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第1章
<29話>決闘(其の2)
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話し合いの結果、
日時は月曜日の午前2時、
尊高校近くにある、
工事現場の資材置き場(に不法侵入して)
ということになった。
ここなら近くに家が全くないし、
2時なら学校にも誰もいないだろうから
多少は暴れても大丈夫だろう、
というのが理由だ。
少し急ピッチだけれど、
まあこういうのは、
早めに終わらせとくに限る。
当日の夜、午前1時、
僕は例に漏れず、
両親にみつからないように、
ひっそりと窓から出て、
夜の街へと繰り出した。
歩く、歩く、ひたすら歩く。
普通に歩けば30分くらいだから、
そんなに急ぐ必要はないけれど、
早く着くにこしたことはあるまい。
なんてことを思いながら歩いていると、
突然携帯がけたたましく鳴り出した。
ヤバイ、ひょっとしてバレた!?
と思ったけど、相手は三好さんだった。
「もしも・・・え!?
なんでこんな時間まで起きてんの!?
明日学校じゃないの!?」
「そう思うんなら、なんでこんな時間に電話してくるんですか・・・。」
電話に出られたこと自体、
ほとんど奇跡みたいなもんである。
この人に常識の2文字は無いのか?
「まあいいや、ちょうど良かった。
ちょっと伝えておきたい
ことがあってね。
君、まだ『騎士』について調べてる?」
はい、今から本人に面会予定です。
なんて言ったら
面倒くさいことになりそうだったので、
僕は「まあ、はい。」と
適当にあしらうことにした。
三好さんは、「そっかあ・・・。」と
少し残念そうに言ってから、
言葉を続けた。
「あれね、手を引いた方がいいよ。
専門家が動き出した。」
「専門家?」
なんだなんだ、
物騒なワードが出てきたぞ。
「うん、そう、専門家。
早い話が、
シンジュウと戦うプロフェッショナル。
ちょっと今回の『騎士』は、
流石に派手にやりすぎたからね。
アイツも怒ってんじゃないかな。
それで、
君に言っておきたいんだけど。
専門家に会った時、
もし、そいつが男だったら、
正直、無視していい。
君にはなんの害もない。
ちゃんと目的さえ説明すれば、
多分納得してくれると思うよ。
こっちから邪魔をしに行かない限り、
どうこうってのは無いから大丈夫。
ただし、もしそいつが、
銀髪で背の高い女だったら、
その時何をしていようと、
どんな状況に置かれていようと、
全速力で逃げた方がいい。
アイツには常識は通じない。
アイツ葉月の一件から、
シンジュウの宿り主に異常に過敏に
なっちゃっててさ。
『騎士』もボコボコにする気満々だから
相当ヤバイよ、アイツは。
うまくあしらわないと、
君も邪魔者とみなされて、
フルボッコにされるから。
じゃ、よろしく!」
そういって電話は切れた。
なんて物騒な報告をしてくれたんだ、
あのオッさんは。
しかし今は、こっちの案件に
集中しなければ。
「・・・まあ、大丈夫でしょ。」
そう信じて、
僕は歩を進めるのだった。
ーーーその30分後、
僕がようやく顔を見せた時、
双子はもう既に資材置き場に
到着していた。
「・・・ごめん、遅れたね。」
「「気にしないでください。
こっちも今来たところなので。」」
声が揃ったのは偶然なのだろう、
2人は赤くした顔を見合わせた。
その様子に、思わず僕は吹き出す。
「な、何がおかしいんですか!?」
今度は凛さんだけが発言した。
「いや、なんでもないさ。
ただ、仲良しなんだなと思って。」
「「仲良しなんかじゃないです!」」
そしてまた赤い顔を見合わせる。
また揃った、すげえな。
だけど僕は、このあどけない2人と、
これから戦わなくてはいけないのだ。
その覚悟ができたらしい凛さんは、
ずいと3歩前に出てきた。
「・・・私がやる。
アンタは私情を挟みそうだから。
それにこいつは、女の敵だし。」
・・・冤罪だったんだけどなあ。
人の印象というのは、
そう簡単には変わらないものらしい。
凛さんが左拳を
バッ!と前に突き出すと、
『オオ!お嬢様、
私の出番ですかな!?』
などという初老の男性の声がした。
と同時に、
半分赤、半分青という、
妙なカラーリングの体を持つ、
大きめのカブトムシが、
凛さんの腕に止まる。
アレが2人のシンジュウか。
「変身!」
凛さんがそう叫んだ瞬間、
隼人君が意識を失ったように倒れた。
と同時に、衝撃波と熱風が、
僕とフセを襲う。
成る程、やっぱりそうゆう仕組みか!
