現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第2章 改革

20 召還命令

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 あれから数回戦い、ミーニャは単独でホーリードラゴンを圧倒できるまで成長を遂げていた。

「むふー。ミーニャかなりつよくなった!」
「そうだな。いや、獣人は強いな。人間とは性能が違うわ……」

 ホーリードラゴンとの戦いでミーニャのレベルは100まで上がっていた。動きも鍛練を始める前と今とではまるで別物だ。素早さに関しては常時高速移動を使っているかのように速い。

「さて、そろそろ鍛練を始めて一ヶ月になるか。一度屋敷に戻ろうか」 
「ん! ひさしぶりにベッドでごろごろ!」
「ははっ、そうだな」

 このダンジョンは転移が可能らしい。俺は二十一階層へと降りる階段の前で屋敷へと転移した。

「だだいま~」
「あ、ミーニャちゃん! ご主人様も」

 屋敷に戻るとすぐに少女達が出迎えてくれた。

「戻った。不在の間変わりはなかったか?」
「私達に変わりはなかったです。ですが三日前にこれが」
「ん?」

 俺は少女から封筒を受け取った。封筒の裏には王家の封蝋が押されている。

「これは王家からの手紙じゃないか」

 俺は書斎にいき内容を確認した。

《ジェイド子爵。これを読み次第登城されたし。これからの事について話がある。私も多忙な身ではあるが、いつそなたが来ても良いように時間は開けておく。 グラムヘイズ王国国王 オッド・グラムヘイズ》

「これからの話か。ついに邪神教が国教となる日がきたようだな。辺境伯については思わぬトラブルがあり、公爵の時はかなり強引な手を使った。だが全てはこのためだ。さあ、邪神教の名世界に轟かせてやろうじゃないか」

 俺は正装に着替え、腰に烏丸を備えて城門前へと向かった。ちなみに手紙は一度デルモートに届いたそうだ。国王は俺が王都に屋敷を持っている事を知らないらしい。別に教える義理もないが。

「ジェイド子爵、国王より手紙を賜った。命に応じ推参した。お目通り願う」
「はっ! どうぞ、ジェイド子爵様」

 俺は別室に通され国王の準備が整うのを待つ。しばらく待つと国王の準備が整ったのか、兵が迎えにきた。俺は兵の案内に従い謁見の間へと向かう。

「お久しぶりです、国王様」
「きたか、ジェイド子爵よ。ライゼの件ではすまなかったな」
「いえ」
「加えて、弟からも邪神教を認めると話があった。これでお主は私の出した条件を全て満たした事になるな」
「はい」

 国王は長く息を吐き、俺に言った。

「ジェイド子爵よ、そなたとの約束通り、このグラムヘイズ王国は私の権限に於いて国教を邪神教とする」

 ようやくここまできたか。

「なお、これは私の代だけの措置とし、次代の王とは改めて話し合いをせよ。不服はあるか?」

 なるほどな。何かあっても切れるように今代限定にしたのか。中々頭が回るようだ。不服を申し立てたら不敬罪にあたる。やってくれるな。

「いえ、不服などありません」
「そうか。では話は以上だ。国の名を汚さぬようにこれからも励んでくれい」
「……はっ」

 俺は謁見の間を後にした。そして屋敷の書斎へと戻る。

「……クソがっ! 今代限りだと? 誰が言い出した……」

 俺は謁見した時の状況を振り返る。

「あのニヤケ面……、言い出したのは宰相か。クソが。それに流される王も王だ。どうやら仕置きが必要なようだな」

 ひとまず俺は魔都デルモートに戻りモーリーと邪神に邪神教が期間限定で国教となった事を伝えた。

「ついにやりましたな! あの底辺だった邪神教が国に認められるように……!」
「アホか。全然認められてねぇよ」
「え?」

 デルモートも理解しているようだ。

「そうじゃな。これで喜ぶのはアホモーリーくらいじゃ」
「え? え?」
「わからぬか? 国王は今代限りと言ったのじゃ。明日にでも王が代わればまた振り出しに戻る。王はまだ認めてはおらんのじゃ」
「そ、そんな……! だってあちらから出された条件は全て満たしたはず! なぜ……」

 俺はソファーに投げ出した身体を起こしながらモーリーに言った。

「宰相だ。奴は謁見の際に俺を見ながら笑っていた。おそらくこれを考えたのはあのクソ野郎だ。確かに俺は永続的に国教にしろとは言わなかった。どうやら甘かったらしい」
「……ふむ。ジェイド、どうする?」

 俺は灰色の脳細胞をフル稼働させ、どうこの国を乗っ取ろうか考える。もちろんあの宰相はぶっ殺す。

「あ、そうだジェイド」
「ん?」

 隣に座る邪神が何かを思い出したかのように俺に言った。

「ミューズ男爵が死んだぞ」
「……は? あの殺しても死にそうにない男爵がか?」
「うむ。北の森で竜の群れに遭遇したらしくてな。コルドら騎士を逃がすために自ら時間を稼いだらしい。戻ったコルドから話を聞き妾が確認に行ったが……、聞いた場所には血塗れの鎧しかなかった」

 あの婆さん死んだのか。惜しい人物を亡くしたな。

「……そうか。コルドはどうしてる?」
「己の未熟さを悔やみながら毎日ハードな訓練を重ねておるようじゃ。限界レベルにまで成長しておるからもう強くはなれんと言うのにのう……」
「はぁ……。限界レベルか。キツイな」
「限界レベルは親に依存しておる。主神がそう決めたのじゃ。クソじゃろ?」
「ああ、クソ過ぎるわ。歪んだ世界だな、ここは」

 その後俺は訓練場へと向かう。そこでは蒼騎士やミューズに命を救われた騎士達が鬼のような形相で剣を振っていた。

「クソッ! 俺がもっと強かったら……っ!」
「ミューズ男爵……! 厳しいけど優しい方だった……! 俺は仇すら討てないのかっ!」
「くそぉっ……くそぉぉぉぉぉぉっ!!」

 痛々しい姿だ。これが真に愛された者の最後だ。

「……何とかしてやりたいが今の俺じゃなにもしてやれん。頑張って乗り越えてくれ、コルド……」

 俺は静かに訓練場を後にし、屋敷へと戻るのであった。 
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