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第6章 ナルニーア大陸編
06 ニージュ村
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ライカと二人で魔物を倒しつつ歩いて半日、ようやく俺達は目的地であるニージュ村に辿り着いた。
「やたら魔物と遭遇したな。リーフ、昔からこの辺はこんなに魔物が出るのか?」
ライカの母親が昔を思い出しながら答える。
「いえ、恐らくブライト王国の精鋭が国境に常駐しているので魔物の討伐まで手が回らないのではと……。昔は皆さんが定期的に魔物を間引いてましたから」
「なるほど。間引く奴がいないから魔物は増え放題って事か」
そこでライカが手を挙げた。
「それなら今後は私が魔物を狩るよ~。なんか知らないけど滅茶苦茶レベルも上がったし?」
いつの間にか俺とライカがパーティー扱いになっていたようだ。俺にはスキル【経験値万倍】がある。なので単純にいつもの五千倍の経験値がライカに入っていたのである。
「ライカ、レベルは?」
「えっと……」
ライカは言われて自分のステータスを確認する。
「……あ、れ? 上限値の六十まで上がってる!? え? なんで!?」
「……なるほど。それならこの辺の魔物に遅れをとる事はないか」
「なんで? なんで!?」
俺は説明しても理解出来なそうだからたまたま経験値がいっぱい入ったのだろうと言い誤魔化した。
「ほら村に入るぞライカ。リーフ、案内を頼む」
「ま、待ってよ~!」
「では行きましょうか」
リーフの足は村に近づく度にだんだん早くなっていく。柵を越えた辺りではもう走っていた。
「おんや? リーフ……? もしかしてリーフか!?」
「た……ただいまっ! 私帰ってきたよっ!」
「「「「おぉぉぉぉ! リーフだ!」」」」
村はそんなに大きくない。総人口は百人程度だろう。全員が顔見知りのようだった。
「リーフちゃん!」
「あ、ハンスさん!」
リーフに犬型の亜人が話し掛ける。
「無事だったんだな……! 良かった!」
「はい、何とか……。あの、私の家は……」
「ああ、あるよ。まだ俺の家の隣にな。だが……」
男の顔が曇る。
「……リーフ……リーフ!!」
「え? あ……お、お父……さん? お父さんっ!!」
「あぁぁぁぁ……リーフ! リーフッ!!」
どうやらあれが父親らしい。リーフは泣きながら父親の胸に飛びついた。
「お父さんっ、お父さぁぁぁぁんっ!」
「あぁぁ……リーフ……! こんなに大きくなって……!」
「うんっ……うんっ!!」
感動の対面といったところだが父親には抱きしめるための腕が片方なかった。
「お父さん……! その腕……っ!」
「あぁ……。五年前に魔物に食われてな……。抱きしめてやりたくても抱きしめてやれないんだ……!」
「あぁぁぁぁっ……!」
先ほどの男が浮かない表情をしていた理由はこれか。
「お父さん……お母さんは?」
「……」
今後は父親の顔が曇る。
「……家の中にいる。どうやら神様ってのは本当にいるらしいな。リーフ、顔を見せてやってくれ……」
「え? え?」
リーフは父親に連れられ家に向かった。俺達は置いてきぼりだ。
「……あんた……人間か?」
「ああ。リーフの夫だ。と言っても最近知り合ったんだがな。こっちはライカ、リーフの娘だ」
「リーフちゃんの娘っ!? あ……ハーフ……か」
「ライカです!」
ライカはハンスに頭を下げた。
「……そっか。そうだよな。リーフちゃんは人間の国に拐われてったんだ。さぞ苦労しただろうなぁ……」
その時だった。リーフが家の中から飛び出し俺にしがみついてきた。
「ジェイドさんっ……! お願いしますっ……! お母さんを……お母さんを助けて下さいっ!」
「は? どうしたんだそんなに慌てて……」
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
リーフはそのまま泣き崩れた。あの柔和なリーフがだ。そこでハンスが口を開く。
「リーフちゃんのお母さんな……病を患ってんだよ」
「病?」
「ああ。なんか知らんが食べても食べても痩せるんだ。咳をすれば池を吐くし、最近ではもう……」
癌だろうか。
「ジェイドさん……お願い……しますっ……! お母さんを助けて……っ!」
「ああ、任せろ。ライカ、行こう」
「あ、は、はい!」
俺は泣き崩れるリーフを腕に抱き家の中へと入る。ベッド脇に父親が立ち、母親は目を閉じたまま眠っている。どうやら起き上がる気力すらもうないらしい。
「君は……」
「リーフの夫です。少し俺に奥さんを任せて下さい」
「あ、ああ……」
俺は父親のいた場所へと移動し、【創造】で治療に必要なスキルを創る。
「【スキャン】」
俺はまずリーフの母親が何の病なのかを調べる。
「……癌だな。胃がんだ」
「わ、わかるのか!?」
「ええ。じゃあサクッと治しますか」
俺は毛布を剥ぎ母親の着ていた服の前を開く。そして患部に触れながらスキルを使う。
「【メディック】」
聖なる光が母親の胃を包み癌細胞を消し去る。そのまま全身を包み込むように光を流し、転移の可能性を消し去る。
「で、ここからさらに……【バイタルアップ】!」
俺は母親の失いかけていた体力を向上させた。するとか細く息をしていた母親の呼吸か正常に戻り、顔色も徐々に回復してきた。
「……ふぅっ。もう大丈夫だろう。リーフ、お母さんは助けたぜ?」
「あぁぁぁぁぁ……! ジェイド……さんっ……!」
「まさか……。医術スキル持ちでさえ匙を投げたというのに……! ほ、本当に助かった……のか?」
俺は父親の方を向き魔法を使う。
「【エクストラヒール】」
「なっ!?」
父親の失った腕が光り、一瞬でそこに新しい腕が戻った。
「ば、ばばばばバカなっ!? お、俺の失った腕が……!? ち、ちゃんと感覚もあるっ!?」
「サービスです。さ、リーフをちゃんと抱きしめてあげて下さい」
「あぁぁぁ……お父さんまで……! ジェイドさんっ……ありがとうっありがとうっ!!」
「リーフッ!!」
「お父さんっ!! あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
こうして親子は無事再会を果たすのであった。
「やたら魔物と遭遇したな。リーフ、昔からこの辺はこんなに魔物が出るのか?」
ライカの母親が昔を思い出しながら答える。
「いえ、恐らくブライト王国の精鋭が国境に常駐しているので魔物の討伐まで手が回らないのではと……。昔は皆さんが定期的に魔物を間引いてましたから」
「なるほど。間引く奴がいないから魔物は増え放題って事か」
そこでライカが手を挙げた。
「それなら今後は私が魔物を狩るよ~。なんか知らないけど滅茶苦茶レベルも上がったし?」
いつの間にか俺とライカがパーティー扱いになっていたようだ。俺にはスキル【経験値万倍】がある。なので単純にいつもの五千倍の経験値がライカに入っていたのである。
「ライカ、レベルは?」
「えっと……」
ライカは言われて自分のステータスを確認する。
「……あ、れ? 上限値の六十まで上がってる!? え? なんで!?」
「……なるほど。それならこの辺の魔物に遅れをとる事はないか」
「なんで? なんで!?」
俺は説明しても理解出来なそうだからたまたま経験値がいっぱい入ったのだろうと言い誤魔化した。
「ほら村に入るぞライカ。リーフ、案内を頼む」
「ま、待ってよ~!」
「では行きましょうか」
リーフの足は村に近づく度にだんだん早くなっていく。柵を越えた辺りではもう走っていた。
「おんや? リーフ……? もしかしてリーフか!?」
「た……ただいまっ! 私帰ってきたよっ!」
「「「「おぉぉぉぉ! リーフだ!」」」」
村はそんなに大きくない。総人口は百人程度だろう。全員が顔見知りのようだった。
「リーフちゃん!」
「あ、ハンスさん!」
リーフに犬型の亜人が話し掛ける。
「無事だったんだな……! 良かった!」
「はい、何とか……。あの、私の家は……」
「ああ、あるよ。まだ俺の家の隣にな。だが……」
男の顔が曇る。
「……リーフ……リーフ!!」
