現世で死んだ俺は新たな世界へと生まれ変わる途中で邪神に拐われました。ありがとう! 感謝します邪神様っ!

夜夢

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第4章 シーガロン大陸編

02 白虎族とは

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 俺達は父親の案内で彼の家に行き居間に通される。

「こちら粗茶ですが……」
「ぬるいっ!!」
「す、すみませんっ! 我らは皆猫舌なものでっ!」

 普通立場が逆なのではないだろうか。だがこれが俺だ。取り繕うのも面倒だしな。

 ミーニャの父親が改めて熱い茶を持ってきた。

「ど、どうぞ」
「うむ。……薄いな」
「今は冬で茶葉もあまり……。今年は早くから降ったもので肝臓が間に合わずに」
「ほ~ん」

 俺は茶を置き父親に尋ねた。

「でだ、俺とミーニャはこうなって子供も作ったわけだが……。ミーニャの扱いはどうなるんだ?」
「扱い……とは?」
「いや、あるだろ。白虎族は里の中でのみ暮らすとかそういったルールみたいなもんがよ?」
「ああ、なるほど。あるにはありますが……、ミーニャは掟を破り人間と子をなしてしまいましたのでその……。里には置いておけないと言いますか……」
「なるほど。拐われたのは仕方ないが、人間と交わってしまったがためにここでは暮らせない。そう言う事か?」
「はい。これは掟ですので。ミーニャはすでに死んだものとばかり思ってました。それがまさか生きていたなど……。あの、ミーニャとはどこで?」

 俺はミーニャが拐われた所から全て説明した。

「ね、寝ていた所をさらわれたと……。はぁぁ……、てっきり黒狼族の奴らが拐っていったものとばかり思っていました」
「黒狼族?」
「はい。黒狼族は我々の不倶戴天の敵。我々白虎族と黒狼族はこの盆地を半分に分け、もう何世代も争っておるのですよ」
「ほ~ん」

 ミーニャの父親の言葉に熱が入る。

「奴らは……奴らは邪神こそが唯一の神だとかぬかして我らに改宗を迫ってくるのです!」
「ん? な、なんて?」
「邪神が唯一神だと。我らは神獣白虎より生まれし種族! 神獣といえば主神ゼウスに仕えし者! 邪神など神界を追放された堕神! この白き身は正義の証ですぞ!!」

 ミーニャの顔色がどんどん悪くなっていく。

「パ、パパ……。それ以上はちょっと……」
「なにを言う! 神に仕える事こそ我らが使命! 邪神なんぞにかどわかされた黒狼族なんぞ我ら神の眷属が必ずや討ち滅ぼしてくれ……」

 そこで俺は自己紹介してやった。

「どーも、邪神国デルモート国王ジェイドです」
「……へ? じ、邪神……国?」
「ちなみに邪神はこの世界に顕現してんぞ。俺はその半身だ」
「……は?」
「そうか~。白虎族は敵だったか。なら……ミーニャには悪いがここは滅ぼさなきゃならんなぁ」

 ミーニャの父親は慌てて床に頭を擦り付けた。

「たった今改宗しましたぁぁぁぁっ! わ、我らに刻まれたる黒は邪神様の黒! この黒こそ我らが誇りですぞぉぉぉぉぉぉっ!」
「……軽いなあんた」

 あっと言う間の手の平返しだった。

「やだなぁもう。神の半身ならそう言って下さらないと。邪神様も神様です! それもこの世界に顕現しておられるなど! いやぁ、世界の事に見向きもしないゼウスとは大違いですなっ! ハハハハハ……」
「んじゃもう争いは終わりだな。お前、黒狼族に謝って来いよ」
「なっ!? あ、あの犬っコロに頭を下げろと!?」
「あぁん? なら俺が無理矢理下げさせてやろうか? 二度と地面から上がらなくなるまでなぁぁぁっ?」
「はい、明日謝りに行って参ります!」

 神の眷属たる白虎族の長でもレベル一万越えの俺は怖いらしい。

「ったく。俺の身内をいたぶるとは許せんぞ。ミーニャの親じゃなかったら今ごろ挽き肉にしてやってる所だ。ミーニャに感謝しろよ?」
「はっ! ははぁぁぁぁぁっ!」

 この日はこの家に泊まりその翌日。俺はミーニャの父親と黒狼族の里に向かった。

「や、奴らは非常に獰猛なので気を付けて下さいよ?」
「虎に獰猛とか言われる狼ってどんだけだよ……」

 雪を溶かしながら進む事一時間。盆地の中央付近に差し掛かると突然遠吠えが始まった。

「あん?」
「ここから先が奴らの縄張りって事です。越えたが最後、奴らは総出で襲い掛かってきますぞ」
「ほ~。ならお前はここで待ってな」
「え? な、なにを……」

 俺はあっさりと境界線を踏み越え黒狼族のテリトリーに入った。するとまた遠吠えが響き渡り、しばらくすると白を埋め尽くさんばかりの黒が向こうから走ってきた。

「そこは我らが領域! それ以上進むなら戦争だぞっ!!」

 滅茶苦茶艶のある黒をなびかせ黒狼族の女がそう俺に言い放った。

「話がある」
「話だと? 我らには話などない! それでも話がしたいならコレで屈服させてみろ!」

 そう言い女は拳を突き出してきた。

「……あ~あ」
「うっ……くぅぅぅぅぅぅんっ!」
「「「「「長さまぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」

 俺は開始一秒もせずに長を屈服させていた。

「話があるって言ってんだろうが。お前ら邪神教徒なんだろ?」
「……はい」
「俺は邪神の半身にして邪神のための国を作ったジェイドと言う者だ」
「「「「じ、邪神様の国ぃぃぃぃっ!?」」」」
「じ、邪神様の半身……? あ、あなた様がですか!?」
「そうだ。話を聞く気になったか?」
「は、はいっ!」

 俺は黒狼族の長から離れ、その場にいた全黒狼族に告げた。

「争いは終わりだ。白虎族は邪神教徒になったんだ。邪神教徒同士の争いは固く禁じられている。お前らも邪神教徒ならわかるだろう? この掟を破った者は死あるのみだ。さあ、話をしようか」
「「「「ははっ!」」」」
「あ、あの黒狼族が腹を見せて服従のポーズ……だと!? は、初めて見た……」

 こうして俺は集まってきた黒狼族と白虎族の長を交え、会談を開く事にするのだった。


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