40 / 75
第1章
<39話>騒動のその後
しおりを挟む
「うん、頭の傷以外は、
特に外傷はないみたいだね。
頭の方も、もう完璧に直したよ。
大丈夫大丈夫、気にしなくて。」
月曜日の朝6時、起きた直後、
おねいちゃんが連れてきた
黒髪の男の子に、そう言われました。
どうやら私は、
丸1日眠りこけてしまったようです。
「え、えと、あの・・・。」
「この子は波多野渡君、
ほら、前に言ってた『ヤブ医者』よ。
加護は、『触れたものの傷を治す』。
貴方の頭の傷が心配だったから、
一応、ね。
心配しなくても、
お友達のところにも派遣しとくわ。
あ、兄さんなら
日曜日は一日中外に出てて、
随分遅く帰ってきて
今汚いイビキかいて寝てるから、
そっとしておいてあげてね。」
確かに、隣の部屋からは、
大イビキが聞こえてきます。
突然の出来事にまごついている私に、
おねいちゃんが説明してくれました。
確かに、
昨日までずっとあった
頭が割れるような痛みが、
今は全くありません。
「え、あ、あの、
ありがとうございます。」
「いいよ別に礼なんて。
それより・・・。」
私のお礼を素っ気なく受け流すと、
男の子、否、渡君は、
おねいちゃんの前に、
自身の右手を差し出しました。
「約束の報酬、早く。」
「はいはい。
全くもう、小学生で
こんな物欲しがるなんてね・・・。」
そう言いながらおねいちゃんが
茶色い封筒を渡すと。
渡君はニカッと笑い、
そのまま走り出て行きました。
その背中には、
大きなトカゲがひっついていました。
きっとあれが、
あの子のシンジュウなのでしょう。
しかし今のやりとり・・・。
「お、おねいちゃん、
まさかあの子にお金渡してるの?」
私が恐る恐る聞くと、
「何言ってるの、渡すわけないでしょ。
もっと気軽に手に入るモンよ。」
という返事が帰ってきました。
小学生に
封筒をあんなに膨らませる大金が
渡っていないことに、
私は思わず安堵しました。
「今時エロ本なんて、
コンビニでも買えるじゃない。」
「絶対ダメーーーーーーー!!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで
速攻で身支度をして
どうにかいつも通りに家を出て、
バス停に向かって歩いていると、
「葉月ちゃん、おはよう!」という
元気な声が後ろから聞こえました。
振り向くと、
そこには黒髪の田沼先輩。
「なんかさっきさー、
ちっちゃい男の子に
いきなり抱きつかれて、
エッて思った瞬間には
もうどっか行っちゃってたんだけど、
あの夜からずっとあった頭痛が、
その瞬間からなくなってさ~。
なんだったんだろう、あれ。」
私は苦笑いで返事をしました。
どうやらあの子は、
だいぶ変態さんなようです。
まてよ、ということは私も・・・?
・・・考えるのやめよ。
結局あの後も先輩は、
特に変わった、
ということはなかったようです。
自身のあの白い姿は、
一生隠して行くつもり
なのかもしれません。
でも、それでも良いと思います。
秘密の無い人間なんていません。
それを隠すことを人が、自分が、
受け入れさえすれば、
偽っている自分だって、
立派な自分なんですから。
バス停の方を見ると、
みーちゃんが手を振っています。
私は手を振り返しながら、
「あ、そうそう、
先輩に紹介したい人がいるんですよ。
柴犬のシンジュウを連れている、
男の子なんですけどね・・・。」
「え!?柴犬!?
やった、私、犬は大好きなの!」
『おい、赤斗を紹介する気か?
