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第06章 竜界編
11 天神竜
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神竜たる蓮太と天竜の子は全て天神竜といわれる新しい種族だ。その力は凄まじく、瞬く間に竜界に散らばっていた亜竜を駆逐し、全竜の蒔いた種を根絶やしにしてしまった。
《パパ~、あの竜達は良いの?》
《まさかの俺らまで!? ア、アニキ~!》
子ども達は火竜達をも駆逐しようとしていた。
「あれらは良いんだ。ちゃんと言葉が通じてお互いを理解し合えているだろ? これまでに駆逐した奴らは意思の疎通ができなく、己の欲望に従い暴れまわるだけの害獣だったから駆除したんだ」
《わかった~。じゃあ生かしておくね》
「そうしてやってくれ」
《ホッ……》
火竜、地竜、風竜はホッと胸を撫で下ろしていたが、無竜を始め、女性陣からは不満が募っていた。
《ちょっとレンタ。あんたの子生意気すぎじゃない?》
《そうですわ。私達の方が年上ですのに……まったく敬う心を感じられませんわ》
《あの子ども達さ、私達の事完全に下に見てるよね。ダーリン、なんとかならない?》
《天竜様には失礼ですが、私達も属性竜の端くれ。舐められたままでは気分が悪いですわ》
そんな女性陣達に蓮太はこう言った。
「仕方ないだろう。そもそも一番上が産まれてまだ十年しか経ってないんだ。自分達が十歳の頃を思い出してみ?」
女性陣は自分が十歳の頃を思い浮かべる。
《わ、私はもっとおしとやかだったし!》
《私は……もっと賢かったですね》
《私はぁ~……あはは》
すると無竜が蓮太にこう告げた。
《確かに若さ故の過ちと言われればそれまでです。それでも……》
「わかったわかった。ちょっと待ってろ。おい、全員集合!」
《《は~いっ!》》
蓮太の前に二十人の子と天竜が並んだ。
《なに、パパ?》
「お前らさ、もう少し年上を敬えよ。生意気だって苦情が寄せられてんぞ」
《生意気~? どこが? 私達何もしてないよね?》
《《うん》》
「何もしてないから舐めてると同じだって言ってんだよ」
《《ひぅっ》》
蓮太は子ども達に対し威圧を放った。蓮太の威圧を受けた子ども達は一斉に大人しくなった。
「いいか、無竜達の事は天竜と同等に思え。あいつらも天竜と同じく俺の妻だ。この世は力が全てではない。そう何度も教えてやったよな? あ?」
《あ、あなた? い、威圧が強すぎでは……?》
「強すぎ? これでも一割程度だ。世の中はなぁ、力が全てではないが、力が必要になる時がある。それは相手が間違っていた時だ。相手を正しい道に戻すために俺達は強くあらねばならない。仲間すら敬えないようなガキは必要ない。そんなに暴れてぇなら俺が相手になってやっからよ。俺の言葉が理解できない奴はいつでもかかってこいよ。俺がこの手で厳しく躾てやっからよぉぉ……わぁったか?」
《《う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!》》
子ども達は大号泣した。それはつまり無竜達を舐めていたといっているのと同義だった。
「泣くな。泣く前にするべき事があるだろう。全員心から謝り、これから舐めた態度はとらないと誓え」
《《ご、ごめんなさい……ぐすっ》》
すると無竜が子ども達に向けこう言った。
《わかってくれれば良いのよ? 私達はレンタ様で繋がった家族なんだから。いずれ私達にも子が産まれ、あなた達の弟か妹になるの。そしたら私達の子どもが間違いそうになったら今言われた事を教えてあげてね?》
《う、うん……。ごめんなさいっ》
《《《ごめんなさいっ!》》》
《確かに。じゃあみんなでご飯にしましょ? レンタ様が振る舞ってくれるそうよ?》
《《《パパのご飯っ! うんっ!》》》
それから全員で食卓を囲み、仲直りとなった。代わりに全員分の食事を用意させられたが、これでお互いにわだかまりがなくなるなら安いものだ。
そして蓮太はその場でこれからの事について皆と話し合った。
「さて天竜」
《はい?》
「これで俺達はこの竜界を支配したわけだが……。これから何かする事あるか? 正直地上世界とか今さら戻りたくないんだけど」
《そうですね。まだ竜界の支配は終わっていないように思えますが》
「なに?」
天竜は東の空を見上げこう言った。
《ここにいる属性竜は水竜、火竜、風竜、地竜、光竜に闇竜。そして無竜のみです。全竜は消滅しましたが、他にもまだ属性竜は存在しています》
