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セシリア・クリアベルルート
05 パーティー
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セシリアの友人になり得る人物。それは俺に好意をもたない事が大前提であり、俺も好意を寄せない人物でなければならない。そのために三人の人物に声を掛けた。
一人目は 脳筋のアーノルド男爵家令嬢レオナ・アーノルドだ。彼女は筋肉のためなら何でもする。ただしそれ以外には全く興味がなく、それなりの美貌をもつがいまいち残念な女だ。
二人目は魔法にしか興味を抱かないオンとオフがはっきりした英知の探究者ライア・ミッドナイトだ。彼女はエルフ種で見た目は幼いが実年齢は三桁。それ以上は俺も教えてもらっていない。普段はフードっでエルフの特徴である耳を隠している。彼女も魔法にしか興味がなく、俺になんて全く好意を寄せて来ない。俺の事は研究費を出してくれるパトロンくらいの認識しかない。
三人目はどうするか最後まで迷ったが、セシリアと組み合わせる事で真っ当な研究者に戻せるかもしれないと淡い期待を寄せたマッドサイエンティストのアイシャ・バイエルンだ。こいつは錬金術にしか興味がなく、素材のためなら魂まで売る。俺も顔を出す度に素材を提供させられているが、そこに感情などない。彼女にとっては素材の採集でしかないのだ。
パーティーが始まるまではこれでいけると確信していた。そう、していたんだ。たがいざパーティーが始まると俺の思惑は霧散し、カオスな状況が広まっていた。
「酒は筋肉に良くないから止めろと言ってるだろう!」
「ん。酒は思考を阻害する」
「キヒッ、酒は薬になるんだから身体に良いと決まってる」
「な、なんですのこの方々!?」
「あぁぁ……」
パーティーで酒が振る舞われただけでこの騒ぎだ。酒をといってもかなり軽い酒でシャンパンに似た酒なのだが、レオナとライアは匂いだけで酔い、アイシャはガブ飲み。セシリアは三人の騒がしさに困惑し、俺は今頭を抱えている。実にカオスだ。
「はっ! そんな事よりリヒト王子よ! 本当にこの鶏肉が筋肉に良いのだな!?」
「そんな事より魔導書。はよ」
「お、お前らなぁ。パーティーなんだから参加者ともっとコミュニケーションとれよ」
「「興味ない」」
「おっふ」
どいつもこいつも自分の欲望に素直な奴ばかりだった。俺は頭を抱えながらセシリアに声を掛けた。
「すまないセシリア。俺に興味がない異性はこいつらしか思い浮かばなかったんだ。この埋め合わせは必ずするから今日のパーティーはなかった事に……」
「リヒト様」
「な、なんだ?」
セシリアは真面目な顔で俺に言った。
「この御三方とはどういった知り合いなのでしょうか?」
「ああまぁ……。じゃあ一人ずつ紹介しようか」
俺はセシリアに三人との出会いを語った。
「まずレオナだがな。レオナはアーノルド男爵家の令嬢だ」
「アーノルド……ってあの?」
「ああ。領主であり、騎士団の副団長を兼務してる武人アーノルドだ」
「こ、この方がアーノルド副団長の……! なるほど」
「レオナは幼い頃から城で騎士に混じって訓練していてな。歳が同じだからと紹介されたんだ」
「へぇ……」
セシリアの視線が鋭く突き刺さる。
「では私より長く一緒にいたと」
「いや。レオナは城に来たら訓練し、夕方には王都にある別宅に帰っていた。俺は訓練してないからほとんど会ってなかったよ」
そこにレオナが絡んできた。
