無双転生~チートスキルで自由気ままに異世界を生きる~

夜夢

文字の大きさ
85 / 85
第06章 竜界編

18 氷竜

しおりを挟む
 肉と酒を楽しみゆっくり身体を休めた二人は引き続き氷竜に会うため洞窟を奥へと進んでいく。

《これでいなかったら笑えるな》
《……いや、いるっすよ。この先から氷竜の気配を感じるっす》
《はぁ? 俺には全く感じられんぞ》
《それは多分冬眠してるからっす。あ、ほら下》
《ん?》

  蓮太は雷竜に促され足元を見た。

《これは……足跡か》
《ずいぶん古い足跡っすね。多分入ってから一度も外に出てないようっすね》
《そりゃあれだけ氷の壁張ってんだから出ちゃいねぇだろうよ。……ふむ、いるな。この先のようだ》
《それじゃあ行くっす!》

 雷竜が先頭を歩き狭い道を奥へと進んでいく。しばらく歩くと一体の竜がフロア中央でこちらを睨み付けていた。

《命が惜しければ去れ。警告はこの一度だけだ。二度目はない》

 そう告げる氷竜に雷竜が無警戒に近付いていく。

《氷竜っ! 俺だよ、雷竜だ!》
《雷竜……? なにしに来た》
《なにって……迎えに来たんだよお前を》
《迎えだと?》
《ああ。全竜はくたばったぜ》
《なにっ!?》

 氷竜はカッと目を見開き驚きの声をあげた。

《あの傍若無人の全竜が死んだ!? だ、誰が殺った!》
《こちらにおわすレンタさんよ! だからもうこんな場所にいる必要なんかねぇんだって。氷竜よぉ、また昔みたいに皆で──》
《黙れっ!》
《え?》

 氷竜は雷竜に向かい氷の槍を放った。雷竜は慌ててそれを躱わし、氷竜に向かい叫ぶ。

《な、なにすんだ氷竜っ!》
《うるさいっ! 俺は……俺は全竜をこの手で殺るためにずっと厳しい修行を続けてきたんだぞ! それを横からかっさらわれ……全竜が死んだからそいつと仲良くしろだと? そんな都合の良い話があるかっ! 俺の怒りはどこに向ければいいっ!!》

 氷竜の心は深く復讐に囚われていた。そんな氷竜に対し、蓮太が道を示す。

《なあ氷竜よ》
《なんだ》
《その力を復讐のためだけに使うのはもったいないぜ》
《なんだと?》
《力は仲間を守るために使え。自分のために使っちまったらお前が嫌う全竜と同じだ》
《お、俺が……全竜と同じ? そ、そんなわけあるかっ!! あんなクズと俺を一緒にするなぁぁぁぁっ!》

 氷竜の口からブリザードブレスが吐かれた。

《レンタさんっ!》
《効かないな》
《なっ!? それは火竜のファイアーウォール!》

 氷竜の攻撃は蓮太に届かなかった。

《図星を突かれて怒ったんだろ? 自分でももうわかってるんだろ、氷竜よ。振り上げた拳を下ろす先が見つからず戸惑ってんだな。なら……俺が受けてやる。お前の全てを俺にぶつけてみせろ氷竜!》
《あ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!》

 氷竜は溜まった鬱憤を晴らすかのように今持つ力全てを蓮太にぶつけた。蓮太はそれを全て受けきり、地に膝をつく氷竜の肩に手を置いた。

《強いな、お前。その強さを復讐に使うなんてもったいないぜ。こんな冷たい穴蔵なんか捨てて温かい場所で仲間と暮らそう。もう平和を乱す奴はいないんだ。お前はもう一人じゃない。また友達と楽しく暮らせるんだ》
《友……》
《大丈夫か氷竜っ!》

 雷竜が氷竜に駆け寄り肩を貸した。

《は、ははっ。大丈夫かってお前……、俺は攻撃されたわけじゃないんだぞ》
《あ……、は、ははっ。そうだな、早とちりしちまった》
《……お前は変わらないな。さっきは済まなかった。動転してお前にまで刃を向けちまった》
《気にすんなって! ダチだろ! お前が本気かどうかなんてわかってんだよ! 氷竜、帰ろうぜ。レンタさんについていけば楽しく暮らせるんだ》
《……ああ。お前がそう言うなら本当に楽しいんだろうな》
《あ、氷竜!》

 氷竜はフラフラと蓮太に歩み寄り、頭を下げた。

《改めて……俺は氷竜だ。これより俺は貴方に従う。道を示してくれ》
《受けよう。俺は神竜のレンタだ。ほら、魔力回復薬だ。飲めよ》
《す、すまない。ありがたく……》
《あ、レンタさんそれ瓶が違うっすよ?》
《は? 別に違わ……違うな》
《ぐっ!? 熱いっ! 喉が焼けるっ!? こ、これは酒じゃないかっ! く、くぅぅ……っ》


 氷竜は瓶を落としフラフラと地面に横たわった。

《なぁ雷竜。氷竜ってもしかして酒飲めないのか?》
《や、一応飲めるんですけどね? 久しぶりなのもあるだろうし、何よりそれ……【竜殺し】じゃないっすか。それを普通に飲むのは水竜くらいっすよ》
《……さて、帰るか。雷竜、氷竜を担げ。転移するぞ》
《誤魔化した……》

 こうして最後の竜である氷竜を迎え、蓮太は妻や仲間の待つ塔に戻った。

《ただいま~》
《《》》

 蓮太を天竜達が温かく迎える。

《氷竜は仲間に入りましたか?》
《あ、ああ。今はちょっと寝てるが仲間には入ったよ》
《そうですか。では……これで全ての属性竜が一ヶ所に揃ったわけですね》
《そうなるかな》

 中庭を見ると酔った氷竜が水竜にからかわれていた。

《平和ですね》
《そうだな。これで竜界から問題はなくなったわけだ》
《はい。全てあなたのおかげです。それで……これからの事について相談が》
《相談?》

 天竜が真面目な表情で蓮太に告げた。

《竜達に常識を教えてあげてはもらえませんか?》
《……は?》
《竜達はあまり生産的ではありません。なにかを育てて収穫するという行為をしないと言いますか……》
《ああ、確かに。いつも狩りとか木の実をそのまま食うだけだもんな。俺と会う前だと》
《はい。そこでレンタ様には少し文化レベルを上げて欲しいのです》
《わかった。俺に任せておけ。あいつらに文化的な生活ってもんを教えてやろう》
《はいっ》

 こうして蓮太は全ての竜が揃った竜界に新たな風を送り込もうとする天竜の話にのり、原始的な考えの竜達に文化というものを教えるために動き始めるのだった。
しおりを挟む
感想 76

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(76件)

キョウ
2022.03.22 キョウ

エレンとロキの契りの瞬間に主人公にヘイト爆発で終わった。それまでは別に良かったのに。今までの作風でも自分の女には手を出ささないってスタイルがこの作者さん最高やったのに

2022.03.22 夜夢

あの契りは形式上のものでっせ(笑)
勇者ロキはエレンに好意はないが、レンタの子を守るために同意したんですよ( ´∀`)

ロキはまだレンタが死んだとは思っていないようで……
後々面白い事になります(笑)

解除
神威
2022.03.12 神威

更新乙~( =^ω^) 次待ってま~す( *・ω・)ノ

2022.03.12 夜夢

次は未定よ( ´∀`)

解除
Affection profonde

待ってるよ〜

2022.03.12 夜夢

お待たせしましたぁ(;゜∀゜)

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。