無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

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第06章 竜界編

17 氷の洞窟へ

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 雷竜を仲間に加えた蓮太はその足で北へと向かった。目指すは北にある氷の洞窟だ。そこに最後の属性竜であり、いち早く全竜のクズさに気付いた氷竜がいる。

 クズさに気付いた氷竜は単独で全竜に挑んだが瀕死へとおいやられ、今は一人氷の洞窟で暮らしているようだ。

《……雷竜、大丈夫かお前》
《だっ、だだだだだだだだいじじじじじじ──》

 大地が白く染まった頃、雷竜はその寒さに耐えきれなくなりガタガタと震えていた。

《別にそんな無理してついてこなくても……》
《いやっ、行きますっ! ひ、氷竜はダチっすから!》
《……惚れてるとか?》
《んなわけないっしょ!? 氷竜は男っす!》
《ふ~ん》

 どうやら本当に友達のために身体を張る気のようだ。それだけ雷竜にとって氷竜は大切な友達だという事なのだろう。

《まったく。ほら、こうやって電磁バリア張れ。なにもないよりマシだからよ》
《……俺より雷の力扱うの上手いんすね》
《神竜だからな。神竜は全ての属性を扱えるんだよ。ま、人間の時から使ってたけど》
《化け物じゃねっすか……》
《うっせ……ん? あれか?》
《あれっす! 降りましょう!》

 白い丘に洞窟の入り口が見えた。蓮太は雷竜と共に入り口の前へと降りる。

《これは……氷の壁か》
《お~い、氷竜! 雷竜だっ! 出てきてくれっ!》

 雷竜は氷の壁を叩きながらそう叫んだ。

《聞こえるわけないだろ》
《え?》
《壁の厚さを見ろよ》

 氷の壁は入り口から向こう奥までずっと続いている。これでは叩こうが声を掛けようが伝わるはずもない。どうやら相当に不信感を抱えているようだ。

《これじゃあ壊すにも壊せない。レンタさん、どうします?》
《溶かせば良いだろ。雷しか使えないお前でも使える技を見せてやろう》

 蓮太は氷の壁に向かい片手を突き出した。

《【太陽風ソーラーウィンド】》
《なぁぁぁっ!?》

 太陽風とは、太陽から吹き出す極めて高温で電離した粒子のことである。

《こ、氷が蒸発した!?》
《ふむ。ひとまず壁や天井が崩れてくる事はなさそうだな。先に進もうか》
《う、うっす!》

 洞窟内は水蒸気で蒸していた。

《っかぁ~、暑いっすね!》
《お前は暑くなったり寒くなったり忙しいな》
《レンタさんはなんともないんっすか?》
《俺が汗をかいてるように見えるか?》

 蓮太は汗一つかかず涼しげな顔をしていた。それもそのはず。蓮太はスキル【環境適応】を持っている。この環境適応があればどんな過酷な環境下でも快適に、通常空間同様に過ごす事ができる。

《さ、さすがレンタさんっすね! どんな力かはわかりませんが》
《ま、その内教え……またか》
《またっすね》

 奥に進むと道が二つに分かれ、その両方が再び氷の壁で埋め尽くされていた。

《せっかくだ、雷竜。さっきの技使ってみろよ》
《うっす! レンタさんの技、使わせてもらいます!》
《んじゃ俺は右な》
《なら俺は左で!》

 蓮太は二手に分かれ進む事にした。いくら不信感を抱いていても友達だと言っている雷竜にいきなり攻撃はしないはずだと判断しての事だ。

 そこから洞窟はさらにいくつも枝分かれし、行き止まりに達しては違う道を選ぶ事半日。ようやく開けた場所に出た。

《なんっつー天然洞窟だよ。まるでダンジョンだ。ん?》

 開けた場所を見回していると壁に穴が開き、そこから雷竜が出てきた。

《あ、レンタさん!》
《よう、着いたか》
《やっとっすよ。レンタさんは?》
《俺も今着いたところだ。しかし……まるでダンジョンだな。めちゃくちゃ道が分かれてて疲れたぞ》
《え? 俺の所は二回くらいしか……》

 どうやら雷竜の方はそれほど枝分かれしていなかったようだ。

《選んだのは俺だ、何も言うまい。それより……その様子だと氷竜とは会ってないんだな?》
《レンタさんの方にもいなかったんすか?》
《ああ。だとすると……》

 開けた場所の奥にはまたいくつか氷の壁があり、まだ奥へと続く道がある。

《いったんここでキャンプを張るぞ、疲れただろ?》
《ヘトヘトっすよ。レンタさんと戦ってから飯も食ってなかったし》
《俺もだ。今日の探索はここまでにしよう》

 蓮太はこの開けた場所に家を創り出し、天井もひらけていたためバーベキューをする事にした。

《家まで出すなんてレンタさんの力って底がねぇっすね! はぐはぐはぐ》
《お前に見切られるほど浅くはねぇよ。はぐっはぐっ、グビグビ》
《……レンタさん、それ……酒っすか!?》
《あん?》

 蓮太は自分だけ焼き鳥をツマミにエールをあおっていた。

《……麦のジュースだ》
《ぜってぇ嘘だっ! 俺にもくださいよっ!》
《何言ってんだ、敵地で酒を飲むなどあるわけないだろう? グビグビ……かぁ~……うまいっ! のど越し爽やか~! はぐはぐはぐ、グビグビ》
《ちょっ、なくなるっ! 俺にも一口だけぇぇぇぇっ!》

 あまりにうるさいので樽を一つ出してやった。

《やっぱ酒じゃねっすか! しかも美味いし!》
《バーベキューって言ったらエールだろ。さて、次はオークキングのステーキを……》
《あ、俺はウォーターバッファローが食いたいっす!》
《また? まぁ良いけど》

 幸い食材は三神の大迷宮で腐るほど手に入れてある。魔物がいない竜界で唯一食材を手に入れる事ができる場所が三神の大迷宮だ。そう考え、雷神戦の後に宝箱を回収しまくっていた。

《で、雷竜よ~》
《なんすか~?》
《もし氷竜を仲間にしたらその後の事を考えてるか?》
《その後っすか? ん~……なんにも考えてないっすね。とりあえずレンタさんについて行こうかなと》
《竜ってなぁのんびり屋だな》
《長命種っすからね~……。人間みたいに生き急いだりはしないかなと》
《まさに俺の理想としてる生活だよなぁ……。ほれ、焼けたぞ》
《あざっす!》

 そうして二人は腹一杯バーベキューとアルコールを楽しみ、身体を休めるのだった。
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