「ふん。訓練してないとか嘘ばかり言いおって。毎日訓練してる私とたまに来たリヒト王子が立ち会ってもいつも私が負けていたじゃないか! あれで訓練していないとかおかしいだろう! 私は見たぞ。リヒト王子の引き締まった鋼のような肉体をなっ!」
「なっ!?」
「鋼のような肉体を……見た?」
セシリアがぷるぷると震えている。
「訓練は汗をかくからな。私とリヒトは背中を流しあった仲だ」
「おまっ!? それ十歳くらいの話だろ!」
「うむ。実に素晴らしい肉体だった」
「……へぇ」
まずい。セシリアの好感度がマイナスに振り切れそうだ。そこにさらに横から酔っ払いアイシャが追い打ちをかけてきた。
「あ~あ~。キヒッ、確かに鋼みたいに硬いよねぇ。この前の採集でも──」
「酔っ払い! こっちの方が美味いぞ!」
「んごごっ!?」
「採集?」
「な、なんの事だろうなぁ」
「ぶはっ! リヒト~、いきなり突っ込むなんて酷いねぇ。そんなに私と錬金したいのかい?」
「どうやら酒が足りないようだな!」
これ以上余計な事を言われたらこの場でバッドエンドが確定してしまう。俺はそれを阻止するためアイシャを酒で潰した。
「二人とも下品」
「ライア!」
唯一まともそうなライアだが、そのライアからも爆弾発言が飛び出した。
「リヒト様、彼女は?」
「あ、ああ。彼女は隣国からの留学生でな」
「はあ」
「こう見えて年齢は三桁らしいのだが」
「え?」
「ん。リヒト、それは失礼」
「エルフ種で三桁なら若い方だろ」
「エルフ!? ライアさんはエルフなのですか!?」
「ん。純血。魔導を極めるためにこの国に来た」
セシリアは初めて見るエルフに目を輝かせていた。それだけエルフは普段人間の前に姿を見せない稀少な種なのだ。
「そろそろ帰る。リヒト、魔導書」
「ま、待てライア! まだ来たばかりじゃないか」
「ここに得るものはない。時間は有限」
「え、得るものならある! 友人とか!」
「友人? 必要ない。私には一人いればいい」
「え?」
するとライアは席を立ちフラフラと俺に近寄り何を思ったかそのまま俺の上に座った。
「私の友人はリヒトだけでいい。リヒトは知識の塊。私の知らない知識をまだ隠してる」
「ラ、ライアさん!? リヒト様に座るなど!」
「ん? リヒトと二人で話す時はいつもこう。こうして沢山話を聞いてきた」
「な、ななななっ!?」
セシリアが顔を真っ赤にし勢いよく立ち上がった。この時俺はもうバッドエンドを覚悟した。
「リヒト様っ! なんなのですかこのパーティーはっ! 私に対するあてつけですか!」
「だ、断じて違うっ! 君にこの三人と仲良くなってもらいたくて!」
「仲良く? なれるわけないでしょう! だいたいこの三人! どの令嬢よりも一番リヒト様に近いではありませんかっ! 一緒に湯浴みし、何やら怪しげな研究をし! 触れ合いながら語り合う? 私とは一度足りともした事ないですわよね!?」
セシリアとはこれまでパーティーで会う他、手紙でのやりとりしかした事がない。それは俺がリヒトになる前の話なのだが。
「リヒト様のお気持ちはよ~くわかりました。このパーティーを通じて私と決別する聞いてたなのですね!」
「ち、違っ!」
「わ、私にあ、あんな事までして! この方達とはもっと凄い事をしていたんですねっ」
「だから違うって! この三人は俺に興味ないんだって!」
すると三人が俺に言った。
「興味? あるぞ」
「え?」
「リヒト王子は互いに切磋琢磨するライバルだからな」
「ん。私もリヒトの知識には興味ある」
「キヒッ。私もリヒトの素材には興味が尽きないんでねぇ。手放したくはないな」
「ほら見なさい! リヒト様」
セシリアからは怒りのあまり表情が消えていた。
「セ、セシリア?」
「……やはり私は貴方が嫌いです!」
「なっ!」
