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第1章 はじまり
第20話 復興
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ハーチェット伯爵領の首都に蔓延っていた劣等魔族を全て排除した翌日、アインは町を見ながらどうするか考えていた。
「……う~ん。普通に建物を戻すだけじゃ弱い気がする」
これから巨大な帝国を相手に戦うとするならこの町を普通に再建するだけでは到底勝てないだろうと考えたアインは前世の知識から建物の情報を引き出し、まず町を強固な外壁で囲う事にした。
「ここに在るは世界最強と謳われた軍事国家バウエッセンの要塞と外壁! スキル【現実改変】!」
巨大な建築物を発現させるためには膨大な魔力が必要となる。だがアインは野営の最中にリーリエが眠っいる間、魔物を殲滅するために戦い続けていた。そのおかげでレベルもはるかに上昇し、今はギリギリ外壁と要塞を発現させる程度までは魔力が増えていた。
「う……、魔力が枯渇したか……。まだまだだな俺も……。つ、続きは明日にしよう……」
アインはフラフラと要塞の中に向かい、身体を休める。
そして魔法を使えるようになったリーリエは、学園時代の記憶を復元され、今隣国にある当時通っていた魔法学園に向かっていた。
「急がないと……! アインさんっ、絶対に頼もしい仲間を連れて戻りますから待ってて下さいねっ! はっ!」
リーリエはそう意気込み馬を走らせるのだった。
そして一週間かけ、アインは拠点となる町を完成させた。
「世界中から集めた知識だから何かツギハギっぽくなったが……とりあえず完成で良いか」
アインは前世の知識をフル活用し、完璧な要塞都市を発現させていた。まず、外壁は石材ではなく鋼材にした、これは破城槌にも容易く耐えられ、弱い魔法なら掻き消してしまう事ができる、軍事国家バウエッセンの最新技術を取り入れた。
そして外壁の外周は東の大陸のさらに東、極東といわれる地にあった堀を採用した。外壁に沿い深く掘られた溝に大量の水を流し込む。これにより外壁に梯子もかけられず破城槌でも破る事ができない完璧な侵入防止方を作り上げた。これは世界の全てを踏破した事がある勇者アインだからこそ為せる業だ。
「後は門だな」
門には一番拘った。これはかつて潜った世界最難関ダンジョンのボス部屋に続く門を再現した。この門は審判の門と呼ばれ、門自体が意思を持ち、通ろうとする者を試す。
《マスター、通過条件を指定して下さい》
「うむ。条件は──」
アインが通過に設定した条件は一つ。この町に害を及ぼすか及ぼさないかだった。敵意をもって門に近づく者には決して開く事はない。もし無理にこじ開けようと門に触れようものならたちまち審判が下る。その審判に合格すればなにもなし。もし合格できなければ世界のどこかへと強制転移されてしまう。
こうして幾重にも防御手段を講じ、外壁が完成した。
「ふぅ……っ、外壁に一週間もかかったか。だがまだ皇帝には察知されていないらしいな。ならこの勢いで外壁の中も仕上げてしまおう」
外壁の中は非常にシンプルなものだ。兵が待機する兵舎を鋼鉄製の要塞に組み込み、要塞から真っ直ぐ門へと続く道の両脇に平屋の家を並べる。ちなみに入り口は道とは反対側にある。これでもし敵が侵入できたとしても真っ直ぐ要塞に向かうしかない。審判の門は人間しか通れない門のため、例え平屋でも飛び越える事は不可能だ。さらに言えば、もし飛び越えられたとしても、平屋の屋根には踏めば鋭い刃が飛び出す仕組みが取り付けられている。
「よ、よし……二週間で粗方完成したぞ……。つ、疲れた……」
それからアインは三日ほど休息をとり、リーリエの帰りを待った。
ではそのリーリエは隣国で何をしていたか。
「あのっ!」
