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第06章 竜界編
01 竜界
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空を飛び、蓮太がまず驚いた事は宇宙空間でも何ら問題がなかった事だった。普通宇宙空間は紫外線やら電磁波、他にも人体に有害な物質が満ち溢れているのだが、竜になった蓮太には何一つ効果がなく、いかに竜が優れた生物なのか改めて実感した。
《すげぇな竜って。宇宙空間でも普通にしていられるとは……》
《はぁ? 当たり前じゃない。竜は最強の生物なんだから》
その当たり前の竜を六体もひれ伏せた蓮太は人間なのだがとは言わないでおいた。
《レンタ、あれが竜の棲まう星、竜界です。大気圏に入りますよ》
《空気もあるんだなぁ……はいよ》
そうして七体の竜が大気の壁へと突入し、竜界へと降り立った。
《おぉ……おぉぉぉぉぉっ! ここが竜界! 宇宙から見える姿とは別物じゃねぇか!》
竜界は緑溢れる大地に綺麗な水が流れる大河、そびえ立つ連峰と、外観からは想像もできなかったほどの絶景が広がっていた。
《死んだ星に見えたのはカモフラージュです。これが竜界の本来の姿です。……どうやら気に入られたようですね》
《当たり前だろ。それに……ここじゃ働かなくても良さそうだしな! のんびり──》
《何を言っているのですか?》
《あん?》
ついにスローライフの日々が訪れるのかと思いきや、それは甘い夢だった。
《レンタにはまず私達の父である全竜と戦ってもらいます》
《なぜに!?》
光竜は驚く蓮太にこう言ってきた。
《神竜へと至れる竜は一体のみ。そしてその神竜へと至る試練を受けられるのは全竜のみなのです》
《それでなぜ俺がお前らの父親と戦わなきゃならんわけ?》
《父は今神竜へと至る試練を受けている最中で、父が諦めない限り次の竜が試練を受けられないからですよ》
《あ~……。もしかして試練って期限無しって事か?》
《はい》
つまり、今試練に挑戦中の全竜が諦めない限り次の竜が挑戦できないという事だ。そして蓮太が全竜と戦い、挑戦を諦めさせた上で試練を乗り越える事が目的らしい。
《……めんどくさ。そもそも試練って何やらされんの?》
《それはわかりません》
《わからない?》
《はい。試練の内容は人によって違いますから。父は試練を受けた初日で──『話が違うっ! こんなんクリアー出来るかボケッ!』──と早々に諦めていましたから》
《なるほど》
話が違う。つまり聞いていた試練と全く別の試練が与えられた事になる。しかも最強である全竜が初日で諦めるほどの試練だ。並大抵の試練ではないのだろう。
《まずは私達の母に会いに行きましょう。私についてきて下さい》
《母か……。いきなり襲われたりしないよな?》
《敵対しなければ大丈夫かと》
《……こぇぇな》
そして空を飛び数時間、蓮太は巨大な塔の前にいた。
《なんだこの塔は……》
《双竜の塔です。左側が母で、右側が父です》
《はぁ~……。都庁みてぇだな。んじゃ俺達は左側を目指すわけか》
《はい。さっそく登りましょう》
《わかった》
双竜の塔に入りしばらく経った。
《なんじゃこりゃあっ! 次々に襲い掛かってきやがって!》
《亜竜達ですね。父親は全て全竜のようです》
《こなくそっ!》
《《《ギャアァァァァァァァス!!》》》
とにかく敵が多かった。一階上るのも一苦労だ。
《あぁぁ……ウゼェ……。どんだけ種ばら蒔きまくってんだお前らの親父はよっ!》
《クズですからね。下半身でしかモノを考えられません》
《パパをクズって言わないでくれるかなぁ、光姉! みんなに等しく愛を与えてるだけじゃないっ》
絶賛戦いの真っ最中だが、突然光竜と水竜の口論が勃発した。
《あなたは……まぁ良いでしょう。なんなら一人だけ右側に上りますか?》
《え? い、良いの?》
《構いませんよ。ついでにあのクズにレンタの事を知らせなさい。あなたを倒す者が来たとね》
《ププーッ、レンタにはまだ無理じゃな~い? 確かに強いけど金ぴかのパパには勝てないでしょ》
《そう思ってれば良いわ》
そうして塔を上ること二十階、左右に別れる道が見えた。
《じゃあ私は右側に行くからね》
《行けば良い。さあレンタ、私達は左側に》
《ああ》
《あ、ダーリン。私も右側に行くね!》
《あん?》
進もうとした瞬間、闇竜が突然右側に行くと申し出てきた。
《なんで?》
《あのね……パパに報告するの! 私……彼氏できたって》
《……ああ、なるほど。わかった、親父にヨロシクいっといてくれ》
《うんっ!》
そうして水竜と闇竜が右側に進み、蓮太達は左側に進んだ。
《レンタ、今日はここで休むとしましょう》
《あん? もう休むのか?》
《まだ先は長いですから。それに……風竜がもう限界のようで》
