シンジュウ

阿綱黒胡

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第1章

<21話>図書委員会(其の1)

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目が良くなった。

そう気づいたのは今日の朝だった。
顔を洗おうと眼鏡をふと外した時、
僕の目の前には、
眼鏡をかけていた時より、
遥かに鮮明な世界が広がっていた。
とは言っても、
瀕死のはずの肉眼が鮮明に捉えたのは、
決して漫画にあるような
青い空や緑の草原などではなく、
只の寝起きの
自分のアホヅラだったのだけれど、
それでも僕は、
目の前に映る自分を凝視しながら、
数秒間硬直した。

そして一言。
「うわあああああああああああ!
目が良くなってるうううううう!」

「ーーーてなわけなんだけど、
これってシンジュウが宿ってるから?」
「うん、そうだね。
宿り主には身体能力強化があるでしょ?あれで一般人が超人みたいな
腕力や脚力が手に入るんだから、
一度落ちた視力や聴力なら、
人間離れとはいかないにしても、
元どおりに回復くらいはするんだよ。」

昨日まで2m先もロクに見えなかった
僕の貧弱な視力が、
一晩で回復することなんて、
普通ではまず無いので、僕はとりあえず斯波に連絡を取ったのだった。
結果は、案の定シンジュウの影響だった
「目も良くなるのかよ・・・。
もうなんでもありだな・・・。」
「うんそう、なんでもありなの。
だってこの世のものじゃ無いんだから、
そんな存在になんて、
通用すると思う?

知り合いの宿り主さんは、
生まれつき動かなかった両手の指が
動くようになったらしいし。

そうだ、また今度紹介するよ!」

📄シンジュウの身体能力強化には、
低下した5感の回復も含まれている。

「そっか、ごめん、朝早くから。」

「三好!てめえよくも
うちの若いのやってくれたな!」
ドガシャーン!バリン!ガタガタ!
「ううん、全然」
「この野郎!」ダァン!ダァン!
「ぐえあ!」
「大丈夫だよ。」
「そろそろ学校 」
「やれやれ、たかが5人で、
俺に勝てるとでも思ったのかい?」
ゴッ!ガッ!「うぐっ!」「ぎっ!」
「行かなきゃいけないから切るね。」
「・・・ごめん、
さっきから、一般家庭の朝7時には、
聞こえるはずのない、
怒号と破壊音と発砲音と打撃音が
君の音声の背後から
聞こえてくるんだけど・・・。」
数秒間の沈黙。
「・・・そ、空耳じゃ
バキッ!「ウグエァ!」
「この野郎・・・ギャアアアアア!」
メギメギメギメギ!
「ふう、やれやれ。」
ないかな?
じゃあ、学校頑張ってね。
もうテスト終わってるからって、
気を抜いちゃダメだよ!」
そう言って電話は切れた。

僕は、
切れる寸前に微かに聞こえてきた、
「よし、こいつら窓から捨てとくか。」
という三好さんの恐ろしい言葉は、
聞かなかったことにした。

僕は教科書とノートを詰め込んだ
重いバッグを背負い、
靴を履くふりをしながら、
コンコンと
靴の踵を2回、床に打ち付ける。

『はいはいはいはいはい!』
と元気な声で、
部屋の奥からフセが走り出てきた。

何故フセを学校に
連れて行くのかというと、
僕はフセとあまり離れられないからだ。

一度フセを置いていってみようと、
こっそり出て行ってみたところ、
10mくらい行ったところで、
突然何か物凄い力で
後ろに引っ張られ、
僕は閉まっていた玄関のドアに、
背中をしこたま打ち付けた。
(ちなみにフセが離れても同様だった)

📄シンジュウと宿り主は、
あまり離れることはできない。

一般人に見えないフセに声をかけると、
親に怪しまれるので、
これを合図にすることにしたのだ。

『ほらほらほらほら早く行こう!』
と楽しそうに急かすフセを宥めながら、
立ち上がろうとしたその時、
僕の携帯からピロン♪と、
軽快な通知音が響いた。

フセが少し驚いたように、
『あれ?葉月ちゃんとは、
さっき話してたんじゃ無いの?』

・・・こいつは、
僕の事をどんだけ
孤独なやつだと思ってるんだ?

僕は携帯を見る。
そして同時に硬直した。
・・・マジかよ、今日やんのかよ。

フセが携帯を覗き込む。
『ねえ、誰のこの人?』
携帯にはこう表示されていた。
『図書委員会の皆さんへ

今日は『裏の会合』を行います。
放課後16時からです。
来なかったらどうなるか・・・
皆さんならもうお分かりですよね?

では、待ってま~す❤️』

「・・・本多先輩だよ。」

呼び出されたからには、
行かなくてはならない。

『40期生1の残念美人』と呼ばれる、
本多先輩が作り、
訳あり生徒ばかりが集まった、
近年稀に見る変人組織である、
図書委員会、否、超常現象研究会へ。

































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