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第05章 浮遊大陸編

15 さらば地上世界

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 知らない内に六体の竜から血を注がれた蓮太が眠りに就いてから半年が過ぎた。

《……う、ふぁぁぁ……》
《あ! ダーリンが起きた!》
《んぁ? 闇……ノワールか》

 蓮太は身体を起こそうとしてみたがなぜか思い通りに動かせなかった。蓮太の身体は竜に戻った闇竜に膝枕かれていた。

《……身体が重いぞ。なんだこれ》
《当たり前だよっ、ダーリン半年も寝てたんだから!》
《半年? そんな寝てたの俺!?》
《ダーリン、どこまで覚えてる?》
《どこまで? 確か……》

 蓮太は眠る直前の事を思い返してみた。

《確かノワールと話してて……そしたら風竜が水竜の顔面に激突。そんで俺の口に二人の血が入って飲んでしまった。で、強烈な眠気に襲われ……あれ? もしかして俺竜になってる?」》

 そもそも竜の姿になっている闇竜に膝枕されている時点でおかしい。蓮太のサイズで竜に膝枕はおかしいのだ。そう思い視線を自分の身体に向け、蓮太は唖然とした。

《……竜やんけ!? 紛れもなく! しかも闇っつーか漆黒!》
《うん……格好良いダーリン!》

 周囲の暗さもあってか、蓮太の身体は闇竜よりさらに黒く見える。

《……あれ? そう言えばここどこだ? 浮遊大陸にこんな場所あったか?》
《それは──》
《そこは私が話しましょう》
《アニキ! 目が! 良かった!》
《あ、兄ちゃん起きてる!》
《あら、良い格好ねぇ~》
《うむ、無事覚醒したか》

 蓮太が場所を尋ねると光竜を先頭に他の竜達が竜の姿で暗闇の中に入ってきた。竜達はそれぞれ仕留めた魔物を抱えていた。

《……ルーチェ、ここはどこだ?》
《はい。ここは地図に載っていない未発見の島です》
《未発見の島……》
《はい。まずあなたに何がおきているか今から説明いたします》

 光竜は今蓮太がどうなっているか説明した。

《は? じゃあ何か? 俺は全ての竜から血を注がれた事で神竜とやらになったのか?》
《いえ、今はまだ全竜……、つまり私達の父親と同じ状態にあります》
《俺が全竜……ははっ、なんだそりゃ》
《身体が黒い理由は闇竜の血が多く入っているためで、全ての竜が同じ割合で血を注ぐと金色になるのです》

 正直色などどうでも良かった。

《そっか。ところで……ターニアとラフィエルは?》
《あの魔族は今狩りに行ってます。人間はこれで》

 光竜は蓮太が使った筒状の物体を出した。

《あ、俺のニュー○ライザー! 使ったのか!?》
《はい。これであの人間の記憶を弄りました。後はあの兄がどうにかしてくれるはずです》
《なぜこんな事を》

 蓮太は光竜からアイテムを受け取りながらそう尋ねた。そしてその問い掛けに光竜はこう答えた。

《あなたにはこれから私達と共に竜の暮らす世界へと渡ってもらいます》
《竜の暮らす世界? なにそれ? 世界は三つだけじゃなかったのか?》
《はい。確かに世界は三つです。私達の世界である竜界は宇宙にあります》
《宇宙か。あ、もしかしてあの衛星か?》
《話が早いですね。普通宇宙と言っても伝わらないのですが》
《俺は博識なんだよ》
《ふふっ、そうみたいですね》

 あれほど敵対していた光竜が素直になっている。それが蓮太には不思議でたまらなかった。

《ルーチェ、お前俺の事嫌いなんじゃなかったのか?》
《人間は嫌いです。ですが今のあなたは竜なので》
《ああ、それでターニアを置いてきたのか》
《あれは竜界に連れていったところですぐに死んでしまいますから》
《そんな危ない世界なのか?》
《はい。生物は全て竜かその亜種、人間では生きていく事すらかなわないでしょう》
《ほぉ~……》