吹き飛ばされそうになるのを
なんとか踏ん張り、
ガードしていた腕を外すと、
そこには赤い鎧の[騎士]が立っていた。
「「さあ、戦闘開始!」」
凛さんと隼人君、
2人の声を合わせた声で
そんなことを言いながら、
[騎士]はこちらに向かって
真っ直ぐ突進してくる。
「来い!『世離』!」
僕は刀を顕現させると、
同じく[騎士]に向かって走り出す。
開戦だ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
この時、
僕達は2つ、大きなミスを犯していた。
1つは、
三好さんの『専門家』についての話を、
北畠姉弟に伝えなかったこと。
もう1つは、
僕自身も、『専門家』について、
全く無警戒だったことだ。
まさかこんな時間に、こんな場所に、
僕達以外の人なんて来るわけないと、
勝手に思い込んでしまっていた僕達は、
まさに阿呆と呼ぶに相応しい。
少し考えればすぐにわかる。
相手は[騎士]を狙う『専門家』なのだ。
当然、出没する時間帯や場所なんかも研究してきて、
今もなお血眼で探しているはずなのに、
阿呆な僕達はそれに気づけなかった。
阿呆な僕達は、
中学生同士が取っ組みあっている最中、
大人がどんなことをしているかなんて、
考えることすらしなかった。
この戦いの、
最終的な勝敗だけ言っておこう。
そんなものはつかない。
このほんの十数分後、
僕達は現れた乱入者によって、
全員地面に
這いつくばることになるのだから。
日時は月曜日の午前2時、
尊高校近くにある、
工事現場の資材置き場(に不法侵入して)
ということになった。
ここなら近くに家が全くないし、
2時なら学校にも誰もいないだろうから
多少は暴れても大丈夫だろう、
というのが理由だ。
少し急ピッチだけれど、
まあこういうのは、
早めに終わらせとくに限る。
当日の夜、午前1時、
僕は例に漏れず、
両親にみつからないように、
ひっそりと窓から出て、
夜の街へと繰り出した。
歩く、歩く、ひたすら歩く。
普通に歩けば30分くらいだから、
そんなに急ぐ必要はないけれど、
早く着くにこしたことはあるまい。
なんてことを思いながら歩いていると、
突然携帯がけたたましく鳴り出した。
ヤバイ、ひょっとしてバレた!?
と思ったけど、相手は三好さんだった。
「もしも・・・え!?
なんでこんな時間まで起きてんの!?
明日学校じゃないの!?」
「そう思うんなら、なんでこんな時間に電話してくるんですか・・・。」
電話に出られたこと自体、
ほとんど奇跡みたいなもんである。
この人に常識の2文字は無いのか?