《ぜぇ~……ぜぇ~……し、死んじゃうっ! 一日でこんな進むなんて聞いてないよ~!》
体力のない風竜だった。蓮太はバテバテになった風竜のために仕方なく休む事にし、道中で獲得した亜竜の肉で唐揚げを作りみんなに振る舞った。
《うむ、亜竜の肉もこうなればただの食材だな》
《うめぇぇぇぇっ! さすがアニキだっ!》
《い、癒される~……。お腹いっぱいだぁ~》
そうして腹を満たした一行は結界を張ったベースキャンプで眠りに就いた。
《……ん? なん──》
《しっ、騒がないで下さい》
《お前……ルーチェ。何してるんですかね?》
身体に違和感を感じ、目を開けると光竜が蓮太の上に乗っていた。
《あなたは闇の比率が多過ぎます。偏った比率を少し弄らせてもらいますので》
《そ、そうか。だが……繋がる必要ないだろ。血だけくれたら……》
《こ、こっちの方が早いのですっ! し、したくてしているわけではありませんからね! か、勘違いしないで!》
《そうかい。なら……後は任せるよ。俺は竜について全く知らないからどうすれば良いかなんてわからないからな》
《……はい。全て私に任せて下さい。あなたを神竜まで導いて差し上げますから……っ》
そして翌朝。
《光竜、お主……主とまぐわったか》
《……はい。地竜、私はレンタが……》
《はっは、構わぬ構わぬ。主は闇の比率が高かったからな。今一つバランスが悪かった。光と闇のバランスを整える意味でも光竜の行いは正しかった。なんならもう数日休むか?》
《そう……ですね。まだ闇の方が多いので》
《うむ。ならば我らは先に進み露払いをしておこう。火竜、風竜。先に進むぞ》
おぉ~!
それから蓮太は光竜と二人きりになり、体内に流れる竜の属性バランスを整えさせられた。
そして数日後。
《こんな所かしら?》
《……なんか力がすげぇ増した気がする》
蓮太から闇のオーラと光のオーラが包む。
《ようやく光と闇が同じ比率になりました。光と闇は相反する力です。父は生まれながらにして全竜で、全ての属性が同じ比率で流れています。それに勝つためには同じ全竜でも尖った性能が必要となるので》
《……なぁ、もう終わったんなら離れてくれても良いんだけどな》
光竜は蓮太に抱きついたまま離れなかった。
《い、良いでしょう! ただ抱きついていたいの!》
《まぁ良いけど。じゃあこのまま進もうか。だいぶ時間くっちまったからな》
《はいっ!》
光竜がついにデレた。全竜と蓮太に違いがあるとすれば、関わった者を魅了するかしないかかもしれない。
蓮太に心を奪われてしまった光竜は蓮太の腕に抱きつき、敵のいなくなった塔を進んでいくのだった。
《すげぇな竜って。宇宙空間でも普通にしていられるとは……》
《はぁ? 当たり前じゃない。竜は最強の生物なんだから》
その当たり前の竜を六体もひれ伏せた蓮太は人間なのだがとは言わないでおいた。
《レンタ、あれが竜の棲まう星、竜界です。大気圏に入りますよ》
《空気もあるんだなぁ……はいよ》
そうして七体の竜が大気の壁へと突入し、竜界へと降り立った。
《おぉ……おぉぉぉぉぉっ! ここが竜界! 宇宙から見える姿とは別物じゃねぇか!》
竜界は緑溢れる大地に綺麗な水が流れる大河、そびえ立つ連峰と、外観からは想像もできなかったほどの絶景が広がっていた。
《死んだ星に見えたのはカモフラージュです。これが竜界の本来の姿です。……どうやら気に入られたようですね》
《当たり前だろ。それに……ここじゃ働かなくても良さそうだしな! のんびり──》
《何を言っているのですか?》
《あん?》
ついにスローライフの日々が訪れるのかと思いきや、それは甘い夢だった。
《レンタにはまず私達の父である全竜と戦ってもらいます》
《なぜに!?》
光竜は驚く蓮太にこう言ってきた。
《神竜へと至れる竜は一体のみ。そしてその神竜へと至る試練を受けられるのは全竜のみなのです》
《それでなぜ俺がお前らの父親と戦わなきゃならんわけ?》
《父は今神竜へと至る試練を受けている最中で、父が諦めない限り次の竜が試練を受けられないからですよ》
《あ~……。もしかして試練って期限無しって事か?》
《はい》
つまり、今試練に挑戦中の全竜が諦めない限り次の竜が挑戦できないという事だ。そして蓮太が全竜と戦い、挑戦を諦めさせた上で試練を乗り越える事が目的らしい。
《……めんどくさ。そもそも試練って何やらされんの?》
《それはわかりません》
《わからない?》
《はい。試練の内容は人によって違いますから。父は試練を受けた初日で──『話が違うっ! こんなんクリアー出来るかボケッ!』──と早々に諦めていましたから》
《なるほど》
話が違う。つまり聞いていた試練と全く別の試練が与えられた事になる。しかも最強である全竜が初日で諦めるほどの試練だ。並大抵の試練ではないのだろう。