「無竜、そうなのか?」
すると無竜はこくりと頷き、残る属性竜の名を口にし始めた。
《確かに属性竜はまだおります。地上世界で失われた属性を司る竜、氷竜、雷竜、邪竜。そして全竜の双子の弟である金竜がこの竜界に存在しております》
「双子の弟? あのクズにそんなのがいたのか」
《金竜は全竜とは真逆の性格をしており、害は……多少ありますが問題はないかと》
「多少はあんのな」
《まぁ……会えばわかります。それより、氷竜と雷竜、そして邪竜が厄介です》
「……ふむ」
無竜は三体の竜について語り始めた。
《まず氷竜はここより北にある氷の洞窟にて一人で暮らしております》
「なんでまた」
《氷竜はいち早く全竜のクズさに気付き、一人全竜に挑みました。ですが敵うはずもなく、今では誰も信じられなくなっているようです》
「なるほど。こっぴどくやられたみたいだな。雷竜は?」
《雷竜は西にある竜界で一番高い山を棲み家にし、自由気ままに暮らしております。全竜が氷竜を瀕死にしたタイミングで姿を消しました》
「ふ~ん。自由気ままってのは気が合いそうだ。じゃあ……邪竜は?」
そう尋ねるが無竜はなかなか口を開かない。しばらく待ち、ようやく口を開いた。
《邪竜は……私の妹です》
「妹……か」
《はい。邪竜はその性質故か、世界の悪意を一身に集めてしまうのです。そのため、今は東の地にある神殿に封印しています》
「そうか。全竜と亜竜は悪意の塊そのものだったからな。封印は妹を邪竜から守るためか」
《はい。ですが……おそらく私の心は理解してもらえてはいないでしょう》
「なぜだ?」
《……全竜はすでに邪竜を洗脳していたのです。無理矢理身を汚され、何度も何度も悪意を植え付けられていきました。やがて邪竜の中で悪意が芽吹き、全竜以外の命を奪おうと暴れまわったのです》
胸糞悪くなる話だ。
《ですから……邪竜は自分と全竜を引き離した私を恨んでいると……》
「わかった、もう良い。邪竜は俺が何とかしよう」
《あ、ありがとうございますっ!》
氷竜、雷竜、邪竜、金竜。聞いた話ではこの中で一番の問題は邪竜にある。全竜と亜竜が消え、悪意が消え去ったとしても、すでに植え付けられた悪意はまだ残っている。
「じゃあ邪竜から何とかしに行ってみっか。無竜、案内してくれ」
《は、はいっ!》
こうして竜界に残る問題を解決するため、蓮太は無竜を従え、一路東へと向かうのだった。
《パパ~、あの竜達は良いの?》
《まさかの俺らまで!? ア、アニキ~!》
子ども達は火竜達をも駆逐しようとしていた。
「あれらは良いんだ。ちゃんと言葉が通じてお互いを理解し合えているだろ? これまでに駆逐した奴らは意思の疎通ができなく、己の欲望に従い暴れまわるだけの害獣だったから駆除したんだ」
《わかった~。じゃあ生かしておくね》
「そうしてやってくれ」
《ホッ……》
火竜、地竜、風竜はホッと胸を撫で下ろしていたが、無竜を始め、女性陣からは不満が募っていた。
《ちょっとレンタ。あんたの子生意気すぎじゃない?》
《そうですわ。私達の方が年上ですのに……まったく敬う心を感じられませんわ》
《あの子ども達さ、私達の事完全に下に見てるよね。ダーリン、なんとかならない?》
《天竜様には失礼ですが、私達も属性竜の端くれ。舐められたままでは気分が悪いですわ》
そんな女性陣達に蓮太はこう言った。
「仕方ないだろう。そもそも一番上が産まれてまだ十年しか経ってないんだ。自分達が十歳の頃を思い出してみ?」
女性陣は自分が十歳の頃を思い浮かべる。
《わ、私はもっとおしとやかだったし!》
《私は……もっと賢かったですね》
《私はぁ~……あはは》
すると無竜が蓮太にこう告げた。
《確かに若さ故の過ちと言われればそれまでです。それでも……》
「わかったわかった。ちょっと待ってろ。おい、全員集合!」
《《は~いっ!》》
蓮太の前に二十人の子と天竜が並んだ。
《なに、パパ?》
「お前らさ、もう少し年上を敬えよ。生意気だって苦情が寄せられてんぞ」
《生意気~? どこが? 私達何もしてないよね?》
《《うん》》
「何もしてないから舐めてると同じだって言ってんだよ」
《《ひぅっ》》
蓮太は子ども達に対し威圧を放った。蓮太の威圧を受けた子ども達は一斉に大人しくなった。
「いいか、無竜達の事は天竜と同等に思え。あいつらも天竜と同じく俺の妻だ。この世は力が全てではない。そう何度も教えてやったよな? あ?」
《あ、あなた? い、威圧が強すぎでは……?》
