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第4章 シーガロン大陸編
05 ジェイド町へ行く
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今、俺の腕の中にはミーニャの母親がいた。と言ってもすでに事後だ。ミーニャの父親自ら俺に妻を差し出し家を要求してきたのである。
「こ、これで家はもらえるのでしょうか?」
「ああ。どんな家が良いか考えてこいよ。俺がお前の望む家を作ってやるよ」
「は、ははっ! あの……俺の妻は……」
俺はミーニャの母親に尋ねる。
「ほら、旦那が呼んでるからもう帰れよ」
「嫌です! 私まだ帰りたくありませんっ!」
「な、何を言ってるんだお前……!?」
慌てた様子で父親が駆け寄る。
「あら、どちら様かしら? もしかして私より家を選んだ甲斐性なしかしら?」
「ぐっ……!」
父親は二の句を口に出せない。実際、妻の言っている事は正しい。父親は魔狼族の家を見て自分で作っても到底勝てはしないと妻を売ったのである。
「し、仕方ないだろうっ! 魔狼族より良い家を建てるためにはこれしか方法が……!」
「あら、別に今さら怒ってないわよ?」
「……へ?」
「怒ってないけど私はあなたとは帰らない。だって……私まだジェイド様の子を授かってないもの」
「な、なら良いじゃないか! 帰って俺と子作りを……」
だが妻はキッパリと断る。
「な、何故だ! 昨日までは俺の事を愛していると!」
「昨日まではね。だけど、もう心変わりしたの。ジェイド様はあなたより立派。私はジェイド様を受け入れた時、身も心もジェイド様のモノになったのよ。あんたは家が欲しいんでしょ。さっさともらって帰りなさいよね」
「お、俺より小さい人間が俺より立派だと!? ありえんだろう!」
「なら比べてみたら?」
それから数分後、ミーニャの父親は肩を落として帰っていった。
「あれで良かったのか? 俺は別に別れさせようとしたわけじゃ……」
「良いんです! それより……ジェイド様こそ私はミーニャの母親なんですよ? しかも人間ではなく獣人。よく反応しましたね」
「バカだなぁ。こんな可愛い人妻に反応しないわけないだろう? 今から第二ラウンドといこうか?」
白い顔がぽっと朱に染まる。
「よ、喜んで……」
それから俺達は深夜までハッスルし、朝を迎えた。
「……いやぁ……積もったな。これ……一メートルくらいあるんじゃないか?」
ベランダから外を眺めると屋敷の扉が半分ほど雪に埋もれていた。
「毎年こんな降ったら大変じゃないか?」
「今年は特に多いのです。例年なら積もっても一晩でこの半分です。しかも時期ももっと遅い頃。これは明らかに異常です」
「ふむ」
その話を聞いた俺は黒狼族の長バレッタを屋敷に呼んだ。
「はい。今年の降り具合は確かにおかしいです」
「なるほど。ただの気象現象で片付けるには早計って事か」
二人はこくりと頷く。
「わかった。一度調べてみるとしようか。二人とも、少し屋敷を空ける。もし何かあったらミーニャを頼れ。邪神を除いて今世界で二番目に強いのはミーニャだからな」
「「はいっ!」」
二人にそう告げ、俺はスキル【飛行】を使い山を下りる。この盆地に来る前に人里のあった場所は空からリサーチ済みだ。
「平地もやたら雪が多いな」
町の入り口付近で降り、俺は一人町へと向かう。
「……静かだな。人っこ一人歩いちゃいねぇ……」
寒過ぎて家から出たくないのだろうか。町の外には歩いている人はいなかった。店も全て閉まっている。
「う~ん……。これじゃ情報を探るにも探れないじゃないか」
どうするか悩んだ俺はとりあえず宿屋に向かった。
「……いやいや。宿屋まで開いてないってどう言う事だよ」
俺はとりあえず扉を軽くノックしてみた。しかし返事はない。仕方ないので今度は少し強めにノックしてみた。だが相変わらず返事はない。
「……ぴきっ」
俺は豪快に扉を蹴破った。
「出て来いおらぁぁぁぁぁぁぁっ! 客だぞ客っ! 宿屋の癖に居留守使ってんじゃねぇぞゴラァァァァァァッ!!」
久しぶりにキレた。俺は無視されるのが何よりも嫌いだ。
「あぁぁぁぁっ! う、家の扉がぁっ!? れ、れれれ冷気が襲い掛かってくるわぁぁぁぁぁっ!」
「なんだよ、いるんじゃねーか。無視すんなゴラ」
奥から出てきたのは毛布を何枚も被った若女将だった。
「宿はやってないって入り口に書いてたでしょ! 薪がないのっ! 料理も出来ないし暖もとれないの! 扉どうしてくれんのよぉぉぉぉっ! 凍死しちゃうでしょっ!」
「……」
二時間後。
「寒けりゃ運動すれば良いだろうが」
「は……あ……」
俺は扉を直し、女将と激しく運動してやった。
「な、なんて発想……。人肌ってこんなに暖かいのね……」
「わかったら宿を開けろ。俺を泊めてくれ」
「ふぁい……。好きなだけいて下さい……」
俺はヤりながら若女将に尋ねた。どうやら例年より早く雪が積もってしまったため、薪の乾燥が間に合わなかったのだとか。そして去年残った薪も領主が全て押収し、町の住民は全員干し肉を噛み、毛布を被って寒さを凌いでいると言う。最低な領主だな。
「はぁぁ……あ、あったかい……。お客様は神様です……」
「まぁ、難点は子供ができてしまう事だがな」