《まずは私達の母に会いに行きましょう。私についてきて下さい》
《母か……。いきなり襲われたりしないよな?》
《敵対しなければ大丈夫かと》
《……こぇぇな》
そして空を飛び数時間、蓮太は巨大な塔の前にいた。
《なんだこの塔は……》
《双竜の塔です。左側が母で、右側が父です》
《はぁ~……。都庁みてぇだな。んじゃ俺達は左側を目指すわけか》
《はい。さっそく登りましょう》
《わかった》
双竜の塔に入りしばらく経った。
《なんじゃこりゃあっ! 次々に襲い掛かってきやがって!》
《亜竜達ですね。父親は全て全竜のようです》
《こなくそっ!》
《《《ギャアァァァァァァァス!!》》》
とにかく敵が多かった。一階上るのも一苦労だ。
《あぁぁ……ウゼェ……。どんだけ種ばら蒔きまくってんだお前らの親父はよっ!》
《クズですからね。下半身でしかモノを考えられません》
《パパをクズって言わないでくれるかなぁ、光姉! みんなに等しく愛を与えてるだけじゃないっ》
絶賛戦いの真っ最中だが、突然光竜と水竜の口論が勃発した。
《あなたは……まぁ良いでしょう。なんなら一人だけ右側に上りますか?》
《え? い、良いの?》
《構いませんよ。ついでにあのクズにレンタの事を知らせなさい。あなたを倒す者が来たとね》
《ププーッ、レンタにはまだ無理じゃな~い? 確かに強いけど金ぴかのパパには勝てないでしょ》
《そう思ってれば良いわ》
そうして塔を上ること二十階、左右に別れる道が見えた。
《じゃあ私は右側に行くからね》
《行けば良い。さあレンタ、私達は左側に》
《ああ》
《あ、ダーリン。私も右側に行くね!》
《あん?》
進もうとした瞬間、闇竜が突然右側に行くと申し出てきた。
《なんで?》
《あのね……パパに報告するの! 私……彼氏できたって》
《……ああ、なるほど。わかった、親父にヨロシクいっといてくれ》
《うんっ!》
そうして水竜と闇竜が右側に進み、蓮太達は左側に進んだ。
《レンタ、今日はここで休むとしましょう》
《あん? もう休むのか?》
《まだ先は長いですから。それに……風竜がもう限界のようで》
《ぜぇ~……ぜぇ~……し、死んじゃうっ! 一日でこんな進むなんて聞いてないよ~!》
体力のない風竜だった。蓮太はバテバテになった風竜のために仕方なく休む事にし、道中で獲得した亜竜の肉で唐揚げを作りみんなに振る舞った。
《うむ、亜竜の肉もこうなればただの食材だな》
《うめぇぇぇぇっ! さすがアニキだっ!》
《い、癒される~……。お腹いっぱいだぁ~》
そうして腹を満たした一行は結界を張ったベースキャンプで眠りに就いた。
《……ん? なん──》
《しっ、騒がないで下さい》
《お前……ルーチェ。何してるんですかね?》
身体に違和感を感じ、目を開けると光竜が蓮太の上に乗っていた。
《あなたは闇の比率が多過ぎます。偏った比率を少し弄らせてもらいますので》
《そ、そうか。だが……繋がる必要ないだろ。血だけくれたら……》
《こ、こっちの方が早いのですっ! し、したくてしているわけではありませんからね! か、勘違いしないで!》
《そうかい。なら……後は任せるよ。俺は竜について全く知らないからどうすれば良いかなんてわからないからな》
《……はい。全て私に任せて下さい。あなたを神竜まで導いて差し上げますから……っ》
そして翌朝。
《光竜、お主……主とまぐわったか》
《……はい。地竜、私はレンタが……》
《はっは、構わぬ構わぬ。主は闇の比率が高かったからな。今一つバランスが悪かった。光と闇のバランスを整える意味でも光竜の行いは正しかった。なんならもう数日休むか?》
《そう……ですね。まだ闇の方が多いので》
《うむ。ならば我らは先に進み露払いをしておこう。火竜、風竜。先に進むぞ》
おぉ~!
それから蓮太は光竜と二人きりになり、体内に流れる竜の属性バランスを整えさせられた。
そして数日後。
《こんな所かしら?》
《……なんか力がすげぇ増した気がする》
蓮太から闇のオーラと光のオーラが包む。
《ようやく光と闇が同じ比率になりました。光と闇は相反する力です。父は生まれながらにして全竜で、全ての属性が同じ比率で流れています。それに勝つためには同じ全竜でも尖った性能が必要となるので》
《……なぁ、もう終わったんなら離れてくれても良いんだけどな》
光竜は蓮太に抱きついたまま離れなかった。
《い、良いでしょう! ただ抱きついていたいの!》
《まぁ良いけど。じゃあこのまま進もうか。だいぶ時間くっちまったからな》
《はいっ!》
光竜がついにデレた。全竜と蓮太に違いがあるとすれば、関わった者を魅了するかしないかかもしれない。
蓮太に心を奪われてしまった光竜は蓮太の腕に抱きつき、敵のいなくなった塔を進んでいくのだった。
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