「あぁ、ごめん。私戦争はちょっと無理」
「す、すみませんっ!」
「無理無理! ガーデン帝国と戦争とか自殺願望でもあるの? 誰も行く気なんてないでしょ」
「はぅぅぅ……っ」
学園到着から一週間、クラスの者に声を掛け続けていたが誰一人として味方をする者はいなかった。それもそのはず、リーリエは学園では落ちこぼれだった。今のリーリエを知らない者がいきなりガーデン帝国との戦に力を貸してくれるはずもなく、リーリエは困り果てていた。
「うぅ、落ちこぼれだった私が恨めしいっ! きっとアインさんは頑張って防衛拠点を作ってくれているのに……! ああ、もうっ! どうしたら良いのっ!? 誰か私達に力を貸してよぉぉぉぉっ」
そう落胆していた時だった。
「あ、リーリエじゃん。帰ってきてたの?」
「え? あ──」
振り向くとそこにはリーリエと似たような容姿、つまりハーフドワーフの集団がいた。
「ぜ……ぜんばいぃぃぃぃっ!」
「うわっ!? ちょっ、鼻水っ!? なにすんのよ!?」
「ぜんばいぃぃぃぃっ!」
リーリエは学園の先輩に泣きながらしがみついた。
「どうしたのよ? 何かあったの?」
「は、はいっ。実は……」
リーリエは先輩に全てを語った。ドワーフは情に厚い種族だ。先輩達はリーリエの話を聞き怒りに震えた。
「ゆ、許せないっ! リーリエのお母さんって純血のドワーフでしょ! それを殺された上……リーリエが奴隷にされかけてたなんて!」
「はい……。アインさんがいなかったら私……もう生きてなかったかも知れません」
「そのアインって人には感謝ね。リーリエ、水臭いじゃない。力を借りたいならまず私達の所にきなよ。同じハーフドワーフじゃない」
「ぜんばいぃぃぃぃ……っ! でもっ、戦争になるんですよ?」
「死ぬより誇りを汚された事の方が許せないわっ! たかだか魔族ごときがドワーフに喧嘩売るなんて舐めてくれたわね。みんな! リーリエの助けになるわよ!」
「「「「おぉぉぉぉぉっ!」」」」
「ありがとうございますぅぅぅぅぅぅっ!」
リーリエは情に厚い先輩達の優しさに涙するのだった。
「……う~ん。普通に建物を戻すだけじゃ弱い気がする」
これから巨大な帝国を相手に戦うとするならこの町を普通に再建するだけでは到底勝てないだろうと考えたアインは前世の知識から建物の情報を引き出し、まず町を強固な外壁で囲う事にした。
「ここに在るは世界最強と謳われた軍事国家バウエッセンの要塞と外壁! スキル【現実改変】!」
巨大な建築物を発現させるためには膨大な魔力が必要となる。だがアインは野営の最中にリーリエが眠っいる間、魔物を殲滅するために戦い続けていた。そのおかげでレベルもはるかに上昇し、今はギリギリ外壁と要塞を発現させる程度までは魔力が増えていた。
「う……、魔力が枯渇したか……。まだまだだな俺も……。つ、続きは明日にしよう……」
アインはフラフラと要塞の中に向かい、身体を休める。
そして魔法を使えるようになったリーリエは、学園時代の記憶を復元され、今隣国にある当時通っていた魔法学園に向かっていた。
「急がないと……! アインさんっ、絶対に頼もしい仲間を連れて戻りますから待ってて下さいねっ! はっ!」
リーリエはそう意気込み馬を走らせるのだった。
そして一週間かけ、アインは拠点となる町を完成させた。
「世界中から集めた知識だから何かツギハギっぽくなったが……とりあえず完成で良いか」
アインは前世の知識をフル活用し、完璧な要塞都市を発現させていた。まず、外壁は石材ではなく鋼材にした、これは破城槌にも容易く耐えられ、弱い魔法なら掻き消してしまう事ができる、軍事国家バウエッセンの最新技術を取り入れた。
そして外壁の外周は東の大陸のさらに東、極東といわれる地にあった堀を採用した。外壁に沿い深く掘られた溝に大量の水を流し込む。これにより外壁に梯子もかけられず破城槌でも破る事ができない完璧な侵入防止方を作り上げた。これは世界の全てを踏破した事がある勇者アインだからこそ為せる業だ。
