から潰した方が早いのでは……」
「はははっ。そしたら悔しがる奴らの顔が見られないだろ? お前達の役割は奴らが悔しがるくらい金を抜く事だ。泣いて懇願してきても手を緩めるんじゃないぞ?」
「「「「ははっ!」」」」

 アーレスの目的は金を稼ぐ事ではなく、商人達が大事にする金を奪う事にあった。そこで村人達にも憂さ晴らしさせ、やる気を出させる。まさに一石二鳥の作戦だ。

「おぉぉぉっ! またジャックポットだ!」
「俺も俺も! いやぁ、良い店だなぁ~」
「よし、ここはルージュに全額ベットだ!」
「んじゃ俺も!」
「あわわわわ……。なんなんだこいつらっ!?」

 アーレスの魔法で運を最大値まで引き上げられた村人 達は遠慮なく力を発揮し、ガンガン金を抜いていく。ルーレットではディーラーが何人か交代しながら玉を投げ入れるが、村人達はお構い無しにチップを倍々に。そして遠隔システムなどないスロットマシンではガンガンジャックポットを引き当てマシンを空にして回っていた。

「ブラックジャック」
「んなっ!? そんなばかな!?」
「ん? 何かおかしな事でも?」
「い、いや……あっれぇぇぇぇ!?」

 その間、アーレスはまずブラックジャックで荒稼ぎしていた。アーレスはディーラーの手札を透視し、被らないようにカードの数字を操り毎回ブラックジャックに持っていく。ディーラーもイカサマを使っているがアーレスはそれすら余裕で見破り、場を支配していた。

「も、もう無理です! お客様、勘弁して下さいっ!」
「ん? 無理とはどういう事かな? まだ数回しか遊んでないんだが」
「くぅぅぅっ! そ、そうだ! もしよろしければもっとレートの高い部屋に案内いたしますが!」
「ふむ。それはありがたいな。ギャンブルは勝つか負けるかを楽しむものだ。掛け金が安いからいまいち勝った気にならなくてな」
「くっ! こ、こちらへ。VIPルームへ案内いたしますっ!」
「ああ、頼むよ」

 そして移動した先でゲームがポーカーに変わったが、変わらず勝ちを重ねていった。

「フォーカード」
「んなぁっ!? なんなんだあんた!? イカサマしてるだろう!?」
「イカサマ? カードを配っているのは貴方だろう? 俺は配られたカードを取捨選択し役を作っているだけだが?」
「くっ! 服の中をあらためさせてもらおうか!」
「どうぞご自由に」

 ディーラーはアーレスがカードを隠し持っていると思ったのだろう。黒服に指示し、ポケットの中や袖の中をあらためさせたが全くイカサマの証拠は出ない。アーレスの使っているイカサマは魔法によるものだ、証拠など出るはずもない。

「……っ! し、失礼……しました──っ!」
「やれやれ、多少勝ってるからと難癖つけるのかなこの店は? なんて品のない店だ。経営者が商人だからか? がめつい奴らだな」
「くっ、くぅぅぅぅぅぅっ! お客様! 次のゲーム、私とサシで勝負です! 掛け金は全額! どうですか!?」

 アーレスは焦るディーラーをさらに煽る。

「ふむ。俺は構わないがそちらは払えるのかな? 俺のチップはすでに小国の国家予算程度はあるぞ? 貴方が負けた上に俺がストレート以上で上がれば払えきれなくなるのでは?」
「ま、まだ勝負は始まっていない! 勝つのは私だ! そして一つ提案だ。次の勝負、お互いにカードを伏せたまま一枚ずつめくって見せ合う事にしようじゃないか。チェンジはなし、どうだ?」
「……良いだろう」

 そうして最後の勝負が始まり、お互いに五枚ずつカードが伏せられたまま配られる。そして二人は左から順番にカードをめくっていき、ディーラーは灰になった。

「お~い、生きてるか?」
「ばか……な……」

 ディーラーはストレートフラッシュ。通常なら負けはないが、アーレスには全部見えていた。そこでカードをめくる度に図柄を変え、アーレスの手札はロイヤルストレートフラッシュ。カジノにある以上の金貨が一夜にして失われる事となった。

 そして村人達も大国の国家予算並みに荒稼ぎし、カジノはしばらくの間営業を停止した。

「お、おらこんな金貨初めて見ただよ! アーレス様について良かっただよぉぉぉぉぉぉっ!」
「これだけあれば一生遊んで暮らせるし、何なら隣国に逃げた皆を呼び戻せるぞ!」
「ふっ、その金は好きに使うと良い。お前達の力で手に入れたものだからな。さて、奴らの悔しがる顔も拝めたしそろそろ帰ろうか」
「「「「はいっ!」」」」

 こうしてアーレスはまず国の資金源の一つであるカジノを潰し、村人達の信頼を勝ち取ったのだった。 
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