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第3章 エンバッハ帝国編
03 エンバッハのダンジョン
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西の町に着いた俺はここを管理しているメイドにダンジョンの詳しい場所を聞き、飛行で向かう。
「……あれが入り口か」
入り口は滅茶苦茶汚い沼地の中心にポツンとある陸地。畳二畳くらいだろうか。そこに階段が口を開いていた。
「調査隊の奴らはどうやってあそこに行ったんだろうな。まさか歩いて? きったな……」
なんと言うか、沼からは腐った魚のような臭いがしている。深さもわからないくらい濁っており、絶対に踏み入れたくないと思わせるほど汚い。
「飛行がなかったらUターンしてたな。あって良かったわ」
そう呟きつつ、俺は布をマスク代わりに顔に巻いてから階段の上へと降り、先に進んだ。
階段を降りきると臭いは消えた。中は洞窟のようになっており、壁には松明が掲げられている。しばらく見ていたが、燃えているようで燃えていない。なんだこれ。
「これ、永久機関じゃね? いや、火をつける作業があるから違うか。いやぁ不思議だ……」
試しに中の木の枝を抜いてみようとしたが全く動かなかった。ブリザードブレスを吹き掛けても火は消えない。俺はこれはこう言うシステムなんだと思い、諦めて通路の先を見た。
「あまり先は見えないが……ソナー察知に反応があるな。奥に固まってるな。なにしてんだ?」
俺は気配を殺しつつ慎重に通路を進む。途中足元にロープが張られ、かかると音の出る罠があった。奴らが仕掛けたのだろうか。だとしたら人間と同等の知性があると言う事になる。少々面倒だ。
それを越え先に進むとやたらと明るい場所が見えた。慎重に近付き中を窺う。この時、俺は今すぐ帰ろうかと本気で悩んだ。理由はこれだ。
《ゴブッ!》
《ゴブゥッ!!》
奴らはステージらしきものを設置し、その上で自分の筋肉自慢をしていた。それを見ながら同じマスターゴブリンが歓声を上げている。
「……き、気持ちわる……」
《ゴブ? ゴブアァァァァァッ!!》
「げ。今ので気付かれたのか!?」
胡座をかいて声援を送っていたマスターゴブリンが俺の呟きに気付き、一斉に武器を手にして立ち上がった。
「ちっ!」
俺は通路に後退し待ち構える。ここなら狭いので奴らの巨体なら一度に二体か三体同時攻撃が関の山だろう。
俺は烏丸を構え襲い掛かってくるマスターゴブリンを数体ずつ斬り殺していった。
ゴブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
「気持ちわりぃんだよっ! デケェ図体で群れやがって! 死ねやオラァァァァァァァッ!!」
ゴバァァァッ!!
かなりの数を斬り殺した。足元に転がっていた宝箱の数は百。こんなにいたのかよ、
「ったく、まだ最初のフロアだぞ? 先が思いやられるぞ……」
俺は宝を回収しながら愚痴を溢していた。
そして案の定、俺の嫌な予感は当たっていた。次のフロアでもまたマスターゴブリンが固まり、今度はファッションショーのような事をしていたのである。
「テメェら全員同じ腰簑じゃねぇか! 違いあんのかよ!?」
《ゴヴァァァァァァァァッ!!》
こうしてフロアを進む度に百体単位でマスターゴブリンが群れをなし何かを競いあっていた。本気でこいつらが何をしたいのかわからない。
それは階段を降りても同じだった。
「あぁ……SAN値がすり減っていく……」
地下二階、地下三階とそれが続く内に俺の我慢もどうやら限界に達したようだ。
「死ね。【紅炎】」
《ゴブゥゥゥゥゥゥゥッ!!》
俺は通路からフロア内全体に向け炎で攻撃する。もはや真面目に戦う気など起きないほどイラついていた。
「はいはい、つぎつぎ……」
地下十階に着くまで全ての階層がこんな感じだった。この時点で俺はぶち切れていた。
「オラァァァァァァァッ!!」
地下十階、グラムヘイズのダンジョンならボス部屋のある階層だ。それはここも同じらしく、無駄にデカい扉があったので、俺はそれを思いっきり蹴り破った。
《ナ、ナンダ!?》
《ゴブ??》