「後は門だな」
門には一番拘った。これはかつて潜った世界最難関ダンジョンのボス部屋に続く門を再現した。この門は審判の門と呼ばれ、門自体が意思を持ち、通ろうとする者を試す。
《マスター、通過条件を指定して下さい》
「うむ。条件は──」
アインが通過に設定した条件は一つ。この町に害を及ぼすか及ぼさないかだった。敵意をもって門に近づく者には決して開く事はない。もし無理にこじ開けようと門に触れようものならたちまち審判が下る。その審判に合格すればなにもなし。もし合格できなければ世界のどこかへと強制転移されてしまう。
こうして幾重にも防御手段を講じ、外壁が完成した。
「ふぅ……っ、外壁に一週間もかかったか。だがまだ皇帝には察知されていないらしいな。ならこの勢いで外壁の中も仕上げてしまおう」
外壁の中は非常にシンプルなものだ。兵が待機する兵舎を鋼鉄製の要塞に組み込み、要塞から真っ直ぐ門へと続く道の両脇に平屋の家を並べる。ちなみに入り口は道とは反対側にある。これでもし敵が侵入できたとしても真っ直ぐ要塞に向かうしかない。審判の門は人間しか通れない門のため、例え平屋でも飛び越える事は不可能だ。さらに言えば、もし飛び越えられたとしても、平屋の屋根には踏めば鋭い刃が飛び出す仕組みが取り付けられている。
「よ、よし……二週間で粗方完成したぞ……。つ、疲れた……」
それからアインは三日ほど休息をとり、リーリエの帰りを待った。
ではそのリーリエは隣国で何をしていたか。
「あのっ!」
「あぁ、ごめん。私戦争はちょっと無理」
「す、すみませんっ!」
「無理無理! ガーデン帝国と戦争とか自殺願望でもあるの? 誰も行く気なんてないでしょ」
「はぅぅぅ……っ」
学園到着から一週間、クラスの者に声を掛け続けていたが誰一人として味方をする者はいなかった。それもそのはず、リーリエは学園では落ちこぼれだった。今のリーリエを知らない者がいきなりガーデン帝国との戦に力を貸してくれるはずもなく、リーリエは困り果てていた。
「うぅ、落ちこぼれだった私が恨めしいっ! きっとアインさんは頑張って防衛拠点を作ってくれているのに……! ああ、もうっ! どうしたら良いのっ!? 誰か私達に力を貸してよぉぉぉぉっ」
そう落胆していた時だった。
「あ、リーリエじゃん。帰ってきてたの?」
「え? あ──」
振り向くとそこにはリーリエと似たような容姿、つまりハーフドワーフの集団がいた。
「ぜ……ぜんばいぃぃぃぃっ!」
「うわっ!? ちょっ、鼻水っ!? なにすんのよ!?」
「ぜんばいぃぃぃぃっ!」
リーリエは学園の先輩に泣きながらしがみついた。
「どうしたのよ? 何かあったの?」
「は、はいっ。実は……」
リーリエは先輩に全てを語った。ドワーフは情に厚い種族だ。先輩達はリーリエの話を聞き怒りに震えた。
「ゆ、許せないっ! リーリエのお母さんって純血のドワーフでしょ! それを殺された上……リーリエが奴隷にされかけてたなんて!」
「はい……。アインさんがいなかったら私……もう生きてなかったかも知れません」
「そのアインって人には感謝ね。リーリエ、水臭いじゃない。力を借りたいならまず私達の所にきなよ。同じハーフドワーフじゃない」
「ぜんばいぃぃぃぃ……っ! でもっ、戦争になるんですよ?」
「死ぬより誇りを汚された事の方が許せないわっ! たかだか魔族ごときがドワーフに喧嘩売るなんて舐めてくれたわね。みんな! リーリエの助けになるわよ!」
「「「「おぉぉぉぉぉっ!」」」」
「ありがとうございますぅぅぅぅぅぅっ!」
リーリエは情に厚い先輩達の優しさに涙するのだった。
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