「暖かく過ごせるなら……か、構いません」
「そうか。なら……続けてやろう」
「あっ……!」
俺はこの宿を拠点にし、何か異変はないかと調査を始めるのであった。
「こ、これで家はもらえるのでしょうか?」
「ああ。どんな家が良いか考えてこいよ。俺がお前の望む家を作ってやるよ」
「は、ははっ! あの……俺の妻は……」
俺はミーニャの母親に尋ねる。
「ほら、旦那が呼んでるからもう帰れよ」
「嫌です! 私まだ帰りたくありませんっ!」
「な、何を言ってるんだお前……!?」
慌てた様子で父親が駆け寄る。
「あら、どちら様かしら? もしかして私より家を選んだ甲斐性なしかしら?」
「ぐっ……!」
父親は二の句を口に出せない。実際、妻の言っている事は正しい。父親は魔狼族の家を見て自分で作っても到底勝てはしないと妻を売ったのである。
「し、仕方ないだろうっ! 魔狼族より良い家を建てるためにはこれしか方法が……!」
「あら、別に今さら怒ってないわよ?」
「……へ?」
「怒ってないけど私はあなたとは帰らない。だって……私まだジェイド様の子を授かってないもの」
「な、なら良いじゃないか! 帰って俺と子作りを……」
だが妻はキッパリと断る。
「な、何故だ! 昨日までは俺の事を愛していると!」
「昨日まではね。だけど、もう心変わりしたの。ジェイド様はあなたより立派。私はジェイド様を受け入れた時、身も心もジェイド様のモノになったのよ。あんたは家が欲しいんでしょ。さっさともらって帰りなさいよね」
「お、俺より小さい人間が俺より立派だと!? ありえんだろう!」
「なら比べてみたら?」
それから数分後、ミーニャの父親は肩を落として帰っていった。
「あれで良かったのか? 俺は別に別れさせようとしたわけじゃ……」
「良いんです! それより……ジェイド様こそ私はミーニャの母親なんですよ? しかも人間ではなく獣人。よく反応しましたね」
「バカだなぁ。こんな可愛い人妻に反応しないわけないだろう? 今から第二ラウンドといこうか?」
白い顔がぽっと朱に染まる。
「よ、喜んで……」
それから俺達は深夜までハッスルし、朝を迎えた。
「……いやぁ……積もったな。これ……一メートルくらいあるんじゃないか?」
ベランダから外を眺めると屋敷の扉が半分ほど雪に埋もれていた。
「毎年こんな降ったら大変じゃないか?」
「今年は特に多いのです。例年なら積もっても一晩でこの半分です。しかも時期ももっと遅い頃。これは明らかに異常です」
「ふむ」
その話を聞いた俺は黒狼族の長バレッタを屋敷に呼んだ。
「はい。今年の降り具合は確かにおかしいです」
「なるほど。ただの気象現象で片付けるには早計って事か」
二人はこくりと頷く。
「わかった。一度調べてみるとしようか。二人とも、少し屋敷を空ける。もし何かあったらミーニャを頼れ。邪神を除いて今世界で二番目に強いのはミーニャだからな」
「「はいっ!」」
二人にそう告げ、俺はスキル【飛行】を使い山を下りる。この盆地に来る前に人里のあった場所は空からリサーチ済みだ。
「平地もやたら雪が多いな」
町の入り口付近で降り、俺は一人町へと向かう。
「……静かだな。人っこ一人歩いちゃいねぇ……」
寒過ぎて家から出たくないのだろうか。町の外には歩いている人はいなかった。店も全て閉まっている。
「う~ん……。これじゃ情報を探るにも探れないじゃないか」
どうするか悩んだ俺はとりあえず宿屋に向かった。
「……いやいや。宿屋まで開いてないってどう言う事だよ」
俺はとりあえず扉を軽くノックしてみた。しかし返事はない。仕方ないので今度は少し強めにノックしてみた。だが相変わらず返事はない。
「……ぴきっ」
俺は豪快に扉を蹴破った。
「出て来いおらぁぁぁぁぁぁぁっ! 客だぞ客っ! 宿屋の癖に居留守使ってんじゃねぇぞゴラァァァァァァッ!!」
久しぶりにキレた。俺は無視されるのが何よりも嫌いだ。
「あぁぁぁぁっ! う、家の扉がぁっ!? れ、れれれ冷気が襲い掛かってくるわぁぁぁぁぁっ!」
「なんだよ、いるんじゃねーか。無視すんなゴラ」
奥から出てきたのは毛布を何枚も被った若女将だった。
「宿はやってないって入り口に書いてたでしょ! 薪がないのっ! 料理も出来ないし暖もとれないの! 扉どうしてくれんのよぉぉぉぉっ! 凍死しちゃうでしょっ!」
「……」
二時間後。
「寒けりゃ運動すれば良いだろうが」
「は……あ……」
俺は扉を直し、女将と激しく運動してやった。
「な、なんて発想……。人肌ってこんなに暖かいのね……」
「わかったら宿を開けろ。俺を泊めてくれ」
「ふぁい……。好きなだけいて下さい……」
俺はヤりながら若女将に尋ねた。どうやら例年より早く雪が積もってしまったため、薪の乾燥が間に合わなかったのだとか。そして去年残った薪も領主が全て押収し、町の住民は全員干し肉を噛み、毛布を被って寒さを凌いでいると言う。最低な領主だな。
「はぁぁ……あ、あったかい……。お客様は神様です……」
「まぁ、難点は子供ができてしまう事だがな」
「暖かく過ごせるなら……か、構いません」
「そうか。なら……続けてやろう」
「あっ……!」
俺はこの宿を拠点にし、何か異変はないかと調査を始めるのであった。
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