「強すぎ? これでも一割程度だ。世の中はなぁ、力が全てではないが、力が必要になる時がある。それは相手が間違っていた時だ。相手を正しい道に戻すために俺達は強くあらねばならない。仲間すら敬えないようなガキは必要ない。そんなに暴れてぇなら俺が相手になってやっからよ。俺の言葉が理解できない奴はいつでもかかってこいよ。俺がこの手で厳しく躾てやっからよぉぉ……わぁったか?」
《《う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!》》
子ども達は大号泣した。それはつまり無竜達を舐めていたといっているのと同義だった。
「泣くな。泣く前にするべき事があるだろう。全員心から謝り、これから舐めた態度はとらないと誓え」
《《ご、ごめんなさい……ぐすっ》》
すると無竜が子ども達に向けこう言った。
《わかってくれれば良いのよ? 私達はレンタ様で繋がった家族なんだから。いずれ私達にも子が産まれ、あなた達の弟か妹になるの。そしたら私達の子どもが間違いそうになったら今言われた事を教えてあげてね?》
《う、うん……。ごめんなさいっ》
《《《ごめんなさいっ!》》》
《確かに。じゃあみんなでご飯にしましょ? レンタ様が振る舞ってくれるそうよ?》
《《《パパのご飯っ! うんっ!》》》
それから全員で食卓を囲み、仲直りとなった。代わりに全員分の食事を用意させられたが、これでお互いにわだかまりがなくなるなら安いものだ。
そして蓮太はその場でこれからの事について皆と話し合った。
「さて天竜」
《はい?》
「これで俺達はこの竜界を支配したわけだが……。これから何かする事あるか? 正直地上世界とか今さら戻りたくないんだけど」
《そうですね。まだ竜界の支配は終わっていないように思えますが》
「なに?」
天竜は東の空を見上げこう言った。
《ここにいる属性竜は水竜、火竜、風竜、地竜、光竜に闇竜。そして無竜のみです。全竜は消滅しましたが、他にもまだ属性竜は存在しています》
「無竜、そうなのか?」
すると無竜はこくりと頷き、残る属性竜の名を口にし始めた。
《確かに属性竜はまだおります。地上世界で失われた属性を司る竜、氷竜、雷竜、邪竜。そして全竜の双子の弟である金竜がこの竜界に存在しております》
「双子の弟? あのクズにそんなのがいたのか」
《金竜は全竜とは真逆の性格をしており、害は……多少ありますが問題はないかと》
「多少はあんのな」
《まぁ……会えばわかります。それより、氷竜と雷竜、そして邪竜が厄介です》
「……ふむ」
無竜は三体の竜について語り始めた。
《まず氷竜はここより北にある氷の洞窟にて一人で暮らしております》
「なんでまた」
《氷竜はいち早く全竜のクズさに気付き、一人全竜に挑みました。ですが敵うはずもなく、今では誰も信じられなくなっているようです》
「なるほど。こっぴどくやられたみたいだな。雷竜は?」
《雷竜は西にある竜界で一番高い山を棲み家にし、自由気ままに暮らしております。全竜が氷竜を瀕死にしたタイミングで姿を消しました》
「ふ~ん。自由気ままってのは気が合いそうだ。じゃあ……邪竜は?」
そう尋ねるが無竜はなかなか口を開かない。しばらく待ち、ようやく口を開いた。
《邪竜は……私の妹です》
「妹……か」
《はい。邪竜はその性質故か、世界の悪意を一身に集めてしまうのです。そのため、今は東の地にある神殿に封印しています》
「そうか。全竜と亜竜は悪意の塊そのものだったからな。封印は妹を邪竜から守るためか」
《はい。ですが……おそらく私の心は理解してもらえてはいないでしょう》
「なぜだ?」
《……全竜はすでに邪竜を洗脳していたのです。無理矢理身を汚され、何度も何度も悪意を植え付けられていきました。やがて邪竜の中で悪意が芽吹き、全竜以外の命を奪おうと暴れまわったのです》
胸糞悪くなる話だ。
《ですから……邪竜は自分と全竜を引き離した私を恨んでいると……》
「わかった、もう良い。邪竜は俺が何とかしよう」
《あ、ありがとうございますっ!》
氷竜、雷竜、邪竜、金竜。聞いた話ではこの中で一番の問題は邪竜にある。全竜と亜竜が消え、悪意が消え去ったとしても、すでに植え付けられた悪意はまだ残っている。
「じゃあ邪竜から何とかしに行ってみっか。無竜、案内してくれ」
《は、はいっ!》
こうして竜界に残る問題を解決するため、蓮太は無竜を従え、一路東へと向かうのだった。
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