シンジュウ

阿綱黒胡

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第1章

<23話>図書委員会(其の3)

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午後3時、聞き慣れたチャイムが響き、
先生の掛け声と共に、
憂鬱な授業は終わりを告げた。

HRで先生が話している間も、
僕の頭は超常現象研の事で一杯だった。

僕達超常現象研が活動する理由は、
大きく分けて2つある。

1つは、
『メンバーの誰かが
議題を調べる。』場合。

都市伝説や地域伝承などの研究が主で、
僕達の今までの行動は、
殆どこれに当たる。

ちなみに議題を持ってくる場合は、
1週間前に予告することが、
原則とされている。
図書委員会の本当の仕事も、
やらなくちゃいけないので
決して暇というわけではないのだ。

(なお、本当の図書委員会の集まり
との区別の仕方は、
メッセージに『裏の会合』という言葉が
使われているか否かで判断する。)

もう1つは、予告が無く唐突に
会合が開かれた場合。
これは、
『今現在起こっている怪奇現象』
を調べる場合である。
こっちの方は、
当然そんな怪現象が
ポンポンおこるわけもなく、
未だ開かれたことがない、
スペシャルな一大行事なのだ。

今回の場合、予告は無かった。

ようやく先生の話が終わり、
「さようなら!」の号令が聞こえた
のとほぼ同時に、
僕は自身の鞄を掴んで廊下に飛び出し、
疾風の如き速さで階段を駆け上がる。

目指すは4階の図書室だ。

僕は図書室のドアに突進し、
音を立てて乱暴にドアを開ける。

うう、今回も僕が最後か・・・。
超常現象研の他の仲間は、
もう既に図書準備室の
机の周りに置かれた
パイプイスに腰掛けていた。

超常現象研のメンバーは、
全員で5人だ。

まずは中央に腰掛ける、
黒髪ポニーテールの本多先輩と
息を切らして入り口に立っている僕。

先輩のすぐ隣で本を読んでいる、
大凡図書室に似合わない、
筋肉質な体を持つ大男は、
武蔵邦夫くにお
3年生で、
クラスが階ごと離れているため、
ここ以外で会うことはあまりない。
武蔵先輩は僕に気づき、
「やあ、遅かったね。
早く椅子に座りたまえ。」と促した。
この人は、
大の読者家、ガリ勉、真面目君という、
見かけによらないまさかの3セットを
兼ね備えているのだ。
(しかも運動センスは壊滅的ときた。)

「はい。」と軽く会釈して、
武蔵先輩に促されたとおり、
僕は椅子に腰掛ける。

するとすぐさま声がかかる。
「ねえねえねえ、
遅れた理由当ててあげようか?
ズバリ!
担任の吉岡先生名物の放課後長説教、
聞かされたからでしょう!?

ね!そうでしょ!?そうだよね!?」
声の主は、
頭にお団子を2つ作った、
ギャル風の女子である。

新井すずめ、僕と同じ2年生。
三度の飯よりお喋りが大好きで、
『Ms.スピーカー』と言われるほど
口が軽く、
彼女に秘密を知られたが最後、
翌日には学校中に広まっている。
(こいつにだけは、
絶対にシンジュウの事を
悟られまいと、僕は心に誓った。)
とはいえ、同時に情報通としても有名で
『今流行っている事』ならば、
彼女に聞けば殆ど間違いない。

僕は新井の質問ぜめから逃れようと、
一度席から離れる。
とその時、
窓から運動場を一心に覗き込んでいる、
1人の男子生徒が視界に入った。
僕は彼に近づき、
ポンと肩を叩くと、
彼は「ひゃあ!」と声を上げて驚いた。

「遅れてごめん、あと驚かしてごめん。
陸上部のお姉さんを見てたの?」
彼は安堵したような表情になると、
「ああ、すみません、
暇だったんで凛の練習を見てたら、
ちょっと魅入ってしまって・・・。」
と、弱々しく言った。

彼は北畠隼人。
今年入ってきた新1年生で、
今回が初めての本格的な活動になる。

なんと彼は世界でも珍しい、
男女の一卵性の双子の片割れであり
(ごく稀に本当にあるらしい)、
入学当初は大きな話題になった。

それだけでも凄いのに、
彼の双子のお姉さんである
北畠凛さんは、
1年生にして陸上部レギュラーとなり、
弱小だったうちの陸上部を、
全国大会にまで連れて行った、
ウルトラなアスリートにして、
この学校のヒーローなのだ。

と言っても、
北畠君自身は運動神経がからっきしで、
ハードル走もロクに跳べないらしい。

ただし非常に頭が良く、
入学早々、学力テストで
学年5位に躍り出た。

以上4名+僕で、
研究会は構成されている。

と、ここで、
本多先輩がパンパンと手を打ち、
「さあ、義経も来た事だし、
そろそろ始めるとしよう。」
と、開会を宣言した。

全員の着席を確認すると、
本多先輩は、「ゴホン!」と、
わざとらしく咳払いをした。
「今回みんなに
集まってもらったのは他でもない、
我が研究会総出で、
今巷を騒がす、
ある事件を調査するためだ。

その事件とは・・・。」

沈黙。
みんなの目が、本多先輩に集まる。
本多先輩は自身のバッグを、
ゴソゴソと物色し始める。

沈黙。
本多先輩はまだ鞄を物色中。

沈黙。
本多先輩はまだ鞄を物色中。

沈黙。
本多先輩はまだ鞄をぶっs「あった!」

本多先輩は
滅茶苦茶強張った笑顔で、
「ふっふっふっ。
大きなネタというものは、
貯めないと面白くないだろう。」
などと言い訳していた。
(因みにこの時のみんなの心境は、
満場一致で、
「いやすぐ出せるようにしとけよ!」
である。)

「今回の議題は、これだ!」
バン!と効果音が出そうなほど、
力強く開かれた新聞のページには、
「神出鬼没、
天原市の『謎の騎士』またも現る。」
という、
目を惹く大きな見出しが載っていた。

「今回の研究対象は、
ズバリ、この『謎の騎士』だ!
我々超常現象研で、こいつの正体を
突き止めてやろうじゃないか!」
本多先輩は高らかに宣言した。

5月10日金曜日、
新たな波乱の幕開けだった。
































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