「今私から貴方の妻になる気が失せました。後日婚約破棄を願い出ます。ごきげんよう」
「ま、待てセシリア!」
「「あ~あ」」
「ん。静かになった」
「セシリアァァァァッ!?」
俺は慌てて部屋を出ていくセシリアのあとを追うのだった。
一人目は 脳筋のアーノルド男爵家令嬢レオナ・アーノルドだ。彼女は筋肉のためなら何でもする。ただしそれ以外には全く興味がなく、それなりの美貌をもつがいまいち残念な女だ。
二人目は魔法にしか興味を抱かないオンとオフがはっきりした英知の探究者ライア・ミッドナイトだ。彼女はエルフ種で見た目は幼いが実年齢は三桁。それ以上は俺も教えてもらっていない。普段はフードっでエルフの特徴である耳を隠している。彼女も魔法にしか興味がなく、俺になんて全く好意を寄せて来ない。俺の事は研究費を出してくれるパトロンくらいの認識しかない。
三人目はどうするか最後まで迷ったが、セシリアと組み合わせる事で真っ当な研究者に戻せるかもしれないと淡い期待を寄せたマッドサイエンティストのアイシャ・バイエルンだ。こいつは錬金術にしか興味がなく、素材のためなら魂まで売る。俺も顔を出す度に素材を提供させられているが、そこに感情などない。彼女にとっては素材の採集でしかないのだ。
パーティーが始まるまではこれでいけると確信していた。そう、していたんだ。たがいざパーティーが始まると俺の思惑は霧散し、カオスな状況が広まっていた。
「酒は筋肉に良くないから止めろと言ってるだろう!」
「ん。酒は思考を阻害する」
「キヒッ、酒は薬になるんだから身体に良いと決まってる」
「な、なんですのこの方々!?」
「あぁぁ……」
パーティーで酒が振る舞われただけでこの騒ぎだ。酒をといってもかなり軽い酒でシャンパンに似た酒なのだが、レオナとライアは匂いだけで酔い、アイシャはガブ飲み。セシリアは三人の騒がしさに困惑し、俺は今頭を抱えている。実にカオスだ。
「はっ! そんな事よりリヒト王子よ! 本当にこの鶏肉が筋肉に良いのだな!?」
「そんな事より魔導書。はよ」
「お、お前らなぁ。パーティーなんだから参加者ともっとコミュニケーションとれよ」
「「興味ない」」
「おっふ」
どいつもこいつも自分の欲望に素直な奴ばかりだった。俺は頭を抱えながらセシリアに声を掛けた。
「すまないセシリア。俺に興味がない異性はこいつらしか思い浮かばなかったんだ。この埋め合わせは必ずするから今日のパーティーはなかった事に……」
「リヒト様」
「な、なんだ?」
セシリアは真面目な顔で俺に言った。
「この御三方とはどういった知り合いなのでしょうか?」
「ああまぁ……。じゃあ一人ずつ紹介しようか」
俺はセシリアに三人との出会いを語った。
「まずレオナだがな。レオナはアーノルド男爵家の令嬢だ」
「アーノルド……ってあの?」
「ああ。領主であり、騎士団の副団長を兼務してる武人アーノルドだ」
「こ、この方がアーノルド副団長の……! なるほど」
「レオナは幼い頃から城で騎士に混じって訓練していてな。歳が同じだからと紹介されたんだ」
「へぇ……」
セシリアの視線が鋭く突き刺さる。
「では私より長く一緒にいたと」
「いや。レオナは城に来たら訓練し、夕方には王都にある別宅に帰っていた。俺は訓練してないからほとんど会ってなかったよ」
そこにレオナが絡んできた。
「ふん。訓練してないとか嘘ばかり言いおって。毎日訓練してる私とたまに来たリヒト王子が立ち会ってもいつも私が負けていたじゃないか! あれで訓練していないとかおかしいだろう! 私は見たぞ。リヒト王子の引き締まった鋼のような肉体をなっ!」
「なっ!?」
「鋼のような肉体を……見た?」
セシリアがぷるぷると震えている。