やめとけやめとけ、
あいつなんの面白みもねえぞ。』
「あなたは黙ってなさい。」
偽物だとか、本当の自分だとか、
そんなのどっちだって良いんです。
先輩があの夜に見せたような、
悲しい顔をすることが無いのなら、
今のような、
この青空にも負けない
綺麗な笑顔で笑えるのならば、
それで良いと、そう思いながら、
私はバス停に向かいました。
特に外傷はないみたいだね。
頭の方も、もう完璧に直したよ。
大丈夫大丈夫、気にしなくて。」
月曜日の朝6時、起きた直後、
おねいちゃんが連れてきた
黒髪の男の子に、そう言われました。
どうやら私は、
丸1日眠りこけてしまったようです。
「え、えと、あの・・・。」
「この子は波多野渡君、
ほら、前に言ってた『ヤブ医者』よ。
加護は、『触れたものの傷を治す』。
貴方の頭の傷が心配だったから、
一応、ね。
心配しなくても、
お友達のところにも派遣しとくわ。
あ、兄さんなら
日曜日は一日中外に出てて、
随分遅く帰ってきて
今汚いイビキかいて寝てるから、
そっとしておいてあげてね。」
確かに、隣の部屋からは、
大イビキが聞こえてきます。
突然の出来事にまごついている私に、
おねいちゃんが説明してくれました。
確かに、
昨日までずっとあった
頭が割れるような痛みが、
今は全くありません。
「え、あ、あの、
ありがとうございます。」
「いいよ別に礼なんて。
それより・・・。」
私のお礼を素っ気なく受け流すと、
男の子、否、渡君は、
おねいちゃんの前に、
自身の右手を差し出しました。
「約束の報酬、早く。」
「はいはい。
全くもう、小学生で
こんな物欲しがるなんてね・・・。」
そう言いながらおねいちゃんが
茶色い封筒を渡すと。
渡君はニカッと笑い、
そのまま走り出て行きました。
その背中には、
大きなトカゲがひっついていました。
きっとあれが、
あの子のシンジュウなのでしょう。
しかし今のやりとり・・・。
「お、おねいちゃん、
まさかあの子にお金渡してるの?」
私が恐る恐る聞くと、
「何言ってるの、渡すわけないでしょ。
もっと気軽に手に入るモンよ。」
という返事が帰ってきました。
小学生に
封筒をあんなに膨らませる大金が
渡っていないことに、
私は思わず安堵しました。
「今時エロ本なんて、
コンビニでも買えるじゃない。」
「絶対ダメーーーーーーー!!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そんなこんなで
速攻で身支度をして
どうにかいつも通りに家を出て、
バス停に向かって歩いていると、
「葉月ちゃん、おはよう!」という
元気な声が後ろから聞こえました。
振り向くと、
そこには黒髪の田沼先輩。
「なんかさっきさー、
ちっちゃい男の子に
いきなり抱きつかれて、
エッて思った瞬間には
もうどっか行っちゃってたんだけど、
あの夜からずっとあった頭痛が、
その瞬間からなくなってさ~。
なんだったんだろう、あれ。」
私は苦笑いで返事をしました。
どうやらあの子は、
だいぶ変態さんなようです。
まてよ、ということは私も・・・?
・・・考えるのやめよ。
結局あの後も先輩は、
特に変わった、
ということはなかったようです。
自身のあの白い姿は、
一生隠して行くつもり
なのかもしれません。
でも、それでも良いと思います。
秘密の無い人間なんていません。
それを隠すことを人が、自分が、
受け入れさえすれば、
偽っている自分だって、
立派な自分なんですから。
バス停の方を見ると、
みーちゃんが手を振っています。
私は手を振り返しながら、
「あ、そうそう、
先輩に紹介したい人がいるんですよ。
柴犬のシンジュウを連れている、
男の子なんですけどね・・・。」
「え!?柴犬!?
やった、私、犬は大好きなの!」
『おい、赤斗を紹介する気か?
やめとけやめとけ、
あいつなんの面白みもねえぞ。』
「あなたは黙ってなさい。」
偽物だとか、本当の自分だとか、
そんなのどっちだって良いんです。
先輩があの夜に見せたような、
悲しい顔をすることが無いのなら、
今のような、
この青空にも負けない
綺麗な笑顔で笑えるのならば、
それで良いと、そう思いながら、
私はバス停に向かいました。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを
青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ
学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。
お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。
お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。
レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。
でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。
お相手は隣国の王女アレキサンドラ。
アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。
バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。
バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。
せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる