魔族と組んで異世界無双!リメイク

夜夢

文字の大きさ
1 / 22
第一章 異世界転移編

01 プロローグ

しおりを挟む
 季節は春、俺は替え玉受験をさせて入った四流大学を無事卒業する事ができた。授業や単位、課題ももちろん替え玉に全てやらせた。
 つまりだ、卒業はしたが俺は一度足りとも大学なんぞに通った事はない。それは何故か。今から俺の生い立ちを含む全ての理由を説明しよう。

 俺は【八神やがみ  枢くるる】。
 俺は幼い子供の頃から少し周りと違った子供だった。デジタル化が進んだ昨今、親は子供にタブレットを渡せば良いだろうと考え、まともな育児もせずひたすら子供にアニメやゲームをやらせている。その隣で親はスマホでゲーム。世も末だ。
 そんな環境で育ったせいか、俺は成長してからもアニメや漫画、ゲームに夢中だった。普通の感性を持つ子供ならヒーローやヒロイン、または人気者に夢中になるだろう。だが俺はヒーローや人気者ではなく、そのライバルや悪役の方に夢中になっていた。

「ねーねーお母さん? なんでいつもヒーローが勝つの?」
「へ? そりゃあヒーローは良い人だからよ。世の中は良い人の方が強いのよ」
「ふ~ん……」

 良い方が強い。それが幼心でどうしても納得できなかった。確かに強い。推しの悪者は格好いいけど毎回必ず負けている。だが、強ければ何をしても良いのだろうか。良い方も悪い方もやっている事は同じ暴力だ。良い方が暴力を振るえば讃えられ、悪者が暴力を振るえば蔑まれる。

「わかった……! 良い方が強いんじゃなくて……強いから良い方なんだ! わかったぞ! なら……強くなって僕が悪者を正しいって証明すればいいんだ!」

 それから俺はいつかヒーローや勇者と呼ばれる善人に勝てるようにと、身体を鍛えまくった。今では細いシルエットながらもそこいらのボンクラなら秒でイケるくらいには身体を鍛え上げた。加えて少々目付きは悪いが、イケメンだ。

 そんな俺も成長し、今や大卒だ。大学は一回も通ってないがな。
 卒業したら就職が待っている。働かなければ生きてはいけない。こればかりは替え玉に頼る事はできないので自力でなんとかするしかない。
 そして就職面接を落ちること数十社、その末ようやくもらえた内定先で俺は地獄のような日々を過ごしていた。つまり、社会進出に大失敗したのだった。

「八神ぃぃぃっ! てめっ、いつんなったら契約引っ張ってくんだぁっ! あぁぁぁんっ!?」
「す、すんませんっ! 明日は必ず……」
「明日だぁ?」
 
 上司は時計を見る。すると丁度時計の針が零時を回った。それを見て上司はニヤリと笑い、首だけぐるりと回し俺の方を見た。

「おいよぉ~……もうお前の言った明日だぜぇ~? さっさと契約もってこいやぁっ!」
「んな無茶苦茶なっ!?」
「明日っつったのはオメェだろうがっ! 契約引っ張ってくるまで家にゃ帰さねぇからよ?」

 このような上司のパワハラはほぼ毎日のように行われ、サービスという名の残業をこれでもかという勢いで押し付けられていた。
 面接の時は俺を採用するなんて中々わかる会社だと思ったのだが、その実態はいわゆるブラック企業なのであった。

 入社してしばらくすると先輩だったであろう人達が病気や家庭の事情(嘘)で次々と消えていった。そうして残ったのは同期で入社した何人かと、勤めてここ二、三年の若者ばかり。もうどうにも我慢出来ずに上司に辞表を出したところ……。

「代わりの新人が入るまで辞めさせねぇからよ? 八神ぃ~……もし明日も出社しなかったら……分かってるよな?」
「ど、どうする気っすか?」
「あぁん? それは言えねぇなぁ……。世の中色々とうるせぇからよ。だが……これを見たらわかるわな?」

 そう言い、上司は胸元から綺麗なお絵描きをチラリとのぞかせた。さらによく見たらジャケットの内ポケットは不自然に膨らんでいた。
 そう、ここは反社会的勢力のフロント企業だったのだ。いくら悪役が好きでもこれはさすがにと、若干泣けてきた。

「そ、そんな……まさか……ここ……っ!」
「前にこなくなった奴ぁどうなったっけなぁ……。確か遠洋漁業に行ったっけ……。撒き餌役でな? くくくくくっ……」
    
 辞めようとする度に脅迫染みたことを言われる始末。俺は次第に疲れ果て、趣味に費やす時間も減っていき、まるで生きる屍のように自宅と会社を往復するだけのツマラナイ人生を送っていくのであった。

 俺の趣味は幼い頃から変わらずアニメや漫画、ゲームだった。加えて成長と共に格闘技や単車、四輪が増えた。替え玉が大学に行ってくれたお陰で俺は高卒後の四年間、その四年の時間全てを趣味に費やした。思えばこの四年間が一番楽しかったかもしれない。

「ちくしょう……。代わりさえ見つけりゃいいんだろうが! 見つけてきてやんよっ! 俺は反社見習いやるために生きてんじゃねぇんだよっ!!」

 働けばもっと深く趣味に没頭出来ると考えた俺がバカだった。働けば働くほどに時間はなくなり趣味から遠ざかっていく。楽しい事など一つも見つけられなかった俺は昔潰したチームの奴を生け贄にし、会社を辞めた。
 今日は最後の出社日だ。

「八神ぃっ……、わかってんよな? この会社の事は余所で口にすんじゃねぇぞ? 辞めたからって自由になったわけじゃねぇからな? 住所から何まで全部押さえてあるのを忘れんなよ?」
「……わかってますよ。別に話したりしませんよ。だから俺にはもう構わないで下さいよ? 外で会っても声を掛けないで下さい」
「あ? 誰が掛けっかよ。おら、さっさと行っちまいな!」

 こうして、俺は自由の身になった。数ヶ月残業の嵐でもらった給料は手付かずで全て貯金してある。
 俺は明日からの生活に期待を込め、駐車場に停めてある愛車へと向かうのであった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

処理中です...