「え? あ……お、お父……さん? お父さんっ!!」
「あぁぁぁぁ……リーフ! リーフッ!!」
どうやらあれが父親らしい。リーフは泣きながら父親の胸に飛びついた。
「お父さんっ、お父さぁぁぁぁんっ!」
「あぁぁ……リーフ……! こんなに大きくなって……!」
「うんっ……うんっ!!」
感動の対面といったところだが父親には抱きしめるための腕が片方なかった。
「お父さん……! その腕……っ!」
「あぁ……。五年前に魔物に食われてな……。抱きしめてやりたくても抱きしめてやれないんだ……!」
「あぁぁぁぁっ……!」
先ほどの男が浮かない表情をしていた理由はこれか。
「お父さん……お母さんは?」
「……」
今後は父親の顔が曇る。
「……家の中にいる。どうやら神様ってのは本当にいるらしいな。リーフ、顔を見せてやってくれ……」
「え? え?」
リーフは父親に連れられ家に向かった。俺達は置いてきぼりだ。
「……あんた……人間か?」
「ああ。リーフの夫だ。と言っても最近知り合ったんだがな。こっちはライカ、リーフの娘だ」
「リーフちゃんの娘っ!? あ……ハーフ……か」
「ライカです!」
ライカはハンスに頭を下げた。
「……そっか。そうだよな。リーフちゃんは人間の国に拐われてったんだ。さぞ苦労しただろうなぁ……」
その時だった。リーフが家の中から飛び出し俺にしがみついてきた。
「ジェイドさんっ……! お願いしますっ……! お母さんを……お母さんを助けて下さいっ!」
「は? どうしたんだそんなに慌てて……」
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
リーフはそのまま泣き崩れた。あの柔和なリーフがだ。そこでハンスが口を開く。
「リーフちゃんのお母さんな……病を患ってんだよ」
「病?」
「ああ。なんか知らんが食べても食べても痩せるんだ。咳をすれば池を吐くし、最近ではもう……」
癌だろうか。
「ジェイドさん……お願い……しますっ……! お母さんを助けて……っ!」
「ああ、任せろ。ライカ、行こう」
「あ、は、はい!」
俺は泣き崩れるリーフを腕に抱き家の中へと入る。ベッド脇に父親が立ち、母親は目を閉じたまま眠っている。どうやら起き上がる気力すらもうないらしい。
「君は……」
「リーフの夫です。少し俺に奥さんを任せて下さい」
「あ、ああ……」
俺は父親のいた場所へと移動し、【創造】で治療に必要なスキルを創る。
「【スキャン】」
俺はまずリーフの母親が何の病なのかを調べる。
「……癌だな。胃がんだ」
「わ、わかるのか!?」
「ええ。じゃあサクッと治しますか」
俺は毛布を剥ぎ母親の着ていた服の前を開く。そして患部に触れながらスキルを使う。
「【メディック】」
聖なる光が母親の胃を包み癌細胞を消し去る。そのまま全身を包み込むように光を流し、転移の可能性を消し去る。
「で、ここからさらに……【バイタルアップ】!」
俺は母親の失いかけていた体力を向上させた。するとか細く息をしていた母親の呼吸か正常に戻り、顔色も徐々に回復してきた。
「……ふぅっ。もう大丈夫だろう。リーフ、お母さんは助けたぜ?」
「あぁぁぁぁぁ……! ジェイド……さんっ……!」
「まさか……。医術スキル持ちでさえ匙を投げたというのに……! ほ、本当に助かった……のか?」
俺は父親の方を向き魔法を使う。
「【エクストラヒール】」
「なっ!?」
父親の失った腕が光り、一瞬でそこに新しい腕が戻った。
「ば、ばばばばバカなっ!? お、俺の失った腕が……!? ち、ちゃんと感覚もあるっ!?」
「サービスです。さ、リーフをちゃんと抱きしめてあげて下さい」
「あぁぁぁ……お父さんまで……! ジェイドさんっ……ありがとうっありがとうっ!!」
「リーフッ!!」
「お父さんっ!! あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
こうして親子は無事再会を果たすのであった。
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