「訓練は汗をかくからな。私とリヒトは背中を流しあった仲だ」
「おまっ!? それ十歳くらいの話だろ!」
「うむ。実に素晴らしい肉体だった」
「……へぇ」
まずい。セシリアの好感度がマイナスに振り切れそうだ。そこにさらに横から酔っ払いアイシャが追い打ちをかけてきた。
「あ~あ~。キヒッ、確かに鋼みたいに硬いよねぇ。この前の採集でも──」
「酔っ払い! こっちの方が美味いぞ!」
「んごごっ!?」
「採集?」
「な、なんの事だろうなぁ」
「ぶはっ! リヒト~、いきなり突っ込むなんて酷いねぇ。そんなに私と錬金したいのかい?」
「どうやら酒が足りないようだな!」
これ以上余計な事を言われたらこの場でバッドエンドが確定してしまう。俺はそれを阻止するためアイシャを酒で潰した。
「二人とも下品」
「ライア!」
唯一まともそうなライアだが、そのライアからも爆弾発言が飛び出した。
「リヒト様、彼女は?」
「あ、ああ。彼女は隣国からの留学生でな」
「はあ」
「こう見えて年齢は三桁らしいのだが」
「え?」
「ん。リヒト、それは失礼」
「エルフ種で三桁なら若い方だろ」
「エルフ!? ライアさんはエルフなのですか!?」
「ん。純血。魔導を極めるためにこの国に来た」
セシリアは初めて見るエルフに目を輝かせていた。それだけエルフは普段人間の前に姿を見せない稀少な種なのだ。
「そろそろ帰る。リヒト、魔導書」
「ま、待てライア! まだ来たばかりじゃないか」
「ここに得るものはない。時間は有限」
「え、得るものならある! 友人とか!」
「友人? 必要ない。私には一人いればいい」
「え?」
するとライアは席を立ちフラフラと俺に近寄り何を思ったかそのまま俺の上に座った。
「私の友人はリヒトだけでいい。リヒトは知識の塊。私の知らない知識をまだ隠してる」
「ラ、ライアさん!? リヒト様に座るなど!」
「ん? リヒトと二人で話す時はいつもこう。こうして沢山話を聞いてきた」
「な、ななななっ!?」
セシリアが顔を真っ赤にし勢いよく立ち上がった。この時俺はもうバッドエンドを覚悟した。
「リヒト様っ! なんなのですかこのパーティーはっ! 私に対するあてつけですか!」
「だ、断じて違うっ! 君にこの三人と仲良くなってもらいたくて!」
「仲良く? なれるわけないでしょう! だいたいこの三人! どの令嬢よりも一番リヒト様に近いではありませんかっ! 一緒に湯浴みし、何やら怪しげな研究をし! 触れ合いながら語り合う? 私とは一度足りともした事ないですわよね!?」
セシリアとはこれまでパーティーで会う他、手紙でのやりとりしかした事がない。それは俺がリヒトになる前の話なのだが。
「リヒト様のお気持ちはよ~くわかりました。このパーティーを通じて私と決別する聞いてたなのですね!」
「ち、違っ!」
「わ、私にあ、あんな事までして! この方達とはもっと凄い事をしていたんですねっ」
「だから違うって! この三人は俺に興味ないんだって!」
すると三人が俺に言った。
「興味? あるぞ」
「え?」
「リヒト王子は互いに切磋琢磨するライバルだからな」
「ん。私もリヒトの知識には興味ある」
「キヒッ。私もリヒトの素材には興味が尽きないんでねぇ。手放したくはないな」
「ほら見なさい! リヒト様」
セシリアからは怒りのあまり表情が消えていた。
「セ、セシリア?」
「……やはり私は貴方が嫌いです!」
「なっ!」
「今私から貴方の妻になる気が失せました。後日婚約破棄を願い出ます。ごきげんよう」
「ま、待てセシリア!」
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