 この星には衛星が二つあり、一方が竜の暮らす世界らしい。

《話はわかった。じゃあ俺は竜界に連れて行かれるんだな。そこで俺は何をすればいい》
《特に何も》
《は?》
《あなたの力はもう地上世界では抑えきれません。軽く力を解放しただけで天変地異が起きてしまいます》
《お前らがそうしたんだろ!?》
《はい。ですので竜界に。そこで神竜に至れれば再び地上世界へと戻れるでしょう》
《……その神竜ってのはなんなんだ?》

 光竜は神竜について語った。

《神竜とは、全ての竜の頂に立つ神のごとき力を持った竜の事を指します。力とは単に破壊する力のみではなく、全ての力を指します。父は破壊する力こそ誰よりも長けていますが、精神力や知力が赤ん坊並みです》
《そりゃクズだな》
《はい。正真正銘のクズです。あれは種をばら蒔く事と逆らう者を破壊する事しか頭にありませんから》

 どうやら全竜とはとんでもない外道のようだ。

《……ははぁん、わかったぞ。俺にその全竜をなんとかさせようって気だな?》
《はい。あんなクズが竜の頭では竜界はおしまいです。それが嫌で私達六竜は地上世界に避難していました。まぁ、捕らえられてしまいましたが》
《さすがの竜も科学力には勝てなかったって事か》
《科学力……ですか》
《ああ。このニューラ○イザーも科学の力だ》
《科学とは恐ろしい力なのですね》
《おう、科学はヤベェぜ。なにせ宇宙空間を走る船を作れるような力だからな》
《宇宙空間を走る? それは竜のみに許された力! そんな力が人間にあると!?》
《あるね。地球って星の事だがな》
《地球……知りませんね》

 どうやらここは地球からとんでもなく離れた場所にあるらしい。ためしに銀河名を伝えてみたが知らないと答えが返ってきた。

「ただいま戻り……ご、ご主人! 目を覚まされたのですか!?」
《おう、ラフィエル。久しぶりだな》
「は、ははっ!」

 ラフィエルは蓮太の前でかしづいた。

「ご主人、どうか私もお供させて下さいませ!」
《あん? お前も竜界に来る気?》
「はいっ! そこで修行し、魔王を超えたいのです!」
《まぁ……俺は構わないけど。ルーチェ、どうするんだ?》

 すると光竜はこう答えた。

《魔族ならば簡単には死にはしないでしょう。亜竜狩りに連れていきましょうか》
《だそうだ。ラフィエル、ついてきて良いらしいぞ》
「ははぁっ!」

 それから蓮太は光竜達が狩ってきた魔物の肉で腹を満たしていった。その中に頭が三つある犬の姿があった。

《こいつは……》
《それはケルベロスですね。どうかされましたか?》
《いや……》

 思えば最初に死んだ理由はこいつだった。同じ個体とは思わないが、こうしてみると昔の自分はただの人間で、今の自分は途方もない力を有していると改めて実感した。

《……まず。ラフィエル、これ喰っとけ》
「私犬はちょっと……。愛犬家なので」
《これを犬と呼ぶか。お前もたいがいおかしいよな》
「ご主人よりはまともなつもりですが」
《ああん!? ひぃひぃ言わすぞ》
「ひぃぃぃぃっ!?」

 こうして賑やかな食事を終え、蓮太達は洞窟から外に出た。久しぶりの太陽がいたく目に突き刺さる。

《では参りましょうか。レンタ、私についてきて下さい》
《わかった。ラフィエルは?》
「私は空間で身を守りますので、運んでいただけたらと」
《わかった》

 竜達が次々と翼を広げ空へと浮かび上がる。

《さて、久しぶりの帰郷ね。パパ元気かしら?》
《……あいつは全竜が好きなんだっけ。みんなから嫌われてるわけじゃねぇんだな》
《水竜は変わり者ですから。さあ、行きますよ》
《おうっ!》

 こうして竜となった蓮太は力の制御を学ぶため、光竜達と共に竜界へと向かうのだった。  
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