「まあいいや、ちょうど良かった。
ちょっと伝えておきたい
ことがあってね。
君、まだ『騎士』について調べてる?」
はい、今から本人に面会予定です。
なんて言ったら
面倒くさいことになりそうだったので、
僕は「まあ、はい。」と
適当にあしらうことにした。
三好さんは、「そっかあ・・・。」と
少し残念そうに言ってから、
言葉を続けた。
「あれね、手を引いた方がいいよ。
専門家が動き出した。」
「専門家?」
なんだなんだ、
物騒なワードが出てきたぞ。
「うん、そう、専門家。
早い話が、
シンジュウと戦うプロフェッショナル。
ちょっと今回の『騎士』は、
流石に派手にやりすぎたからね。
アイツも怒ってんじゃないかな。
それで、
君に言っておきたいんだけど。
専門家に会った時、
もし、そいつが男だったら、
正直、無視していい。
君にはなんの害もない。
ちゃんと目的さえ説明すれば、
多分納得してくれると思うよ。
こっちから邪魔をしに行かない限り、
どうこうってのは無いから大丈夫。
ただし、もしそいつが、
銀髪で背の高い女だったら、
その時何をしていようと、
どんな状況に置かれていようと、
全速力で逃げた方がいい。
アイツには常識は通じない。
アイツ葉月の一件から、
シンジュウの宿り主に異常に過敏に
なっちゃっててさ。
『騎士』もボコボコにする気満々だから
相当ヤバイよ、アイツは。
うまくあしらわないと、
君も邪魔者とみなされて、
フルボッコにされるから。
じゃ、よろしく!」
そういって電話は切れた。
なんて物騒な報告をしてくれたんだ、
あのオッさんは。
しかし今は、こっちの案件に
集中しなければ。
「・・・まあ、大丈夫でしょ。」
そう信じて、
僕は歩を進めるのだった。
ーーーその30分後、
僕がようやく顔を見せた時、
双子はもう既に資材置き場に
到着していた。
「・・・ごめん、遅れたね。」
「「気にしないでください。
こっちも今来たところなので。」」
声が揃ったのは偶然なのだろう、
2人は赤くした顔を見合わせた。
その様子に、思わず僕は吹き出す。
「な、何がおかしいんですか!?」
今度は凛さんだけが発言した。
「いや、なんでもないさ。
ただ、仲良しなんだなと思って。」
「「仲良しなんかじゃないです!」」
そしてまた赤い顔を見合わせる。
また揃った、すげえな。
だけど僕は、このあどけない2人と、
これから戦わなくてはいけないのだ。
その覚悟ができたらしい凛さんは、
ずいと3歩前に出てきた。
「・・・私がやる。
アンタは私情を挟みそうだから。
それにこいつは、女の敵だし。」
・・・冤罪だったんだけどなあ。
人の印象というのは、
そう簡単には変わらないものらしい。
凛さんが左拳を
バッ!と前に突き出すと、
『オオ!お嬢様、
私の出番ですかな!?』
などという初老の男性の声がした。
と同時に、
半分赤、半分青という、
妙なカラーリングの体を持つ、
大きめのカブトムシが、
凛さんの腕に止まる。
アレが2人のシンジュウか。
「変身!」
凛さんがそう叫んだ瞬間、
隼人君が意識を失ったように倒れた。
と同時に、衝撃波と熱風が、
僕とフセを襲う。
成る程、やっぱりそうゆう仕組みか!
吹き飛ばされそうになるのを
なんとか踏ん張り、
ガードしていた腕を外すと、
そこには赤い鎧の[騎士]が立っていた。
「「さあ、戦闘開始!」」
凛さんと隼人君、
2人の声を合わせた声で
そんなことを言いながら、
[騎士]はこちらに向かって
真っ直ぐ突進してくる。
「来い!『世離』!」
僕は刀を顕現させると、
同じく[騎士]に向かって走り出す。
開戦だ!
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この時、
僕達は2つ、大きなミスを犯していた。
1つは、
三好さんの『専門家』についての話を、
北畠姉弟に伝えなかったこと。
もう1つは、
僕自身も、『専門家』について、
全く無警戒だったことだ。
まさかこんな時間に、こんな場所に、
僕達以外の人なんて来るわけないと、
勝手に思い込んでしまっていた僕達は、
まさに阿呆と呼ぶに相応しい。
少し考えればすぐにわかる。
相手は[騎士]を狙う『専門家』なのだ。
当然、出没する時間帯や場所なんかも研究してきて、
今もなお血眼で探しているはずなのに、
阿呆な僕達はそれに気づけなかった。
阿呆な僕達は、
中学生同士が取っ組みあっている最中、
大人がどんなことをしているかなんて、
考えることすらしなかった。
この戦いの、
最終的な勝敗だけ言っておこう。
そんなものはつかない。
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全員地面に
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