中には無数のマスターゴブリンと、玉座に座り喋るマスターゴブリンがいた。
「なんだこりゃっ!? なにしてんだこれ!?」
《ナニ? ミタラ、ワカル。オレ、ナンバーワン》
「意味わかんねぇよ!」
《コイツラ、カクブモン、ナンバーワン。オレ、スベテデ、ナンバーワン》
「あ?」
理解した。下にいるこいつらはあの意味不明な筋肉自慢やらファッションショーやらでトップの奴ららしい。そしてあの玉座に座るのはその全てでトップをとった者と言う意味らしい。俺は頭を抱え手を前に突き出してこう言った。
「……死ね。【ホーリーフェザー】」
《《ゴブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!》》
《ナカマタチィィィィィィィッ!!》
ホーリーフェザーは群れるマスターゴブリンの眉間を正確に貫き宝箱に変えていく。
《キ、キサマ! ヨクモナカマヲ……オ?》
「お前も死ぬんだよ、ボケが!」
《フ、フカク……ゴブッ!》
マスターゴブリンの親玉らしき物体の眉間にホーリーフェザーが突き刺さる。次に左肩、腰、右足、右肩、左足と貫いていき、親玉は舞い踊るように回転し宝箱にかわった。
「あ~……、クソみてぇなダンジョンだな。まさか次もこうじゃねぇだろうな? だったら本気でコア破壊しに行くぞ」
俺は愚痴を溢しながら親玉の出した宝箱を開ける。
「あ? なんだこりゃ? ただの玉か? わけわかんねぇな。とりあえず【鑑定】」
俺は宝箱から謎の玉を取り出し鑑定にかけた。
【スキル玉】:欲しいスキルを願うとそのスキルが手に入る。ただし、創造系やスキル付与などの超常スキルは不可。一度使うと使用不可能となる。
俺は玉を握り叫んだ。
「マジか! これで苦労も報われたぜぇぇぇっ! スキル玉か。制限はあるようだがスキルが手に入るとはなぁ……。さて……どんなスキルを手に入れようか」
俺は地下十一階へと降りる階段の前まで進み、欲しいスキルを考えるのであった。
「……あれが入り口か」
入り口は滅茶苦茶汚い沼地の中心にポツンとある陸地。畳二畳くらいだろうか。そこに階段が口を開いていた。
「調査隊の奴らはどうやってあそこに行ったんだろうな。まさか歩いて? きったな……」
なんと言うか、沼からは腐った魚のような臭いがしている。深さもわからないくらい濁っており、絶対に踏み入れたくないと思わせるほど汚い。
「飛行がなかったらUターンしてたな。あって良かったわ」
そう呟きつつ、俺は布をマスク代わりに顔に巻いてから階段の上へと降り、先に進んだ。
階段を降りきると臭いは消えた。中は洞窟のようになっており、壁には松明が掲げられている。しばらく見ていたが、燃えているようで燃えていない。なんだこれ。
「これ、永久機関じゃね? いや、火をつける作業があるから違うか。いやぁ不思議だ……」
試しに中の木の枝を抜いてみようとしたが全く動かなかった。ブリザードブレスを吹き掛けても火は消えない。俺はこれはこう言うシステムなんだと思い、諦めて通路の先を見た。
「あまり先は見えないが……ソナー察知に反応があるな。奥に固まってるな。なにしてんだ?」
俺は気配を殺しつつ慎重に通路を進む。途中足元にロープが張られ、かかると音の出る罠があった。奴らが仕掛けたのだろうか。だとしたら人間と同等の知性があると言う事になる。少々面倒だ。
それを越え先に進むとやたらと明るい場所が見えた。慎重に近付き中を窺う。この時、俺は今すぐ帰ろうかと本気で悩んだ。理由はこれだ。
《ゴブッ!》
《ゴブゥッ!!》
奴らはステージらしきものを設置し、その上で自分の筋肉自慢をしていた。それを見ながら同じマスターゴブリンが歓声を上げている。
「……き、気持ちわる……」
《ゴブ? ゴブアァァァァァッ!!》
「げ。今ので気付かれたのか!?」
胡座をかいて声援を送っていたマスターゴブリンが俺の呟きに気付き、一斉に武器を手にして立ち上がった。
「ちっ!」
俺は通路に後退し待ち構える。ここなら狭いので奴らの巨体なら一度に二体か三体同時攻撃が関の山だろう。
俺は烏丸を構え襲い掛かってくるマスターゴブリンを数体ずつ斬り殺していった。
ゴブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!
「気持ちわりぃんだよっ! デケェ図体で群れやがって! 死ねやオラァァァァァァァッ!!」
ゴバァァァッ!!
かなりの数を斬り殺した。足元に転がっていた宝箱の数は百。こんなにいたのかよ、
「ったく、まだ最初のフロアだぞ? 先が思いやられるぞ……」
俺は宝を回収しながら愚痴を溢していた。
そして案の定、俺の嫌な予感は当たっていた。次のフロアでもまたマスターゴブリンが固まり、今度はファッションショーのような事をしていたのである。
「テメェら全員同じ腰簑じゃねぇか! 違いあんのかよ!?」
《ゴヴァァァァァァァァッ!!》
こうしてフロアを進む度に百体単位でマスターゴブリンが群れをなし何かを競いあっていた。本気でこいつらが何をしたいのかわからない。
それは階段を降りても同じだった。
「あぁ……SAN値がすり減っていく……」
地下二階、地下三階とそれが続く内に俺の我慢もどうやら限界に達したようだ。
「死ね。【紅炎】」
《ゴブゥゥゥゥゥゥゥッ!!》
俺は通路からフロア内全体に向け炎で攻撃する。もはや真面目に戦う気など起きないほどイラついていた。
「はいはい、つぎつぎ……」
地下十階に着くまで全ての階層がこんな感じだった。この時点で俺はぶち切れていた。
「オラァァァァァァァッ!!」
地下十階、グラムヘイズのダンジョンならボス部屋のある階層だ。それはここも同じらしく、無駄にデカい扉があったので、俺はそれを思いっきり蹴り破った。
《ナ、ナンダ!?》
《ゴブ??》
中には無数のマスターゴブリンと、玉座に座り喋るマスターゴブリンがいた。
「なんだこりゃっ!? なにしてんだこれ!?」
《ナニ? ミタラ、ワカル。オレ、ナンバーワン》
「意味わかんねぇよ!」
《コイツラ、カクブモン、ナンバーワン。オレ、スベテデ、ナンバーワン》
「あ?」
理解した。下にいるこいつらはあの意味不明な筋肉自慢やらファッションショーやらでトップの奴ららしい。そしてあの玉座に座るのはその全てでトップをとった者と言う意味らしい。俺は頭を抱え手を前に突き出してこう言った。
「……死ね。【ホーリーフェザー】」
《《ゴブゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!》》
《ナカマタチィィィィィィィッ!!》
ホーリーフェザーは群れるマスターゴブリンの眉間を正確に貫き宝箱に変えていく。
《キ、キサマ! ヨクモナカマヲ……オ?》
「お前も死ぬんだよ、ボケが!」
《フ、フカク……ゴブッ!》
マスターゴブリンの親玉らしき物体の眉間にホーリーフェザーが突き刺さる。次に左肩、腰、右足、右肩、左足と貫いていき、親玉は舞い踊るように回転し宝箱にかわった。
「あ~……、クソみてぇなダンジョンだな。まさか次もこうじゃねぇだろうな? だったら本気でコア破壊しに行くぞ」
俺は愚痴を溢しながら親玉の出した宝箱を開ける。
「あ? なんだこりゃ? ただの玉か? わけわかんねぇな。とりあえず【鑑定】」
俺は宝箱から謎の玉を取り出し鑑定にかけた。
【スキル玉】:欲しいスキルを願うとそのスキルが手に入る。ただし、創造系やスキル付与などの超常スキルは不可。一度使うと使用不可能となる。
俺は玉を握り叫んだ。
「マジか! これで苦労も報われたぜぇぇぇっ! スキル玉か。制限はあるようだがスキルが手に入るとはなぁ……。さて……どんなスキルを手に入れようか」
俺は地下十一階へと降りる階段の前まで進み、欲しいスキルを考えるのであった。
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